マンション大規模修繕時に見逃せない防犯対策ポイント
更新日:2026年01月29日(木)
マンションの大規模修繕工事は、建物の資産価値維持に欠かせない一方で、工事期間中は空き巣被害など防犯リスクが高まります。また、この時期は老朽化した防犯設備を見直し強化する好機でもあります。 この記事では、修繕時に実施すべき防犯対策の意義と具体策、進め方の注意点や費用感、活用できる補助制度について解説します。大規模修繕と防犯対策を組み合わせ、安心・安全なマンション環境を築きましょう。
- 本記事のポイント
- 大規模修繕期間に空き巣・不審者が侵入しやすい理由と、防犯対策の重要性を理解できる。
- 防犯カメラ、オートロック強化、照明増設などの具体的な設備更新方法と優先順位が分かる。
- 管理組合内での合意形成や自治体の補助制度活用など、住民の理解を得て進めるコツがつかめる。
大規模修繕時に防犯対策を講じる意義
マンションの大規模修繕工事中は、防音シートに覆われた足場が建物全体に設置され、多くの作業員や外部業者が出入りします。その結果、空き巣や盗難など犯罪が発生しやすい環境になってしまいます。実際に工事期間中は泥棒が足場を伝って高層階のベランダに侵入したり、作業員になりすまして建物内に入り込むケースが増加するとされています。騒音で物音に気づきにくかったり、シートの陰で侵入者が見えにくくなることもリスクを高める要因です。
さらに、管理組合やオーナーの責任という観点でも防犯対策は重要です。万一、適切な対策を怠って空き巣被害が発生すると、被害者である住民から管理組合が損害賠償を請求される可能性も指摘されています。修繕工事中の安全確保は管理組合の責務であり、施工業者任せにせず主体的に取り組む必要があります。
また、大規模修繕のタイミングは既存の防犯設備の老朽化に対応する絶好の機会です。築年数が15年前後を迎えたマンションでは、防犯カメラの画質が粗くなったり録画装置が古くなる、オートロックやインターホンの不具合が出るといった劣化が見られます。
防犯対策の強化は資産価値の向上にも寄与し、防犯設備が充実したマンションは購入希望者や入居者に安心感を与え、保険料割引など経済的メリットを享受できる場合もあります。大規模修繕時に防犯面を強化することは、マンション全体の安全と価値を守る戦略的な投資と言えるでしょう。
大規模修繕に合わせて実施される防犯強化策
大規模修繕工事と同時に行いやすい防犯設備のグレードアップには、以下のような施策があります。
防犯カメラの高解像度化・増設
旧式カメラを高画質モデルに更新し、夜間の撮影性能を向上させます。併せて台数を増やすことで、これまで死角だった箇所をカバーし、監視範囲を広げられます。防犯カメラは犯行抑止効果が高く、万一の際も証拠映像を残せます。
オートロックシステムの導入・更新
エントランスのオートロックドアを最新式に交換します。暗証番号式からICカード・リーダー式への切替や、自動扉の設置により不審者の侵入を防止します。古いマンションでは未導入の場合、新規設置も検討対象です。
インターホンのカメラ付き化
住戸内のインターホンをモニター付きに交換し、来訪者の顔を確認できるようにします。留守中でも録画機能で訪問履歴を残せ、オレオレ詐欺などの防犯にも有効です。
玄関ドア錠の強化
各住戸の玄関錠をディンプルキーなどピッキング耐性の高いシリンダー錠に交換し、必要に応じて二重ロック化します。古い鍵から最新式への更新で不正解錠リスクを低減できます。
共用部分の照明増設・センサーライト設置
エントランスホール、廊下、駐車場など暗くなりがちな共用部に照度の高いLED照明を追加したり、人感センサーライトを設置します。明るさを確保することで、犯人の潜伏場所となる暗がりを減らし、防犯カメラ映像の識別性も向上します。
植栽の整理・見通しの確保
マンション敷地内の茂り過ぎた植栽や生垣を剪定し、不要な植え込みは撤去します。低木を低く刈り込む、照明を遮る樹木の枝を払うなどして、共用部から敷地内外を見通せるようにすることで、犯罪抑止効果が高まります。
防犯センサー・警報装置の導入
非常階段や屋上など侵入経路となり得る箇所に人感センサーや警報ブザーを設置します。侵入者を検知すると警報が鳴り、管理室へ通知される仕組みで、被害を未然に防ぐことが可能です。また、防犯ミラー設置などソフト面の対策も有効です。
これらの防犯強化策は、大規模修繕に合わせて計画すると工事効率が高まるため、採用されるケースが多くあります。ただし、工事自体は建物の補修工事と異なる専門性が求められるため、施工は防犯設備の専門業者に分離して発注する方がコストを抑えやすく、品質も確保しやすくなります。実際には、各種工事を一括で建設会社に任せるより、必要な専門業者に分けて見積もり・施工を依頼した方が、無駄な費用を抑えつつ効率的に防犯対策を進められます。
建物や地域の特性を踏まえ、必要な対策を選定し、専門業者と相談しながら計画に盛り込むことが重要です。
防犯設備を更新する際の注意ポイント
防犯設備の更新工事を計画・実施する際には、以下の点に注意して進めることが大切です。
工事範囲と目的を明確化する
まず、どの設備をどの程度まで更新・追加するのか、工事の範囲と目的をはっきりさせましょう。例えば「エントランスにカメラを2台増設し、駐車場照明をLED化する」など具体的に決めておきます。そうすることで、施工業者との認識違いや予算超過を防ぎ、住民にも計画内容を正確に伝えられます。また、防犯性能をどの水準まで高めるか目標を設定しておくと、機器選定や施工内容の判断がしやすくなります。
機器の仕様選定は慎重に
防犯カメラやオートロックなど機器を選ぶ際は、画質・性能・耐久性・コストのバランスを考慮します。カメラなら夜間の撮影能力(赤外線照明の有無)、録画保存期間、防水防塵性能(屋外設置ならIP規格)などをチェックしましょう。オートロックは非常時の解錠方法や保守体制も確認が必要です。最新のAI機能搭載カメラ(人物・動作検知)やクラウド録画システムも選択肢になりますが、管理の容易さとランニングコストも踏まえて決めます。将来の増設に備え配線の余裕やシステム拡張性も考えておきましょう。専門業者の提案を鵜吞みにせず、管理組合で複数社の見積りや機種を比較検討することも重要です。
管理組合内での合意形成とプライバシー配慮
防犯設備の導入・更新には費用がかかるため、管理組合総会での承認が不可欠です。特に防犯カメラの増設などは「グレードアップ工事(付加価値向上工事)」に該当し、区分所有者の合意を得るプロセスが求められます。提案時には費用対効果や将来的な資産価値向上をわかりやすく説明し、住民の不安や疑問に丁寧に答えるようにしましょう。またカメラには住民も映り込むため、事前に目的やメリットを説明して許可を得ることが必須です。プライバシーへの配慮として、映像の取扱ルール(保存期間や閲覧権限)を明文化したり、「防犯カメラ作動中」の表示板を設置することも望まれます。反対意見がある場合は専門家(防犯設備士やコンサルタント)の客観的説明を交え、段階的に合意を得ていく工夫も有効です。十分な情報共有と話し合いにより、管理組合全体で防犯強化の必要性を認識し納得して進められるよう努めましょう。
防犯工事の優先順位の付け方と費用感
予算に限りがある中で防犯工事を計画する場合、リスクの高い箇所から優先的に対策を実施することが基本です。まずは外部から侵入されやすい箇所(エントランス出入口、通用口、1階の窓やベランダ、駐車場など)を重点的に強化し、次に各階のエレベーター周辺や廊下といった共用部、最後に各住戸個別の防犯性能(玄関錠や窓ガラス)を高める順序が効果的です。過去の空き巣被害事例やヒヤリハット報告がある箇所は、特に優先度を上げて対策を検討します。例えば、オートロックのない通用口から侵入された履歴があれば、真っ先に電子錠を設置する、といった具合です。
防犯カメラは記録の有無が犯人逮捕や抑止力に直結するため、費用が多少かかっても重要箇所に設置することが推奨されます。
工事自体は建物補修工事とは異なる専門性が求められるため、施工は防犯設備の専門業者に分離して発注する方が、コストを抑えやすく品質も確保しやすくなります。一括発注による便利さよりも、必要な専門業者に分けて見積もり・施工を依頼する方が、効率的かつ経済的です。
費用の目安としては、50戸規模のマンションで防犯カメラ増設やオートロック更新などの「防犯設備強化」を行う場合、概算で総額500万~1,500万円(1戸あたり約10万~30万円)程度を想定しておくとよいでしょう。もちろん、設備のグレードや設置台数に応じて上下します。防犯カメラ1台あたりの設置費用は工事費込みでおおよそ10万円前後が目安です。古いアナログカメラから高画質IPカメラに更新し、録画装置も交換する場合は、カメラ台数×十万円単位の費用がかかります。オートロックの新規導入はシステム一式で数百万円規模になるケースもあります。
管理組合の修繕積立金や長期修繕計画と照らし合わせ、無理のない予算を設定することが大切です。予算の都合で一度に全て実施できない場合は、優先度の高い箇所から段階的に進めるのが効果的です。例えば、防犯カメラ配線の管路だけ先に敷設し、本体設置は後から追加する、といった工夫も可能です。また、中古カメラの活用やリース契約を検討することで初期費用を抑え、限られた予算内で最大限の防犯効果を得られる計画を立てることが重要です。
防犯強化に活用できる助成金・補助制度
防犯カメラや街灯など、防犯設備の設置・更新には、自治体ごとの補助金や助成制度を利用できる場合があります。国の補助金では省エネ改修や耐震改修向けが中心で、防犯対策単独の全国共通制度はほとんどありません。しかし地方自治体では、地域の安全向上を目的に、防犯設備費用の一部を補助する制度が年々充実しています。
典型的な例が、防犯カメラ設置補助金です。町内会や自治会、マンション管理組合などを対象に、設置費用の一部を自治体が負担してくれる制度で、補助率はおおむね費用の1/2~2/3、1台あたりの上限額を設けるケースが多く見られます。例えば、東京都内のある区では管理組合向けに最大200万円(設置費用の1/2以内)の助成を行っています。大阪府箕面市では、有線式カメラに30万円、無線式に40.5万円など、機器種別で上限額を定めた補助制度があります。
自治体によっては、防犯灯(街路灯)の電気代補助や、自治会新設時の加算措置、高齢者宅向けの防犯センサー補助など、独自色の強い制度も存在します。いずれも、工事着手前の申請が原則であり、募集期間や予算枠にも制限があるため注意が必要です。
まずは、マンション所在地の自治体ホームページや窓口で、防犯設備設置に関する補助制度があるかを確認しましょう。申請書類作成や手続きはやや煩雑ですが、施工業者が代行してくれる場合もあります。防犯工事にかかる費用を少しでも軽減するために、利用できる制度は積極的に活用することが望ましいです。
まとめ
マンションの大規模修繕に防犯対策の視点を組み込むことは、居住者の安全・安心を守り、資産価値を高める上で非常に重要です。工事期間中は空き巣などの犯罪リスクが高まるため、管理組合が主体となって積極的に防犯策を講じる必要があります。
大規模修繕のタイミングを活かして防犯設備を計画的にグレードアップすれば、後から単独で行うより準備や合意形成が進めやすく、全体の計画も立てやすくなります。防犯カメラの高精度化やオートロック更新、照明増設など具体策を検討し、予算に応じて優先順位をつけながら計画しましょう。合意形成では、費用対効果や将来のメリットを丁寧に説明し、住民全員が納得した上で進めることが大切です。自治体の補助金を活用すれば、さらに負担を軽減できます。
また、工事自体は専門業者ごとに分離発注する方がコストを抑えやすく、管理組合としても透明性の高い運営が可能です。必要に応じて複数業者の見積もりを比較検討し、信頼できる業者を選定することが成功のポイントです。
大規模修繕と防犯対策を両輪で進めることで、マンション全体の安全性が飛躍的に向上します。結果的に「犯罪に強いマンション」は居住者の安心を高めるだけでなく、資産価値の維持にもつながります。魅力ある住環境づくりに貢献できるでしょう。管理組合として、実務に役立つ知識を活かし、効果的な防犯強化を実現してください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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