マンション修繕積立金はどこまで上がるのか?増額傾向の背景と管理組合の備え
更新日:2026年02月26日(木)
近年、マンションの修繕積立金を引き上げる動きが全国的に広がっています。多くの管理組合では「この先も修繕積立金は上がり続けるのではないか」「将来の負担がどこまで膨らむのか」といった不安の声が強まっており、住民間での議論が避けられないテーマとなっています。 実際、首都圏の中古マンションでは、修繕積立金の㎡単価がこの数年で着実に上昇しており、5年前と比べて1割前後高い水準となっています。新築マンションについても、分譲当初から修繕積立金を高めに設定するケースが増えており、月額単価は一昔前と比べて大きく引き上げられています。 こうした状況を踏まえ、本記事では、修繕積立金がなぜ増額傾向にあるのか、その現実的な上昇水準はどの程度なのか、そして管理組合としてどのような備えが求められるのかについて、国の指針やこれまでの推移、マンション現場での実例をもとに整理します。将来の判断材料として役立つ情報をまとめました。
- 本記事のポイント
- 修繕積立金が全国的に増額傾向にある理由やコスト上昇の背景を理解できる。
- 将来の積立金の目安やガイドラインにもとづく資金計画の考え方がわかる。
- 管理組合としての長期修繕計画見直しや合意形成の具体的な備えが学べる。
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修繕積立金が増額される背景
全国で値上げが相次ぐ理由
新築時の積立金設定の低さと計画不足
多くのマンションでは、新築分譲時に月々の修繕積立金が低めに設定されてきました。分譲価格を抑え、購入時の負担感を軽く見せるため、管理費や修繕積立金を必要最低限にとどめるケースが少なくなかったためです。その結果、築年数の経過とともに修繕資金が不足しやすい構造を抱えるマンションが増えています。
特に、入居当初は積立金を低額に設定し、将来的に段階的に引き上げていく「段階増額積立方式」を採用するマンションが広く普及しました。この方式は理論上は合理的ですが、実際には増額時期になると区分所有者の合意形成が難航し、計画どおりに引き上げられないケースが少なくありません。
国の調査でも、段階増額方式を採用しているマンションのうち、当初計画どおりに増額できているのは6割程度にとどまっており、残りは計画未達となっています。さらに、長期修繕計画自体が未策定であったり、古い計画を見直さないまま放置されていたりする例も見受けられ、将来必要となる修繕費用を正確に把握できていないことが、積立金不足を招く大きな要因となっています。
建設コスト・人件費の上昇と施工業者不足
近年の修繕積立金増額の最大の要因の一つが、修繕工事そのもののコスト上昇です。建築資材費や施工費は長期的に上昇傾向にあり、以前に作成された長期修繕計画の前提金額では、大規模修繕を賄いきれないケースが増えています。
背景には、都市部を中心とした建設需要の高まり、資材価格の上昇、国際情勢の影響などがあり、加えて建設業界では慢性的な人手不足が続いています。職人や技術者の高齢化・減少により人件費は上昇し、そのコストが修繕工事費に反映される構造が定着しています。
また、地域によっては施工会社自体が不足し、十分な競争入札が成立しにくい状況も見られます。その結果、見積金額が当初想定を大きく上回り、修繕積立金の追加徴収や大幅な増額を余儀なくされる管理組合も増えています。
首都圏では特に、管理費・修繕積立金ともに上昇傾向が顕著です。中古マンションでは㎡単価ベースで着実な上昇が続き、新築マンションにおいても、分譲時点から将来のコスト増を見越して、従来より高い水準で積立金を設定する動きが一般化しています。それでもなお、資材高や人件費の影響を受け、将来的な不足が懸念されるマンションは少なくありません。
将来どこまで上がる可能性があるのか:ガイドラインが示す水準
ガイドラインが示す修繕積立金の目安
国土交通省は、マンションの長期的な維持管理を見据えた修繕積立金の考え方について、ガイドラインの中で一定の目安を示しています。このガイドラインでは、マンションの階数や延べ床面積などの条件ごとにモデルケースが設定されており、将来必要となる修繕費用を安定的に賄うための積立水準が整理されています。
それによれば、修繕積立金の必要額は専有面積1㎡あたり月額おおむね250~330円程度が一つの目安とされています。これは、外壁改修や防水工事、給排水設備の更新など、将来的に発生する大規模修繕工事を長期修繕計画に基づいて実施するために必要とされる水準です。
例えば、専有面積70㎡の住戸であれば、月額の修繕積立金は約1万7,000円前後が目安となります。
一方、現実のマンションでは、この水準に達していないケースも多く、㎡単価で200円前後にとどまっているマンションも少なくありません。新築時から十分な積立額を確保できないまま築年数を重ねてしまった結果、ガイドラインが示す理想的な水準との間に大きな差が生じているのが実情です。
現実に起こり得る修繕積立金の増額幅
では、将来的に修繕積立金はどの程度まで上がる可能性があるのでしょうか。現状の積立水準とガイドラインの目安を比較すると、今より数割増、場合によっては倍程度まで引き上げが必要となるケースは十分に考えられます。
特に、分譲時に段階増額積立方式を採用しているマンションでは、築年数の経過とともに月額積立金が当初の数倍規模になる想定となっている例も見られます。中には、新築当初は月額1万円未満だった積立金が、将来的には大幅な増額を前提とした計画となり、住民の負担感が一気に高まるケースもあります。
こうした極端な増額計画が問題視される中、国のガイドラインでは、段階増額方式を採用する場合であっても、
- 当初の積立額は必要額の6割以上
- 最終段階でも必要額の1.1倍以内
に収めることが望ましいとされています。
これは、販売当初に過度に低い積立金を設定し、将来何倍にも跳ね上がるような計画を避け、住民の負担増を緩やかに抑えることを目的とした考え方です。言い換えれば、長期修繕計画全体を通じて均等に積み立てる「均等積立方式」を基本としつつ、やむを得ず段階増額とする場合でも、増額幅は現実的な範囲にとどめるべきだという指針です。
この考え方に沿えば、将来的な修繕積立金の増額幅は、新築時と比べて最大でも1.5~2倍弱程度が一つの現実的なラインといえるでしょう。
不足分を補う一時金徴収という選択肢
もっとも、すでに築年数が進み、積立金残高が十分でないマンションでは、月額積立金の増額だけでは必要資金を賄いきれない場合もあります。そのようなケースでは、修繕積立一時金(臨時徴収)によって不足分を補うという選択肢が現実的に検討されることもあります。
実際には、大規模修繕工事の直前に、各戸から数十万円規模の一時金を徴収した例も見られます。一時金は短期間で資金を確保できる反面、住民にとって突然の大きな出費となり、合意形成の難しさや滞納リスクといった課題も伴います。
そのため、ガイドラインでは、一時金に依存するのではなく、将来にわたって安定的に積み立てる均等積立方式を基本とする考え方が示されています。どうしても不足が解消できない場合の最終手段として、一時金徴収や修繕ローンの活用を検討する余地はありますが、できる限り早い段階で長期修繕計画を見直し、段階的な積立金の調整を行うことが望ましいといえるでしょう。
管理組合としてどう備えるべきか:長期修繕計画の見直しと合意形成のポイント
修繕積立金の上昇が全国的な流れとなる中、管理組合には、場当たり的な対応ではなく、計画性と合意形成を重視した運営がこれまで以上に求められています。重要なのは、「いかに早く現実を把握し」「いかに無理のない形で住民の理解を得るか」です。
以下では、管理組合が実務として取り組むべき具体策を整理します。
長期修繕計画の定期的な見直し
修繕積立金の増額を検討する際、最初に着手すべきなのは、現行の長期修繕計画が現実に即しているかを確認することです。
建物や設備の劣化状況、更新周期、直近の工事費単価の上昇などを反映し、今後必要となる修繕工事費の総額を再算定します。特に、以前に作成された計画では、物価や人件費の上昇が十分に考慮されていないケースも多く、当初想定していた金額では修繕を賄えない可能性があります。
また、従来は計画期間を30年程度(大規模修繕2回分)としていたマンションも少なくありませんが、近年は築後60年程度までを見据えた超長期の修繕計画が推奨される傾向にあります。2回目以降の大規模修繕や設備更新まで含めて計画することで、将来特定の時期に修繕費が急増するリスクを把握し、積立負担を平準化した資金計画を立てることが可能になります。
こうした見直しによって、「このままでは将来いくら不足するのか」「いつ、どの程度の増額が必要なのか」が明確になれば、修繕積立金の増額についても感覚論ではなく、論理的に説明できる状態を整えることができます。
段階増額方式の活用と増額幅のコントロール
修繕積立金の不足が明らかになった場合、次に検討すべきは増額の方法です。一度に大幅な引き上げを行うと、住民の負担感が急激に高まり、合意形成が難しくなります。そのため、現実的には段階的に引き上げる方法を検討せざるを得ないケースも多いでしょう。
特に築年数が浅いうちに、比較的緩やかな増額を重ねていくことで、将来居住者が高齢化した際の負担を抑える効果が期待できます。例えば、「築後10年で1.2倍、20年で1.5倍」といったように、あらかじめ増額スケジュールを織り込んだ計画を立て、その内容を一度の総会決議で包括的に承認しておく方法も有効です。これにより、増額のたびに合意を取り直す必要がなくなり、管理運営の安定性も高まります。
ただし、段階増額方式を採用する場合でも、将来世代に過度な負担を先送りしないことが重要です。ガイドラインでは、当初の積立額を必要水準から大きく下回らせず、最終段階でも必要額を大きく超えない範囲に抑える考え方が示されています。増額幅を無制限に拡大させるのではなく、将来を見据えた現実的な上限を設定することが不可欠です。
一方、現時点で大幅な不足が見込まれる場合には、早期に必要水準まで引き上げ、均等積立方式へ移行するという判断も選択肢となります。実際、竣工後まもなく計画を見直し、月額積立金を一気に引き上げたうえで、その後は据え置く方式に切り替えたマンションもあります。短期的な負担は増えますが、将来的な急激な増額や一時金徴収を回避できる点では、合理的な判断といえるでしょう。
一時金徴収や借入を含めた資金調達の検討
段階的な増額を行っても、直近の大規模修繕に必要な資金が不足する場合には、修繕積立一時金の徴収や金融機関からの借入を併用する検討も必要になります。
一時金は、短期間でまとまった資金を確保できる反面、住民にとって心理的・経済的負担が大きく、合意形成のハードルも高い手法です。そのため、あくまで最終手段と位置付けるべきでしょう。やむを得ず実施する場合でも、早い段階から可能性を周知し、各戸が資金準備できるよう配慮することが重要です。
また、修繕工事時に不足分を借り入れ、返済を将来の積立金に上乗せする方法もあります。いずれの手法を採るにしても、「不足分を誰が、いつ、どのように負担するのか」を明確にしたシミュレーションを行い、複数の資金計画案を比較検討したうえで、最も無理の少ない選択肢を選ぶことが求められます。
合意形成を進めるための実践ポイント
修繕積立金の増額は、管理組合運営の中でも特に合意形成が難しいテーマです。以下の点を意識し、丁寧なプロセスを踏むことが重要です。
増額の必要性を「数字」で示す
「お金が足りないから上げる」という説明ではなく、長期修繕計画に基づく将来収支を示し、「このままでは〇年後に〇〇円不足するため、月額〇円の増額が必要」と具体的に説明します。客観的な数字に基づく説明は、住民の納得感を高めます。
第三者の専門家を活用する
管理会社や理事会だけの説明では不信感を抱く住民もいます。利害関係のない第三者専門家による診断や意見を取り入れることで、計画の妥当性に対する信頼性が高まります。
情報提供は徹底的に行う
説明会を複数回開催し、資料配布や掲示、回覧なども活用して、「知らなかった」という住民を生まないことが重要です。継続的な情報発信によって、不安や疑問を早期に把握し、対応することができます。
合意形成はスピード感も意識する
議論を長引かせすぎると、反対意見が拡大したり、理事会が疲弊したりするリスクがあります。十分な説明を行ったうえで、適切なタイミングで結論を出す判断も必要です。
決議要件を踏まえた戦略を立てる
修繕積立金の改定は通常、普通決議で承認可能です。過半数の賛成を得るため、議決権行使書や委任状の提出状況を事前に把握し、成立見込みを見極めたうえで提案することが重要です。将来分まで含めた段階増額計画を一本の議案として示す場合には、内容を明確に伝え、長期的視点での判断を促しましょう。
以上のように、修繕積立金の増額は、多くのマンションにとって避けて通れない課題です。しかし、早めの計画見直し、現実的な資金計画、そして丁寧な合意形成によって、その負担は十分にコントロール可能です。
マンションの資産価値と居住環境を将来にわたって維持するためにも、管理組合が主体的に長期的視点で判断し、行動することが求められています。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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