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マンション所有者が知るべき低濃度PCB廃棄物の処理義務と期限

更新日:2026年02月26日(木)

マンション管理組合やオーナーにとって、「2027年3月31日」は極めて重要な期日です。これは法律で定められた「低濃度PCB廃棄物」の処分期限であり、築年数の経過したマンションの受変電設備にも、対象となる変圧器などが残っている可能性があります。 「自分たちには関係ない」と放置すれば、改善命令や懲役・罰金といった重い罰則が科されるだけでなく、将来的に設備更新ができず、故障時に復旧不能な停電状態に陥るという致命的なリスクも抱えることになります。 本記事では、低濃度PCBの基礎知識から、期限を過ぎた場合の法的・物理的リスク、管理組合が取るべき具体的な対応手順について解説します。期限後の処理は事実上不可能となるため、残り時間はわずかです。資産価値と居住者の生活を守るため、助成金情報なども含めた正しい知識を確認し、直ちに行動を開始しましょう。

本記事のポイント
  • 低濃度PCBの定義や処理期限、法令上の義務と違反時のリスクを理解できる。
  • 管理組合として行うべき調査・届出・処理計画の具体的な手順がわかる。
  • 助成金や補助制度の活用法、長期修繕計画との統合によるコストメリットが学べる。

低濃度PCBとは何か?(定義と対象機器)

PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは、不燃性で電気を通さない絶縁性を持つ油状の化学物質です。かつて変圧器やコンデンサー、蛍光灯安定器など電気機器の絶縁油や熱媒体として広く使われました。しかし1968年のカネミ油症事件で毒性が社会問題化し、1972年には製造・新規使用が禁止されています。

PCBを含む廃棄物は、そのPCB濃度により法令上高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に区分されます。一般にPCB濃度が0.5mg/kg超~5,000mg/kg以下(=0.00005%~0.5%)のものが「低濃度PCB廃棄物」にあたり、それを上回るものが「高濃度PCB廃棄物」です。

マンション設備で問題となるのは主に低濃度PCB廃棄物で、具体的には受変電設備の古い変圧器やコンデンサー、蛍光灯の安定器などが該当します。製造後30年以上経過した古い電気機器には絶縁油が微量のPCBで汚染されている可能性があり、平成5年(1993年)頃までに製造・出荷された変圧器や平成2年(1990年)頃までのコンデンサーには注意が必要です(メーカーによってはそれ以降でも汚染例あり)。古いマンションのキュービクル(高圧受電設備)内の機器や保管された予備部品にこれらが含まれていないか、まず把握することが重要です。

低濃度PCB廃棄物の健康被害と規制の経緯

PCBは環境中で難分解性(非常に分解されにくい性質)を示し、食物連鎖を通じて生物の体内に蓄積します。慢性的な摂取により皮膚の色素沈着や倦怠感、肝機能障害など様々な健康被害を引き起こすことが確認されており、地球規模で汚染が広がったことから2001年のストックホルム条約(POPs条約)で製造・使用・廃棄の厳格な管理と廃絶が求められました。

日本では1968年のカネミ油症事件を契機にPCBの毒性が広く認識され、1974年(昭和49年)にはPCBの製造・新規利用が国内で全面禁止。さらに平成13年(2001年)に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(以下PCB特措法)が制定され、既存PCB使用製品・PCB廃棄物を期限までに確実かつ適正に処理することが義務付けられました。人体や環境への深刻な被害防止のため、期限内処理の徹底が国際的にも国内法規上も課せられているのです。

処理期限と対象者(法律上の義務)

PCB特措法では、PCB廃棄物を保管・所有する事業者に対し、所定の処分期間内にそのPCB廃棄物を処理(処分委託または自ら無害化処理)する義務を課しています。高濃度PCB廃棄物については地域ごとに定められた期間内での処理が既に求められ、高濃度PCBを含む変圧器・コンデンサー類は 2022年3月31日まで、安定器等についても2023年3月31日までに処理期限が到来し、現在は全国で処理期間が終了しています(期限までに使用中だった機器も廃棄物とみなされ即時処分対象)。

一方、マンションの受変電設備等で問題となる低濃度PCB廃棄物の処分期間は全国一律で2027年(令和9年)3月31日までと法律で定められています。したがって、該当するPCB含有機器を有するマンション管理組合やオーナーも、この法律上の「事業者」として2027年3月末までに適正処理を完了させなければなりません。処理期間内であれば現在使用中の機器を継続利用すること自体は認められていますが、期限を過ぎた時点で当該機器は原則使用禁止・保管禁止となり法令違反の状態に陥ります。

また、PCB廃棄物を保管している事業者は毎年度、都道府県知事宛てに当該PCB廃棄物の保管状況や処分計画の届出を行う義務もあります。マンション管理組合でも該当機器を保有する場合は行政への届出と計画的な処理実施が求められる点に注意が必要です。

期限を過ぎた場合の罰則とリスク

低濃度PCB廃棄物を処分期限までに処理しなかった場合、法律上はまず環境大臣または都道府県知事からの「改善命令」(一定の期限を定めた処分実施命令)の対象となります。この改善命令に従わないと、PCB特措法の罰則規定に基づき「3年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(併科も可)」という重い刑事罰が科される可能性があります。※法人(管理組合などの団体)として違反した場合は、行為者個人の処罰に加えて法人にも数億円規模の罰金刑が科され得ます。

また、届出義務違反や虚偽報告、無許可業者への委託や譲渡など関連規制に違反した場合にも、6か月以下の懲役や数十万円の罰金といった罰則が定められています。処分期限そのものを過ぎたことに対する即時の科料等は現行法上存在しないものの、期限超過は明確な法令違反であり放置すれば行政指導・処分の対象となるため決して安心はできません。

罰則以外にも期限を過ぎた場合には深刻なリスクがあります。処分期間終了後はJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)による処理事業も終了するため、低濃度PCB廃棄物は原則として受入先がなくなり、所有者が半永久的に自己保管し続けざるを得ない状況に陥ります。長期間の保管中に容器や機器が劣化すれば漏えい事故の危険が増大し、環境中へPCBが拡散すれば甚大な汚染被害と高額な除染費用が発生しかねません。

また、老朽化したPCB含有機器を更新しようにも適正に処理できなければ撤去・交換が進まないため、設備の更新計画そのものが頓挫する恐れがあります。特に変圧器やコンデンサー等の電気工作物は、一度電気設備から取り外してしまうと技術基準上再び電気回路に接続することが禁止されており、故障やトラブルで一度でも停止した場合に復旧利用できなくなるリスクがあります。

つまり、期限を過ぎてから機器故障に見舞われると建物全体が停電状態となり、新しい機器への交換完了まで復旧できない事態も想定されます。こうした事態になれば日常生活や事業に大きな支障が出るため、期限内の計画的な撤去・処理を怠るリスクは非常に大きいと言えます。

管理組合として取るべき対応

PCB含有機器を保有する可能性があるマンションの管理組合は、期限内処理のために早めに次の対応を進めましょう。

実態調査の実施(機器の確認とPCB汚染の判定)

まず建物内の受変電設備等を総点検し、PCBを使用している恐れのある機器がないか確認します。具体的にはキュービクル内の高圧変圧器・コンデンサー、非常用発電機やエレベーター制御盤内のコンデンサー、照明器具の安定器など、前述の対象期間に製造された電気機器の有無を洗い出します。機器の銘板に記載された製造年や型式情報を調べ、可能であれば絶縁油を採油分析してPCB濃度を測定します。専門の分析機関に依頼すればPCBの有無を判定できます。分析の結果、PCB濃度が0.5mg/kgを超えるものが検出された場合、その機器や油はPCB廃棄物として法律の規制対象となります。機器数が多い場合でも放置せず、一つ一つ確実に確認を進めましょう。

行政への届出(保管状況の報告)

調査の結果、PCB廃棄物に該当する機器が判明したら、遅滞なく都道府県等への届出を行います。PCB特措法に基づき、PCB廃棄物を保管する事業者は毎年度1回、保管数量や処分予定などを都道府県知事(政令市長)に報告する義務があります。未届出のままでは法令違反となり、6月以下の懲役または50万円以下の罰金といった処罰の可能性もあります。管理組合で専門知識が乏しい場合は、行政窓口や電気保安協会等に相談しながら適切な手続きを進めてください。また、機器を所有している事業者(管理組合)は環境省が公開する「PCB廃棄物保管事業者一覧」に名称等が公表される仕組みになっており、社会的信用の面からも届出を怠ることは避けねばなりません。

処理計画の策定と処理委託先の選定

届出と並行して、判明したPCB廃棄物をいつ・どのように処理するか計画を立てます。処分期限である2027年3月末までの余裕はあとわずかです。処理の依頼が期限間際に集中すると処理業者の予約が埋まり依頼困難になったり、費用が高騰する恐れもあるため、早期に処理を実施することが肝要です。処理を委託できる先は法で限定されており、高濃度PCB廃棄物の場合は国が設立したJESCOが処理を担ってきました。低濃度PCB廃棄物については、環境大臣の無害化処理認定を受けた民間事業者や都道府県知事の許可を持つ産業廃棄物処理業者が各地で処理を行っています。

マンション管理組合としては、信頼できる許可業者を選定して見積りを取り、処理契約を締結します。処理工程では専門業者が現地で機器の撤去・回収を行い、PCBを無害化処理する工場へと運搬します。遠隔地への輸送を要するケースもあるので、日程や停電作業の調整も含め計画的に進めましょう。なお、環境省は処理の加速化を図るため分析費・処理費の2分の1を補助する助成制度を創設し、中小事業者(管理組合等を含む)に対する費用支援を開始しています。該当する場合はこの制度の活用も検討し、経済的負担の軽減を図ってください。

処理の実施と完了報告

契約した処理業者による収集運搬・処理作業の日程が決まったら、管理組合は当日の立ち会いや居住者への周知など協力体制を整えます。高圧受電設備の場合、停電を伴う機器交換作業となるため専門の電気工事会社や電気主任技術者とも連携が必要です。処理実施にあたっては、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を活用し適正に処理されたことを証明・記録します。処理完了後、都道府県知事宛てに処理終了の届出または次年度の定期報告で当該PCB廃棄物がなくなったことを報告し、公的にも処理が完了したことを確認してもらいます。これら一連の手続きを経てようやく法的義務が果たされ、建物内からPCB汚染のリスクが無事取り除かれることになります。

長期修繕計画への統合

低濃度PCB廃棄物の処理は、単に法律違反を避けるだけでなく建物の資産価値と安全性を維持向上させるチャンスでもあります。マンションの大規模修繕や設備更新計画において、PCB含有機器の撤去・更新を他の工事と一括して実施することを検討しましょう。

例えば、受変電設備の更新時期が近い場合はPCB処理と新品機器への交換工事を同時に行うことで、一度の停電作業で両方を済ませられ居住者への影響を最小化できます。足場設置など別の改修工事があるタイミングでPCB機器の搬出入を合わせれば重機や人員の重複手配を避けてコスト削減にもつながります。

さらに計画的に準備を進めておけば、前述の国の助成金制度や自治体独自の補助金を適用しやすくなり、資金面の負担も軽減できます。実際に環境省も「PCB含有機器がまだ眠っている事業者は速やかに総点検し、判明した場合は助成金も活用して早急に処分を進めてほしい」と呼びかけています。

長期修繕計画にPCB廃棄物処理を組み込むことで、将来の不測の故障や法令違反リスクに怯えることなく、計画的かつ経済的に設備更新が可能になります。マンションの管理者・所有者として、期限ギリギリの駆け込み処理に頼らず、賢く計画を立てて安全・安心な住環境を維持することが肝要です。

PCB問題への対応を「費用がかかる厄介事」で終わらせるのではなく、国や自治体の支援策もうまく利用しながら確実な処理を実行しましょう。それが結果的にマンションの価値を守り、住民の安心につながる最善策となります。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

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