機械式駐車場で多いトラブルとは?原因と正しい対処手順を解説
更新日:2025年09月30日(火)
都市部で限られた土地を効率的に活用するため、多くのマンションや商業施設に導入されている機械式駐車場。しかし、その便利さの裏には、機械特有の故障や利用者の誤操作によるトラブルが潜んでいます。場合によっては人命に関わる重大事故に発展することもあり、利用者や管理者にとって大きなリスクとなり得ます。 本記事では、機械式駐車場で起こりやすいトラブルの実態とその原因、故障時の正しい対応方法、修理・交換の費用や期間、さらに予防策や保険対応までを幅広く解説します。安全で安心な駐車場運用を実現するために、ぜひ参考にしてください。
- 本記事のポイント
- 典型的なトラブル事例と故障原因がわかる。
- 故障時の正しい対処手順と修理費・工期の目安を学べる。
- 予防策や責任範囲・保険対応の考え方を理解できる。
機械式駐車場で多いトラブルとは?
機械式立体駐車場では、機械の故障や利用者の操作ミスなどによるトラブルが発生することがあります。
複雑な機械装置と狭いスペースで車両を動かす仕組み上、不適切な使い方や機器の不具合が重なると故障や事故につながりやすくなります。特にマンションの駐車場では、利用者や管理者による操作ミスや設備の経年劣化に起因するトラブルが多く見られます。
典型的な例としては、車両サイズオーバーによる装置との接触、センサーによる非常停止、パレット番号の誤操作による車両取り出し不能、人や物の挟まれ事故、停電や豪雨による装置停止・浸水などがあります。
こうしたトラブルは、利用者にとって大きなストレスや損害の原因となるだけでなく、場合によっては人命に関わる重大事故に発展することもあります。
トラブルの主な原因と背景
機械式駐車場のトラブルの原因は、大きく「人的ミス」と「設備要因」の二つに分けられます。背景には、十分な保守管理が行われていなかったり、装置が老朽化していることもあります。
多くの事故は利用者の不注意や誤操作によって発生します。一方で、経年劣化した装置を適切に点検・整備していないことも、故障頻発の一因です。平置き駐車場に比べ維持費が高いため、十分なメンテナンスが行き届かず、使用中止や撤去に至るケースも見られます。
例えば、車両を奥まで入れずに停止した結果センサーが作動し、装置が緊急停止して入出庫ができなくなることがあります。車両重量オーバーで非常停止がかかり、復旧まで数時間を要した例も報告されています。
このように、利用ルールの軽視がトラブルを招く一方で、老朽化した部品の劣化や保守点検の不足も故障の原因です。古い装置を更新せずに使用し続けると不具合が増えるのは避けられません。適切な保守契約に基づく点検整備を行うことが、故障頻発や高額修理、長期運用停止といったリスクを防ぎ、利用者の信頼を維持するうえで欠かせません。
故障時の正しい対処手順
機械式駐車場が故障した際は、まず慌てずに安全を確保し、適切な手順で関係者に連絡・対応することが重要です。自己判断で装置を操作したり車を動かそうとすると、二次被害や事故につながる恐れがあります。国土交通省のガイドラインでも、事故時には緊急連絡体制の整備とマニュアルに沿った行動が推奨されています。
以下は一般的な故障発生時の対処ステップです。
非常停止と安全確保
異常を感じたら、まず操作を中断し非常停止ボタンを押すなどして装置を安全な状態に停止させます。周囲に人がいれば避難誘導を行い、閉じ込められた人がいないかを確認します。
状況確認
故障箇所やエラー表示を確認しますが、自力で車両を動かそうとしないでください。専門知識がない状態での操作は非常に危険です。
管理会社・保守会社へ連絡
設置者(施設管理者)や契約しているメンテナンス会社の緊急連絡先に直ちに連絡し、故障状況を正確に伝えます。夜間や休日でも対応可能な24時間受付の連絡先が場内に掲示されていれば活用しましょう。
指示に従い待機
管理者や保守担当者から指示がある場合は、それに従って安全な場所で待機します。他の利用者にも故障中であることを周知し、無理に操作しないよう注意します。
記録と報告
可能であれば、故障発生時の状況(日時、エラー表示、音や挙動など)を記録しておきます。後日、原因究明や保険請求の際に必要となるため、管理者と情報を共有し、正式に報告書を作成します。
これらの手順に沿って対応することで、二次被害を防ぎ、速やかな復旧につなげることができます。最も重要なのは人命を最優先にすることです。自分で何とかしようとせず、専門家に任せる姿勢を徹底し、落ち着いて行動しましょう。
修理・交換の費用相場と期間
機械式駐車場の修理費用や復旧期間は、故障の規模や装置の種類によって大きく異なります。
小規模な不具合であれば、数万円程度で数時間以内に修理できることもあります。しかし、モーターやチェーン、制御盤など主要部品の交換や装置全体の更新となると、費用は高額化し、復旧までに数日~数ヶ月を要することもあります。古い装置ほど修理費用や工期が長くなる傾向があります。
国土交通省の「マンション修繕積立金ガイドライン」では、機械式駐車場の補修をおおむね5年ごと、装置更新を18~22年目を目安として示しています。マンション管理組合では、将来の修理や更新に備え、積立金に上乗せすることが推奨されています。
一般的な修理内容の例は以下の通りです。
軽微な調整・センサー調整:数万円~十数万円で対応可能、短時間で復旧可能
主要部品の交換(ワイヤーロープ・モーターなど):一件あたり数十万円規模、工期は数日~数週間
装置全体の更新:1区画あたり数十万~百数十万円規模、装置全体では数千万円規模に達する場合もあり、工事計画策定から完了まで数ヶ月を要することがある
いずれの場合も、早期に専門業者へ相談し、故障状況に応じた見積もりや工期を確認することが重要です。
利用者・管理者ができる予防策
機械式駐車場のトラブルを未然に防ぐには、利用者と管理者がそれぞれの立場で適切な対策を講じることが重要です。利用者が安全ルールを順守し、管理者が定期点検や設備管理を徹底することで、多くの故障や事故リスクを事前に低減できます。立体駐車場工業会や国交省のガイドラインでも、利用方法の周知と定期的なプロによる点検が推奨されており、装置や使用頻度に応じて1~3か月に1度の点検整備が求められています。
以下に、利用者と管理者の立場ごとに実践すべき主な予防策をまとめます。
利用者側の予防策
サイズ・重量制限の厳守
愛車の車高・車幅・重量が駐車設備の制限内か確認します。アンテナやルーフキャリアも含め、制限を超える場合は入庫を避けます。
正しい入出庫手順の徹底
操作盤の指示に従い、車両をパレット奥まで前進させて駐車します。ドアミラーの格納やサイドブレーキの施錠も忘れないよう注意しましょう。
非常停止ボタン位置の確認
操作盤付近にある非常停止ボタンの位置を事前に把握し、異常時には迷わず押せるように習慣づけます。
異常時の早期連絡
異音や振動など普段と違う様子に気付いたら、無理に入出庫せず管理担当者に報告します。小さな異変でも放置すると大きな故障につながる可能性があります。
管理者側の予防策
定期点検と保守契約の徹底
専門業者による定期点検を計画的に実施し、消耗部品の交換や調整を怠らないようにします。保守契約内容も確認し、必要に応じて更新・強化します。
利用ルールの周知
駐車場の使用方法や注意事項を掲示や配布物で周知し、車両サイズ制限・操作手順・安全装置の位置などを利用者に理解させます。
緊急対応の備え
故障や事故時の連絡先(保守会社の24時間受付窓口など)を駐車場内に掲示します。緊急対応マニュアルも整備し、警備員や管理スタッフと共有しておきます。
保険への加入検討
機械式駐車場設備の損害に備える機械保険や、第三者への賠償責任をカバーする施設賠償責任保険への加入を検討します。水害リスクがある場合は、水災補償特約も確認します。
老朽部品の計画更新
使用年数に応じて主要部品を計画的に更新します。メーカー推奨の交換時期を参考に、制御盤やワイヤー、チェーンなどを故障前に予防交換し、大規模修繕計画に組み込みます。
これらの対策を講じることで、機械式駐車場の安全性を高め、利用者にとって安心・快適な駐車環境を維持できます。適切に使用し、適切に手を入れることで、設備の便利さを十分に享受できるのです。
トラブル時の責任と保険の考え方
機械式駐車場でトラブルが発生した場合、その原因によって責任の所在と保険の適用範囲が変わります。
設備側の不具合であれば管理者(オーナー・管理組合)に管理責任が生じ、利用者の過失によるものなら利用者自身が損害賠償責任を負うのが一般的です。こうした損害は各種保険でカバーできる可能性がありますが、契約内容により補償範囲が異なるため事前の確認が必要です。
機械式駐車場での事故や損害については、管理組合加入の保険または個人加入の保険でカバーできる場合があります。共用部分の故障による賠償は管理組合側の保険(火災保険の施設賠償責任補償など)で対応できるケースが多く、一方で個人の車両被害は自動車保険や個人賠償責任保険で備えるのが一般的です。
例えば、利用者の過失(サイズオーバー車両を無理に入庫し設備を壊した等)によって生じた修理費用や他人の車への損害は、利用者自身の個人賠償責任保険で補償されるケースがあります。逆に装置の老朽化や整備不良が原因で利用者の車が損傷した場合、管理組合が加入するマンション総合保険の設備損害補償や施設賠償特約が適用され、被害車両については各オーナーの車両保険(水災特約など含む)でカバーするといった形になります。
トラブル発生時には、まず原因の切り分けと関係者への報告を迅速に行い、必要に応じて警察への届出も検討します。その上で管理者と被害者・加害者(該当する方)双方が保険会社に連絡を入れ、事故の経緯や損害状況を共有してスムーズな保険金請求手続きを進めます。日頃から契約中の保険内容を把握しておき、機械式駐車場に関連する補償特約の有無を確認しておくことも重要です。また、万一に備えて防犯カメラ映像や操作履歴を保存できる体制を整え、事故時の客観的証拠を確保しておくと責任の明確化と保険対応が円滑になるでしょう。
まとめ
機械式駐車場は土地を有効活用できる反面、機械ならではのトラブルやリスクを抱えています。利用者のちょっとした気配り(ルール順守や異常時連絡)と管理者の継続的な設備管理(定期点検や老朽対策)によって、故障や事故の多くは防ぐことが可能です。万が一トラブルが発生した際も、慌てず正しい対処を行い、適切な保険対応を取れば被害を最小限に抑えられます。本記事で解説した機械式駐車場のトラブル事例や原因・対策を踏まえて、安全で円滑な駐車場運用にぜひお役立てください。
機械式駐車場等修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- 機械式駐車場の支援実績は多数あり、更新、平面化、部品交換、塗装、自走式駐車場の防水等に対応。約300戸 多棟型マンションでの実績もあります。社内にはゼネコン、デベロッパー、修繕コンサルティング会社、修繕会社、管理会社出身の建築士、施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
- 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。
電話で無料相談
24時間対応通話料・相談料 無料
Webから無料相談
専門家に相談する
本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
.png&w=640&q=75)
遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
24時間対応通話料・相談料 無料