ディー・エヌ・エー(DeNA)グループ 一級建築士事務所

スマート修繕
0120-409-914

24時間対応通話料・相談料 無料

高速エレベーターのリニューアル方法と価格を下げるためのポイント

更新日:2025年05月31日(土)

高速エレベーターのリニューアルは、高層ビルやタワーマンションにおいて避けて通れない重要な投資です。一般的なエレベーターと比較して、高速エレベーターのリニューアルには技術的な複雑さから、工事費用は数千万円から億単位に及ぶケースも珍しくありません。しかし、適切な知識と戦略的なアプローチにより、大幅なコスト削減が可能です。 本記事では、高速エレベーターの特徴から具体的なリニューアル方法、そして効果的な価格抑制テクニックまで、マンション管理組合や建物所有者が知るべき重要な情報を解説します。

電話で無料相談

0120-409-914

24時間対応通話料・相談料 無料

Webから無料相談

専門家相談する

XfacebookLINEはてなブックマークメール送信

高速エレベーターとは?

高速エレベーターは、一般的なエレベーターよりも高い昇降速度を持つ特殊な昇降設備です。業界標準では、毎分120メートル以上の昇降速度を持つエレベーターを高速エレベーターと定義しています。さらに分速500メートル超のものは超高速機として分類されており、これらは主に超高層ビルや大型商業施設で運用されています。

技術的観点から見ると、高速エレベーターは通常のエレベーターとは大きく異なる構造を持っています。エレベーター速度が分速210mを超えると、補償システムで追加のロープが必要になり、システムにはテンションギアの装備が義務付けられています。また、高速での運行に伴う空気力学的問題や振動対策のため、空力ケーシングの設置や特殊な減速システムが必要となります。国内では横浜ランドマークタワーの三菱電機製エレベーターが分速750mで、現在も国内最速の記録を保持しています。 

高速エレベーターのリニューアル方法

高速エレベーターのリニューアルには、設備の状況や予算に応じて複数のアプローチが存在します。これから3つの主要な方法について詳しく説明します。

全撤去新設リニューアル

全撤去新設リニューアルは、既存のエレベーター設備を完全に撤去し、新しいシステムを一から構築する方法です。この手法は最も包括的な解決策であり、旧型設備の制約を完全に排除できる点が最大の利点です。技術的には、昇降路内のすべての機械設備、制御システム、安全装置を最新の基準に適合するものに交換します。特に高速エレベーターでは、建築基準法施行令第129条の10に定められた安全装置の要件を満たす必要があり、垂直方向の加速度9.8m/s²、水平方向5.0m/s²を超えない制動能力を持つシステムの導入が義務付けられています。ただし、建築確認申請が必要となり、工事期間は2ヶ月以上と長期にわたるため、利用者への影響が大きくなる点がデメリットです。

準撤去リニューアル

準撤去リニューアルは、建物各階に設置されている三方枠や敷居などの構造部分を既存利用し、巻上機、制御盤、ロープなどの主要機械部分を新しいものに交換する手法です。この方法は全撤去と比較してコストと工期の両面で優位性があります。

高速エレベーターにおいては、既存の昇降路構造を活用しながら、最新の高出力永久磁石同期モーター(PMSM)や、複数のキャリパー式電磁ブレーキシステムを導入することが可能です。また、ダブル・セフティ方式の非常止め装置を上下に配置することで、一般的なエレベーターの約2倍の制動力を確保できます。工事期間は最低でも40日程度は必要です。

制御リニューアル

制御リニューアルは、既存の機械構造を最大限活用し、制御盤や操作盤などの制御系統のみを最新のものに交換する方法です。この手法は最も経済的であり、工期も7~10日間と短期間で完了できます。

しかし、高速エレベーターの場合、制御系統だけでなく安全装置や駆動系統の更新も同時に必要となることが多く、単純な制御リニューアルでは対応しきれない技術的課題があります。特に120m/min以上の高速エレベーターでは、対応可能なメーカーが限られているため、慎重な検討が必要です。 

高速エレベーターのリニューアル工事価格

高速エレベーターのリニューアル工事価格は、一般的なエレベーターと比較して大幅に高額となります。昇降速度120m/min以上の高速エレベーターでは、既存メーカーでのリニューアル工事において1基あたり数千万円から億単位の費用が発生するケースも珍しくありません。具体的な価格帯を工事方法別に見ると、全撤去新設リニューアルでは1基あたり3,500万円~5,000万円が一般的な相場とされていますが、高速エレベーターの場合は8,000万円~1億円を超える予算が必要となります。 

価格が高額となる理由は、高速運行に必要な特殊な安全装置、振動制御システム、空気力学的対策設備などの追加が必要なためです。また、120m/min以上の超高速エレベーターでは、対応可能なメーカーが限定されるため、競争原理が働きにくく、価格が高止まりする傾向があります。 

高速エレベーターを改修するときの注意点

高速エレベーターの改修工事では、一般的なエレベーターにはない特有の注意点があります。以下の3点は、改修計画を進めるうえで特に重要なポイントです。

注意1:技術的適合性の確認

高速エレベーターを改修する際は、既存の昇降路や建築構造が新たな高速仕様に対応できるかどうか、技術的な検証が不可欠です。特に確認が必要なのは、昇降路の深さと補償装置(バランス装置)の設置可否です。

国土交通省告示第283号(建築基準法に基づく)では、高速エレベーターに対して、十分な緩衝ストロークの確保や特殊な減速装置の設置が義務付けられています。しかし、既存の建築構造によってはこれらに対応できない場合があります。

また、高速運転により昇降路内に発生する空気圧の影響を抑制するため、昇降路の上下・中間部に一方向のエアエスケープ開口部を設ける必要が生じるケースもあります。これらの改修は大規模かつ高コストになる可能性があるため、事前の詳細な構造調査と技術検討が重要です。

注意2:部品供給体制の確認

高速エレベーターには、一般的な機種とは異なる専用部品が多数使われており、その供給体制の確認は極めて重要です。

通常、昇降機の保守部品は「生産終了から15年間」の供給が標準とされていますが、高速機用の特殊部品についてはこれより短命である場合や、特定メーカーによる供給が独占されていることがあります。

万一、部品供給が打ち切られると、修理が困難になり、最悪の場合は長期停止や使用中止に至るリスクもあります。したがって、改修後20年程度を見据えた部品供給の可否を、事前に確認することが推奨されます。

注意3:法規制への適合確認

高速エレベーターには、通常よりも厳格な安全基準と法規制が適用されます。

建築基準法施行令第129条の10第2項では、制動装置に関して、「かごに生じる加速度が垂直方向で9.8m/s²以下、水平方向で5.0m/s²以下でなければならない」と定められており、安全な停止が可能な構造が求められます。

また、「昇降機性能評価業務方法書」に基づき、実機試験(性能評価試験)の実施が求められる場合があり、その費用も改修工事費に含める必要があります。

さらに、既存設備のリニューアルに際しては、現行法への完全適合が難しいケースも少なくありません。そのため、改修に着手する前に、昇降機に精通した専門家による法的適合性の確認を行うことが不可欠です。

高速エレベーターの改修工事価格を下げるポイント

高速エレベーターのリニューアルには多額の費用がかかることがありますが、いくつかの工夫によってコストを効果的に削減することが可能です。

高速エレベーターは高度な技術と特殊な部品を要するため、原則として既存メーカーが中心となって対応してきました。ただし近年では、技術的な知見と施工実績を持つ一部の専門業者に限り、既存メーカー以外でも対応可能なケースが出てきています。

そのため、相見積もりを取ることは可能ですが、選択肢は非常に限定的で、実質的には既存メーカーと一部の業者との比較にとどまることが多いのが現状です。

こうした専門業者は、制御装置や安全装置の更新において、柔軟かつコスト競争力のある提案が可能です。ただし、すべての業者が対応できるわけではないため、業者選定には慎重な判断が求められます。

また、改修方法の選択も費用に大きく影響します。全撤去新設リニューアルは技術的に最も優れた解決策ですが、制御リニューアルや準撤去リニューアルでも、適切な設計により高速エレベーターの要求性能を満たすことが可能です。特にコストパフォーマンスに優れる制御リニューアルを基本として、必要な部分のみ追加改修を行う段階的アプローチが効果的です。

補助金や助成制度の活用も見逃せません。国や自治体では、エレベーターの安全性向上や省エネルギー化を目的とした支援制度を設けている場合があり、これらを適切に活用することで実質的な負担を大幅に軽減できます。申請条件や期限を事前に確認し、工事計画に組み込むことが重要です。

工期の調整による費用削減も可能です。工事を短期間で完了させる場合は、人員や資材の集中投入によって追加費用が発生する可能性があります。一方で、余裕のある工期を確保することで、コストを抑えられることがあります。また、エレベーターが複数台ある建物では、順次改修を行う方式を採用することで、建物利用者への影響を最小限に抑えながら、工事費用の最適化が可能です。 

まとめ:エレベーター修繕は専門家に相談

高速エレベーターのリニューアルにおいて、見積もりの詳細な再確認は費用削減の最も重要なポイントです。高速エレベーターの工事では「制御盤交換」と表現されていても、実際には関連部品(センサー類や配線、操作盤など)の交換範囲が業者ごとに大きく異なる場合があります。

契約前には、どの部品や工事がどこまで含まれているかを明確にし、見積書の備考欄に小さく記載された除外項目についても必ず確認することが必要です。後から「これは見積対象外だった」として追加費用を請求される事態を避けるため、契約範囲の詳細な定義が不可欠です。

また、高速エレベーターでは法令準拠のための追加工事が発生する可能性が高いため、関連する建築基準法令についての十分な知識を持つ専門家との協力が重要です。適切な仕様確定と進捗管理の徹底により、予想外のコスト増加を防ぐことができます。

最終的に、高速エレベーターのリニューアルは大きな投資ですが、適切な知識と戦略的なアプローチにより、安全性と機能性を確保しながらコストを最適化することが可能です。専門家に相談し、工事方法の慎重な選択、補助金の活用、そして詳細な契約条件の確認を通じて、建物の価値向上と利用者満足度の向上を実現しましょう。

記事をシェア

XfacebookLINEはてなブックマーク

エレベーター等修繕の支援サービス「スマート修繕」

  • 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
  • エレベータのリニューアル工事の支援実績は多数(過去1年で数百基、2025年2月現在)。特殊品である高速、油圧、リニア、ルームレスの実績もあり、社内にはエレベーター会社、ゼネコン、修繕会社など出身の施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
  • 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。

電話で無料相談

0120-409-914

24時間対応通話料・相談料 無料

Webから無料相談

専門家相談する

本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

坂本 高信

坂本 高信

独立系最大手のエレベーター会社にて、営業現場および管理職として18年間従事。リニューアル、保守、修繕といった複数の部署で実務経験を積み、営業部長などの管理職も歴任。多様な案件を通じて、エレベーターの運用と維持に関する専門知識を培う。その豊富な現場経験を活かし、エレベーターリニューアルに関する実用的かつ現実的な視点から記事を監修。

スマート修繕なら

適正価格の工事を実現

0120-409-914

24時間対応通話料・相談料 無料

telWebで無料相談する
tel電話で無料相談する(24時間対応)

※携帯・スマートフォンからも通話料無料