エレベーター非常用バッテリーの交換はいくら?時期や耐用年数を解説
更新日:2025年04月30日(水)
マンション管理組合やビルオーナー、施設管理会社にとって、エレベーターの非常用バッテリー交換は安全管理上欠かせません。もし停電時にエレベーター内に人が閉じ込められると、照明や緊急連絡手段が絶たれ、乗客が重大な危険にさらされます。だからこそ、適切な時期に工事を検討することが大切です。 本記事では、非常用バッテリーの定義から耐用年数、交換費用、交換の適切な時期、さらに発火リスクの有無まで、5つのポイントを順に解説します。国土交通省や日本エレベーター協会など公的機関のデータを参照し、非常時のバッテリーに関する信頼できる情報に基づいてまとめています。これを機会に、点検の時期も含めて検討いただけると幸いです。
- 本記事のポイント
- エレベーターの非常用バッテリーの役割や仕組みを学べる。
- 非常用バッテリーの耐用年数や適切な交換時期がわかる。
- 非常用バッテリー交換工事の費用相場や発火リスクへの対応方法を把握できる。
電話で無料相談
24時間対応通話料・相談料 無料
Webから無料相談
専門家に相談する
エレベーターの非常用バッテリーとは?
エレベーターの非常用バッテリーとは、停電など非常時にエレベーターを安全に制御するための予備電源です。具体的には、停電時にエレベーターのかごを最寄りの階まで移動させて人々を閉じ込めないようにする装置(停電時自動着床装置)の電源であり、同時に非常灯や非常通報装置(インターホン)の電源も担います。
平常時には使われませんが、いざという時に乗客の安全を守る重要な役割を果たすため、建築基準法などによりエレベーターへの設置と機能維持が義務付けられている安全部品です。例えば、日本エレベーター協会によれば停電でエレベーターが停止した場合でも「ただちに非常用バッテリーにて非常用照明が点灯」し、かご内が真っ暗になることはないとされています。また非常ボタンを押した際の通報設備もバッテリーで動作するため、停電中でも外部に救助要請が可能です。
国土交通省の資料でも「非常用バッテリー」は、「停電時にかごを最寄り階へ着床させるための予備電源」と定義されています。このように公的機関がその役割を明確に示しており、非常時にエレベーター内の照明確保やかご移動、通信確保を行う電源であることがわかります。
非常用バッテリーは通常、エレベーターの制御盤内やかご上部に設置された蓄電池です。多くの場合は鉛蓄電池やニッケル・カドミウム電池など信頼性の高い二次電池が採用されており、常時充電されて待機しています。停電発生時には自動的に電源がバッテリーに切り替わり、非常灯(非常用照明)が点灯して乗客の視界を確保し、エレベーターを最寄り階に移動させてドアを開放し、非常通報装置にも電力を供給します。仮にバッテリーが無ければ、停電時にエレベーター内が暗闇となり通信もできず、人々は救助が来るまで閉じ込められてしまいます。
エレベーターの非常用バッテリーの耐用年数
非常用バッテリーの耐用年数(寿命)は非常に短く、おおむね4~5年程度と考えられています。他のエレベーター機器が20年以上もつのに比べ、バッテリーは経年劣化が避けられないため定期的な交換が必要です。
蓄電池は充放電を繰り返すうちに性能が劣化し、満充電しても必要な電力を供給できなくなります。エレベーターの非常用バッテリーは平常時は常にフル充電状態で待機し、あまり放電しない設計ですが、それでも内部の劣化は徐々に進行します。そのため製造メーカー各社は、故障や容量低下による機能喪失を未然に防ぐ観点から、数年ごとの定期交換を推奨しています。例えば東芝エレベータでは制御盤やかごに搭載された非常電源用バッテリーの交換目安を3年としています(停電時着床装置用バッテリーも同様に3年)。多くのエレベーターで3年前後がひとつの目安となります。
耐用年数が短いのは蓄電池が化学反応でエネルギーを蓄える性質上、経年で性能が必ず低下するためです。例えば鉛蓄電池は時間の経過とともに電極が劣化し容量が低下しますし、ニカド電池も結晶化(メモリー効果など)によって性能が落ちます。周囲温度や充電回路の状態によっても寿命は左右され、高温環境に置かれたバッテリーは早期に劣化します。一部には長寿命の電池を採用した機種もありますが、推奨される交換周期を守ることが安全面で確実です。「非常用バッテリーは消耗品」であると認識し、定期的に新品に取り替える計画を立てておく必要があります。
交換工事はいくら?
エレベーター非常用バッテリーの交換費用は、数万円から数十万円程度が一般的です。機種やバッテリー容量によって幅がありますが、小規模エレベーターの非常灯用バッテリー交換なら数万円、大型エレベーターの非常用電源一式交換では数十万円単位になる場合もあります。
バッテリー交換費用は、部品代と工事費(人件費)、廃棄処分費などで構成されます。非常用バッテリーは法定の「保安部品」であり、国土交通省の定める基準に適合したメーカー純正品しか使用できません。そのため、市販の汎用品で安く済ませることはできず、どうしても一定のコストがかかります。実際の費用は現場の状況やバッテリー個数によって変動します。
費用の違いは主にバッテリー容量や個数、そしてエレベーターの規模によります。小規模なエレベーターでは非常灯やインターホン用の小型バッテリー1~2個程度で済みますが、大規模なエレベーターや非常用運転機能付きのエレベーターでは、より大容量のバッテリーや複数のバッテリーユニットが搭載されています。その分、部品代も増え工事も大掛かりになります。前述のように認可品以外の安価な代替バッテリーを使うことは法令上できないため、提示された見積額が相場とかけ離れて高すぎないかを確認しつつ、安全性を最優先に検討しましょう。なお、費用面だけにとらわれず、必ず正規品で適切な交換を行うことが大切です。
交換を検討する時期
非常用バッテリーの交換時期は、メーカー推奨の耐用年数を迎える前(おおむね4~5年程度)が理想です。すなわち故障や容量低下が起きる前に計画的に新品へ交換し、安全機能を切らさないようにすることが重要です。
法令上、エレベーターの非常用設備は常に正常に作動する状態を維持する義務があります。そのため年1回の法定検査でも非常用バッテリーの機能が点検され、万一劣化して動作しない場合は是正が求められます。バッテリーは前述のとおり数年で劣化するため、メーカーや保守会社は定期点検のたびに電圧や容量をチェックし、寿命が近ければ早めの交換を提案します。交換時期を逃しバッテリー切れになると、停電時にエレベーターが非常動作できなくなるだけでなく、平常時にも不具合の原因となりかねません。
実務的には、多くの管理会社や保守会社が「○年ごとの定期交換」という形でスケジュールを組んでいます。例えば3年毎に非常灯・非常通報用電池を、5年毎に動力用電池を交換する、といった具合です。これに従い、エレベーターの法定検査で指摘を受ける前に先手を打って交換するのが得策です。古いバッテリーほど突然機能しなくなる可能性があるため、故障する前に交換するのが鉄則です。
発火リスクはあるのか?
エレベーター非常用バッテリー自体が発火するリスクは、通常は極めて低いとされています。適切な製品を正しく設置・維持していれば、バッテリーが原因で火災が起こる可能性はごく稀です。
非常用バッテリーは国の厳しい安全基準を満たした製品が用いられており、過充電防止機能や温度検知機能など安全装置も備わっています。多くは鉛蓄電池やニカド電池といった安定性の高い電池であり、近年採用が始まったリチウムイオン電池についても、安全性の高い組成が選ばれています。なお、通常の使用環境下でバッテリーが突然発火・爆発するといった事故はほとんど報告されていません。
バッテリーの発火リスクを低減するためには、いくつかの注意点があります。まず、メーカー指定のバッテリー以外は使わないことです。安価だからと規格外の電池を流用すると、想定外の発熱や充電不良を起こし事故につながる恐れがあります。定期点検時にはバッテリーの外観(変形や液漏れがないか)や端子の腐食、異臭の有無なども確認してもらいましょう。鉛蓄電池は劣化により内部ガスで容器が膨らんだり電解液が漏れて周囲を腐食させることがあります。そうした兆候を早期に発見し交換すれば発火に至ることは防げます。定められた周期で確実に新品交換を続けていけば、非常用バッテリーの発火を過度に心配する必要はないでしょう。
まとめ:適切な時期に点検を開始しよう
エレベーターの非常用バッテリーは人命に直結する重要部品です。適切な時期に確実に交換することが肝要であり、その第一歩としてまず現状の点検を開始することを強くおすすめします。
バッテリーの劣化は静かに進行するため、見た目や日常の運行状況だけでは判断ができません。実際に計測機器で電圧や容量をチェックしないと、寿命の兆候を見逃す可能性があります。法令でも建築物の所有者にはエレベーター等の設備を定期的に点検・検査し、その結果を報告する義務が課せられています。なお、専門の保守会社に依頼してバッテリーの状態を点検してもらい、その結果に応じて交換計画を立てるのが確実です。
具体的には、もしここ数年バッテリーを交換していないようであれば、すぐに保守担当者に点検を依頼しましょう。点検ではバッテリー電圧の測定や負荷試験などを実施し、現状で非常時に規定時間動作できるかを評価してもらえます。結果次第では早急な交換が必要になるかもしれません。エレベーターの非常用バッテリーは利用者の命綱と言えます。定期的な点検と計画的な交換によって、万が一の災害や停電時にも安心して対応できるエレベーター環境を維持していきましょう。
エレベーター等修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- エレベータのリニューアル工事の支援実績は多数(過去1年で数百基、2025年2月現在)。特殊品である高速、油圧、リニア、ルームレスの実績もあり、社内にはエレベーター会社、ゼネコン、修繕会社など出身の施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
- 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。
電話で無料相談
24時間対応通話料・相談料 無料
Webから無料相談
専門家に相談する
こちらもおすすめ
本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
.png&w=640&q=75)
遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者