大規模修繕費用の相場・目安と賢い備え方
更新日:2025年07月31日(木)
本記事では大規模修繕の相場や目安、回数を重ねた場合の費用の推移、そして費用不足に備える方法やコスト削減のポイントまで詳しく解説します。適切な知識と対策を身につけ、将来の大規模修繕に安心して備えましょう。
- 本記事のポイント
- 1戸あたり平均100〜125万円、修繕回数を重ねるごとに費用は増加傾向にある実情を把握できます。
- 足場設置や設備更新、人件費高騰が費用に与える影響や、工事費内訳のポイントが学べます。
- 一時金徴収、ローン、補助金活用などの対策や、長期積立計画の重要性について知ることができます。
大規模修繕費用の相場:1戸あたり平均100万円超
国土交通省の調査データによれば、マンション大規模修繕の費用相場は1戸あたり約100~125万円程度が一般的な水準です。実際には建物の規模や構造、工事範囲によって差がありますが、概ね各住戸あたり100万円前後の負担は珍しくありません。多くのマンションで75万円以上の費用負担が発生しており、特に100万~125万円の範囲に収まる事例が最も多いことが統計から分かります。
例えば、50戸規模の中規模マンションでは総工事費が5,000万円前後、100戸以上の大規模マンションでは7,000万円~1億円超に達するケースもあります。実際、国土交通省調査の944件の事例では、1戸あたり100万円~125万円の費用負担が全体の27%と最多で、次いで75万~100万円が24.7%を占めています。このように多くのマンションで1戸あたり数十万円~100万円超のコストが発生し、建物全体では数千万円規模の出費となるのが現状です。
なお、建物の規模別に見ると、小規模(20戸程度)では総額2,000万円~、中規模(50~100戸)では4,000万円~、大規模(100戸以上)では7,000万円~が一つの目安とされています。戸数が多い大型マンションでは1戸あたりの負担は幾分平準化されるものの、総工費は1億円を超えることもあります。
例えば、日本初の55階建てタワーマンション「エルザタワー55」(総戸数650戸)の最初の大規模修繕費用は総工費約12億円(築17年時に実施)で、1戸あたり約200万円の負担となりました。戸数が多いため一見負担が大きく感じられますが、高層マンションでは専有面積や階層によって積立金負担額も異なり、高層大規模マンションでも月額換算1万円程度の積立で賄えたケースもあるようです。
一方で、近年のタワーマンションは各住戸の面積が広く戸数が少ない物件も多いため、そのような場合は1戸あたりの修繕費負担がさらに高額になることも考えられます。
建物の構造によっても費用の目安は異なります。一般的な鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは12~15年周期で大規模修繕を計画することが多いですが、木造アパートなど劣化しやすい建物では10~12年程度で大規模修繕を行うのが適切な場合もあります。木造の小規模アパートは工事範囲も限定的ですが耐久性が低いため早めの対応が必要で、修繕周期が短い分、生涯で複数回の大規模修繕が必要になる点に注意が必要です。
また、いわゆるタワーマンション(超高層マンション)では、足場架設や高所作業など特殊な対応が必要となるため工事費が割高になる傾向があります。もっとも、超高層でも戸数が極めて多ければ各戸負担は抑えられるケースもあり、マンションの規模と構造によって費用負担の様相は大きく変わります。
大規模修繕費用の内訳と変動要因
大規模修繕工事の費用内訳は、多くの場合以下のような主要項目に分かれます。
仮設工事(足場設置等):建物全体を囲う足場や防護ネットの設置・撤去費用。高層になるほど足場費用は増加します。
外装工事(外壁補修・塗装、防水工事):外壁のひび割れ補修や再塗装、屋上・バルコニーの防水など。工事費用の中核を占め、建物規模に比例してコストも大きくなります。
設備工事(給排水管・ポンプ類、照明・電気設備、エレベーター改修等):築年数が進むと配管の更生工事やエレベーターのリニューアルも発生します。2回目以降の修繕で追加されることが多く、費用上昇の一因です。
調査・設計監理費:劣化診断の調査費用、修繕計画や設計図書の作成費、工事監理(現場監督)費用などコンサルタント業務にかかる費用です。
その他諸経費:廃材処分費、近隣対策費、管理組合対応費用、予備費など。見落としがちな項目ですが、総額の数%程度計上されることが多いです。
このように足場代・外壁工事代が全体の大半を占め、建物が高層になるほど仮設足場の費用割合が高まります。また2回目以降の修繕では、老朽化した設備機器の更新工事(給水管の更換、エレベーター設備更新、老朽サッシ交換など)が加わるため工事範囲が拡大し費用も増える傾向があります。さらに近年では人件費や資材価格の高騰が費用を押し上げる要因となっています。
実際、2020年代に入り建築資材費は約30%上昇し、人手不足から熟練工の人件費も年々増加傾向です。国土交通省によれば2025年現在、ここ数年で大規模修繕費用は10~20%程度上昇しており、特に防水材や人件費は前年比で1割以上値上がりする事例も報告されています。こうしたインフレ要因により、長期修繕計画で想定していた予算では不足するリスクも高まっています。
大規模修繕コンサルタント費用についても触れておきましょう。専門のコンサルタント(設計監理者)に依頼すると、その費用は工事総額の5~10%程度が相場と言われます。例えば工事費用5,000万円の場合、設計監理料は150~250万円前後が目安です。戸数規模によっても平均相場があり、30戸未満の小規模マンションで約100万円、100戸以上では平均約800万円とのデータもあります。コンサルタント費用をかけることで一時的には出費が増えますが、適切な計画立案や業者選定によって中長期的には費用対効果が高まるケースも多いです。
ただし注意すべきはコンサルタントと施工業者の馴れ合い(談合)による見積もり高騰リスクです。国交省も、コンサルタントが特定業者からバックマージンを得る目的で不当に高い工事を誘導する事例に警鐘を鳴らしています。そのため見積もり内容や業務範囲を透明化し、信頼できるコンサルタントを選ぶことが重要です。
スマート修繕なら、発注者負担「ゼロ」で見積支援が可能
こうした背景をふまえ、スマート修繕では発注者(管理組合)からの費用は一切かからず、相見積もり取得や価格査定を含む見積支援サービスをご利用いただけます(※施工会社側のマーケティング費により運営)。
そのため、「専門家のサポートは必要だが、費用が心配…」という管理組合様でも、コスト負担なく適正価格での発注判断が可能です。
1回目・2回目・3回目でどう変わる?費用の推移
大規模修繕は建物が古くなるにつれて費用が増加する傾向があります。「最初の一回さえ乗り切れば安心」というわけではなく、2回目・3回目の修繕では更なる高額化に備えておく必要があります。一般に築後15年前後で行う1回目は、外壁塗装や防水などが中心で劣化も少ないため1戸あたり75~100万円程度で収まるケースが多いです。しかし築30年前後となる2回目では、1戸あたり100~125万円が目安となり、建物全体では初回より数割規模の増額となる例が増えています。「給水管の更新・更生」「古い設備機器の交換」「長年手つかずだった箇所の改修」など、工事範囲が広がる分コストも上乗せされるためです。さらに築40年以上の3回目ともなると、物件によって状況が大きく異なります。場合によっては給排水管全面交換やエレベーターリニューアル、窓サッシ更新など非常に高額な工事が必要となり、1戸あたり150~200万円近くに達するケースも珍しくありません。
このように回数を重ねるごとに修繕費は上昇しやすいため、長期修繕計画では将来の2回目・3回目まで見据えた積立金設定が不可欠です。ところが現実には、新築当初に積立金を低めに設定していたマンションほど2回目以降に資金不足に陥りやすい傾向があります。新築販売時には月々の管理費・積立金負担を抑えるために「段階増額積立方式」(初期は安く後で引き上げる方式)が採用されるケースが多く、その結果いざ修繕時期が近づいてから大幅な積立金値上げや一時金徴収が必要になる事態が生じています。特に築20~30年の時期は居住者のライフイベント(教育費や親の介護、退職など)とも重なり、家計が厳しいタイミングで修繕負担が増すことから合意形成が難航しがちです。その結果、必要な工事が先送りされ、さらに老朽化が進んで次回費用が膨らむ、といった悪循環も懸念されます。
こうした事態を避けるには、できるだけ早い段階から長期的な資金計画を立てることが重要です。例えば均等積立方式(当初から一定額を積み立てる)であれば将来の不足リスクは低減できますし、段階増額方式であっても早めに将来の負担額をシミュレーションしておけば心構えができます。国のガイドラインでも「築後30年前後までに2回目、それ以降に3回目の修繕が必要になる」と想定して計画を組むよう推奨されています。長期修繕計画を定期的に見直し、インフレによる費用増加も加味して積立金額を適正化しておくことが、将来の「払えない!」を防ぐ最善策と言えるでしょう。
修繕積立金が不足!費用が足りない場合の対処法
では、もし「大規模修繕の費用が足りない…払えない!」という状況に直面したら、どうすればよいでしょうか。実はこの問題は多くのマンションで起こりうる現実であり、国交省の調査でも修繕積立金の不足がマンション管理上の大きな課題として挙げられています。ここでは費用不足時の具体的な対処策をいくつか紹介します。
一時金の徴収(追加の集金)
区分所有者(居住者)から不足額を臨時で一括徴収する方法です。各戸から必要額を集めることで資金を補填します。ただし居住者の負担感が大きく、合意形成が難しい場合もあります。やむを得ず徴収する際は、支払い回数の分割など配慮も検討しましょう。
金融機関からの借入(ローン利用)
管理組合名義で修繕ローンを組み、不足分を融資でまかなう方法です。住宅金融支援機構や民間銀行でマンション大規模修繕向けローン商品が利用できます。借入れれば将来の積立金から返済していく形になりますが、金利負担が生じる点に注意が必要です。今後の管理費・積立金の値上げ計画とセットで検討します。
工事内容の見直し(コストダウン)
計画していた工事項目や仕様を精査し、優先度の低い工事を延期・簡略化することで費用削減を図ります。例えば「今回は外壁塗装だけに留め、配管更新は次回に先送りする」「高価な仕様を標準的なものに変更する」等の方法です。ただし必要な修繕まで削ってしまうと建物の劣化が進行し逆効果なため、専門家の意見を踏まえて最小限のコストダウンを図ることが重要です。
工事の延期
どうしても資金が用意できない場合、大規模修繕自体を先送りする選択もあります。時間を稼いでその間に積立金を追加で積み増す戦略です。ただし延期にはリスクが伴います。劣化が進行すると将来の修繕費はさらに増大しかねず、居住環境の悪化や資産価値低下にもつながります。最終手段と考え、できるだけ延期しないのが望ましいでしょう。
以上の方法を組み合わせて対処することになりますが、根本的には平時から計画的に積立金を増額しておくことが最善策です。国土交通省も2024年2月に、長期修繕計画見直し時の積立金段階値上げ幅を最大1.8倍までとする指針を打ち出すなど、各マンションで資金不足を解消する取り組みを促しています。管理組合は専門家(マンション管理士やコンサルタント)と相談しつつ、早め早めの資金計画の修正を行いましょう。
なお、場合によっては国や自治体の補助金を活用できるケースもあります。国交省の「マンションストック長寿命化等モデル事業」では、先進的な改修プランに対し最大数千万円規模の補助が受けられる制度があります。また自治体によっては耐震改修やバリアフリー改修を伴う大規模修繕に補助金を出すところもあります。適用には条件がありますが、「工事費の一部助成」が得られれば組合の負担軽減になりますので、該当しそうな場合は行政の窓口や専門家に確認してみましょう。
税制面では、区分所有マンションの場合は各所有者の負担金なので直接の減税はありませんが、賃貸オーナーにとっては大規模修繕費用を経費計上できる場合があります。税務上「修繕費」と認められればその年の必要経費に算入でき、所得税の節税につながります(一方で建物価値を高めるような改良的工事は「資本的支出」とされ減価償却になります)。マンションの共有部分工事費用を各オーナーが按分負担した場合でも経費計上の可否はケースにより異なるため、賃貸オーナーの方は税理士や税務署に相談しながら適切に処理しましょう。
大規模修繕費用を抑えるポイントと業者選び
高騰する傾向にある大規模修繕費用ですが、管理組合の工夫次第でコストを適正化・削減する余地もあります。最後に、費用を安く抑えるためのポイントや業者選定のコツを押さえておきましょう。
複数社から見積もりを取得し比較する
大規模修繕では相見積もりが極めて重要です。各社から工事内訳と金額を明示してもらい、不要な工事が含まれていないか慎重にチェックしましょう。複数の提案を比べることで適正価格の相場感がつかめ、不当に高い見積もりを排除できます。
信頼できるコンサルタント・技術者の協力を得る
修繕委員会だけで専門的な判断を下すのは難しいため、第三者の専門家に見積もりや工法をチェックしてもらうのも有効です。前述のようにコンサル費用はかかりますが、長期的に見れば費用対効果が高まるケースもあります。
中間マージンのない施工業者を選ぶ
一般に、管理会社→元請け→下請けと多重下請け構造になると中間マージンが重なり工事費が割高になります。そこで自社施工体制を持ち中間マージンをカットしている業者に依頼すれば、その分コストを抑えられます。
工事内容とタイミングの工夫
修繕計画を見直し、劣化が少ない部分は次回に回す・劣化が激しい部分は前倒しで部分補修しておくなど、メリハリのある工事計画も費用最適化に有効です。また他の修繕工事や改修工事と同時に実施して足場費用を共有する、自治体の補助金対象となる改修(省エネ改修等)を組み込むことで補助金分コストを浮かせる、といった工夫も検討できます。
日頃のメンテナンスと長期計画
結局のところ、日常的な点検・補修を怠らず建物の劣化を軽減しておくことが将来的な大規模修繕費の高騰を防ぎます。予防保全に投資することが、長い目で見れば大規模修繕費の節約につながります。
まとめ:正しい知識と準備で大規模修繕費用に備えよう
大規模修繕工事の費用は決して小さくありませんが、正しい知識と早めの準備によって必要以上に恐れることはありません。平均1戸あたり100万円前後という相場感を把握しつつ、自分たちのマンション規模・築年数ではおおよそどの程度になるのか長期修繕計画で見える化しておきましょう。また、インフレや老朽化で2回目・3回目は費用増となる傾向を念頭に置き、積立金を計画的に確保することが肝心です。万一費用が足りない事態に陥っても、一時金徴収や修繕ローン、補助金活用など複数の対処策がありますので、ベストな方法を検討してください。
そして何より、信頼できるプロの力を上手に借りることも忘れないでください。マンション管理組合だけで抱え込まず、実績あるコンサルタントや良心的な施工会社に相談することで、驚くほどスムーズに問題が解決する場合もあります。本記事で解説したポイントを押さえ、信頼できる専門家と二人三脚で進めれば恐れる必要はありません。マンションの将来のために、ぜひ今からできる準備を始めてみてください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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