外壁塗装をしないとどうなる?マンション劣化リスクをわかりやすく解説
更新日:2025年10月31日(金)
- 本記事のポイント
- 外壁塗装をしないことで起こる「防水機能低下・構造劣化・事故・資産価値下落」などの具体的リスクが理解できる。
- 劣化を放置した場合の修繕費増加リスクと、計画的な塗装メンテナンスの重要性がわかる。
- 外壁塗装の最適なタイミング(築12~15年目安)と、大規模修繕との連動による費用削減の考え方を学べる。
 
外壁塗装を怠るとマンションの劣化は確実に進行する
マンションの外壁塗装を長期間しないまま放置すると、建物の劣化が確実に進んでしまいます。外壁塗装は建物を雨風や紫外線から守るバリアの役割を果たしており、いわば建物にとっての雨具や日焼け止めです。
塗装が劣化して防水機能が失われると、外壁そのものが直接雨水や太陽光にさらされてしまい、内部構造まで傷みやすくなります。その結果、防水性能の低下、美観の悪化、安全性の低下、資産価値の下落といった多方面のリスクが生じます。
塗装の劣化を放置すると雨水が浸入して内部の鉄筋が錆び、構造が弱くなり、ひび割れやコンクリート片の剥落(はく落)につながりかねません。最悪の場合、剥落した外壁が落下して事故を招き、管理不全による評価低下で資産価値にも大きな打撃を与える恐れがあります。つまり「塗らないまま」は建物を裸で放置するようなものであり、マンションを健全に維持するには定期的な外壁塗装が不可欠なのです。
劣化が進むことで発生する4つのリスク
外壁塗装を怠って劣化が進行すると、建物には主に次の4つの深刻なリスクが発生します。
- 防水機能の低下(雨漏りリスク)
外壁表面の塗膜(塗装の膜)が劣化・剥がれ落ちると、防水の一次防護が失われてしまいます。塗装には本来、雨水を弾き内部への浸入を防ぐ役割がありますが、それが機能しなくなるとコンクリートや下地に水が染み込みます。結果として室内に雨漏りが発生しやすくなり、壁紙のシミや木部の腐食など室内環境にも被害が及びます。雨漏りは建物の寿命を縮める大敵であり、放置するとカビの発生による健康被害や構造体の腐朽につながる可能性があります。
- 美観の悪化(見た目の劣化)
塗装を長期間しないままでいると、建物の見た目も少しずつ損なわれていきます。経年で塗料の色あせが進み、壁面に汚れが定着したり、所々で塗膜の剥がれや色ムラが生じたりします。特に日当たりや雨当たりの悪い面では藻やコケ、カビが繁殖しやすく、外壁が黒ずんで一層古びた印象になってしまいます。見た目の悪化は居住者の満足度低下だけでなく、マンションの評価にも響きます。綺麗に塗装された建物と比べ、汚れや剥がれが目立つ建物はどうしても資産価値が低く見られてしまうのです。
- 構造への悪影響(安全性の低下)
大きなひび割れ(クラック)が外壁に発生すると、建物の構造上非常に危険な状態です。塗装が劣化すると外壁材自体にまでひび割れが生じやすくなり、その隙間から雨水が壁の内部へ侵入します。鉄筋コンクリート造のマンションでは、浸入した水分により内部の鉄筋が錆びて膨張し、周囲のコンクリートを押し出してコンクリート片の剥落(いわゆる「爆裂」現象)が起きることがあります。
剥落したコンクリートが落下すれば、下を歩く人や停めてある車両に直撃する危険もあり、実際に外壁の剥落事故はマンション管理上重大な問題です。また、鉄筋の腐食や木造部分の腐朽が進めば建物の耐久性・耐震性も低下し、安全な居住環境が損なわれてしまいます。
- 資産価値の低下
外壁塗装を怠ったまま劣化を放置すると、マンション全体の評価額にも悪影響が及びます。外観の印象が悪い建物や、雨漏り・剥落といった不具合を抱える建物は、市場で敬遠されがちです。将来マンションを売却したり賃貸に出したりする際に、見た目や維持状態が良くない物件は評価が下がり、想定より安い価格になってしまう可能性があります。
また、外壁の不具合による事故やトラブルが発生すればマンションの信用にも関わり、資産価値の回復に長い時間がかかる恐れもあります。定期的に塗装メンテナンスを行って建物の美観と健全性を保つことが、資産価値を守る上でも重要なのです。
外壁の劣化を放置すれば、修繕費は数倍に膨らむ可能性も
マンションの外壁は戸建てと異なり、居住者全体に関わる共用部分であるため、簡単に部分的な補修で済ませることが難しく、劣化の放置は将来的に大規模かつ高額な工事を招くリスクがあります。
本来、定期的な塗り替えや軽微な補修を計画的に実施していれば、外壁塗装は比較的低コストな維持管理で済ませることができます。しかし、それを先送りして外壁の劣化が進行すると、外壁材そのものの交換や下地の大規模な補修が必要となり、修繕費は当初の数倍に膨れ上がる可能性があります。
例えば、塗膜の劣化から始まる微細なひび割れ(ヘアークラック)を放置すると、そこから雨水が浸入し、下地のコンクリートや鉄筋を腐食させる原因になります。こうした劣化は見た目の問題だけでなく、構造耐久性や安全性にも影響を与えかねません。
戸建て住宅では、劣化部分のみを一時的に補修することも可能ですが、マンションのような集合住宅では外壁の美観・防水性を全体で均一に保つ必要があるため、建物全体への影響を考慮した計画的対応が不可欠です。
また、劣化が進んだ建物は資産価値が下がりやすく、空室リスクや売却価値の低下にも直結します。外壁塗装や補修を後回しにすることで、結果的に「高くつく」選択になってしまうことは、過去の管理組合事例でも珍しくありません。
適切な塗装時期を知るための目安とは
では、いつ外壁を塗り替えるべきか、適切なタイミングの目安を確認しましょう。一般的にマンションの場合は12~15年程度のスパンで大規模修繕工事に合わせて実施するケースが多くなっています。
国土交通省が定めた「長期修繕計画作成ガイドライン」でも外壁塗装のサイクルはおおよそ12年程度とされており、実際に第一次の大規模修繕(外壁塗装や屋上防水などを含む)は築12〜15年目前後で行われるのが一般的です。このため、新築から約12年を経過した頃が一つの目安と言えるでしょう。
もっとも適切な時期は立地条件や使用塗料、外壁の材質によって前後します。海沿い・工業地帯・日当たりの強い面など劣化が早まる環境では、より早い時期に塗装が必要になる場合もあります。また各ご家庭でできる判断基準として、外壁の劣化サインを見逃さないことが重要です。
具体的には、手で触ると白い粉が付く「チョーキング現象」や、外壁に細かなひび割れが生じている状態、塗膜の膨れ・剥がれが見られる状態は塗り替え時期が来ている証拠です。
こうした劣化症状が目立ってきた場合には、たとえ築年数が浅くても早めに専門業者に相談して塗装工事を検討すべきでしょう。日ごろから建物の外観をチェックし、異変を感じたら長期修繕計画の周期を待たずに対処することが肝心です。
外壁塗装は大規模修繕と連動して考えるべき
マンションの外壁塗装は計画的な大規模修繕工事と一体的に考えるのが基本です。国土交通省も約12年ごとの大規模修繕を推奨しており、塗装の塗り替えもその周期に合わせて行うのが効率的だと示されています。
大規模修繕に合わせて外壁塗装を実施すれば、仮設足場を他の修繕作業と共用できるため足場設置・解体の費用を重ねて払う必要がありません。逆に言えば、塗装時期を逃して計画から外れてしまうと、後から単独で外壁塗装を行う際に足場費用など余分なコストが発生してしまいます。
さらに計画的に塗装メンテナンスを施しておけば、建物の深刻な劣化を未然に防げるため、次回以降の大規模修繕での補修範囲や費用を抑えられるメリットもあります。実際、築24~30年頃の第2回大規模修繕では旧塗膜の除去や下地補修に初回以上の手間と費用がかかる傾向があるとされますが、初回から適切に塗装と修繕を行っておけばその負担も軽減できます。
管理組合としては、長期修繕計画に従って外壁塗装の実施時期をあらかじめ積立金等で備えておくことが大切です。そうすることで「塗装を怠ったせいで想定外の出費や事故に見舞われる」という事態を防ぎ、マンションの安全・快適な環境と資産価値を長期にわたって守ることができます。
まとめ
外壁塗装を怠れば、マンションの劣化は確実に進行してしまいます。防水性能が低下して雨漏りのリスクが高まり、外壁のひび割れから内部の鉄筋が錆びれば構造体の寿命も縮んで安全性が損なわれます。見た目の悪化は資産価値の低下を招き、最終的には修繕費用が余計にかさんでしまう結果にもなりかねません。
こうした事態を避けるためにも、適切な塗り替え時期(目安として築10~15年程度)を把握し、劣化の兆候があれば早めに対処することが重要です。外壁塗装はマンションの長期修繕計画と連動させ、計画的に実施しましょう。定期的な外壁塗装による予防保全こそが、大切なマンションの美観と安全、そして資産価値を守る一番の近道です。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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