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管理組合が知っておきたい機械式駐車場の修繕計画の立て方

更新日:2025年09月30日(火)

機械式駐車場はマンションにとって利便性の高い設備ですが、その修繕計画を怠ると将来大きな負担となりかねません。設備の耐用年数は建物本体より短く、主要部品も定期的な交換が必要です。また、修繕積立金の負担や計画不足による資金不足、撤去の是非を巡る合意形成など、管理組合には解決すべき課題が多く存在します。 本記事では、機械式駐車場の中長期的な修繕計画の立て方について、長期修繕計画ガイドラインの考え方や費用相場、点検記録の活用、改修・撤去の判断ポイント、トラブル予防策について解説します。

本記事のポイント
  • 機械式駐車場設備の耐用年数や部品交換周期の特徴がわかる。
  • 長期修繕計画の作成方法と資金試算・積立見直しの進め方を学べる。
  • 撤去・更新判断基準や組合員との合意形成のコツを理解できる。

機械式駐車場の修繕計画は早期策定と継続見直しが鍵

機械式駐車場の修繕計画は、設備の特性上「別建て」で早期に策定し、定期的に見直すことが重要です。 建物全体の長期修繕計画とは別に、駐車場専用の長期修繕計画を設け、耐用年数に合わせた主要部品交換や更新時期をあらかじめ織り込みます。加えて、その計画に見合った修繕積立金や駐車場使用料の積立を行い、資金不足を防ぐ必要があります。

機械式駐車場は一般に20年前後で更新期を迎え、大規模修繕工事に匹敵する高額な費用が発生するため、事前に資金計画を立てていなければ管理組合にとって大きな財政リスクとなります。また、計画策定後も点検結果や利用状況に応じて柔軟に見直し、撤去や平面化といった選択肢も含めて検討することが肝要です。早めの情報共有と合意形成によって、将来的なトラブルを予防し、居住者全体の納得感のある修繕計画を構築しましょう。

機械式駐車場の耐用年数とコストの特徴

機械式駐車場は寿命が比較的短く、維持コストが高い設備です。法定耐用年数は15年程度とされていますが、適切なメンテナンスにより実際には20~25年程度使用できます。しかし、老朽化が進むにつれ故障頻度が増し、部品供給も難しくなるため、概ね20年前後で更新(リニューアル)または撤去を検討するのが現実的です。特に二段・多段式など複雑な構造の装置では経年劣化による不具合が起きやすく、実用上の耐久年数は環境条件によっても前後します。

主要部品ごとに交換周期が異なる点にも注意が必要です。例えば駆動用の電動機(モーター)は10~15年、減速機は15~20年程度が交換の目安とされており、制御用の電磁開閉器など電気部品も8~10年程度で寿命が来ます。ワイヤーロープやチェーンなどは劣化すれば重大事故につながるため、定期点検の結果に応じ早めに交換しなければなりません。こうした部品交換や修理には都度多額の費用がかかるため、長期的な視点で計画的な部品更新を行うことが、安全性確保と維持費平準化の双方に不可欠です。

さらに、機械式駐車場は平面駐車場に比べ維持費が格段に高いことも根拠として挙げられます。日常のメンテナンス費用(保守点検契約料)の他、定期的な部品交換・塗装・故障修理費用が積み重なり、利用台数が減っても固定的に出費が生じます。そのため「機械式駐車場は金食い虫」とも評されるほどであり、収支バランスを見誤ると管理組合の財政を圧迫します。駐車場収入が見込みより減少した場合には、将来の機械更新費を賄えなくなる恐れもあります。実際、マンションの駐車場利用率低下(車を持たない世帯の増加や周辺駐車場との競合)で収入が細り、いざ更新時に資金不足に陥るケースも少なくありません。

以上のように、機械式駐車場は耐用年数の短さと高額な維持・更新コストという固有の課題を抱えており、この点が修繕計画を他の設備以上に慎重かつ綿密に立てる根拠となっています。

ガイドラインに見る長期修繕計画と費用積立の目安

機械式駐車場の修繕計画については、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」にも具体的な考え方が示されています。同ガイドラインでは、機械式駐車場の修繕項目は別途に長期計画を立てる方法が例示されており、管理費会計や修繕積立金会計とは区分して駐車場使用料会計を設けることも検討すべきだとされています。

これは機械式駐車場が他の共用設備に比べて突出して費用負担が大きいためで、駐車場関連の収支を一般会計に混在させず特別会計で管理することで、必要な資金を計画的に確保しやすくする狙いがあります。

また、修繕積立金ガイドラインでは、機械式駐車場付きマンションの積立金設定について、機械式駐車場の種類ごとに1台あたり月額換算の修繕工事費が示されています。例えば「3段(ピット2段)昇降式」で1台当たり月額5,840円程度が目安とされており、他の方式でもエレベーター式(垂直循環式)で約4,645円、ピット1段2段式で6,000~7,000円前後といった水準です。30台規模の機械式駐車場なら月額で約17.5万円(5,840円×30台)の修繕費を見込む計算になり、この負担は居住者全体(駐車場未利用者も含む)で支えるのが一般的です。

つまり、機械式駐車場があるだけで年間数百万円単位の修繕費積立が別途必要になるため、長期修繕計画策定時には基本の積立金に上乗せして資金計画を組む必要があるわけです。国交省ガイドラインでも「機械式駐車場のある場合の加算額」を算出して積立金計画に反映するよう明記されています。

加えて、ガイドラインは計画の定期見直しについても触れています。長期修繕計画は一度立てたら終わりではなく、不確定要素を含むためおおむね5年ごとに調査診断を行い、結果に基づき見直すことが必要だとされています。機械式駐車場の場合、メーカーや保守点検業者から装置の劣化状況や推奨される更新周期の情報を入手し、それを踏まえて計画を更新することが望ましいでしょう。国交省ガイドラインでも、保守点検業者等を通じてメーカーの知見を計画に反映させるよう提案されています。

このように、公的指針においても機械式駐車場の修繕計画は特別の配慮をもって策定・運用すべきことがエビデンスとして示されており、管理組合はそれに沿った対応が求められます。

修繕計画策定のポイントと実行プラン

管理組合が実際に機械式駐車場の修繕計画を立て、実行していく際の具体的なポイントを解説します。

以下のステップや選択肢を念頭に、中長期的な視野で計画を練り上げてください。

1. 現状設備の把握と長期スケジュール策定

まずはお使いの機械式駐車装置の種類・規模・設置年を把握し、主要部品の仕様やこれまでの修繕履歴を整理します。メーカーや点検業者から保全計画書や寿命診断の資料を取り寄せ、いつどの部品を交換すべきかの推奨プランを確認しましょう。

例えば「設置後5年目でチェーン・ワイヤー補修、10年目でモーター更新、20年目前後で装置全体の更新」等、長期スケジュール表を作成します。この際、建物全体の長期修繕計画との整合性も考慮します。一般にマンションは築12~15年程度で最初の大規模修繕を迎えますが、機械式駐車場の更新時期(おおよそ築20年前後)は2回目の大規模修繕と重なる可能性があります。そのため、建物と駐車場の工事時期が集中しないよう時期の調整を検討することも重要です。

計画策定時点で既に築年数が進んでいる場合、延命か更新かの判断も含めたシナリオを用意します。例えば「あと5年使って更新する」「思い切って撤去して平面化する」「一部減台して小規模装置に置き換える」など、複数の選択肢をシミュレーションし、それぞれ必要な費用と効果を比較検討します。特に撤去・平面化については、自治体の駐車場附置義務(駐車場を一定台数以上設ける条例)の確認が必要です。勝手に全台撤去はできない場合があるため、市区町村と協議した上で減台範囲を決めるなど慎重な計画が求められます。また撤去後のピット埋め戻しや地盤補強工事、平面駐車場への転換費用も見積もり、総合的に判断しましょう。

2. 費用試算と修繕積立金・駐車場料金の見直し

長期スケジュールに沿って、各段階で見込まれる修繕費用を試算します。ポイントは、高額になりがちな装置更新工事の費用です。前述の通り、1台あたり100~150万円程度が更新の目安ですので、例えば30台分なら3,000万~4,500万円といったまとまった金額になります。この費用を何年後に発生させるかによって、毎年積み立てるべき額が決まります。試算結果をもとに、現在の修繕積立金や駐車場使用料収入で十分賄えるかを評価しましょう。

不足が見込まれる場合、資金計画の見直しが不可欠です。方法としては、(a) 毎月の積立金を増額する、(b) 駐車場使用料を値上げする、(c) 不足分を対象期間内に一時金徴収(臨時の追加徴収)する、(d) 金融機関から借入れる――などが考えられます。中でも一般的なのは(a)と(c)で、もっとも多い対応は区分所有者から臨時一時金を集める方法です。

ただし一時金徴収には総会の決議が必要で、合意形成に時間がかかったり反対者への説得が課題となったりします。急な負担増は居住者の反発を招きやすいため、可能であれば日頃から積立金や使用料を段階的に引き上げておき、無理のない資金蓄積を図るのが望ましいでしょう。

国交省ガイドラインでも、将来の不足リスクを減らすため均等積立方式で早期から手厚く積み立てるメリットが強調されています。いずれにせよ、試算に基づき現行の積立金額が適正かを精査し、必要なら管理規約変更や総会決議を経て金額見直しを実施します。

3. 点検・保守履歴に基づく計画の精緻化

計画は机上の算段だけでは不十分です。実際の設備の劣化状況や故障履歴を踏まえ、計画を現実に即したものにアップデートする必要があります。日常の保守点検報告書や故障記録をよく確認し、例えば「チェーンの摩耗が想定より早い」「油圧シリンダーからの油漏れが発生」などの兆候があれば、関連部品の交換時期を前倒しする検討を行います。メーカー系の保守会社の場合、年次点検時に主要部位の診断結果や余寿命の目安を教えてくれることがあります。そうした点検・保守履歴を計画に反映させ、絵に描いた餅にならない実行性の高いスケジュールとしましょう。

特に築後年数が経ってきた段階では、専門家による劣化診断の活用も有効です。機械設備に詳しいコンサルタントに調査を依頼し、装置全体の健全度評価や主要コンポーネントの劣化具合を診断してもらいます。結果に応じて、「あと何年使えるのか」「どの部品がリスクか」を見極め、計画の修正や予防保全工事の実施判断に役立てます。国のガイドラインも、不確定要素への対応として5年ごとの計画見直しを推奨しており、定期的にプロの意見を取り入れることが長期的なコスト削減にも繋がります。

4. 改修・更新か撤去・平面化かの判断タイミング

機械式駐車場を維持するか撤去するか――岐路に立つタイミングについてもあらかじめ想定しておきましょう。一般的に築20~25年前後が一つの山場で、前述の通り機械本体の更新費用が巨額になる時期です。この時点で駐車場利用ニーズが十分あり、費用を投じても維持すべきか、あるいは利用台数が減り費用対効果が見合わないなら撤去・縮小に舵を切るか、管理組合で議論します。

判断材料としては以下の点があります。

利用状況の将来予測

現時点の駐車場空き台数はどれくらいか、今後車を手放す高齢世帯の増加などで更に利用率が下がりそうか。特に空きが目立つ場合は、装置更新より撤去平面化した方が合理的なケースもあります。

財政面

駐車場の更新費用を賄えるか。更新後、駐車場使用料から得られる収入で、更新にかかる費用(減価償却費)を十分に回収できる見込みがあるかが重要です。もし収入の改善が見込めない場合は、更新せずに撤去する選択肢も検討する必要があります。

技術面

装置の部品供給状況。メーカーが既に生産終了している古い型式だと、更新部品の入手が困難で全体更新以外に手がない場合もあります。

他設備との兼ね合い

エレベーターなど他の共用設備更新と時期が重なるか。全て同時期に更新では組合財政が逼迫するため、何を優先するか戦略を立てます。

居住者の資産価値意識

駐車場を無くすことでマンションの売却価値に影響が出るか。全戸分の駐車場がなくなると資産価値下落を懸念する意見もあります。一方で機械式の老朽化放置こそ資産価値にマイナスとの見方もあり、住民の意向を把握することが必要です。

これらを総合し、最適なタイミングでの決断を下します。例えば「次回(築25年)の大規模修繕時に機械式駐車場も更新する」や「15年目に減台改修して耐用延長し、30年目で全撤去する」といった大まかな方針を事前に共有しておけば、いざその時期に慌てず対応できます。もちろん情勢や技術の進歩で選択肢は変わるため、柔軟性も残しつつ、将来像を描いておくことが肝心です。

5. トラブル予防と合意形成の進め方

機械式駐車場の修繕や撤去は、居住者間の利害が対立しやすいテーマでもあります。車を使う人にとっては駐車場は生活必需ですが、使わない人にとっては負担ばかり大きく感じられるためです。この構図から生じるトラブルを防ぎ、スムーズに合意形成するためのポイントを押さえておきましょう。

早めの情報共有

将来の修繕費用見込みや積立状況、更新の必要性について、できるだけ早期から組合員に周知します。見通しが立たないまま直前に高額負担を求めれば反発は当然です。長期修繕計画書に機械式駐車場分の内訳を明記し、総会や回覧で説明するなど、透明性ある開示に努めます。

専門委員会の設置

機械式駐車場問題は専門性が高いため、希望者や有識者による駐車場委員会を設けるのも有効です。委員会が中心となって調査研究し、広報紙等で状況報告や提言を行えば、組合員の理解促進につながります。委員会には車利用者と非利用者双方からメンバーを募り、公平な議論の場とすることも大切です。

第三者の活用

必要に応じ、マンション管理士やコンサルタントなど第三者の専門家にファシリテーションを依頼します。客観的なデータに基づくアドバイスや、合意形成プロセスの支援を仰ぐことで、議論が感情的対立に陥るのを防ぐ効果が期待できます。

段階的な提案

いきなり極端な案(例えば「来年中に撤去」など)を出すのではなく、「まず利用状況調査→次に試験的減台→最終判断へ」というように段階を踏んだ計画を提案します。組合員が心の準備と納得をしやすいよう、時間をかけて意思決定していきます。

合意形成のドキュメント化

駐車場の修繕計画や撤去方針について、総会決議事項として正式に記録を残します。後から「聞いていない」「合意していない」という争いを避けるため、議事録や回覧板などで合意内容を文書化しておきましょう。

機械式駐車場の維持管理は、管理組合運営における最重要課題の一つと言えます。高額な費用を要するにもかかわらず組合員の関心が薄い場合もあるため、理事会は主体的に情報発信を行い、マンションの将来像を共有する努力が求められます。必ずいつか訪れる更新・撤去の判断に備え、早め早めの対策を講じておくことで、資金不足や内紛という最悪の事態を未然に防ぐことができるでしょう。

まとめ

以上のポイントを踏まえ、機械式駐車場の修繕計画を適切に立案・実行していけば、マンション全体の維持管理コストを安定化させ、居住者の安心・安全と資産価値を長期にわたって守ることが可能になります。管理組合として計画的かつ合意形成に配慮した対応を心がけ、将来の「想定外」をなくしていきましょう。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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