分譲マンション大規模修繕の「バックマージン」問題とは?仕組み・リスクと対策を徹底解説
更新日:2026年01月29日(木)
分譲マンションの大規模修繕工事では、施工業者や管理会社が工事費の一部を「バックマージン」として受け取るケースがあることをご存じでしょうか。住民にとっては見えにくいこの仕組みは、知らずに放置すると工事費の不透明化や過剰請求、信頼関係の悪化などさまざまなリスクにつながります。 本記事では、バックマージンの仕組みや発生の背景、具体的なリスク、そして管理組合として取るべき対策まで、わかりやすく解説します。安心・納得の大規模修繕を実現するために、ぜひ確認してください。
- 本記事のポイント
- 管理会社や業者が受け取る「バックマージン」の仕組みと住民への影響を理解できる。
- 不透明な費用や談合リスクを避けるための具体的な対策・業者選定方法がわかる。
- 修繕費用の適正化と透明性確保のために管理組合として取るべき行動が明確になる。
管理会社と業者の「バックマージン」とは何か?
バックマージンとは、マンション管理会社などが修繕工事の施工業者から受け取る紹介手数料(キックバック)のことです。通常、この手数料は工事費の見積額に上乗せされる形で含まれます。
具体的には、管理会社が施工業者を選定・紹介する際に、契約獲得の見返りとして謝礼を受け取る暗黙の合意がある場合、施工業者は見積額を高めに設定し、その一部を後から管理会社に支払います。結果として、工事費が必要以上に高くなる、あるいは工事内容が適正でない可能性が生じ、管理組合(区分所有者)にとって不利益な構造が生まれるのです。
このようなバックマージンの慣行は、マンション管理業界で一部に根付いているケースがあります。その背景には管理会社の収益構造があります。管理業務の委託料だけでは十分な利益を出しにくいため、修繕工事のあっせんで収益を補おうとする管理会社も存在します。
一方、施工業者側もバックマージンを支払うことで継続的な受注を得やすくなり、管理会社と業者の双方の思惑が一致しやすい状況です。この結果、費用の透明性が損なわれ、管理組合にとって不利な契約条件や過剰工事につながるリスクが高まっています。
バックマージンの仕組みと談合の手口
バックマージンは主に 「設計監理方式」 の大規模修繕で問題となってきました。設計コンサルタント(管理会社や専門コンサル)が管理組合の代理として工事業者選定を進める中で、悪質な場合には以下のような手口が取られます。
コンサルタントが異常に安い費用で受注する
まずコンサルタント(管理会社含む)が破格の安値でコンサル業務を請け負います。後で施工業者からのキックバック収入が見込めるため、コンサル料自体は安く提示できるのです。管理組合は「安いからお得だ」と契約してしまうことがあります。
見積取得と裏での談合
建物診断後、複数の施工業者から見積もりを取りますが、この際コンサルタントが「おすすめ業者」を管理組合に紹介します。実はその各見積もりには、後でコンサルに渡す多額の紹介料(バックマージン)が含まれています。さらにコンサルタントは裏で業者同士を調整し、「この案件はA社に決める。だからB社とC社はA社より高い見積を出せ」と談合させることもあります。一見すると3社競合しているように見えて、初めから出来レースになっているのです。
相場以上の工事費にキックバックを上乗せ
こうして選ばれた業者A社の見積金額は、本来の相場よりも高額に設定されています。施工会社がコンサルに渡す15~20%ものバックマージンが受注金額に含まれている場合もあると報じられています。結果、管理組合は相場とかけ離れた高い費用を支払い、「一番安い業者を選んだつもりが、実は不当に割高だった」という事態が起きます。複数社から相見積もりを取って競争入札したように見えても、元の金額設定が不正に操作されていれば意味がありません。
以上のように、悪質なコンサルタント(管理会社含む)が施工業者と結託すると、管理組合に気付かれにくい形で談合とバックマージン受領が行われるのです。実際、「2017年ごろにマンション大規模修繕工事の談合や悪質コンサル問題がメディアで大きく取り上げられ、国土交通省が異例の注意喚起を行った」という経緯があります。さらに2025年3月には首都圏マンションの修繕工事で20社が談合した疑いがあるとして、公正取引委員会が立ち入り検査を行ったこともニュースになりました。長年指摘されてきた問題が、行政当局の調査に発展するほど深刻化しているわけです。
住民にとっての問題点:不必要な費用負担と品質リスク
修繕費用が不当に高騰し、住民負担が増大するリスク
バックマージンが存在すると、その分だけ工事費用が割高になります。施工業者は管理会社へ渡すマージンを見越して見積額を上乗せするため、修繕積立金から何千万円も余計に支出してしまう可能性があります。
国土交通省の調査や裁判事例でも、一部マンションで管理組合役員が業者から金銭を受け取っていた例が明らかになっており、知らぬ間に長年積み立てた修繕基金が食い物にされていたケースも指摘されています。
修繕積立金不足が社会問題化する中で、本来払う必要のないバックマージンにより積立金が目減りし、将来の修繕資金が足りなくなる懸念もあります。住民にとっては不要な費用負担であり、場合によっては追加の積立金徴収や管理費値上げに繋がりかねません。
工事の質が低下するリスク
バックマージンを優先するあまり、業者選定の基準が歪むことも問題です。管理会社が「より高いマージンをくれる業者」を重視すると、本来最も重要なはずの施工技術や信頼性が二の次になります。その結果、選ばれた業者の施工品質が低く、短期間で不具合や再補修が必要になるリスクが高まります。質の低い工事は結局住民に不利益をもたらし、建物の資産価値低下にも繋がりかねません。
住民の信頼を損ねるガバナンス上の問題
修繕工事に不透明な金銭の流れがあると、管理組合の運営に対する住民の信頼が揺らぎます。大規模修繕は居住者全員の財産に関わる重大事ですが、その裏で一部関係者が私的利益を得ていると知れれば、大きな不信感を招きます。
談合やキックバックは表面化しにくいため、多くの住民は気付きにくいものの、だからこそ「知らない間に損をしているかもしれない」という漠然とした不安を抱く理事会役員も少なくありません。実際、「理事会の議事録に不自然な点がある」「毎回同じ業者ばかり工事を受注している」といった場合は裏でキックバックが疑われることもあり、こうした噂が立つだけでもマンション内の空気は悪化します。管理組合と管理会社の関係にも亀裂が入り、円滑な合意形成が困難になる恐れがあります。最悪の場合、住民間の紛争や管理会社の変更・役員交代に発展するケースも考えられるでしょう。
管理組合が取るべき対策:透明性確保と第三者の活用
バックマージンのリスクを避け、適正な価格・工事品質を確保するために、管理組合・理事会が取れる具体的な対策を整理します。
複数業者からの相見積もりと情報収集
修繕工事の見積もりは、管理会社やコンサルタントの紹介業者だけに頼らず、できるだけ多くの業者から相見積もりを取ることが重要です。その際、管理会社経由でない独立系の業者にも声をかけ、市場相場を把握します。見積内訳も細かく確認し、不明瞭な項目がないかチェックしましょう。複数社の提案を比較検討することで、不自然に高い金額や不要な工事項目に気付きやすくなります。
契約時の取り決め・宣誓を求める
コンサルタント会社や管理会社に修繕業務を委託する場合、契約書に利益相反行為を禁止する条項を盛り込んだり、バックマージンを受け取らない旨の誓約書を提出させたりする手があります。国土交通省も「設計監理方式を採用する際はコンサルタントに十分注意し、相談窓口を活用してほしい」と注意喚起しています。契約上明示的に禁止することで心理的な抑止力となり、不正行為を牽制できます。ただし、書面で約束させても実際に守られる保証はないため、あくまで対策の一つとして位置づけましょう。
管理組合主体で業者選定・監督を行う
修繕工事は管理組合が主体者です。管理会社任せにせず当事者意識を持って対応することが重要です。理事会内に専門知識のあるメンバーがいない場合は、マンション管理士や一級建築士といった第三者の専門家にセカンドオピニオンを依頼するのも有効です。外部の専門家に見積書や工事計画をチェックしてもらえば、談合の兆候や不適切な点を指摘してもらえる可能性があります。少しでも不審に感じたら自分たちで抱え込まず第三者に相談することが肝心です。
以上の対策を組み合わせ、透明性を高める努力をすることで、「気付いたら悪徳業者のカモにされていた」という最悪の事態を未然に防ぐことができます。
まとめ:透明性の高い修繕で資産価値と信頼を守ろう
マンションの大規模修繕工事は、住民全員の大切な資産を維持するために欠かせない重要プロジェクトです。だからこそ、工事費用の一部が不透明なバックマージンとして消えてしまうような事態は何としても避けなければなりません。
管理組合・理事会の方々は「管理会社任せにしない」という強い当事者意識を持ち、常に透明性と公正性に留意して計画を進める必要があります。
そのうえで、第三者の専門家の力を借りることで、悪質なコンサルタントや不正なキックバックを排除しつつ、適正価格・高品質の工事を実現できます。費用面では大幅なコストダウンが期待でき、住民の信頼を損なうことなく計画を進められるのは大きな利点です。
大規模修繕は15年程に一度の大仕事ですが、一度の失敗が将来の財政に致命傷を与えかねません。だからこそ、経験豊富で信頼できるパートナーと二人三脚で取り組むことが肝要です。公平な競争原理のもと適正価格で工事を終えられれば、修繕積立金の無駄遣いも防げ、次回以降の修繕計画にも余裕が生まれるでしょう。何より、住民全員が納得し安心できる形で工事を完了すれば、マンションの資産価値維持・向上にも繋がります。ぜひ、透明性の高い賢い修繕の進め方で、あなたのマンションの未来を守ってください。
大規模修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
24時間対応通話料・相談料 無料



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