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マンション大規模修繕におけるベランダ床修繕ガイド

更新日:2025年10月31日(金)

分譲マンションの大規模修繕工事では、各住戸に付属するベランダ(バルコニー)の床部分も工事対象となります。しかし、ベランダは日常的に各居住者が使う空間でありながら法的には共用部分にあたるため、修繕の扱いや費用負担を巡って疑問を持つ初心者理事も少なくありません。 本記事では、区分所有法上の共用部分・専有部分の整理、ベランダ床の機能と目的、修繕費用の負担(原則と例外)、工事期間中の注意点(立ち入り制限・プライバシー・防犯)、ウッドデッキや私物撤去でのトラブル回避策、そして長期修繕計画との関係について解説します。

本記事のポイント
  • ベランダ床が「専用使用できる共用部分」とされる法的区分と修繕費負担の原則・例外を理解できる。
  • 防水層の役割や工事期間中の立ち入り制限・防犯・プライバシー対策のポイントがわかる。
  • ウッドデッキ撤去や私物管理など、居住者トラブルを防ぐ実務対応と長期修繕計画への反映方法を学べる。

専有部分か共用部分か?~区分所有法と管理規約による区分~

マンションのベランダ(バルコニー)は一見専有スペースに思えますが、法律上・規約上は共用部分に分類されます。

区分所有法では、各住戸の内部が専有部分とされ、それ以外の建物部分はすべて共用部分になると定義されています。多くのマンションでは管理規約でバルコニーを「専用使用部分」と位置付け、特定の住戸だけが排他的に使用できる共用部分と定めています。つまり、ベランダ床は共用部分(専用使用部分)であり、各住戸の所有者が日常的に独占利用できるものの、構造上マンション全体に関わる部分として扱われるのです。

ベランダが共用部分とされる主な理由は、非常時の避難経路など建物全体の安全・機能に関わるからです。例えば隣戸との境界にある隔て板(蹴破り戸)や下階に降りる避難ハッチは災害時の逃げ道となるため、各住戸が勝手にベランダを改造・占有すると避難の妨げになります。

また、ベランダの形状・外観は建物全体の美観や構造に影響するため、個々の判断で変更されると統一性が損なわれ資産価値にも響きかねません。そのため管理規約や使用細則でベランダ利用には制限が課されており、勝手な改造・造作は認められないのが原則です。

各住戸の居住者以外が日常的に立ち入ることはありませんが、あくまで共用部分として管理組合の管理下に置かれる点に注意が必要です。

ベランダ床の機能と目的:防水・安全確保の役割

ベランダ床には、建物の耐久性と居住者の安全性を守るための重要な防水層や仕上げ材が施工されています。ベランダは外壁に面し雨風にさらされるため、床面には雨水の浸入を防ぐ防水シートや防水塗装が施されています。この防水層が劣化すると下階への雨漏りや鉄筋コンクリート部の腐食につながる恐れがあるため、定期的な補修が不可欠です。

また、ベランダ床材には防滑性(滑り止め機能)が求められます。例えば長尺シートと呼ばれる塩化ビニル系シート仕上げは、水に濡れても滑りにくく耐久性・耐候性に優れるため、多くのマンションの共用廊下やバルコニー床に採用されています。防滑性能は雨天時の転倒防止や、安全な避難経路の確保に役立ちます。さらに長尺シートには防音性もあり、歩行音の軽減による居住環境の向上という利点もあります。

このように、ベランダ床は防水と安全確保の観点からマンション全体の機能維持に重要な役割を果たしているのです。

修繕費用の負担 – 原則と例外

ベランダ床の修繕費用については、原則として管理組合(全体)が負担します。共用部分の維持管理は管理組合の責任で行われ、修理費用も組合が積み立てた修繕積立金等から支出するのが基本です。とくに防水層の補修・更新など建物全体の保全に関わる計画修繕工事は、管理組合が責任と費用負担をもって実施すべきものと標準管理規約コメントにも明記されています。実際、大規模修繕工事で行われるベランダ床防水の再施工やひび割れ補修などは、各戸ではなく組合全体の工事として扱われます。

しかし例外的なケースも存在します。管理規約上、ベランダ等の「通常の使用に伴う保存行為」(日常清掃や窓ガラスが割れた際の交換等)は専用使用権者(区分所有者)の責任と負担で行うと定められており、またベランダの劣化が本来の修繕周期より極端に早く、他の住戸と比べて顕著な場合には、その原因が特別な事情によらない限り当該住戸の「通常の使用によるもの」とみなして居住者負担で補修させることもあります。

例えば、築4年で一住戸だけベランダ側の網入りガラスに自然ひびが入った事例では、「通常の使用範囲内の損傷」と判断され、その住戸の区分所有者負担でガラス交換を行うべきだとされています。

要するに、経年劣化に対する計画的な大規模修繕は組合負担、居住者の過失・故意や通常以上の使用による破損は個人負担という棲み分けです。

ベランダが共用部分である以上、「うちは修繕しなくても構わない」と個別の住戸が工事を拒否することはできません。マンション全体の資産価値と安全性を守るため、管理組合には共用部分を適切に維持修繕する義務があるためです。

工事期間中の注意点 – 立ち入り制限・プライバシー・防犯

大規模修繕工事の期間中は、ベランダの使用に制限がかかることが多く、居住者の皆さまには事前に理解と協力が求められます。足場が設置されると建物全体がシートで覆われ、外壁塗装や防水工事の際は数日から数週間にわたりベランダへの立ち入りが禁止されるケースが一般的です。

例えば外壁の再塗装工程では、窓サッシや手すりが塗料で汚れないようビニールで養生されるため、その期間は窓の開閉やベランダの利用ができなくなります。通常、作業日中はベランダへの出入りは禁止され、緊急時のみ養生シートを破って避難可能です。休日には一時的に利用可能となる場合が多いです。

また、足場とシートで覆われた状態ではプライバシーの確保が難しくなるため、レースカーテンを閉める、目隠しフィルムを貼るなどの対策をおすすめします。さらに足場設置によって空き巣などの侵入リスクが高まるため、防犯面でも戸締りを厳重に行い、必要に応じて補助錠の貸出しを施工業者や管理組合に相談しましょう。

居住者への周知ポイント

  • ベランダ立ち入り禁止期間の明示

工程表を共有し、ベランダ使用禁止期間や洗濯物の外干し不可の日程を具体的に伝えます。近年はウェブサイトなどで情報発信を行う事例もあります。

  • 室内環境の工夫

塗装に伴うシンナー臭対策として換気計画を立て、窓の開閉は必要最小限に。プライバシー保護と日照確保のバランスを取りながら、カーテンやフィルムで目隠しをしましょう。

  • 防犯対策の徹底

足場設置期間中は窓やベランダの施錠を厳守。施工関係者を装った不審者に注意喚起するとともに、補助鍵の利用を促進します。

  • 騒音・振動への理解と対応

作業音や振動は避けられないため、事前に案内を行い、在宅勤務者などには耳栓の配布や一時的な別室利用の提案など、ストレス軽減策を検討します。

このように、工事期間中の制限や注意点を事前にしっかり周知し、居住者の不安を和らげることがスムーズな修繕工事の鍵となります。

ウッドデッキ・私物の撤去 – トラブルを避けるポイント

ベランダが工事対象になる場合、居住者がベランダに設置・放置している私物はすべて撤去しなければなりません。観葉植物、自転車、物置、物干し竿、網戸、人工芝マットやジョイントタイル、ウッドデッキパネル等、工事の妨げとなる物は事前に片付けておく必要があります。

管理組合や施工会社から工事開始前に「ベランダ片付けのお願い」が通知されますので、各住戸で期日までに対応してもらいます。基本的に私物の移動・撤去は居住者自身の責任で行うものとされており、撤去や廃棄に要する費用も各自負担が原則です。

とはいえ、高齢者や忙しい家庭ではベランダ荷物の片付けが困難な場合もあります。そうしたケースではトラブル防止策として次のような対応が考えられます。

  • 十分な事前告知と準備期間の確保

理事会から早めに工事予定と撤去対象物のリストを周知し、少しずつ片付けを進めてもらいます。着工直前に慌てないよう、アンケート等で各住戸の状況を把握するのも有効です。

  • 支援策の案内

施工会社によっては不用家具等を捨てるための「ごみコンテナ」を敷地内に設置してくれたり、大型荷物の移動を有償で手伝ってくれたりする場合もあります。片付けが難しい住民には管理組合経由でそうしたサービスを紹介し、必要なら専門業者手配を検討します。

  • 仮置き場の確保

マンションによっては工事期間中、一時的に荷物を置ける共用部の仮置きスペースを用意することがあります。ただし共用スペース上に高価な物や貴重品は置けません。盗難防止の観点から、仮置き場は施錠管理し、現金や貴重品は各自宅内で保管するよう伝えます。

  • ウッドデッキ等の扱い

ベランダに敷設されたウッドデッキやタイルカーペット類は住人が自力で剥がす必要があります。特に高齢者宅で子世帯が敷設したケースなど、自分で撤去できない場合は業者に依頼することになり費用負担が発生します。将来の大規模修繕に備え、容易に着脱できる製品を選ぶこともポイントです。実際、「次回の修繕時には撤去・復旧がしやすい材質のウッドデッキに交換したい」という声もあり、組合から住民へ長期的視点でのアドバイスを行うと良いでしょう。

  • 避難ハッチ周りの注意

ベランダ床に非常用の避難ハッチ(点検口)がある場合、平常時からその上に物を置くことは禁止されています。避難経路を塞ぐと消防法違反となり、消防設備点検でも指摘され是正報告を求められます。植木や収納ケースなど置きがちな私物についても、非常時の妨げにならない配置を平素から指導しましょう。

以上のように、理事会として計画的な周知と支援策の準備を行っておくことで、居住者とのトラブルを未然に防ぎ、工事をスムーズに進めることができます。特にウッドデッキの撤去忘れや観葉植物の放置などは工期遅延の原因にもなりかねませんので、「撤去しない場合は管理組合で強制撤去し費用請求する」旨を規約や工事通知に明記しておくことも検討してください(あくまで最終手段ですが、ルールを示すことで各自が真剣に対応する効果があります)。

長期修繕計画とベランダ床修繕の関係

ベランダ床の修繕(主に防水層の更新)は、マンションの長期修繕計画に組み込んで計画的に実施されるべき工事の一つです。

国土交通省のガイドラインでも、バルコニー床防水はおおむね12~15年周期で修繕することが推奨されており、多くのマンションで初回の大規模修繕(築10数年目)にこの防水改修が含まれます。

長期修繕計画書の作成時には、将来見込まれる修繕工事の内容・時期・概算費用を明確にすることが求められますが、ベランダの床防水改修工事も共用部分の重要な維持項目としてその計画に盛り込まれます。

計画に基づき積み立てられる修繕積立金によって資金手当てがなされるため、各区分所有者は日々積立金を負担する代わりに、大規模修繕時に個別の大きな支出をしなくて済む仕組みになっています。

もっとも、長期修繕計画はあくまで目安であり、実際の劣化状況に応じて見直しが必要です。昨今では資材価格や人件費の高騰により、当初計画より工事費用が増大して計画の練り直しを迫られるケースもあります。

そのため、定期的な調査診断を行い、ベランダ防水層の劣化状況を把握して計画より早い時期での修繕が必要になれば前倒し実施を検討します。

一方で前述のように特定住戸のみ極端な劣化が発生した場合、まず当該住戸側での補修対応とし、全体工事は計画周期で行う判断もありえます。

いずれにせよ、長期修繕計画は全住戸にとって公平かつ合理的に修繕を進める指針となるものです。理事会としては定期的に計画を点検・更新し、ベランダ床防水の更新時期を見誤らないよう留意しましょう。

まとめ

ベランダ床の修繕は、法的には共用部分の計画的維持工事として位置づけられ、費用も基本は修繕積立金から賄われます。まず「ベランダは専用使用できる共用部分」という前提を押さえ、管理組合として担うべき修繕範囲と区分所有者自身に任される部分を明確にしましょう。その上で、長期修繕計画に沿って適切な時期に防水補修を実施し、工事に際しては居住者全員への丁寧な説明・協力依頼を行うことが重要です。

ベランダは各家庭のプライバシーに直結する空間でもあるため、工事中の配慮(目隠し・防犯・生活動線確保など)や私物撤去の周知徹底にも気を配りましょう。理事会一丸となって円滑な大規模修繕工事の遂行を目指してください。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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