タワマンは解体できないのか?原因と老朽化したときにすべきことを解説
更新日:2025年03月05日(水)
充実した共用施設や高層階からの眺望など、タワーマンションは都市生活の憧れですが、その歴史は意外と古く、老朽化の問題も顕在化しつつあります。 タワマンの黎明期は1970年代で、1980年代のバブル経済を背景に需要が急増しました。しかし、当時建設された物件の中にはすでに老朽化が進んでいるものもあります。1990年代に入ると、バブル崩壊による地価の下落や建築基準法改正により供給が加速。現在のタワマンブームへとつながりました。 多くのタワマンが並ぶ都市の景観が形成される一方、老朽化に伴う維持管理や建て替えの課題が避けられません。実際に、老朽化したマンションの解体は年々増加しており、今後タワマンでも進む可能性があります。決して安い買い物ではないため、所有者にとって老朽化は無視できない課題です。 この記事では、タワマンの老朽化がもたらす課題に焦点を当て、その影響や対策について考えます。
- 本記事のポイント
- タワーマンションの解体が難しい理由と必要な条件がわかる。
- 老朽化によるリスクや既存不適格物件の課題など、解体が必要になる主な理由が理解できる。
- 解体を検討する際の費用相場、工事会社の選び方、合意形成の進め方など、具体的な対策が学べる。
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タワーマンション(タワマン)は解体できないのか?必要な条件と課題
一言にタワーマンションを解体するといっても、実際には様々な検討が必要です。特に、区分所有者間の合意形成が最大のハードルとなります。近年、マンションの老朽化や建て替えは住宅市場の重要課題と認識され、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」により、解体の必要性やその根拠を明確にすることが求められるようになりました。この法律により、老朽化したマンションの建て替えや解体を円滑に進めるための枠組みが整備されつつあります。
タワマンの解体が必要になる理由
タワーマンションは一般のマンションと比べて耐久性が高いと考えられがちですが、様々な理由で解体が必要になるケースがあります。ここでは、主な理由を3つに分けて解説します。
理由1 老朽化が引き起こす安全性の低下とデメリット
年月の経過とともに老朽化が進行し、解体や建替えが必要となる場合があります。安全性や居住性に直接影響を及ぼすため、所有者や管理組合にとって重要な課題となります。
老朽化による解体
タワーマンションは強固な構造を持っていますが、築年数が経過するにつれて建物全体の劣化は避けられません。
特に、配管や設備の老朽化(高層階まで伸びる給排水管や電気設備の更新が困難)や、外装や共用部の劣化(外壁のタイル剥落やエレベーターなどの維持管理コストの増加)などの問題が進行すると、修繕や維持管理のコストが増大し、最終的には解体や建替えを検討せざるを得ない状況に陥ることもあります。
修繕の対象となる区分
マンションの修繕の対象は、大きく「主要な構造部」と「それ以外」に分けられます。主要な構造部には、建物の骨組みとなる柱や梁、基礎部分が含まれ、建物全体の安全性を支える重要な役割を果たします。タワーマンションの主要な構造部は、鉄筋コンクリート造が一般的です。国土交通省が発表したデータによると、鉄筋コンクリート造の集合住宅の平均寿命は68年とされています。しかし、外壁やシーリング等の適切なメンテナンスや施工の工夫により、100年以上の耐久性を維持することも可能です。
一方、それ以外の部分には、外装、内装、配管、電気設備などが含まれ、居住環境の利便性や快適性に関わる要素となります。適切なメンテナンスを怠ると、主要な構造部に悪影響を及ぼす可能性が高まります。所有者や管理組合は、日頃から建物の状態を定期的に把握し、将来の対策を計画的に検討しておくことが求められます。これにより、住民の安全と快適な生活環境を維持できるのです。
理由2 既存不適格物件が抱える課題と今後の懸念
既存不適格物件とは、完成当初は法令に適合していたものの、その後の法改正や規制強化により、現在の基準に適合しなくなった建物を指します。ただし、これらの建物は現状のまま使用し続ける限り、直ちに違法とはなりません。例えば、耐震基準や容積率、消防法規などの変更により、既存の建物が新たな基準を満たさなくなることがあります。既存不適格が解体の要因になるのは以下のようなケースが考えられます。
安全性の確保
耐震性の不足により、居住者の安全が脅かされる場合、解体して建て替えることで安全性を高める必要があります。
法的、経済的な制約
増改築や用途変更が必要となる場合、現行法規に適合する必要があります。このため、既存不適格の解消コストが高額になる場合、解体して建て替える方が長期的に見て経済的と判断されることがあります。
資産価値の維持・向上
既存不適格の状態が続くと、資産価値の低下や売却時の不利な条件が生じる可能性があります。解体して新築することで、資産価値を回復・向上させることが期待できます。
中でも、1981年の耐震基準の変更による既存不適格は住民の安全性の観点から大きな懸念事項として捉えられています。既存不適格は、法改正とともに多くのマンションが直面する課題です。安全性や資産価値、法的制約を総合的に考慮し、適切な情報収集と専門家の意見を取り入れ、最良の選択を行うことが重要です。
理由3 事業主の瑕疵(かし)による解体
一般的に、マンションの解体は「老朽化が進んだ場合」に行われるものですが、事業主の瑕疵が原因で解体を余儀なくされるケースがあります。これは、施工ミスや設計上の欠陥が後になって発覚し、建物の安全性に重大な影響を及ぼす場合に起こります。住民にとっては想定外の事態ですが、法的な仕組みを理解し、適切に対応することが重要です。
瑕疵担保責任とは
「瑕疵」とは、マンションの主要な構造や設備に欠陥があり、期待される安全性や快適性が損なわれる状態を指します。これに対する事業者の責任は「瑕疵担保責任」として法的に定められています。新築マンションでは、引き渡し後10年間、事業主が不具合や欠陥に対して責任を負う義務があります。この期間内に重大な瑕疵が発覚されると、所有者は事業主に対応を求めることが可能です。
建て替えが必要な大きな瑕疵とは
補修では対応しきれない瑕疵が発覚すると、最終的に建て替えが必要になります。福岡県のタワーマンションの事例では、免震設備の設計データの偽装が発覚し、解体が決定されました。単なる補修では解決できず、住民の安全を確保できないと判断されたためです。このように、耐震基準を満たさない設計ミスや、主要な構造部分(柱・梁・基礎など)に欠陥がある場合、建て替えが検討されることがあります。表面的には問題がなくても、建物全体の強度に影響を与える瑕疵があれば、大規模な対策が必要になるのです。
事業主から得られる補償内容
タワーマンションの解体は、多くの人にとって予想外の出来事です。しかし、事業主の瑕疵が原因であれば、法的に適切な補償を受けることができます。とはいえ、補償の範囲や実際の対応はケースバイケースのため、日頃から契約内容や法的枠組みを確認し、万が一の事態に備えておくことが大切です。長く安心して住み続けるために、知識を持っておくことが何よりの備えとなるでしょう。
タワマンが老朽化したときにやるべきこと
それでは次に、タワーマンションの老朽化が表面化してしまった場合には、どのような対策が必要か確認していきましょう。
その1 適切な価格の見積もりを取る
劣化が進んだ箇所の修繕や改修を検討する際には、複数の業者から「相見積もり」を取得することが重要です。これにより、各業者の提案内容や価格を比較し、最適な選択が可能になるからです。相見積もりを依頼する際は、各社に「相見積もりであること」を伝えるのも一つの手法です。競争原理が働き、コスト削減や品質の向上が期待できる場合があります。また、見積もりの内容を精査することで、各業者の提案の違いや特徴を把握し、自己の物件に最適な計画を立案できるようになります。
その2 失敗を避けるために信頼できる工事会社を見つける
信頼できる工事会社を見つけることは、タワーマンションの修繕工事の成功において極めて重要です。適切な業者を選定するためには、以下のポイントを参考にしてください。
実績と技術力
まず、実績と技術力を確認しましょう。タワーマンションの修繕業者は、特殊な構造や高所作業に精通している必要があります。具体的な事例や過去のプロジェクトを確認することで、その業者の技術力や対応力を把握することができます。また、インターネット上のレビューサイトや専門の掲示板なども活用し、多角的に情報を収集してみましょう。
提案力、コミュニケーション能力
次に、提案力も重要なポイントです。現状の問題点を的確に把握し、最適な修繕プランを提案できる業者は、技術力だけでなく、顧客のニーズを深く理解している証拠です。具体的な提案内容や見積もりの詳細を確認し、業者の対応力や柔軟性を評価しましょう。また、コミュニケーション能力も大切な要素です。打ち合わせや相談時の対応を通じて、業者の姿勢や誠実さを見極めることができます。
施工体制
提案時は営業担当が窓口になりますが、実際の施工品質は現場監督の資質に大きく左右されます。現場に入る人員の資格や経験、実績も事前に確認できるとよいでしょう。
これらのポイントを総合的に評価し、信頼できる業者を選定することが大切です。適切な業者を選ぶことで、ストレスなく工事に臨みましょう。
その3 所有権の移譲を検討する
老朽化に対する修繕積立金の不足や将来的な大規模修繕の実施が難しいと予見される場合、資産価値が下落する前に売却を検討してみましょう。売却を検討する際には、以下の3つがポイントになります。
市場動向の把握
売却の検討には市場動向の把握が欠かせません。周辺の動向や同じマンションの売却事例を調査し、適切な売却時期と価格設定を行うことが成功の鍵となります。競合物件の状況を理解し、競争力のある価格や条件を設定することで、有利な売却が可能となります。
マンションの付加価値を整理し、アピールする
これまで長く暮らしてきたからこそ、物件の価値を深く知っているはずです。価格や間取りだけではなく、雨の日は近くのバス停を活用すれば、濡れずに通勤できたり、学区内の公立小学校が実は近隣の名門校であったり、買い手の属性にあわせ、普段気づかない物件の価値を掘り起こしてアピールしてみましょう。
修繕のタイミング
小規模でも構わないので、修繕を終えた後の方が好条件で売却できる可能性があります。修繕による資産価値の維持、向上が実現したタイミングを活かすことで、物件に対する買い手の安心感が高まるからです。また、物件の価値を高めるために修繕の履歴や実績もしっかりとアピールしていきましょう。
これらのポイントを総合的に考慮し、適切なタイミングと買い手への情報提供を心掛け、売却の成功を目指しましょう。
タワマンの解体を考える際の3つの注意点
タワーマンションの解体は、他の建物と比べて特有の課題があり、慎重な計画と実行が求められます。以下に、解体を検討する際の重要なポイントをまとめました。
解体工法、近隣対策
タワーマンションの解体は高度な技術と安全対策が必要なため、実績と信頼性のある解体業者を選定することが不可欠です。また、解体作業中の粉塵や騒音は近隣住民への影響が大きいため、適切な防音・防塵対策を講じることが求められます。近隣住民への事前説明や定期的な情報提供も、トラブルを未然に防ぐために重要です。
経済的なメリットのある事業計画
解体後の建替えを検討する際には、経済的なメリット・デメリットを総合的に評価することが重要です。特に、建替えに伴う費用負担や将来的な資産価値の向上などを考慮する必要があります。また、国や自治体からの補助金や税制優遇措置なども活用できる場合があるため、最新の情報を収集し、専門家と相談しながら最適な計画を立てることが求められます。
区分所有者の合意形成の進め方
日本の法律では、建て替え決議には区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要とされています。しかし、この高いハードルをクリアするためには、住民間の綿密なコミュニケーションと信頼関係の構築が不可欠です。定期的な説明会や意見交換の場を設け、全員が納得できる合意形成を目指しましょう。
ただ、タワーマンションの区分所有者は大多数に上ります。各所有者の状況や思惑は十人十色で、通常の規模のマンションに比べ、合意形成の難易度は格段に上がります。特に、高齢者の住民が多い場合、老後の生活設計や経済的負担への不安から建替えに慎重な意見が出やすくなります。一方で、老朽化した建物を放置すれば、将来的に資産価値が大きく下がるリスクもあります。
「老い」と向き合うことは、自分の住環境の未来を考えることでもあります。まずは、解体を検討しなければならない状況を回避すべく、適切な修繕を心がけることが自分の資産の防衛と成長につながることを覚えておきましょう。
まとめ
タワーマンションは都市生活の象徴として人気を集めていますが、歴史を振り返ると1970年代から供給が始まり、すでに老朽化が進んでいる物件も存在します。今後、築年数の経過とともに維持管理や建て替えの課題が顕在化し、解体が進む可能性もあります。タワマンの価値を長く維持するためには、老朽化への対応を見据えた適切な管理と計画的な修繕が欠かせません。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者