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大規模修繕で注目のブランコ工法とは?特徴と導入判断ポイントを徹底解説

更新日:2025年11月28日(金)

マンションの大規模修繕において、近年注目を集めているのが「ブランコ工法(無足場でロープ作業)」です。仮設足場を組まずにロープで高所作業を行うこの工法は、足場設置費用の削減や工期短縮が期待できる一方で、安全対策や作業内容に制約も伴います。 この記事では、マンション管理組合がブランコ工法を採用するか判断する際に知っておきたい基礎知識やメリット・デメリット、費用比較の目安、安全基準などをわかりやすく解説します。大切な大規模修繕工事の意思決定にぜひお役立てください。

本記事のポイント
  • ブランコ工法とは何か、その仕組みと法的な位置づけを理解できる。
  • 足場工法と比較したときのコスト削減・工期短縮・住民負担軽減などのメリット、および安全性や施工範囲などの注意点が把握できる。
  • 建物の構造・規模・工事内容に応じた工法の判断基準を知り、最適な修繕手法を選ぶための判断材料が得られる。

ブランコ工法とは(定義・正式名称・法的位置づけ)

ブランコ工法は、建物の屋上などからロープと吊り下げ器具を使って作業員が高所作業を行う工法です。 仮設足場を設置せずに外壁の補修や塗装、防水施工などを行う無足場工法の一種で、正式には「ロープアクセス工法」や労働安全衛生法上の定義では「ロープ高所作業」と呼ばれます。作業員が専用ハーネス付きの昇降器具でロープにぶら下がり、外壁タイルの補修やシーリング(目地用防水材)打ち替え、防水工事など様々なメンテナンスを柔軟に実施できるのが特徴です。

法律上もロープ高所作業として位置づけられ、安全確保のための規定が設けられています。 高所作業時の墜落防止措置として本来は作業床(足場)の設置が義務付けられていますが、足場が困難な場合の例外としてロープ高所作業が認められました。2016年の法改正により、ロープ高所作業を行う場合はライフライン(安全帯用の補助ロープ)の設置や作業計画の策定、そして作業従事者への特別教育(安全講習)の実施が義務付けられています。

このようにブランコ工法は法的にも明確に位置づけられており、専門の資格や安全教育を修了した技術者によって行われる工法です。

適用できる工事の範囲(できること・できないこと)

ブランコ工法は主に外壁の調査・補修や部分的な改修作業に適していますが、工事内容によっては採用できないケースもあります。 

ロープで直接アクセスしやすい外壁のひび割れ補修や剥落箇所の補修、防水材の補修、シーリング打ち替え、一部の外壁塗装、高所の窓ガラス清掃などはブランコ工法で対応可能です。足場を組まなくても必要箇所にピンポイントで作業員が到達できるため、狭小な敷地や部分的な補修には有効な手段と言えます。

一方で、ブランコ工法では対応が難しい工事も存在します。 例えば建物全体の外壁全面塗装のように広範囲に及ぶ塗装工事や、コンクリートの大規模な削り作業・吹付塗装など粉じんや塗料の飛散リスクが高い工事には不向きです。

また、作業員がロープでぶら下がるスペースが確保できない複雑な形状の建物や極端に隣接間隔が狭い場所、人通りが非常に多く落下物対策が十分取れない環境でも、安全上ブランコ工法は採用しづらくなります。

さらに、重量のある資材の搬入や大型機械を要する工事、構造補強のような重作業についても、安定した作業床が必要なためブランコ工法には適していません。以上のように、「どのような工事内容か」「作業範囲は限定的か広範囲か」によって、ブランコ工法の適用可否が決まります。

ブランコ工法のメリット

ブランコ工法には、従来の足場工法と比べてコストや工期、周辺環境への影響など様々な面でメリットがあります。 

以下に主な利点をまとめます。

コスト削減

仮設足場の設置・解体が不要なため、その分の費用を大幅に節約できます。足場設置費用は大規模修繕の総費用の20~30%にも及ぶ高額なものですが、ブランコ工法を選択すればこの足場代を削減でき、工事全体のコストダウンにつながります。特に部分的な補修工事では足場を組む費用が無駄になりがちですが、必要箇所だけをロープで修繕できるため経済的です。

工期短縮

足場組立・解体の工程が省略できるため、その分工期を短縮できます。足場設置には通常数日から数週間を要し騒音も発生しますが、ブランコ工法なら準備期間を大幅に圧縮可能です。緊急の補修にも素早く着手でき、建物の改修を迅速に完了しやすくなります。実際、足場を使用しないことで全体工期が数割短縮できた事例もあります。

居住者への負担軽減

建物全体を覆う足場や防護シートが不要になるため、居住者の生活環境への影響が小さい点もメリットです。足場工法では工事中ずっと建物がメッシュシートで覆われ日光や風通しが遮られますが、ブランコ工法では作業箇所以外は開放的な状態を保てます。また足場に伴う圧迫感がない分、居住者の心理的ストレスも軽減されます。防犯面でも、足場があると高層階への侵入経路ができてしまいますが、ブランコ工法ならそうした心配もありません。

安全性の向上

一見ロープ作業は危険そうに思えますが、統計上は足場作業より事故件数が少ないとのデータがあります。全国仮設安全事業協同組合の調査によれば足場作業中の墜落事故による死亡が毎年約20件発生しているのに対し、ブランコ工法による事故は年2件程度に留まります。もちろんブランコ工法でも安全管理は必須ですが、少なくとも足場そのものが原因となる墜落事故(足場からの転落や倒壊事故など)リスクはゼロになる点で有利です。台風や地震時に足場が崩壊するといった心配もなく、適切な安全措置の下では足場工法より安全に作業できる可能性も示されています。

柔軟な対応力

ブランコ工法は必要な箇所にピンポイントでアクセスできるため、狭所や特殊な形状部分の工事にも柔軟に対応できます。他の工法では足場架設が難しい場所(建物間が極めて狭い、敷地が限られる等)でも作業可能です。また、高所作業車やゴンドラが入れない中庭や屋上設備周りの点検にも活用できるなど、現場状況に応じた機動力の高さもメリットと言えます。

以上のように、ブランコ工法は費用・時間・安全面で多くの利点をもたらし、部分補修や緊急対応、居住環境の維持などに優れた工法です。

ブランコ工法のデメリット

一方で、ブランコ工法には安全管理や作業上の制約など注意すべきデメリットも存在します。 採用を検討する際には次のような点に留意が必要です。

安全管理の徹底が必要

ブランコ工法では常に作業員の命綱がロープ一本(実際には安全のためメインロープ+ライフラインの二本)にかかっています。そのため高所作業の安全対策を万全に講じる必要があります。強風時や雨天時はロープが大きく揺れ危険なため作業中止となり、天候に左右されやすい点も注意です。また、作業員は労働安全衛生規則に基づく特別教育(フルハーネスやロープ高所作業の講習)を修了していなければなりません。十分な訓練と経験を積んだプロでなければ安全に遂行できない高度作業であることを認識し、施工業者の安全体制や実績をしっかり確認することが重要です。

重作業・長時間作業に不向き

ロープにぶら下がった姿勢ではどうしても体勢が不安定になり、長時間の作業や力のいる重作業には向きません。例えば大面積の塗装作業では、足場上なら多数の作業員が同時に広範囲を手分けできますが、ロープ作業では移動範囲や作業人数に制約があるため効率が落ちる場合があります。同じ理由で、建物全周に及ぶ大規模改修では人件費がかさみ逆に足場工法より割高になるケースもあり得ます。ブランコ工法は部分的・短期的な工事には効果的ですが、建物規模や形状によっては非効率となる限界がある点に注意が必要です。

品質管理と確認の難しさ

足場が無い分、施工後の仕上がり状態を近くでチェックすることが難しいというデメリットもあります。管理組合や発注者が工事中・完了後の状況を直接目視確認しにくいため、施工業者には写真や動画記録の提出を求めたり、必要に応じて第三者の検査を依頼するなどの対応が望まれます。またブランコ工法では作業者一人ひとりの技量に品質が左右されやすい側面もあります。足場工法なら複数人で相互に作業チェックしながら進められますが、ロープ作業では基本的に個人作業となるため、多能工の熟練作業員でなければ品質と効率の両立が難しくなります。発注時には実績豊富で信頼できる業者を選定し、施工計画や安全管理体制だけでなく、品質確保の仕組みについても十分に打ち合わせておくことが大切です。

以上の点を踏まえ、ブランコ工法のデメリットは「安全対策に手間がかかる」「作業条件によっては効率が悪い」「施工結果の確認方法に工夫が必要」とまとめられます。しっかりとしたリスク対策と計画の下で採用することが求められます。

足場工法との費用比較(中層・高層別の目安)

ブランコ工法を採用すると、どの程度の費用削減効果があるのかは管理組合にとって関心の高いポイントでしょう。ここでは仮設足場を使う従来工法との費用面の比較を、中層マンションと高層マンションの場合に分けて解説します。

中低層マンションの場合

一般に、大規模修繕工事全体のうち足場仮設費用は総工費の20~30%程度を占めると言われます。実際の足場設置費用は1㎡あたり約600~1,000円が相場で、中規模マンションでも足場代だけで100万~300万円前後かかるケースがあります。ブランコ工法を採用すればこの足場費用が不要になるため、その分トータルで2~5割程度コストダウンできる可能性があります。例えば外壁一部の補修や調査だけで足場を組めば割高ですが、ブランコ工法なら必要最低限の範囲で施工できるため費用対効果が高くなります。ただし、建物全体をまんべんなく改修するような場合はロープ作業の繰り返しで人件費が増え、足場を組んだ方が結果的に安くなるケースもある点には注意が必要です。複数の業者から足場あり・なし双方の見積もりを取り、費用と施工範囲のバランスを慎重に比較検討すると良いでしょう。

高層マンションの場合

超高層のタワーマンション(おおむね15階建て超、45m以上)では、そもそも法規制により一定高さ以上は足場を使用できない決まりがあるため、現実的にはゴンドラかブランコ工法を選ぶことになります。タワーマンション全体を改修する場合、ゴンドラ設備を設置して上下動しながら施工する方法もありますが、ゴンドラ機材そのものの費用や設置手間がかかるため部分補修には不向きです。その点、ロープを用いるブランコ工法であれば特別な大型機材を使わずに高層部の局所修繕を行えるため、高層建物におけるコストメリットはさらに大きくなり得ます。高層階の一部補修などではブランコ工法が唯一現実的かつ低コストな選択肢となる場合もあるでしょう。

以上をまとめると、中低層の建物ではブランコ工法により数割の費用削減が期待でき、高層建物では足場代自体が発生しないため特に有効といえます。ただし建物全体の大規模改修ではロープの人件費増に留意が必要です。各マンションの規模・階数・改修範囲に応じて、足場工法と無足場工法それぞれの費用見積を取り比較するのが賢明です。

ブランコ工法導入判断の基準(採用可否のチェックポイント)

ブランコ工法を採用すべきかどうかは、建物の条件や工事内容を総合的に判断して決める必要があります。 管理組合として以下のようなポイントをチェックし、最適な工法選択の参考にしましょう。

建物の高さ・規模

建物が高層であるほど足場工法が難しくなり、ブランコ工法(またはゴンドラ)の有用性が増します。前述の通り高さ45m以上では足場架設が事実上不可能ですから、高層マンションでは無足場工法の採用を前提に検討するとよいでしょう。一方、低層~中層規模で建物全周を一斉に改修する場合は足場併用の方が効率的なケースもあり得ます。

工事の内容・範囲

修繕範囲が建物全体に及ぶ大規模改修なのか、一部に限られた部分補修なのかによって適切な工法は異なります。部分的な外壁補修や調査ならブランコ工法が費用対効果に優れますが、全体塗り替えなど広範囲工事では足場を組んだほうが総合的に合理的な場合もあります。また、塗料飛散や重量物取り扱いなど前述したブランコ工法で対応困難な作業が含まれるかも重要な判断基準です。工事内容に応じて無足場で可能な範囲かどうか専門家に確認しましょう。

建物の形状・立地環境

建物の構造がシンプルでロープを垂らせる箇所が多い場合はブランコ工法が効果的です。逆に凹凸の多い外壁や入り組んだ形状だとロープアクセスしにくく作業効率が落ちる可能性があります。周辺の建物との距離が極端に近い場合も、ロープ作業員が体を振る余裕が無く危険なため不向きです。また、マンションが人通り・交通量の多い市街地にある場合は、十分な監視員配置や落下物防止措置が必要になります。そうした安全対策が取れない環境では無足場工法の採用は慎重に検討すべきです。

予算と優先事項

管理組合の修繕積立金の状況や工事において重視したいポイントも考慮しましょう。予算をできるだけ抑えたい、工期を短くして住民負担を減らしたい、景観や採光への影響を最小限にしたいといったニーズが強い場合、ブランコ工法は有力な選択肢になります。一方で「多少費用が掛かってもいいから確実に高品質な修繕を行いたい」「同時に多くの作業を並行して進めたい」といった場合は足場工法の方が向いているかもしれません。何を優先するかによって最適解は変わります。

これらの基準を踏まえ、最終的には専門の修繕コンサルタントや施工業者と十分に協議して決定することが肝要です。現場のプロの視点で建物の状態を診断してもらい、ブランコ工法のメリットを活かしつつデメリットを補う施工計画を提案してもらいましょう。工法選びを誤らなければ、コスト・工期・品質・安全のバランスが取れた最適な大規模修繕を実現できます。

採用事例と法的な安全基準

ブランコ工法は既にさまざまな建物で採用実績があり、国の安全基準の下で運用されています。 もともと高層ビルの窓清掃や橋梁の点検などで活用されてきた手法であり、近年ではマンション大規模修繕においても部分的な外壁補修や緊急工事を中心に採用例が増えています。例えば都市部のあるマンションでは、タイルの一部張替え工事において足場を設置せずブランコ工法のみで短期間に完了させ、足場費用と工期を大幅に削減したケースがあります。また、別のマンションでは外壁調査でブランコ工法を活用し、早期に劣化箇所を発見して本格的な改修につなげた事例も報告されています。こうした成功事例から、必要に応じて従来工法と無足場工法を使い分けることが有効だとわかります。

安全面については、労働安全衛生規則に基づく厳格な基準のもとでブランコ工法が行われます。 前述したように法令(安衛則第539条の2~の8)ではロープ高所作業に関する詳細な安全措置が定められています。具体的には「メインロープとは別に命綱となるライフラインを設置すること」「ロープや昇降器具など使用器具は十分な強度を備え損傷や劣化のない良好な状態であること」「作業開始前に設置箇所や支持物の状態など作業場所の危険要因を調査・記録すること」「その結果に基づき作業方法や手順、人員、使用ロープ種類、切断防止策などを盛り込んだ作業計画を策定すること」「作業全体を統括する作業指揮者を選任し、安全帯(フルハーネス)や保護帽の使用を含め作業を監督すること」等が義務付けられています。

さらに、ロープ高所作業に従事させる労働者には所定カリキュラムによる特別教育(計6時間以上の講習)を実施し修了させることも規定されています。これら法的安全基準に則り、施工業者は二重のロープシステムや装備点検、作業指揮者の配置など万全の体制で作業にあたります。

管理組合としても、業者選定時にはこうした資格要件や安全管理の取り組み状況を確認することが大切です。例えば「ロープ高所作業特別教育を受けた有資格者が作業するか」「ライフラインなど安全措置についてホームページ等で明言しているか」といった点は信頼できる業者選びの目安となります。法令を遵守し安全対策を徹底している業者に依頼すれば、ブランコ工法でも必要な修繕を安全かつ確実に実施できるでしょう。

以上、ブランコ工法の特徴から判断ポイント、安全基準まで解説しました。ブランコ工法はマンション大規模修繕において費用削減と工期短縮の切り札となり得る一方、適用条件や安全面の課題も伴う工法です。

管理組合としてはメリット・デメリットを正しく理解し、自身のマンションに合った工法かを見極める必要があります。専門家の意見も参考にしながら最適な施工方法を選択し、大切なマンションの資産価値を守る良質な修繕工事を実現しましょう。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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