機械式駐車場「固定化」とは? 背景・メリットと検討のポイント
更新日:2025年12月23日(火)
マンションの機械式駐車場は、かつて限られた敷地で駐車台数を確保する有効策でした。しかし近年、車の大型化や住民の車離れ、高齢化による免許返納、カーシェア普及などの影響で機械式駐車場の利用率は低下傾向にあります。 一方で機械式駐車装置の定期点検や部品交換といった維持コストは利用状況に関わらず発生し続け、管理組合の財政を圧迫するケースが増えています。こうした背景から、機械式駐車場を稼働させず平面駐車場のように使う「固定化」という選択肢が注目されています。 固定化とは機械式駐車設備を撤去せずに装置を動かない状態で平置き駐車場化する手法で、維持費削減策としてマンションで採用例が増えています。 この記事では、機械式駐車場固定化の概要と背景、メリット・デメリット、実施判断のフロー、工事方法と費用感、法的・技術的な留意点について解説します。
- 本記事のポイント
- 機械式駐車場固定化の背景とメリット(維持費・管理負担削減、利用性向上)を理解できる
- 固定化工事の判断基準や費用・工期、注意点など実務的なポイントを整理できる
- 管理組合での合意形成や法令・条例の確認、住民説明の進め方など実践的な進行方法を学べる
機械式駐車場固定化の背景と必要性
利用率低下と過剰設備の問題
高度経済成長期から平成初期にかけ、多くのマンションで世帯数分の駐車場(多くは機械式)が整備されました。自治体条例で一定規模以上のマンションには所定台数の駐車場設置が義務付けられていたこともあり、実際の需要以上に駐車区画が作られたケースもあります。
しかしここ10~20年で車に対する意識は大きく変化し、若年層の車離れや都市部での「車を持たない生活」の一般化、さらに昨今は高齢による免許返納者の増加もあって、マンション付帯駐車場の空き区画が目立つようになりました。特に従来の機械式駐車場は車高制限(例: 高さ1550mm程度)があるため、最近主流のSUVやミニバンが入庫できず利用者離れを招いています。
新築分譲マンションでも駐車場設置率は2007年をピークに低下傾向で、都心では戸数に満たない駐車台数しかない物件も増えています。このように機械式駐車場の需要は今後も大きな回復が見込みにくく、設備が過剰気味になっているのが現状です。
維持コスト増大と管理組合財政への影響
機械式駐車場の維持管理には多額の費用が伴います。法令により少なくとも年4回(3ヶ月に1回)の定期点検が義務付けられ、モーター・チェーン・油圧機器など消耗部品の交換や定期調整が必要です。また経年劣化に応じた塗装補修や30年ほどでの設備更新(リニューアル)も避けられません。
国土交通省のガイドラインによれば、例えば2段式で1台あたり月約6,000~7,000円、4段式では約12,000~14,000円程度の修繕費積立が必要と試算されています。50台規模の機械式駐車場なら毎年50~60万円もの保守点検費がかかり、25~30年後には機器更新に総額数千万円規模の出費が見込まれます。
一方で前述の通り利用台数が減れば駐車場使用料収入が減少し、不足分を管理費や修繕積立金から補填せざるを得なくなります。機械式駐車場は使われなくなると「金食い虫」となって管理組合の財政負担となり、自家用車を持たない住民にも不公平なコスト負担を強いる状況になってしまいます。
固定化という解決策の台頭
上述の課題を受け、全国的に機械式駐車場の平面化(固定化)を検討・実施するマンションが増えています。機械式駐車設備を撤去または固定化すれば、毎年の点検費や故障修理費が不要となり、将来的な高額な機器更新費用も節約できます。長期的に見れば固定化はマンション全体の管理コストを大幅に削減しうる手段であり、空き区画に悩む管理組合にとって有力な選択肢となってきました。
機械式駐車場を固定化するメリット
維持費・管理負担の削減
固定化最大の利点は、機械式なら必須であった定期点検やメンテナンス費用が不要になることです。点検契約・保守料や部品交換費が削減できるため、長期的に見ると管理組合のコスト負担が大幅に軽減されます。また、機械装置が稼働しなくなることで故障対応や操作説明など管理業務の手間も減り、管理会社・理事会の負担軽減にもつながります。
車種制限がなくなる
機械式では高さ・幅・重量などで駐車できる車種が限られていましたが、平面化すれば基本的にどんな車でも駐車可能になります。背の高いSUVやミニバン、重量のある車でも問題なく駐車できるため、住民が車を買い替える際に「マンションの駐車場に入らない」という心配がなくなります。これは将来的なEV(電気自動車)の導入時にも有利で、充電設備設置もしやすくなるでしょう。
利便性・安全性の向上
平面駐車場になれば、車の出し入れに機械操作の待ち時間が発生しません。忙しい朝に順番待ちをしたり、帰宅時に車を取り出すために何分もかける必要がなくなります。停電時でも機械式のように車が出庫不能になる心配がないため、防災面の安心感も高まります。また、機械式で懸念される誤操作による事故や装置からの転落事故といったリスクも皆無となり、誰でも安全に利用できる駐車場になります。
スペースの有効活用
機械式を固定化して平置き化すると、利用者が少ない場合に余剰スペースの活用が検討できます。例えば空いた区画を来客用駐車場に転用したり、自転車置き場やゴミ集積所、倉庫代わりのトランクルームとして使うことも可能です(ただし後述の法規制に注意が必要です)。実際に機械式駐車場を平面化して屋内駐輪場を新設したマンションもあります。ただしこうした転用には制約もあるため、計画段階で十分検討が必要です。
居住者間の公平性向上
機械式駐車場の維持費は、多くの場合管理費や修繕積立金からも拠出されます。そのため、自家用車を持たず駐車場を利用しない住民にとっては、自分が使わない設備の維持にお金を払っている状況でした。固定化によって駐車場維持コストの削減や他用途への転用が実現すれば、「使う人だけが負担する」という公平性が高まり、非利用者の不満も和らぐでしょう。駐車場問題が原因で発生していた居住者間の軋轢が解消され、マンション全体の満足度向上につながる可能性があります。
固定化のデメリットと注意点
駐車台数の減少
最大のデメリットは、機械式特有の多段利用ができなくなるため駐車可能台数が減ることです。例えば3段昇降式で1基3台収容していたものを固定化すると、原則1基あたり1台しか停められなくなります。空き区画が多い状況であれば問題ありませんが、将来的に住民の車保有数が増えた場合、駐車場不足に陥るリスクがあります。固定化を決断する際は、今後の需要見通しを慎重に見極める必要があります。
一度固定化すると元に戻せない
固定化は基本的に不可逆の施工だと考えましょう。機械装置の一部撤去や構造固定を行うため、後から「やっぱり機械式に復旧したい」となっても容易ではありません。実質的には設備を新規更新するのと同程度の費用がかかる可能性があります。また安易に溶接固定してしまうと、いざ全撤去する際に切断作業が増えて工事が困難になるケースもあります。将来完全撤去や駐車場廃止の計画がある場合、固定化工事の方法に十分配慮する必要があります。
初期費用がかかる
固定化によって維持費は削減できますが、そのための工事費用の負担は避けられません。平面化工事には規模にもよりますが数百万円単位の費用が発生します。長期的には元が取れるとはいえ、一時的に修繕積立金などからまとまった支出を要するため、資金計画を慎重に立てる必要があります。資金に余裕がない場合、固定化を見送って機械式運用を続けざるを得ないケースもあり得ます。
その他の技術的制約
機械式を撤去せず構造を流用する固定化では、施工後も機械装置の一部(パレットやフレーム)が残ります。そのため見た目の圧迫感は完全撤去に比べて残ることがあります。またピット(地下部分)のある駐車場の場合、平面化後も地下ピット自体は残るため、排水ポンプの維持管理は引き続き必要です。さらに、ピットへ砕石を充填する「埋め戻し工法」は、建物基礎へ過剰な荷重を与える恐れや地盤沈下リスクから採用できない場合もあり、その場合はピットにフタをする鋼製床工法か、今回テーマの固定化工法を選ぶことになります。
固定化実施の判断フローと進め方
機械式駐車場の固定化はマンション共有設備の大きな変更となるため、以下のステップで慎重に検討・合意形成を進めることが重要です。
現状の利用率と将来需要の把握
まず現在の駐車場利用状況を正確に洗い出します。全何区画中何台が常時使われているか、空きが多いのはなぜかを把握しましょう。住民へのアンケート調査も有効です。「車を所有していない」「機械式だから借りていないが平置きなら使いたい」などの潜在需要も確認します。併せて将来の需要見通しも検討します。住民の高齢化進行や新規入居者層の傾向、周辺の月極駐車場の空き状況、EV普及やカーシェア拡大なども踏まえ、本当に今後も現状台数の駐車場が必要かを見極めます。地方で各世帯が車を必ず所有する前提の立地なら全撤去ではなく一部だけ平置きに改修して台数を確保する選択肢も考えられます。
長期修繕計画に基づくコスト比較
次に、経済的な検討です。現在の長期修繕計画や修繕積立金の計画を見直し、機械式駐車場に関する修繕費がどのように見込まれているかを確認しましょう。例えばあと数年で機械装置の大規模な改修・更新時期が迫っている場合、その費用が積み立て済みか、不足であれば将来一時金徴収や積立金大幅アップが避けられません。こうした維持継続コストと、実際に撤去・平面化する場合の初期費用を比較検討します。撤去工事や平面駐車場への改修工事には初期費用がかかりますが、その額は機械の方式や台数、工法によって大きく異なります。小規模(8台程度)なら数百万円、30台以上の大型では数千万円規模になるケースもあります。さらに業者ごとに見積もり額が大きく異なるため、必ず複数の業者から見積もりを取得し比較検討しましょう。工事費の捻出方法も合わせて考える必要があります。修繕積立金に余力があるか、足りなければ区分所有者から一時金徴収を行うのか、といった資金計画を立てます。金融機関から管理組合向けローンを借り入れて平面化工事を行い、将来的な維持費削減で捻出した分で返済するという手法も考えられます。
「機械式を維持し続けた場合に今後かかる総費用」と「撤去・平面化した場合の費用とメリット」を長期的なスパンで比較し、どちらが合理的かを見極めましょう。機械式駐車場の撤去は短期的には大きな支出を伴いますが、以降の維持費が不要になるため長期的には修繕積立金の健全化につながるとの指摘もあります。経済面のシミュレーションをしっかり行うことが大切です。
法令・条例制約の確認
機械式駐車場を廃止・固定化して駐車台数を減らす場合、関連法規の確認も欠かせません。まず所在地自治体の駐車場附置義務条例の適用有無を調べます。条例により新築時に戸数に応じた駐車場台数を用意することが課されていた地域では、既存マンションが所定の台数を下回る変更を行う際にも手続きや承認が必要な場合があります。
近年は車所有率低下を受けて条例自体が緩和・見直しされるケースもあり、機械式から平面駐車場への変更で台数が減少しても容認される例や、附置義務そのものを廃止した自治体も出てきています。いずれにせよ事前に管轄行政に相談し、撤去後の台数で問題ないか確認しておきましょう。
また法律上は駐車場も共用部分の用途変更にあたるため、管理規約の範囲内で台数変更が認められるかも確認が必要ですが、実務的には次項の総会決議(区分所有法上の特別決議)を経ていれば問題ないケースが多いでしょう。ただし条例違反だけは避けねばならないため、行政への変更届提出など必要な手続きを踏まえ法令面をきちんとチェックしてから計画を進めます。
住民合意の形成と総会特別決議の取得
機械式駐車場の撤去はマンションにとって大きな意思決定であり、住民の合意形成が不可欠です。区分所有法上、駐車場の平面化は共用部分の「重大変更」に該当すると解されるため、区分所有者全員の3/4以上の賛成による特別決議(※)が必要になります。管理組合の総会で特別決議を成立させるハードルは高く、場合によっては反対意見や慎重論も出るでしょう。
※2026年4月に区分所有法が大きく改正されるため、これまで決議が難しかったマンションでも意思決定がしやすくなる可能性があります。
円滑に合意形成するために、以下のような取り組みが有効です。
・理事会や専門委員会で十分な事前検討を行い、撤去の必要性やメリット・デメリットを整理した資料を作成する。
・住民説明会やアンケートを事前に実施し、意見交換の場を設ける。
・撤去しない場合の将来費用や、撤去した場合の費用シミュレーション結果を分かりやすく提示する。
・現在駐車場を利用している組合員(車所有者)の代替案を検討しておく。利用者にも納得してもらえる措置を用意し、不安材料を減らす。
・専門家の意見や他マンションの事例紹介を交えて説得力を高める。マンション管理士やコンサルタントなど第三者的視点を取り入れるのも有効です。
合意形成には時間がかかる場合もありますが、拙速に進めて否決されると逆に信頼関係を損ね長期化しかねません。丁寧かつ慎重な合意形成を図ることが不可欠です。特別決議が得られなければ計画自体進められないため、ここは腰を据えて取り組みましょう。なお、賃貸マンションの場合は所有者(オーナー)の判断で撤去可能ですが、やはり入居者への事前説明と理解醸成が望まれます。駐車場契約者には代替駐車場を案内するなど、誠意ある対応が求められます。
工事計画と駐車場運用の調整
実施が決まったら、現在駐車場を利用している人への配慮も大切です。機械式駐車場を全撤去する場合、そこに駐めていた住民は駐車場所を失うことになります。そのため、近隣で月極駐車場を確保できないか、あるいは敷地内の空きスペースに仮設の平置き駐車場を設けられないか、といった代替手段の検討が必要です。幸い最近は車所有者が減っているため、マンション敷地内でも一時的に数台分の仮設駐車場を作れたり、周囲の月極に空きが見つかるケースもあります。管理組合として利用者に不便を強いる期間をできるだけ短くする工夫をしましょう。
工事期間中の対応も重要です。撤去・平面化工事には規模にもよりますが数週間から数ヶ月を要することがあります。その間、騒音・振動など建物全体への影響や、駐車場が使用不能になる時間帯の調整など、施工業者とよく打ち合わせて支障を最小限にする計画が必要です。また工事中に車両を一時退避させる場所を確保し、利用者に周知しておきます。場合によっては工事の工程を段階的にして、半分ずつ撤去して残り半分はその間使えるようにする、といった方法も検討されます。
さらに、撤去後のスペース活用についても計画が必要です。平面駐車場にする場合、舗装や排水設備の整備をどうするか、地下ピットを埋め戻すのか鋼製架台で覆うのか(工法によりコスト・工期が異なる)など技術的な検討事項があります。仮に駐車場需要が将来ゼロに近い場合、思い切って駐車場以外の用途(トランクルームや駐輪場への転用等)に変更する選択肢もありますが、その際も建築基準法や区分所有者の同意などハードルは高いです。基本的には必要最小限の台数で平置き駐車場を整備する方向になるでしょう。
専門家(建築コンサルタントや施工業者)とも連携し、現実的かつ綿密な工事計画を策定することが重要です。費用面・法規面・スケジュール面など総合的に検討し、想定外のトラブルが起きないよう準備します。こうした周到な準備を経てこそ、撤去後に「やっぱり不便になった」「想定外の費用が出た」という不満を防ぎ、長期的に見てマンションの資産価値と住民満足度を高める結果につながります。
固定化工事の方法と費用・期間の目安
固定化工法の概要
機械式駐車場の固定化とは、既存の機械装置を可能な範囲で残しつつ、安全に固定して平置き利用に転換する工法です。具体的には、例えば3段式の装置の場合、上段・中段のパレット(車台)を撤去し、下段パレットを地上階の高さで固定します。残置した柱・梁には専用の金具(ブラケット)でコンクリート壁に固定補強を施し、耐震性を確保します。既存パレットを流用するため、鋼材床を新設する完全平面化よりも材料費・工期を大幅に圧縮できるのが特徴です。実際、固定化工法は標準化された施工手順があるわけではなく、各現場の構造や装置形式に応じてオーダーメイドで工事方法を設計します。そのため業者の技術力や経験によって仕上がりに差が出やすく、後述するように施工業者選定が重要です。
他の平面化工法との比較
機械式駐車場を平面化する方法には、固定化のほか「全撤去して平面駐車場化する」ケースもあります。全撤去する場合、地下ピットがあるときは①砕石等でピットを埋め戻して地面を均す方法、または②ピットに鉄骨架台と鋼板床を設置して蓋をする方法が取られます。
埋め戻しは比較的安価ですが、建物構造への荷重影響から採用できない場合もあり、実際には鋼製床で蓋をする方法が標準的です。鋼製床工法では機械装置を完全撤去した上で柱梁を組み、亜鉛メッキ鋼板の床を敷設します。耐久性・耐震性に優れ半永久的に利用できますが、固定化に比べ費用は高額となりがちです。
一方、固定化工法は暫定的・中間的な対応とも位置付けられます。将来的に完全撤去する計画がある場合や、まずは維持費削減のため数年間固定化して様子を見たい場合などに適した方法と言えます。費用対効果の面では、同じ台数しか駐車できないなら鋼製床より固定化の方が合理的という判断も増えています。各工法にメリット・課題があるため、マンションの状況に応じて最適な方法を選択してください。
工事費用の相場
固定化工事にかかる費用は、機械式駐車場の規模(装置基数や段数)や工法によって大きく異なります。小規模なピット1段2段式で8台程度のケースなら数百万円程度、30台以上収容の大規模設備では数千万円規模になることもあります。部分撤去か全撤去か、埋め戻しか鋼板設置か、といった選択でも金額は変動します。また業者ごとに見積もり額が大きく異なることも珍しくないため、必ず複数社から見積もりを取得し比較検討しましょう。施工内容やアフターサービス、保証期間なども考慮し、総合的に判断することが大切です。
費用面では、固定化によって削減できる毎年の維持費と工事費を比較すると数年~十数年で投資回収できるケースが多いようです。長期の修繕計画を踏まえ、平面化工事費を早めに投資する方が得策か慎重に見極めてください。
工期の目安
工事に要する期間は、撤去規模や工法によってまちまちですが、目安として数週間から1~2ヶ月程度が一般的です。単純な固定化工事のみなら比較的短期間(数日~1週間程度/1基)で完了する場合もありますが、複数基に及ぶ場合や鋼製床設置まで行う場合は数ヶ月に及ぶケースもあります。事前に施工業者から工程表を提示してもらい、工期中の駐車場利用停止範囲や日程を周知しましょう。工事中は騒音・振動が発生するため、近隣や住民への告知・説明も忘れずに行います。特に集合住宅では日中在宅者もいるため、作業時間帯の制限など配慮を検討してください。
施工業者選定のポイント
固定化工事は既存設備を活かす分だけ高度な施工技術と安全管理が求められます。経験の浅い業者だと、後日パレットが傾斜したり錆びが進行して強度低下するなど不具合が起こる恐れがあります。「安全・格安・簡単」を謳う業者には注意が必要で、具体的な施工方法や固定方法をきちんと提示できる会社を選びましょう。例えば「専用ブラケットを用いコンクリート壁に確実に固定」「溶接箇所には防錆処理を実施」「将来撤去しやすいよう着脱可能な方法を採用」といったポイントを確認します。施工実績が豊富か、機械式駐車場メーカー出身の技術者がいるか、といった点も判断材料になります。工事中の事故リスクもゼロではないため、施工業者には十分な安全対策と賠償保険加入を求めておくと安心です。
固定化に伴う法的・技術的な注意点
建築基準法上の留意点
機械式駐車場設備は建築基準法上「工作物」として扱われ、延べ床面積に算入されない構造物です。そのため単に機械装置を撤去・固定化するだけで建築基準法上の用途変更になることは通常ありません。
ただし、機械式駐車場の跡地を物置やトランクルームなど人が出入りする別用途に転用する場合は話が別です。収納スペース等に改装するとその部分が建築物の延べ床面積に算入され、増築扱いで建築確認申請が必要になる場合があります。また人が常時出入りする用途とするなら、非常照明や換気、避難経路の確保など消防法上の設備基準も満たさなければなりません。これらをクリアするのは容易ではないため、現実には駐車場部分の用途変更はあまり現実的ではありません。転用するとしても届出や改修コストを考慮し、慎重に検討してください。
構造安全性と施工上の注意
固定化工事を行う際は、構造的な安全確保が最優先事項です。例えば機械を停止させたまま点検もせず地上段だけを使い続けるのは非常に危険です。支えを失ったパレットが突然落下する事故も起こり得ます。必ず専門業者により所定の補強固定を行い、安全性を確認してから利用しましょう。施工にあたっては、安易に全てを溶接固定しないこともポイントです。溶接だらけにすると防錆処理が難しく将来劣化しやすいほか、後で切断撤去する際に大きな手間となります。着脱可能なボルト留めや専用金具併用など、将来の選択肢を残す施工方法が望ましいでしょう。
また地下ピット付き駐車場の場合、埋め戻しによる荷重増で建物構造計算に影響が出ないか注意が必要です。場合によっては構造設計者に検証してもらうことも検討してください。さらに、工事後もピット内の排水設備は定期的に点検し、雨水が溜まって蚊の発生源にならないよう管理を続けましょう。固定化後の駐車場は一見手間いらずですが、完全撤去とは異なり残存構造物の管理責任が残ることを念頭に置きましょう。
まとめ
機械式駐車場の固定化(平面化)は、時代のニーズに即した合理的な設備見直し策です。利用率低下と維持費増大に悩むマンションでは、有力な選択肢となり得ます。ただし、駐車場という生活インフラに手を加える以上、慎重な検討と入念な合意形成が不可欠です。本記事で述べたように、現状把握から費用分析、法令確認、住民合意、施工計画まで一連のステップを踏み、専門家の協力も得ながら進めることで、管理組合としてベストな判断が下せるでしょう。
固定化工事を適切に行えば、マンションの維持管理コストは削減され、空き区画という負債が有効活用可能な資産へと転じます。将来を見据え、機械式駐車場の固定化を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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