機械式駐車場のサイズ変更と大型車への対応
更新日:2026年01月29日(木)
近年、SUVやミニバンの普及で車両サイズが大型化し、マンションの機械式駐車場に収まらない車が増えています。従来設備をこのまま維持すべきか、サイズ変更などの対策を講じるべきか。 本記事では、機械式駐車場のパレット拡張や高さ変更による対応策について解説します。
- 本記事のポイント
- SUVやミニバン増加による駐車場ミスマッチと、パレット幅・高さ変更の具体的対応策を理解できる。
- サイズ変更工事の留意点や法規・総会決議の要件、費用対効果の考え方がわかる。
- 部分改修・段数変更・平面化・転用など多様な選択肢を比較し、最適な対応策を検討する視点が身につく。
大型化する車両と機械式駐車場のミスマッチ
日本の機械式駐車場が想定する平均的な車両寸法は長さ約5.0m、幅1.85m、高さ1.55m程度、車重2t以下です。ところが近年はSUVやミニバンなど幅1.9m近い大型車が増え、既存の機械式駐車場制限(幅1.85m以下)を超えるケースが目立ってきました。
その結果、「自宅の機械式駐車場に車が入らない」問題に直面する居住者も増加しています。実際、都市部では機械式駐車場に収まらないため近隣の月極駐車場を借りざるを得ない住民もおり、機械式駐車場の空き区画増加や収入減少につながっています。
サイズ変更は可能?パレット拡張・高さ変更の可否
結論から言えば、機械式駐車場のサイズ変更は「可能な場合もある」が慎重な検討が必要です。具体的な方法としては、以下のような選択肢が考えられます。
パレットの拡幅
既存装置に対応したパレットを新規製作し交換することで、車室の有効幅を広げられるケースがあります(一部メーカーではパレット単体交換が難しい場合もあります)。
車高対応の変更
機械全体をハイルーフ対応タイプに更新することで、収容高さを引き上げる方法です。例えば地下ピットはそのまま、新型装置へ入れ替えるだけで地下部の収容車高を1550mmから1700mm程度に拡大できた事例があります。上段も2100mmクラスまで確保できるタイプへの更新により、ミニバンやSUVが入庫可能になります。
段数構成の変更
既存の3段式を2段式に変えるなど、段数を減らす代わりに各段の高さや幅に余裕を持たせる改修も一手です。実際あるマンションでは、3段ピット式を2段に変更して各段の高さを上げた結果、従来入らなかった車高・車幅の車も駐車できるようになりました。この対応により総台数は減るものの維持費も抑制され、外部駐車場を借りていた住民が敷地内駐車に戻る効果も得られています。
もっとも、こうしたサイズ変更の可否は駐車場装置の種類・構造や設置環境次第です。古い装置では部品供給停止の問題もあり、メーカーによっては部分改修を受け付けない場合もあります。また、物理的なピット寸法や天井高の制約内でしかサイズ拡張はできません。まずは専門業者による調査とプラン提案を受け、技術的に実現可能かを見極めることが重要です。
機械式駐車場のサイズ変更工事における留意点
機械式駐車場のサイズ変更工事を検討する際には、構造面・法規面の確認に加え、居住者間の合意形成に十分配慮することが重要です。
まず構造上の注意点として、収容寸法を拡大することで車両重量が増加する可能性があり、駐車装置本体や建物ピットの構造がその荷重に耐えられるかを確認する必要があります。必要に応じて補強工事が発生することもあるため、装置メーカーだけでなく建築の専門家による検討が欠かせません。また、高さ方向の変更を伴う場合には、ピット上部の梁や天井との干渉がないか、十分なクリアランスが確保できるかについても慎重な確認が必要です。
次に法規・手続き上の留意点です。機械式駐車場の改修内容によっては、建築基準法や自治体条例に基づき、事前に行政との協議や確認申請が求められる場合があります。特に段数の変更や収容台数の増減を伴う工事では、完了検査の再実施や検査済証の取り扱いが問題となることもあるため、早い段階での確認が望まれます。
マンション管理組合としての手続きも重要です。機械式駐車場は共用部分に該当するため、その改修や構造変更は区分所有法上の「共用部分の変更」として総会決議が必要となります。工事内容や利用者への影響の程度によっては、共用部分の形状や効用に著しい変更を伴うものと判断され、特別決議が求められるケースも少なくありません。そのため、決議要件については管理規約や工事内容を踏まえ、専門家の助言を得ながら慎重に整理することが重要です。
最後に合意形成と利用者調整についてです。駐車場利用者と非利用者の双方に配慮し、利便性向上といったメリットだけでなく、費用負担や台数減少などのデメリットについても丁寧に説明する必要があります。工事期間中の仮駐車場の確保や、サイズ変更後の利用区画の再配分など、具体的な対応策を示すことで理解を得やすくなります。合意形成に不安がある場合は、専門コンサルタントの支援を活用することも有効な選択肢といえるでしょう。
費用対効果と部分改修の検討
機械式駐車場のサイズ変更は多額の費用を伴うため、費用最適化と長期的メリット重視の視点で検討することが肝要です。以下のポイントを押さえましょう。
需要に見合った規模か見直す
現在の利用台数や今後の駐車ニーズを調査し、過剰な設備となっていないか評価します。空き区画が多い場合、全ての車室をサイズアップする必要はなく、一部のみ改修する選択も有効です。先述のケースでは空きがちな3段式を2段へ減らし、必要台数に合わせて大型車対応にシフトすることで効率化しました。
部分改修でコスト圧縮
装置全交換ではなく部分的な改修で目的を達成できないか検討します。例えば「下段だけハイルーフ対応機器に交換する」「必要な列のみパレット拡張する」「使用頻度の低い区画を撤去し平面化する」といったアプローチです。機械式駐車場の更新費用は一括実施で1台あたり150~200万円が目安ですが、部分改修により総費用を大幅に抑えられる可能性があります。
長期的メリットを重視
サイズ変更により居住者の利便性向上や収益改善が見込める点に注目します。収容可能な車種が増えて駐車場契約率が上がれば管理組合の駐車場収入が増え、修繕積立金に充当できるメリットがあります。また新型装置への更新に伴い安全機能が強化され、開口部センサーや非常停止装置など最新基準への適合によって安心感が高まる利点も得られます。費用対効果を評価する際は、こうした定性的メリットも考慮しましょう。
以上の観点から、管理組合として複数の改修シナリオを比較検討し、「投資額に見合う効果が得られるか」を判断することが大切です。必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求め、安易な全面更新に陥らずスマートな計画策定を目指しましょう。
サイズ変更工事の費用相場と補助金制度
サイズ変更やリニューアル工事の費用は工事範囲や方式によって幅があります。一般に、既存ピットを活かして機械装置のみ更新する場合、解体撤去と新設を合わせた総工費は1台あたり約150~200万円が目安とされています。例えば30台規模であれば総額で数千万円規模(約4,500~5,700万円)となる計算です。
一方、段数削減など部分的な改修で済む場合はこの限りではなく、1台あたり数十万円に抑えたケースもあります。パレットのみの交換なら1枚あたり数十万円(概ね数十万円~100万円未満)の費用で済む例もあります。
大規模な更新工事では設備メーカーに一括発注せず、解体と新設を分離発注して中間マージンを削減する工夫も有効です。また、自治体の補助金制度も確認しましょう。残念ながら機械式駐車場のサイズ変更そのものに対する公的補助はほとんど存在しないのが現状です。ただし例外的に、老朽化機械式駐車場の撤去(平面化)やバリアフリー化を対象にした助成制度を設けている自治体も一部あります。また、EV充電設備を導入する場合には国や地方自治体の補助対象となることがあります。例えば東京都では機械式駐車場のパレット大型化・高耐荷重化とEV充電器設置を組み合わせ、補助金交付を受けた事例も報告されています。こうした制度は地域や時期によって変わるため、最新情報を行政窓口や専門業者に確認すると良いでしょう。
その他の選択肢:平面化や転用も含めた比較検討
機械式駐車場の改善策はサイズ変更だけではありません。状況によっては、他の選択肢も視野に入れて検討しましょう。
サイズ統一
機械式駐車場内の車室サイズを統一する方法です。例えば一部の区画だけハイルーフ対応だったものを全区画ハイルーフ対応に揃える場合、段数削減や機械交換が必要になります。逆に大型車需要がほぼ無い場合は、小型車専用として仕様統一し維持コストを抑える判断もあり得ます。いずれにせよ需要に合ったサイズ統一は無駄を省く効果があります。
一部平面化
機械式設備の一部を撤去し、平置き駐車場化する選択です。例えば装置の半数を残し、残り半数のスペースを地上駐車場(背の高い車も駐められる)にするケースが考えられます。平面化すれば維持費・修繕費の負担を大幅に削減できます。ただしその分、駐車台数は減少します。実際、多くのマンションで機械式駐車場の平面化工事が行われており、珍しい選択肢ではなくなりつつあります。
転用・複合利用
駐車需要が著しく減った場合、思い切って機械式駐車場スペースを別用途に転用することも検討されます。例えば撤去したピット部分をトランクルームや自転車置場、防災備蓄倉庫などに改装するアイデアです。先述の事例では、段数を減らした機械式駐車場の余剰高さスペースをタイヤ収納用トランクスペースとして貸し出す工夫も行われています。このように遊休化した空間を有効活用できれば、新たな収入源や居住者サービスの向上につながるでしょう。
各選択肢にはメリット・デメリットがあるため、機械式駐車場の利用実態や管理組合の財政状況を踏まえ、総合的に比較検討することが重要です。特に平面化や転用は共用部分の変更となるため、サイズ変更以上に慎重な合意形成と法的手続き確認が求められます。
まとめ
車両の大型化という時代の変化に対し、マンション管理組合として機械式駐車場をどう適応させるかは大きな課題です。機械式駐車場のサイズ変更(パレット拡張・高さ変更等)は、費用対効果や長期的メリットを見極めながら検討すべき修繕の一つと言えます。サイズアップによって居住者の利便性と駐車場収益が向上すれば、結果的にマンション全体の価値維持にも寄与するでしょう。一方で改修には高額な費用やハードルも伴うため、他の選択肢(平面化・転用等)も含めた柔軟な発想で最適解を探ることが大切です。
機械式駐車場の将来的な在り方は各マンションで異なります。まずは現状の課題を共有し、信頼できる専門家とともに複数の選択肢を検討していくことが大切です。住民全体の合意を意識しながら、無理のない解決策を模索していく姿勢が求められます。
機械式駐車場等修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- 機械式駐車場の支援実績は多数あり、更新、平面化、部品交換、塗装、自走式駐車場の防水等に対応。約300戸 多棟型マンションでの実績もあります。社内にはゼネコン、デベロッパー、修繕コンサルティング会社、修繕会社、管理会社出身の建築士、施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
- 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。
電話で無料相談
24時間対応通話料・相談料 無料
Webから無料相談
専門家に相談する
本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
.png&w=640&q=75)
遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
24時間対応通話料・相談料 無料






