マンション大規模修繕でエアコンが使えないのはなぜ?
更新日:2025年10月29日(水)
マンションの大規模修繕工事では、ベランダに設置されたエアコンの室外機が作業の妨げになることが多く、一時的に取り外されたり、カバーで覆われたりして使用できなくなるケースがあります。 以下では、その主な原因を具体的に見ていきましょう。
- 本記事のポイント
- エアコンが使用制限される主な原因(足場設置・防水工事・電気設備更新など)と停止期間の目安を理解できる。
- 管理組合が行うべき事前説明・代替策・高齢者配慮など、住民対応の具体的なポイントが学べる。
- エアコン停止時の熱中症・健康リスクへの対策や、快適に過ごすための実践的な工夫を知ることができる。
目次
1.足場や養生シートによる空気循環の阻害
外壁やベランダの修繕では、建物全体を囲うように足場や養生シートが設置されます。この際、室外機の周囲に金属フレームやシートが密集するため、吸排気がうまくできず空気の流れが滞ることがあります。風通しが悪くなるとエアコンの効率は大幅に低下し、過熱防止機能によって自動停止することもあります。
2. 塗料や粉塵から室外機を保護するため
外壁塗装では、飛散する塗料や粉塵が室外機内部に入り込むと、故障や性能低下の原因になります。このため、施工業者は室外機をビニールや専用カバーで覆う、あるいは一時的に取り外すといった措置を取ります。その間は、安全確保と設備保護の観点から、エアコンの使用を控えるよう求められるのが一般的です。
3. 防水工事や手すり交換などで一時移設が必要になる
ベランダの床防水工事や手すり交換の際には、室外機が作業スペースをふさいでしまうため、一時的に別の場所へ移動(仮設置)されることがあります。この場合、冷媒配管を取り外す必要があるため、冷暖房を使用できなくなります。また、建物によっては二段積みの室外機を採用しているケースがあり、上下の機器が工事箇所を覆ってしまうため、長期間使用できなくなる事例も報告されています。
4. 電気設備や配管工事の影響による一時停止
大規模修繕の内容によっては、建物全体の電気設備更新や配管工事が含まれる場合があります。このような工事では、一時的に電源が遮断されることがあり、エアコンへの電力供給が止まることもあります。
5. 一時的な対応策の例
工事期間中も居住者の快適性を確保するために、施工業者が配管を延長して室外機を仮設置するといった応急対応を行うこともあります。ただし、建物構造や安全面の制約から、すべての住戸で同様の対応が可能とは限りません。そのため、工事前に管理組合・施工業者・住民の間で使用制限の期間や代替策を共有しておくことが重要です。
エアコン使用が制限される期間はどのくらい?(期間と影響)
エアコンが使えない期間は工事内容によって異なりますが、短い場合は数日、長くても1~2週間程度が一般的です。特殊な事情がある場合を除き、大規模修繕の全期間(通常数ヶ月)ずっとエアコンが完全に使えないということはほとんどありません。多くの場合は、工事の一部期間や特定の日中時間帯に限った使用制限となります。
ただし、真夏や真冬に数日でもエアコンが使えないと、居住者の生活には大きな影響が出るため、十分な注意が必要です。
一般的なベランダ防水・塗装工事においては、室外機の一時移設から元に戻すまでに3~4日程度かかるのが目安です。小規模な補修工事なら2~3日間の停止で済みますが、外壁全面の塗り替えや複数の工事を同時に行う場合は、エアコンの停止が約1週間前後に及ぶこともあります。
さらに、建物全体の大規模改修や配管の総取替えが伴うケースでは、場所によっては累計で2週間以上エアコンが使用できないことも想定されます。
いずれにしても、工事期間中はずっとエアコンが使えないわけではなく、「◯月◯日から◯日間は使用不可」や「○曜日の昼間は停止」といった断続的な制限になる場合がほとんどです。
管理組合が行うべき事前説明と配慮(通知・代替策)
大規模修繕でエアコン使用が制限される場合、管理組合や修繕委員会は早めに住民に情報を周知し、生活への影響をできるだけ抑えるための配慮を行うことが重要です。
1. 事前通知と説明
施工会社は通常、工事開始の約1ヶ月前までに、工事スケジュールやエアコンが使えない期間を住民に通知します。工事中も天候などの影響で予定が変われば、掲示板や回覧、管理アプリなどを通じて随時最新情報を共有し、不安や不便を軽減します。
管理組合としても、事前説明会を開き、エアコン停止予定日や注意点を丁寧に伝え、住民からの質問に対応する場を設けましょう。特に真夏の工事では、冷房が使えないことによる熱中症リスクの増加について周知し、リスクと対策を共有することが大切です。
2. 工期設定の配慮
可能であれば、高温期や寒冷期を避けた工事期間の設定を検討し、住民の負担を軽減しましょう。
3. 代替冷暖房策の検討
エアコンが使えない期間に、代替の冷暖房を用意することも重要な配慮です。施工業者と相談して、室外機を一時的に別の場所へ仮設置する方法や、可搬式スポットクーラー(移動式エアコン)の貸し出しを検討できます。
ただし、これらには追加費用が発生することが多いため、あらかじめ「希望者には仮設配管や仮設室外機の設置対応が可能(費用負担は管理組合か個人で按分)」といった方針を決めておくと、トラブル防止になります。
安全面や費用面の制約から、全住戸での対応は難しい場合もありますが、専門業者の意見を踏まえ、合理的な範囲で検討しましょう。
4. 高齢者や小さな子どもがいる世帯への特別な配慮
日中に在宅することが多い高齢者や乳幼児のいる家庭には、特に丁寧な配慮が必要です。これらの世帯には、工事の進行状況やエアコン停止期間をこまめに報告し、必要に応じて扇風機の追加提供や一時的な避難先の案内などのサポートを行うと良いでしょう。
管理組合が該当世帯に個別に連絡し、体調や要望を聞き取る取り組みも有効です。また、自治体のクーラー開放施設など、近隣の避暑スペースの情報提供も安心感を高め、工事への協力を得やすくなります。
大規模修繕中のエアコン使用停止に伴う注意点と対応策
大規模修繕工事においては、エアコンの室外機や配管に工事が及ぶことから、一時的な不具合や調整が必要になる場合があります。こうした状況に備え、事前の準備と早期の対応が大切です。
事前の記録と確認
工事前に、各戸の室外機や配管周辺の状態を写真で記録しておくことをおすすめします。工事後に異常の有無を住民自身で確認し、気になる点があれば速やかに管理組合や施工業者へ連絡しましょう。
代表的な注意点
・外壁工事などで配管周辺のシーリング材を補修する際、施工の影響で冷媒の循環に支障が生じる場合があります。
・室外機の移動や再設置時に配管やドレンホースが損傷すると、水漏れや動作不良が発生することがあります。
・室外機の設置状態が不安定になると異音や振動、また排気通風の影響による室内の臭気逆流が起こる可能性があります。
これらは工事完了後に気づくことが多いため、住民は普段と違う症状がないか注意を払うことが重要です。
問題が見つかった場合の対応
違和感や不具合を感じたら、我慢せずにすぐ管理組合や施工業者の担当者に報告し、原因の調査と必要な修理を依頼しましょう。施工業者は通常、原因を調査した上で冷媒の再充填や配管の修繕、部品交換など適切な対応を行います。迅速かつ丁寧な対応が、トラブルの拡大を防ぎます。
補償に関する取り決め
室外機は通常、各戸の専有設備ですが、工事が原因と考えられる損傷に関しては施工業者の保証や保険が適用されることがあります。そのため、管理組合と施工会社の間で「工事による設備破損時の補償範囲」を事前に明確にしておくことが大切です。契約書や説明資料で確認しておくと、万一の際にスムーズな対応につながります。
大規模修繕工事中は、エアコンを含む設備の状況をこまめにチェックし、異変があれば速やかに連絡を取ることが、快適な住環境維持のポイントです。管理組合と施工業者が連携して対応することで、安心して工事を進めることができます。
エアコン停止中の熱中症リスクと健康被害への注意
夏の大規模修繕工事でエアコンが使えない期間は、室内が高温多湿となり熱中症のリスクが高まります。特に高齢者や乳幼児など暑さに弱い方は、重大な健康被害につながる可能性があるため、管理組合と居住者の双方が十分に注意し、万全の対策を講じることが必要です。冬場であれば低体温やヒートショックのリスクも考えられ、いずれの場合も「エアコンなしで過ごすことの危険性」を共有することが重要です。
真夏に窓を閉め切った状態でエアコンが使えないと、室内温度は急上昇し、熱中症のリスクが飛躍的に高まります。実際にエアコン停止中の室内は外気温よりもさらに高温になることもあり、熱中症警戒アラートが出るような日には、短時間の室内滞在でも脱水症状やめまいを引き起こす恐れがあります。特に日中ずっと自宅にいる高齢者は体温調節機能が低下しやすく、暑さによる体調不良が懸念されます。また乳幼児は地面からの熱の影響を受けやすく、自覚症状を訴えられないため周囲の配慮が欠かせません。冬場は暖房が使えず室温が低下して低体温症の危険があり、急激な温度変化によるヒートショックにも注意が必要です。
管理組合の対策としては、猛暑日が予想される場合に工事日程の調整(作業時間の短縮や順延)を検討したり、共用部のエントランスや集会室に冷房を設けて「誰でも使えるクールダウンスペース」を用意するなどの対応が考えられます。実際、あるマンションではエアコン停止期間中に自治会室を開放し、冷房を効かせて自由に利用できるようにしたほか、各戸にスポーツドリンクや冷却ジェルシートを配布し、熱中症予防を呼びかけた事例もあります。
居住者側の対策としては、工事期間中は無理に自宅にこもらず涼しい場所へ積極的に出かける、室内ではカーテンを閉めて直射日光を遮り、扇風機や保冷剤で体を冷やす、こまめな水分・塩分補給を心がけるといった基本的な予防策を徹底しましょう。高齢者のいる世帯では周囲の声かけも大切です。「エアコン停止期間は特に注意を」と家族や近隣同士で連絡を取り合い、体調に異変があればすぐに救急相談センター(#7119など)に連絡できる体制を整えておくと安心です。管理組合からも「熱中症には十分注意し、体調が優れない場合は遠慮なくご連絡ください」といったメッセージを発信すると良いでしょう。
まとめ
マンションの大規模修繕工事でエアコンが一時的に使えなくなるのは、室外機の移設や養生など、工事上やむを得ない事情によるものです。しかし、その期間や影響は事前の計画や配慮次第で大きく変わります。
管理組合は住民への丁寧な周知や代替策の検討を行い、居住者も工事スケジュールをしっかり把握して柔軟に対応することで、エアコン停止期間中も安全かつ快適に過ごすことが可能です。お互いに密なコミュニケーションを図り、必要なサポートを提供・活用しながら、工事による一時的な不便を乗り越えましょう。万が一トラブルが発生しても、冷静に適切な対処をすれば、工事完了後には再び安心して快適な生活が送れるはずです。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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