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マンションの長期修繕計画とは?作成費用や見直し方法、ない時の対処法

更新日:2025年08月25日(月)

本記事では、マンションの長期修繕計画の基本と重要性、作成にかかる費用、見直しの方法、マンションの長期修繕計画がない場合の対処法について解説します。適切な計画づくりと運用により、居住者の安全・安心な暮らしを将来にわたって支えるポイントを詳しく見ていきましょう。

本記事のポイント
  • 長期修繕計画の目的・定義や制度上の位置付けを理解できる。
  • 作成・見直しにかかる費用や自治体の助成制度を把握し、コスト対策の方法が明確になる。
  • 定期的な見直しや専門家活用、管理組合の組織づくりなど、計画を実効性あるものにする進め方がわかる。

マンションの長期修繕計画とは?

マンションの長期修繕計画とは、マンション共用部分の大規模修繕工事や主要設備の更新など、将来実施が予想される修繕工事の項目・時期・必要な費用を長期的(通常30年程度)に見積もった計画書です。

具体的には、防水工事・外壁補修・鉄部塗装・給排水管交換といった周期的に必要となる工事について、今後30年間程度でいつどんな工事が必要か、どれくらい費用がかかるかを一覧にしたものです。長期修繕計画はマンション管理組合で総会決議を経て策定・承認される公式な計画となります。

長期修繕計画を立てる最大の目的は、修繕積立金(将来の修繕工事に備えて区分所有者が積み立てる資金)の適正額を算出し、計画的に資金を準備することにあります。計画がなければ修繕積立金の妥当性を判断できず、将来必要な工事に備えることが困難です。逆に、長期修繕計画がしっかり策定されていれば「いつ・どの箇所を・どの程度修繕するか」の見通しが立ち、必要な積立金の額も根拠をもって設定できます。

国土交通省のマンション標準管理規約(標準的なマンション管理ルール)においても、管理組合の業務として長期修繕計画の作成・変更が位置付けられており、計画期間は少なくとも25年以上(新築時は30年程度)とし、外壁・屋上・給水管・窓枠等の主要部位の修繕時期と工事費を網羅した内容とすること、さらに計画内容はおおむね5年ごとに定期的に見直すことが必要だと定められています。

このように長期修繕計画は、マンションを長期に良好な状態で維持するため管理組合にとっての必須業務であり、実際、新築分譲時には事業主(ディベロッパー)から最初の長期修繕計画が作成・引き継がれるのが一般的です。

マンションの長期修繕計画を作成する費用

長期修繕計画の作成や見直しには専門的な知識と労力が必要であり、多くの場合は管理会社や建築士・マンション管理士(管理組合のコンサルタント資格)などの専門家に委託して作成します。その際の費用相場はマンションの規模や依頼先によって異なりますが、おおよその目安を把握しておきましょう。

管理会社に依頼する場合

すでに契約している管理会社が長期修繕計画の作成サービスを含んでいる場合もありますが、含まれていない場合は有償対応となります。有償の場合、新規に長期修繕計画を作成する費用は約50~100万円、既存計画の見直しで約10~50万円が相場です。管理会社によっては管理委託費に計画見直し費用が含まれていたり、他社へ管理会社を変更したタイミングで無償作成を提案してくれるケースもあります。

外部の専門家(マンション管理士・建築士など)に依頼する場合

管理会社以外の第三者に依頼することも可能です。その場合の費用相場は、新規作成で約50万円~(規模により数百万円の場合も)、見直しで約30万円程度が目安とされています。専門家に依頼すれば中立的な視点や高度な知見が得られる利点がありますが、建物診断(劣化診断)の範囲によって費用は増減します。例えば、専門家でも必ずしも詳細な現地調査や診断を含めるとは限らず、調査範囲が限定的な場合は相場より安く済むこともあります。

管理組合が自ら作成する場合

国交省のガイドラインや標準様式を参考にしつつ、組合が主体となってエクセルなどで計画書を作る方法もあります。費用面ではもっとも安く済みますが、素人だけで30年先を見据えた計画を立てるのは非常に難しく、途中で挫折してしまう組合も多いのが実情です。現実的には予算や精度に応じてプロに依頼することが推奨されます。

なお、自治体や公的団体による費用支援制度も活用できます。例えば東京都渋谷区では、区内マンション管理組合が専門家に長期修繕計画の作成・見直しを委託する費用の半額(上限20万円)を補助する制度があります。そのほか、新宿区や文京区などでもマンション長期修繕計画作成費の助成を受けられます。このような公的支援の存在は、計画作成に数十万~数百万円単位の費用がかかることの裏返しでもあり、管理組合にとって長期修繕計画は重要な投資といえます。費用面が課題の場合は、自治体の補助制度や「マンション管理センター」のような公的団体による低廉な診断サービス(登録組合なら1棟あたり数万円以下での簡易診断・計画作成サービス等を積極的に調べて活用すると良いでしょう。

マンションの長期修繕計画の見直し方法

長期修繕計画は一度作って終わりではなく、定期的に見直して最新の状況に合わせることが肝心です。国のガイドラインでも「少なくとも5年に1度」の見直しが望ましいとされています。実際、建物の劣化具合や工事費単価は時間とともに変化しますので、計画をアップデートしなければ現実とのズレが生じます。ここでは、長期修繕計画を効果的に見直すための3つの方法について説明します。

建物の現状を把握する(専門家による劣化診断の実施)

適切な見直しの第一歩は、マンションの現在のコンディションを正確に把握することです。具体的には、専門家による建物・設備の劣化診断(建物診断)を行い、外壁や屋上防水、設備配管など各部位の劣化状況を評価します。劣化診断には費用がかかりますが、詳細な現地調査を行うことで修繕の優先順位やタイミング、概算費用を判断できるため、長期修繕計画を精度高く見直すために欠かせません。専門家による診断結果を踏まえて、長期修繕計画の前提条件(現在の建物状態や劣化の進行度合い)を最新情報にアップデートしましょう。

標準様式や最新データを基に修繕項目・費用を再設定する

建物診断の結果や最新の工事費単価動向を踏まえ、長期修繕計画の工事項目や修繕周期、費用を見直す作業に入ります。国土交通省が公表している「長期修繕計画標準様式」には、一般的な修繕項目とその周期・工事内容の例が網羅されています。これを叩き台に、自分たちのマンション独自の事情(建物規模、構造、過去の修繕履歴、新材料・新工法の導入状況など)を考慮して必要な項目や周期を調整します。

例えば効率化の観点から、時期が近い工事は一括して同時期に行うよう計画を組み替えることで足場費用を節約できる可能性があります。また費用面では、直近の類似マンションでの修繕工事実績や専門業者からの見積もり情報を参考に単価を設定し直します。修繕積立金の収支シミュレーションも重要です。見直した工事項目・費用を反映し、今後の工事支出と積立金残高の推移をシミュレーションして、不足や過不足がないかチェックします。

国交省の調査では、約37%のマンションが長期修繕計画を定期的に見直せていない実態も明らかになっています。物価上昇や工法の進歩で当初計画との差異が生じるのは避けられないため、5~7年程度ごとに必ず計画を更新し、常に適切な資金計画になっているか確認することが大切です。

参考:国土交通省|令和5年度マンション総合調査の結果について

合意形成と計画書の承認(総会決議)を行う

長期修繕計画の見直し案がまとまったら、マンションの区分所有者全員に内容を説明し、合意形成を図るプロセスが必要です。作成した見直し案は理事会や修繕委員会だけで完結させず、組合員への丁寧な説明会を開いて意見を募ります。専門用語が多い計画書ですが、図表を用いるなど工夫して、修繕積立金の将来残高や工事スケジュールのイメージを共有しましょう。組合員からの疑問や不安の声にも専門家の助言を交えつつ回答し、必要に応じて計画案に微調整を加えます。その上で、管理組合の総会決議を経て正式に新しい長期修繕計画を承認します。総会での決議を経ることで計画の位置付けが明確になり、今後の管理運営もスムーズになります。

また、見直しには1~2年程度の期間を要することが一般的です。そのため、見直し作業自体も計画的にスケジュールを組み、次回大規模修繕の数年前から準備に取りかかるなど余裕を持った進行が望ましいでしょう。管理組合内に専門委員会やプロジェクトチームを設置して、継続的に計画を検討・推進する体制をとると理想的です。こうした合意形成プロセスを踏むことで、計画書が単なる紙の資料ではなく組合全体の共通認識となり実行力を伴う計画となります。

マンションの長期修繕計画がない時の対処法

本来、管理組合は長期修繕計画を策定する義務を負っていますが(国交省標準管理規約にて規定)、現実には長期修繕計画が存在しないマンションも一部に見られます。」新築後間もない場合などは未整備でも問題が顕在化しにくいですが、計画がないまま築年数が経過すると将来的な修繕資金が不足し、大規模修繕が実施できなくなる恐れがあります。ここでは、長期修繕計画がない場合に管理組合やオーナーが取るべき3つの対処法を紹介します。

管理組合の体制を立て直し計画策定に着手する

まず、管理組合を機能させることが出発点です。長期修繕計画がないマンションでは、そもそも管理組合の運営が十分でなかったり、理事会が計画の重要性を認識していないケースがあります。対処の第一歩は、組合内で長期修繕計画の必要性を共有し合意することです。具体的には臨時総会や理事会で「計画策定の議題」を正式に挙げ、計画づくりの専門委員会や修繕委員会を立ち上げるなど組合内の体制を整備します。管理規約に長期修繕計画作成が管理組合の業務であることを再確認し、組合として計画を策定する方針を明文化しましょう。必要に応じてマンション管理士など外部のマンション管理コンサルタントに相談することも有効です。ポイントは、区分所有者一人ひとりが当事者意識を持つことです。長期修繕計画がない状態の危険性(場当たり的な修繕になりやすく、資金不足で大規模修繕に対応できない等)について資料を用いて説明し、「このままでは建物の価値が下がり生活環境も悪化しかねない」ことを認識してもらいます。組合が一丸となって計画策定に取り組む体制ができれば、次のステップに進みやすくなります。

専門家の力を借りて速やかに長期修繕計画を策定する

管理組合内の合意が得られたら、速やかに長期修繕計画の策定作業を開始します。計画がないマンションの場合、早急に専門家の協力を得て建物の現況調査と計画立案を行うことが重要です。まずは前述のように建築士等による劣化診断を実施し、建物の状態データを収集します。次に、その結果に基づき必要な修繕工事リストと概算費用、スケジュールを作成します。国の標準様式や他のマンションの事例を参考にしつつ、自マンション独自の事情を反映したオーダーメイドの長期修繕計画書を作り上げます。ここでもマンション管理士や長期修繕計画の実績豊富なコンサルタントに依頼するのがおすすめです。専門家であれば計画策定のノウハウがあり、建物や設備ごとの劣化傾向・修繕周期に精通しています。また、資金計画の面では、適正な修繕積立金額の算定が急務です。計画策定と同時に、現在の積立金残高や月額積立額を見直し、将来必要となる額に不足があれば積立金の増額を検討します。実際、長期修繕計画がないマンションでは積立金額が過小なケースが多く、大規模修繕に必要な数千万円単位の費用を賄えない恐れがあります。必要であれば一時金の徴収や管理費からの振替、金融機関からの借入も検討に入れ、資金計画を立てましょう。新しい長期修繕計画と資金計画が整えば、総会で正式承認し、計画に基づく修繕積立金の積立を開始・強化していきます。

行政や公的団体の支援制度を活用し専門家に相談する

長期修繕計画がないマンションの立て直しには専門家の助言と公的支援の活用が大きな助けとなります。各自治体では、老朽化マンションの管理不全を防ぐために計画策定支援制度を設けている場合があります。例えば、横浜市では、計画がないか15年以上更新されていないマンションを対象に、長期修繕計画作成費用の一部を市が補助して計画策定を促進しています。行政の補助金制度を積極的に調査し、要件に合致する場合は申請を検討しましょう。

また、国土交通省が設けた「マンション管理計画認定制度」では、長期修繕計画の有無や内容も評価基準となっており、計画が適切に策定・運用されているマンションは行政から良好な管理状況として認定を受けることができます(各自治体への届け出制度)。このような制度を活用し、専門家と行政のサポートのもとで計画を策定・実行していけば、計画未整備のマンションでも安全・安心な管理体制を取り戻すことが可能です。

安全・安心の修繕を実現するにはどうすればいい?

マンションで安全・安心な修繕(維持管理)を実現するためには、ここまで述べてきたように長期修繕計画を適切に策定し、継続的に見直しながら活用することが基本となります。

計画的な維持修繕が行われていれば、老朽化による思わぬ事故や重大な不具合の発生リスクを低減できますし、建物の快適性や資産価値も維持向上できます。逆に場当たり的な対応や修繕の先送りは、安全面でも資産面でもデメリットが大きく、ひとたび建物の劣化が深刻化すると取り返しがつかなくなる場合もあります。居住者が安心して暮らし続けるためには、そのマンションの状況に合った長期修繕計画書を作成し、その後も内容が適切かどうか定期的に見直し続けることが求められます。

具体的なポイントとしては、十分な修繕積立金の確保と適時の大規模修繕工事の実施が挙げられます。適正額の積立金を毎月コツコツ積み立てておけば、急な設備故障や大型工事にも計画通りに対処でき、居住者に臨時の高額負担を強いる心配も減ります。国のガイドライン改訂により、長期修繕計画の計画期間は「30年以上かつ大規模修繕工事を2回含む期間以上」と明記されました。これは少なくとも2回分の大規模修繕を見据えた計画を立て、将来世代まで見通した資金計画を作るべきという趣旨です。1回目の大規模修繕だけでなく、築30~40年に及ぶ2回目の工事まで視野に入れておくことで、建物の長寿命化と安全性向上を図ります。

さらに、専門家の力を適切に借りることも安全・安心な修繕には不可欠です。マンション管理士などのコンサルタントに管理組合運営や資金計画の助言を仰げば、理事会だけでは気づけないリスクへの対策も事前に打てます。積極的に第三者の知見を取り入れ、「経験・専門性・権威性・信頼性(E-E-A-T)」の高い体制でマンションの修繕を進めることが、結果的に居住者の安全・安心につながるのです。

最後に、日頃から組合員同士の情報共有と意識向上を図ることも重要です。長期修繕計画や建物の状態について定期的に周知し、各家庭がマンションの将来に関心を持つよう促しましょう。管理組合の総会や広報誌で修繕積立金の状況や今後の工事予定を公開し、透明性の高い運営を行えば、区分所有者の理解と協力も得やすくなります。

「自分たちのマンションは自分たちで守る」という意識が醸成されれば、計画に基づく修繕工事の実施も円滑に進みます。こうした組合の努力により、マンションは長期にわたり良好なコンディションを保ち、安全・安心な暮らしを次の世代へと引き継ぐことができるでしょう。

まとめ:マンションの長期修繕計画は専門家に相談しよう

マンションの長期修繕計画は、快適な居住環境と資産価値を維持するための青写真です。計画の有無や内容がマンションの将来を大きく左右すると言っても過言ではありません。適切な長期修繕計画を策定し、定期的に見直していくことは、管理組合の重要な責務です。計画的な修繕と資金確保ができていれば、必要な時に必要な工事を実施でき、結果的にマンション全体の安全性と快適性が守られます。また、計画がない場合でも焦ることはありません。本記事で紹介した対処法を参考に、一つひとつ着実に対応していけば、十分に巻き返しは可能です。

とはいえ、実際に計画を作成・見直しするには専門知識が要求されます。マンション管理や修繕に詳しい専門家への相談を積極的に検討しましょう。第三者の視点を交えることで、見落としがちな課題が浮き彫りになり、より実効性の高い計画づくりができます。加えて、自治体の補助金情報や国の制度もチェックし、使える支援は使うのが得策です。マンションの大規模修繕や維持管理は長いスパンのプロジェクトですから、プロのサポートを受けることで管理組合の負担も減り、確実な遂行につながります。

結論として、マンションの長期修繕計画に悩んだら一人で抱え込まず、ぜひ専門家に相談してください。適切な計画の下で十分な準備をしておけば、将来にわたって安心して暮らせる住まいが実現します。あなたのマンションの将来像を描くためにも、今こそ専門家の知見を借りながら行動に移しましょう。それが安全・安心で資産価値の高いマンション生活を維持する最善の方法です。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

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