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昇降機のリニューアル工事の進め方|時期や費用、改修依頼をするときの注意点

更新日:2025年05月30日(金)

マンションやビルの管理者にとって、昇降機の老朽化対策は見過ごせない課題です。昇降機は長年の使用で部品が劣化し、故障リスクや安全性の低下が懸念されます。特に古い昇降機では現行の安全基準を満たしていないケースもあり、重大事故を未然に防ぐためにリニューアル工事が必要不可欠となります。 本記事では、昇降機のリニューアル工事について、工事の概要から適切な検討時期、費用の目安、工事の進め方、そして業者に依頼する際の注意点まで網羅的に解説します。リニューアルについて検討している方はぜひ参考にしてください。

本記事のポイント
  • 昇降機のリニューアル工事で具体的に行われる安全対策の内容を学べる。
  • 昇降機リニューアルの最適な時期や判断基準がわかる。
  • リニューアル工事にかかる費用相場や補助金制度を活用する方法を把握できる。

昇降機のリニューアル工事とは?

昇降機のリニューアル工事とは、既存の昇降機設備を大規模に更新する工事のことです。単なる部品交換や日常点検とは異なり、昇降機の心臓部である制御盤や巻上機(モーター)ないし油圧ユニット、ドア装置など主要な機器を一新したり、必要に応じて昇降機本体ごと新型に入れ替えたりする大規模改修を指します。

このリニューアルにより、経年劣化で低下した安全性・信頼性を回復し、最新技術による省エネ性能や快適性向上も期待できます。実際、国土交通省も「過去の事故や災害を踏まえ、安全性確保のために改修やリニューアルによる昇降機の機能更新を積極的に行ってほしい」と建物所有者に呼びかけています。つまりリニューアル工事は、旧式昇降機を現在の安全基準・性能水準にアップグレードする取り組みなのです。

では、具体的に昇降機のリニューアル工事では何が行われるのでしょうか?

代表的な改修内容としては以下のような安全機能の強化が挙げられます。

地震時管制運転装置の設置

地震発生時に昇降機を最寄り階に自動停止させ、利用者を迅速に避難させる機能

戸開走行保護装置の設置

UCMPと呼ばれ、万一ドアが開いたままかごが動いてしまった場合に、自動的に昇降機を停止させる装置。2009年9月より新設昇降機への設置が義務化された安全装置で、古い昇降機には未搭載の場合があります。

主要機器・支持部分の耐震補強

巻上機や制御盤など主要機器、およびガイドレールなど支持構造の耐震性を高める補強。大地震時の機器脱落や変形を防ぎ、被害を最小限に抑える狙いがあります。

釣合おもり落下防止対策

昇降機の釣り合いおもり(カウンターウエイト)が地震などで脱落しないよう安全装置を追加する工事

このように、リニューアル工事では安全性の観点から最新基準に適合した装置の導入や主要設備の更新が行われます。結果として昇降機の寿命そのものを延ばし、利用者にとって安心・快適な設備へと生まれ変わらせることができるのです。

国土交通省の資料にもある通り、建築基準法の改正で義務化された新安全装置について既存昇降機への適用は強制ではないものの、建物管理者の自主的なリニューアルによる機能向上が強く推奨されています。

改修工事の検討時期

昇降機の改修工事は「いつ行うべきか?」というタイミングの見極めが重要です。結論から言えば、設置後25年~30年が一つの目安であり、さらに部品供給状況や不具合の発生状況によっても判断します。

以下、検討すべき時期を示す主なポイントを3つの観点から説明します。

設置後の経過年数(経年劣化)

昇降機には法定耐用年数が設定されており、国税庁の耐用年数表では昇降機の法定耐用年数は17年と定められています。もちろん17年を超えたら即使えなくなるわけではありませんが、メーカー各社はおおむね20〜25年程度を製品寿命の目安としています。実際、設置後20年を経過した昇降機は安全・安心・快適な運行のためリニューアルが必要とする見解もあり、一般的な建物では15年目に部品交換等の必要な中間修繕を行い、30年目頃に昇降機を本格更新(リニューアル)する計画が推奨されています。

例えば分譲マンションの長期修繕計画でも、12〜15年ごとの大規模修繕サイクルの2回目(築24〜30年目)で昇降機のリニューアル工事を盛り込むケースが多く見られます。経年による部品の摩耗や劣化はメンテナンスだけでは完全に防ぎきれないため、概ね20年以上経過した場合はリニューアルの具体的検討を開始することが推奨されます。

部品供給の終了(メーカーサポート期間)

昇降機の主要部品について、メーカーが一定期間(約15〜20年程度)で製造を終了し、交換パーツの在庫がなくなることがあります。そうなると故障時に修理ができず、長期間昇降機が使えなくなるリスクが高まります。特に古い制御盤やモーターなどで生産中止品が出始めたら、リニューアルのタイミングと捉えるべきです。メーカーが公式サポートを打ち切った機種をそのまま使い続けるのは危険で、万一の停止に備えて早めの更新計画を立てることが肝要です。

不具合の頻発や性能低下

運転中に異常振動や異音が発生したり、ドアの開閉に時間がかかるなど明らかな調子の悪さが見られる場合も要注意です。経年劣化による部品摩耗が原因であることが多く、放置すればさらなる故障や事故につながる恐れがあります。こうした兆候が出始めたら、部品交換ではなく抜本的な改修工事を検討する段階と言えるでしょう。不調を感じた段階で計画的に更新する方が結果的に安全面でも費用面でも有利になります。

昇降機のリニューアル工事に要する費用

昇降機リニューアルの費用相場は工事内容の規模によって数百万円から数千万円と幅があります。ここでは代表的な改修工事の種類ごとに費用目安を解説します(※費用は1基あたり概算)。

フルリニューアル(全撤去新設)

現在の昇降機設備を一式撤去し、新品の昇降機に入れ替える方法です。昇降機本体から制御盤・巻上機・カゴ・ドア・レールまで全て新調するため費用は高額で、1台あたり約1,500万〜2,000万円が相場となります。性能や耐用年数を根本的にリフレッシュできるのが大きな利点で、古い昇降機を完全に最新式に置き換えることで安全性・快適性も飛躍的に向上します。

準撤去リニューアル

昇降機の主要部品を一部交換し、再利用可能な部分を活かす中規模改修です。例えば巻上機(モーター)や制御盤は新品にする一方で、昇降路(シャフト)や機械室の構造、カゴの枠組みなどは流用するケースです。費用の目安は1台あたり約1,200万〜1,700万円ほどで、フルリニューアルよりコストを抑えつつ安全性・性能の向上が図れます。既存設備を活かすため工事期間も短縮できるメリットがあります。ただし古い部分を残すため、交換しなかった部品については今後も故障リスクが残る点に留意が必要です。

制御リニューアル工事(制御盤等の更新)

昇降機の頭脳にあたる制御盤など制御関連をリニューアルする小規模改修です。費用相場は1台あたり約500万〜700万円と比較的安価で済みます。また大幅に工期を短縮できるメリットがあります。

費用負担を軽減する方法も押さえておきましょう。国や自治体には昇降機改修に対する補助金制度が存在し、条件を満たせば工事費用の一部を助成してもらえます。例えば国土交通省は既存昇降機の安全性向上を目的に「昇降機の防災対策改修事業」という補助制度を推進しており、1台あたり最大950万円を上限に補助金が交付されます。補助対象となる改修内容として、(1)地震時管制運転装置、(2)主要機器の耐震補強、(3)戸開走行保護装置、(4)釣合おもり脱落防止、(5)主要支持部分の耐震化の5項目が例示されています。

先ほど「昇降機のリニューアル工事とは?」で挙げた安全機能の更新がまさに該当しており、安全対策を盛り込んだリニューアルには手厚い補助が受けられる仕組みです。さらに自治体レベルでも独自の助成制度があり、例えば東京都新宿区では既存昇降機の防災性能向上を目的に改修費用の一部を助成する「昇降機防災対策改修支援事業」を実施しています。自治体ごとに条件や補助額は異なりますが、該当する場合は活用しない手はありません。工事計画の段階で国交省や地元自治体の窓口に問い合わせ、最新の補助金情報を確認しておくとよいでしょう。

リニューアル工事の進め方

実際に昇降機のリニューアル工事を行う際は、事前準備から工事完了まで計画的に進める必要があります。ここでは、一般的な工事実施の手順を6つのステップに沿って説明します。

現状診断と計画立案

まずは現在使用中の昇降機の状態を専門家に診断してもらいましょう。メーカーや保守会社による劣化度調査や安全点検を実施し、どの部位がどの程度老朽化しているか、現行基準との乖離はないかを把握します。その診断結果に基づき、改修の必要性と緊急度を評価してリニューアル工事の大まかな方針を立てます。例えば「制御盤だけ交換すれば良いのか」「それとも巻上機やかごも含め全面的に更新すべきか」といった判断をここで行います。必要に応じて専門コンサルタントに意見を仰ぐのも有効です。

資金計画の策定と見積り依頼(業者選定)

改修内容の方針が決まったら、それに沿って複数の施工業者から見積りを取ります。最低でも2〜3社から提案を受け、工事内容・費用を比較検討しましょう。メーカー系列の業者だけでなく、独立系の施工会社も選択肢に含めると競争原理で適正価格が得られやすくなります。見積もりの際は、工事範囲や使用部材、保証内容まで詳細に記載された内容を要求することが重要です。

工事契約とスケジュール調整

発注先の業者が決まったら正式に契約を交わし、工事日程を調整します。昇降機を停止する期間や日数は改修内容によって異なりますが、フルリニューアルなら約45日~90日、準撤去リニューアルでは約40日~60日、制御リニューアルであれば約5日~10日程度が目安です。

この期間中、昇降機は利用できなくなるため、利用者への周知徹底と代替手段の検討が不可欠です。場合によっては簡易昇降機(仮設リフト)の設置や各階段に仮設の手すりを取り付けるなど、安全に昇降できる補助策を講じることも検討します。

工事の実施(監督と進行管理)

予定したスケジュールに沿ってリニューアル工事を実施します。管理者は工事期間中の進行管理と安全確認を怠らないようにしましょう。工事中はどうしても金属加工音やハンマー音などの騒音・振動が発生しますが、近隣住民への影響を最小限に抑える努力が必要です。具体的には騒音の大きい作業は昼間の決められた時間帯に集約する、防音シートで機械室を覆う、といった工夫が考えられます。

完了検査と引き渡し

工事が完了したら、所定の検査を実施して問題なく稼働することを確認します。昇降機の場合、新規設置時と同様に昇降機等検査員など有資格者による安全性の検査が必要です(リニューアル内容によっては建築基準法上の完了検査が求められることもあります)。施工業者立ち会いのもと試運転を行い、非常用装置や安全装置が正常に機能するか、停止位置のずれやドア開閉のタイミングは適正かなど細部をチェックします。不具合があれば是正工事を行い引き渡されます。検査に合格し書類手続きが済めば、いよいよ昇降機の運転再開です。

アフターケアと継続的な維持管理

リニューアル後も昇降機の定期点検・メンテナンスは引き続き必要です。改修を担当した業者がそのまま保守点検を請け負うケースが一般的です。新しい設備に合わせた保守契約プランや保証内容を確認し、適切な維持管理体制を整えましょう。

昇降機の改修工事を依頼するときの注意点

昇降機のリニューアル工事を円滑かつ確実に行うためには、発注者側がいくつか気を付けるべきポイントがあります。ここでは依頼時の注意点として重要なものを3つ挙げます。

注意1:業者選定は実績と見積もりの透明性を重視

昇降機改修は高度な専門技術を要する工事です。まず何より経験豊富で信頼できる業者に依頼することが大前提となります。利用者の命を預かる設備だけに、豊富な実績を持つ業者を選びましょう。過去の施工例や顧客の評判などを確認し、信頼性を見極めることが肝要です。特にリニューアル実績が多い会社であれば、機種ごとの適切な改修方法や工夫を知っており安心して任せられます。

あわせて見積もり内容の明確さも重要なチェックポイントです。見積書に工事の内訳が詳しく記載されておらず総額だけ提示するような業者は要注意です。費用の透明性が高い業者を選ぶことで、予算オーバーのリスクを減らせます。提出された見積もりは項目ごとに金額を確認し、不明点は質問しましょう。「○○装置取替 一式◯◯万円」といった書き方の場合、その装置の仕様や数量、単価が不明確です。そうした点も含め、契約前にすべての疑問を解消し納得できる業者を選定することが、工事を成功させる第一の注意点です。

注意2:工事中の利用停止による影響を考慮し周知徹底

昇降機改修工事では工事期間中、その昇降機が使えなくなることを十分認識しておく必要があります。高層階に住む住民や足の不自由な利用者にとって、昇降機停止は日常生活に大きな支障をきたします。入居者・利用者への丁寧な周知とフォローを行うことが重要です。具体的には、工事開始日・終了予定日や作業時間帯を事前に知らせ、代替手段やサポート体制も案内します。「○月○日〜○月○日まで昇降機がご利用いただけません。期間中は階段をご利用ください。お手伝いが必要な方は管理組合までご連絡ください」といった掲示を行い、周知期間も余裕をもって設けます。特に高齢者世帯には個別に声掛けするなど、きめ細かな対応が望ましいでしょう。

注意3:追加費用・契約事項のリスク管理

リニューアル工事では、契約時には想定していなかった追加費用が生じる可能性もあります。たとえば工事を進めて初めて判明する不具合(隠れた腐食部位の発見など)により、急遽部品交換が必要になるケースです。そうした場合に備え、契約書には工事範囲外の追加対応をどう取り扱うか明記しておくことが望ましいです。たとえば「追加工事が発生する場合は都度見積もりを提出し、発注者の書面承認を得てから実施する」等の条項を入れておくようにしましょう。

最後に、工事完了後のアフターサービスについても確認を怠らないようにします。リニューアル後の定期点検や緊急対応について、業者のサポート体制が充実しているかは重要なポイントです。24時間対応の故障受付や、改修部位に対する一定期間の保証があると安心材料になります。契約時にそういったサービス内容を書面で取り決め、口約束にしないことも注意が必要です。

まとめ:専門家に相談しよう

昇降機(昇降機)のリニューアル工事について、導入から適切な時期、費用、進め方、注意点まで包括的に解説しました。重要な結論は、昇降機は約20年を過ぎたあたりから安全性・信頼性の面で更新を検討すべきであり、適時にリニューアル工事を行うことで建物利用者の安心と快適さを長期にわたり確保できるという点です。

適切なタイミングで賢くリニューアル工事を実施し、マンションやビルの昇降機をいつまでも安心・安全に稼働させていきましょう。建物の価値と利用者の安全を守るために、今回解説した知識がお役に立てば幸いです。

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  • 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
  • エレベータのリニューアル工事の支援実績は多数(過去1年で数百基、2025年2月現在)。特殊品である高速、油圧、リニア、ルームレスの実績もあり、社内にはエレベーター会社、ゼネコン、修繕会社など出身の施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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