マンションの「受水槽撤去」にかかる費用相場は?直結給水化のメリット・デメリットから補助金まで徹底解説
更新日:2026年05月29日(金)
築年数の経過したマンションで、理事会や修繕委員会の大きな議題となるのが「受水槽(貯水槽)の老朽化問題」です。定期清掃や点検の手間、衛生面への不安、そして高額な更新費用を前に、「いっそ受水槽を撤去して、水道管から直接水を引っ張る方式(直結給水方式)に変えられないか?」と検討するマンションが近年急増しています。 本記事では、「マンションの受水槽撤去費用」の相場から、直結給水方式へ切り替える仕組み、メリット・デメリット、工事中の断水対策、さらには費用を抑えるための補助金情報について解説します。
- 本記事のポイント
- 受水槽撤去に関する費用の変動要因がわかる
- 受水槽撤去を依頼する業者の選び方のコツがわかる
- 受水槽撤去に関するリスクがわかる
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なぜマンションの「受水槽撤去」が増えているのか?
かつて、中高層マンションでは、水道局から送られてくる水を一度「受水槽」に貯め、そこからポンプで屋上の「高置水槽」へ汲み上げてから各住戸へ給水する方式(受水槽方式)が一般的でした。これは、昔の水道管の水圧が低く、高い階層まで直接水を送れなかったためです。
しかし、現在では以下の理由から、受水槽を撤去して水道本管から直接各住戸へ給水する「直結給水方式(直結増圧給水方式)」への移行が主流となっています。
水道インフラの進化
水道管の水圧が向上し、さらに高性能な「増圧ポンプ」が開発されたことで、受水槽を経由しなくても中高層階まで安定して水を送れるようになりました。
衛生意識の高まり
受水槽の内部に汚れやサビが蓄積したり、虫の死骸が混入したりするトラブルが社会問題化し、「水道局の安全な水をそのまま飲みたい」というニーズが高まりました。
維持管理コストの削減
受水槽は法律で年1回の清掃と水質検査が義務付けられており、ランニングコストがかかります。これらを削減したいという管理組合の意向が強く働いています。
このように、受水槽の撤去は単なる「設備の取り壊し」ではなく、より安全で低コストな「次世代の給水システム(直結増圧給水)へのアップデート」を意味しています。
マンションの受水槽撤去&直結給水化にかかる費用相場
受水槽を撤去して直結増圧給水方式へ切り替える場合、単にタンクを壊すだけでなく、新しいポンプの設置や水道管の切り替え工事が必要になります。
規模や既存の配管状況によって大きく変動しますが、一般的な費用相場と内訳は以下の通りです。
工事項目 | 費用相場(目安) | 備考 |
事前調査・設計・申請費 | 20万円 〜 50万円 | 水道局への事前協議・水圧調査・図面作成など |
受水槽・高置水槽の撤去・処分費 | 50万円 〜 150万円 | タンクの材質(FRP等)、大きさ、搬出経路(クレーン使用等)による |
直結増圧ポンプユニット機器代 | 100万円 〜 300万円 | 世帯数や建物の高さによってポンプの出力・価格が変わる |
配管切り替え・電気設備工事費 | 100万円 〜 300万円 | 既存の水道管との接続、メーター周りの改修、電源工事など |
合計(総工費の目安) | 300万円 〜 800万円程度 | ※小・中規模マンション(30〜50戸程度)の場合 |
費用の変動要因
総戸数と階数
階数が高く戸数が多いほど、大容量で高出力な増圧ポンプが必要となり、機器代が跳ね上がります。
水道本管の口径
前面道路に埋設されている水道本管の太さが足りない場合、水道本管からの「引き込み管」を太くする工事(取り出し工事)が必要となり、プラス100万円〜200万円以上の追加費用が発生することがあります。
仮に受水槽方式のまま新しいタンクに交換する場合でも300万円〜500万円程度かかることが多いため、「初期費用が同程度なら、将来のランニングコストが下がる直結給水化を選ぶ」というマンションが多いのが実情です。
受水槽を撤去し「直結給水方式」にする3つのメリット
多額の費用をかけてでも、受水槽を撤去するマンションが後を絶たないのには、それに見合う絶大なメリットがあるからです。
① 圧倒的に水が綺麗で美味しい(衛生面の向上)
最大のメリットは「安全でおいしい水」が飲めることです。受水槽という「水溜まり」を経由せず、浄水場から送られてきた新鮮な水(残留塩素が保たれた状態)が直接蛇口まで届きます。水質悪化のリスクや、異物混入の不安から解放されます。
② 維持管理費(ランニングコスト)の大幅な削減
受水槽方式では、水道法やビル管法に基づき、年1回以上の受水槽清掃、水質検査、およびポンプの保守点検が必要で、年間数十万円のコストがかかっていました。受水槽を撤去すればこれらの義務から解放され、修繕積立金の節約に直結します。
※直結増圧ポンプの定期点検は年1回程度必要ですが、トータルコストは大幅に下がります
③ 貴重な敷地スペースの有効活用
受水槽や給水ポンプ室は、マンションの敷地内で大きな面積を占有しています。これらを撤去することで広大な空きスペースが生まれます。このスペースを「駐輪場」「駐車場」「トランクルーム」「防災備蓄倉庫」などに転用することで、居住者の利便性が向上し、新たな管理組合の収益源を生み出すことも可能です。
受水槽撤去・直結化のデメリットと要注意事項
素晴らしいシステムに思える直結増圧給水方式ですが、マンションという集合住宅ならではのリスクや、導入できないケースも存在します。
① 停電時・断水時に「即断水」するリスク
受水槽方式の場合、タンクの中に数十トン〜数百トンの水が貯まっているため、災害で水道本管からの給水が止まっても、タンクの水が尽きるまではトイレなどで水を使うことができました。しかし、直結給水方式は「貯え」がゼロです。そのため、停電で増圧ポンプが止まったり、水道本管が断水したりすると、その瞬間にマンション全体が断水します。防災備蓄として、各家庭での飲料水や生活用水の確保がより一層重要になります。
② 水圧の変化による給湯器等のトラブル
受水槽からの自然流下による給水から、ポンプによる加圧給水に変わるため、各住戸の蛇口からの水圧が変化(多くの場合強くなる)します。これ自体はシャワーが快適になるなどのメリットでもありますが、古い配管や給湯器に急激な水圧がかかることで、まれに漏水トラブルや機器の故障を誘発する可能性があります。
③ そもそも導入できない(許可が下りない)マンションがある
水道局の規定により、すべてのマンションが直結給水にできるわけではありません。以下のような場合は、受水槽を残さざるを得ません。
* 前面道路の水道本管の水圧や口径が不足しているエリア
* 超高層タワーマンション(ポンプの増圧限界を超える場合。※最近は技術向上により可能なケースも増えています)
* 特殊な設備(常に大量の水を使用する業務用の施設が併設されているなど)がある場合
工事中の断水期間と居住者への配慮
受水槽を撤去し、給水方式を切り替える工事において、管理組合が最も頭を悩ませるのが「断水」です。水道管を繋ぎ直す作業中は、マンション全体で水が使えなくなります。
断水時間
一般的な切り替え工事に伴う断水は、半日〜1日(実働で4〜8時間程度)で終わることが多いです。仮設配管をうまく利用して、断水時間を数時間に抑えてくれる優秀な業者もいます。
居住者への配慮
トイレが使えなくなるのが最大のストレスです。管理組合は業者と連携し、日中の不在が多い平日を狙って工事日を設定したり、敷地内に仮設トイレを設置したり、近隣の公衆トイレや銭湯のマップを配布するなどの細やかな配慮が必要です。少なくとも1ヶ月前からのスケジュール周知が不可欠です。
費用負担を軽減!自治体の補助金・助成金をチェック
直結給水方式への移行は、衛生面の向上や水道インフラの近代化に寄与するため、多くの自治体(水道局)が推奨しており、工事費用の一部を補助・助成する制度を設けている地域があります。
東京都水道局の例
条件を満たす場合、道路部分の配管(取り出し管)の増径工事にかかる費用を水道局が負担してくれる制度があります。これにより、組合の負担額が100万円単位で下がるケースがあります。
各自治体の助成金
自治体によっては、受水槽の撤去費用や直結増圧ポンプの設置費用そのものに対して補助金を出すところもあります。
補助金の有無や条件は市区町村・水道局によって全く異なるため、計画の初期段階で必ず管轄の水道局窓口や行政のホームページを確認しましょう。申請のタイミング(工事着工前など)を逃すと受け取れないため注意が必要です。
失敗しない!受水槽撤去を任せる業者の選び方
受水槽撤去および直結増圧工事は、マンションの「ライフライン(生命線)」をいじる非常に重要で難易度の高い工事です。業者選びで失敗すると、水が出ない、漏水するといった大事故につながります。
以下の3つのポイントを基準に業者を選定してください。
管轄の水道局の「指定給水装置工事事業者」であること
これは大前提です。指定業者でなければ、水道局への申請や切り替え工事を行うことはできません。
マンションの直結給水化工事の実績が豊富であること
戸建ての配管工事とは規模もノウハウも異なります。マンションの給水システムに精通し、水道局との煩雑な事前協議をスムーズに進められる実績のある業者(管工事の専門業者など)を選びましょう。
断水計画や仮設給水の提案が明確であること
居住者の負担をいかに減らすか。断水時間を最小限に抑えるための綿密な工程表や、万が一のトラブル時のバックアップ体制を提示してくれる業者こそが信頼できます。複数の業者から相見積もりを取り、提案内容を比較検討することが重要です。
監修者の考察
給水方式の直結化は、小中規模のマンションでは、様々なメリットがあります。さらに、昨今では水道本管の配水圧力がしっかりと確保されていて、5階程度であれば、増圧ポンプを稼働させなくても水を送り出すことができる地域もあります。災害時に水道本管が断水した場合はもちろん使えなくなりますが、受水槽方式の場合も飲み水には使用できないため、災害時使用のメリットも限定的といえます。そのために、毎年の清掃費や清潔な水の供給を検討しないのは、もったいないといえるかもしれません。
見積取得に関しては、管理会社任せにするのではなく、数十万~数百万の差が出てくる工事となります。組合主導で取得、検討することは、工事費を大きく削減するための賢い方法といえます。
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- 一級建築士事務所 東京都知事登録第66294号
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者

酒井 智明
設計コンサルタント会社の役員を経て入社。これまでに500戸超・35階以上のタワーマンション(ツインタワー含む)8棟や、総戸数1,500戸・11棟を超える団地型マンション、さらに50~100戸規模の中規模マンションまで幅広く設計を手がける。携わった総戸数は8,000戸以上、工事金額は110億円を超える豊富な実績を有する。スマート修繕では主に大型案件の大規模修繕および給排水設備の更新工事を担当し、実務に裏打ちされた専門的な視点から記事を監修。
一級建築士,一級建築施工管理技士,一級管工事施工管理技士,一級土木施工管理技士
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