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エレベーターのシーブ交換の進め方|費用や時期、工事を進めるポイント

更新日:2025年05月30日(金)

マンション管理組合やビルオーナーの皆様にとって、エレベーターの主要部品交換は安全維持と資産価値の面で見過ごせない課題です。中でも「シーブ」と呼ばれる巻上機の滑車は、経年劣化による摩耗が進むとエレベーターの動作不良や重大事故につながる可能性があります。 本記事では、エレベーターのシーブ交換について、交換時期の目安や判断基準、費用相場、工事を進める際のポイントまで詳しく解説します。安全第一の観点から適切な知識を身につけ、シーブの計画的なメンテナンスに役立てましょう。

本記事のポイント
  • エレベーターの重要部品「シーブ」の役割や摩耗による交換時期の基準を学べる。
  • エレベーターのシーブ交換費用の相場や費用が高くなる要因を具体的に把握できる。
  • シーブ交換工事を安全かつ円滑に進めるために押さえておくべきポイントや注意点がわかる。

エレベーターのシーブとは?

シーブとはエレベーターの巻上機に設置されたワイヤーロープ用の滑車(綱車)であり、カゴとつり合い重りをロープで支えて駆動する要となる部品です。トラクション(ロープ式)エレベーターでは、シーブを介してカゴと重りの重量バランスをとり、摩擦力によってロープを巻き上げ下げすることでスムーズな昇降を実現しています。

実際、一般社団法人日本エレベーター協会の用語でもシーブ(綱車)は「巻上機に取り付けられたロープ掛け用滑車」として定義されています。シーブは直径数十cm以上の鋳鉄製ホイールで、周囲にロープをかける溝(シーブ溝)が刻まれています。エレベーター走行時にはモーターの駆動力がシーブを回転させ、溝に噛んだワイヤーロープとの摩擦でカゴと重りを上下させます。シーブはエレベーターの「心臓部」ともいえる巻上機の一部であり、その機能は乗客の安全を直接支える重要インフラと言えます。

エレベーターのシーブ交換を判断する基準

シーブ交換の判断は主にシーブ溝の摩耗度合いに基づきます。一般にロープ溝の摩耗量が約3mmに達したら交換時期とされ、溝の偏摩耗(溝間の高さ差が1mm超)やロープ痕の発生も交換の目安です。シーブ溝が深く摩耗すると、ロープが溝底に当たって十分な摩擦力を得られず空転しやすくなります。また溝の不均一な摩耗はロープごとの張力差を招き、安全装置の誤作動や走行の乱れにつながります。

メーカーの定期点検マニュアルでも「巻上機のメインシーブ溝が3mm以上摩耗した場合」や「溝ごとの摩耗差が1mm以上ある場合」は要交換と明記されています。さらに「目視でロープの縄痕(ロープ痕)や偏摩耗が確認できた場合」も同様です。例えば、定期検査でシーブ溝の残り深さが基準値を下回った場合、早めの交換が推奨されます。実際の事例でも、シーブ摩耗が進みすぎたために巻き上げ時にロープが滑ってカゴの停止位置に段差が生じたケースがあります。

このように摩耗限度を超えたシーブを使い続けると、エレベーターの着床ズレやロープスリップ(空転)による不動作など重大な故障・事故の原因となり得ます。法定検査における重点点検(要是正)や、日常点検においてシーブでロープの滑りが指摘された場合は、安全運行を維持するために、速やかにシーブの交換を実施することが不可欠です。

エレベーターのシーブ交換に要する費用

シーブ交換にかかる費用は、1基あたり数十万円から数百万円程度が一般的な相場です。費用は、エレベーターの規模(昇降行程の高さや積載量)、シーブの大きさ、工事の難易度などによって異なります。
たとえば、中低層マンションに設置されている小規模なエレベーターの場合、概ね100万円前後で収まることが多い一方で、高層ビルの大型エレベーターでは数百万円に達するケースもあります。

なお、東芝製のCV200~CV500シリーズについては、巻上機とシーブが一体型構造となっているため、シーブ単体での交換はできません。不具合が生じた場合には、巻上機一式の交換が必要です。
この場合の費用は450万円(税別)からとなっており、POG(予防保全契約)やフルメンテナンス契約を締結している場合でも、別途費用が発生する点にご注意ください。

シーブそのものは大型の鋳造部品であり製造コストが高いうえ、交換作業には専門技術者のチームと重機(チェーンブロックやクレーン)の使用が必要です。またエレベーターを停止させて行う工事のため、利用者への影響を考慮して夜間・休日に施工する場合は割増費用が発生することもあります。

ロープ交換工事と同様に費用の内訳として部品代、人件費、クレーンなど機材費、旧部品の撤去処分費が含まれます。実際、高層建物ほどロープやシーブが大型・長尺化し材料費が増加しますし、作業も複雑になるため費用は高くなります。

 例えばシーブ交換では、重量物であるシーブを機械室から搬出入する工程が発生し、その運搬費用も見込まれます。加えて、交換作業には有資格の技術者2~3名以上が必要となり、安全確保のためエレベーターを停止して行うため工事期間中はエレベーターの運転を停止せざるを得ません。そのため利用者の少ない深夜帯に工事を実施することも多く、この場合は夜間割増の人件費がかかることがあります。以上のように様々な要素が積算されるため、シーブ交換費用は決して小さくありません。しかし人命を預かる設備の安全への投資と考えれば必要な出費と言えるでしょう。適切な予算計画を立て、複数業者から見積もりを取得して妥当な費用で確実に工事を行うことが重要です。

交換工事を進めるときのポイント

エレベーターのシーブ交換工事を計画・実施する際には、押さえておきたいポイントがいくつかあります。ここでは安全かつ円滑に工事を進めるための3つのポイントを説明します。

ポイント1:公的基準や専門家の情報を参考に計画立案する

シーブ交換を検討する際は、国土交通省や日本エレベーター協会など公的機関の基準や専門家の情報を参考に計画を立てることが重要です。

国土交通省が公表しているエレベーター定期検査基準や、日本エレベーター協会(一般社団法人)がまとめているメンテナンス指針には、シーブやロープの摩耗限度や交換基準が明記されています。そうした信頼性の高い情報に目を通すことで、「どの程度摩耗したら交換すべきか」「交換しないことで起こり得るリスクは何か」を把握でき、メーカーや保守会社からの提案内容を適切に評価できます。公的基準を踏まえて計画を策定することで、主観や思い込みに頼らず確実なエビデンスに基づいた意思決定が可能になるでしょう。

ポイント2:複数の業者から見積もりを取り信頼できる会社を選ぶ

シーブ交換工事を依頼する際は、複数の専門業者から見積もりを取得して内容と金額を比較検討し、実績豊富で信頼できる業者を選定することが肝要です。

 一社だけの提案では適正な相場や工事内容の妥当性を判断しづらいため、複数社に依頼して比較することで高額すぎる見積もりや不要な工事項目を排除できます。また資格・経験を持つ信頼性の高い業者を選ぶことで、安全管理や施工品質の面でも安心感が得られます。

具体的には、まずエレベーター保守会社やリニューアル工事会社に現地調査を依頼し、シーブの型式・摩耗状態、工事範囲などを確認してもらった上で見積書を作成してもらいます。その際、可能であれば2~3社程度から見積もりを取り寄せましょう。提示された金額だけでなく、工事期間や工法の提案内容、代替エレベーターの確保策なども含めて比較検討すると、より適切な判断ができます。また極端に安価な提案は品質に不安が残るため避け、過去の施工実績や資格保有状況もチェックしましょう。最終的には、価格だけでなく技術力と信頼性に優れた業者を選ぶことが、シーブ交換工事の成功と長期的な安全運用につながります。

ポイント3:利用者への配慮と安全管理を徹底する

シーブ交換工事の実施段階では、工事中の安全管理を徹底するとともに、エレベーター利用者への影響を最小限に抑える配慮が欠かせません。シーブ交換作業は高所での重量物取扱いを伴うため、万全の安全対策が求められます。またエレベーターを停止して行う工事になるため、居住者やテナントへの事前周知・代替動線の確保など運用面での配慮も重要です。

実際の進め方としては、工事日の決定に際してマンションの管理組合やビル利用者と相談し、深夜や休日に工事を行うなど利用者への影響を軽減する計画を立てます。工事当日はエレベーターホールに案内掲示を出し、作業エリアを明確に区画して無関係者の立ち入りを禁止します。

技術者チームは安全帯やヘルメットを着用し、巻上機の電源遮断やカゴの仮固定など必要な安全措置を講じてからシーブ交換作業にあたります。作業終了後には入念な動作確認と試運転を実施し、カゴの停止精度やロープの張力状態などを検査します。問題がなければ関係者立ち合いのもと正常稼働を確認し、エレベーターを運転再開します。工事後は交換したシーブや作業内容を記録した報告書を受け取り、今後の保守で参照できるよう管理しておきましょう。このように安全管理と利用者配慮を徹底することで、シーブ交換工事によるリスクと不便を最小限に抑えることが可能です。

まとめ:複数社の見積もり比較を忘れずに!

エレベーターのシーブ交換は安全な運行を維持する上で避けて通れない重要なメンテナンスです。シーブはロープを支える要部品であり、摩耗が進めばロープ滑りや着床不良を招きかねません。その交換時期の目安は摩耗量3mm前後であり、定期点検で基準超過と判断されたら速やかな交換が推奨されます。費用面では決して安くありませんが、数十万~数百万円規模の安全投資と考えて計画的に備えることが大切です。

実施にあたっては、公的基準や専門知識に基づき適切な判断を下し、複数社の見積もり比較で信頼できる業者を選定して、万全の安全対策のもと工事を進めましょう。適切な時期に適正な内容でシーブ交換を行い、その後も定期点検を継続することで、エレベーターの安全・安心な運行を長期にわたり確保することができます。建物の管理者として専門家の協力を得ながら計画的な修繕に取り組み、利用者にとって快適で安全なエレベーター環境を維持していきましょう。

エレベーター等修繕の支援サービス「スマート修繕」

  • 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
  • エレベータのリニューアル工事の支援実績は多数(過去1年で数百基、2025年2月現在)。特殊品である高速、油圧、リニア、ルームレスの実績もあり、社内にはエレベーター会社、ゼネコン、修繕会社など出身の施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
  • 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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