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エレベーター制御盤の修繕費は資本的支出?判断基準と会計処理のポイント

更新日:2026年01月22日(木)

マンション管理組合の理事会にとって、エレベーター制御盤の交換や修理にかかる多額の費用を「資本的支出」(いわゆる資本的支出:資産計上する費用)とするか、あるいは「修繕費」(収益的支出:当期の費用として計上するか)とするかの判断は重要な課題です。エレベーターの頭脳ともいえる制御盤のリニューアルは1基あたり数百万円規模にもなり、その会計処理の違いが組合の財務状況や税務上の扱い、組合員への説明責任に大きく影響します。 ここではエレベーター制御盤修繕費を資本的支出として認める要件や税務・会計上の判断基準、管理組合会計での扱い、さらに資本的支出にすることで得られるメリット・注意点を解説します。 また、判断が難しいグレーゾーンの事例や資本的支出とならない場合の収益的支出(修繕費)との違いにも触れます。

本記事のポイント
  • 資本的支出と修繕費の違い、判断基準を理解できる。
  • 管理組合会計での処理方法と税務上の影響を把握できる。
  • 適切な会計区分で組合の財務透明性を高めるコツがわかる。

資本的支出と修繕費の違い:延命・価値向上か原状回復か

まず、資本的支出(固定資産に計上すべき支出)と修繕費(その期の経費として処理できる支出)の基本的な違いを押さえましょう。

国税庁のタックスアンサーでは、建物や設備の修理費用について「通常の維持管理や原状回復のための支出」は修繕費(必要経費)になりますが、「資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価値を高めたりする部分の支出」は資本的支出として修繕費と区別すると明示されています。

簡単に言えば、その工事によって資産価値が増したり寿命が延びたりするなら資本的支出、単なる故障箇所の復旧や維持管理の範囲に留まるなら修繕費と考えるのが基本です。

例えば、老朽化した外壁を同程度の性能の塗料で塗り直す工事は現状維持のための修繕費に該当します。一方で、外壁塗装時に最新の高性能塗料を用いて断熱性や防水性を向上させれば、資産価値・耐久性が向上する部分は資本的支出の性質を帯びます。

国税庁も「機械装置の部品を通常よりも品質・性能が高いものに取り替えた場合、その通常の取替費用を超える部分は資本的支出にあたる」と例示しており、性能アップのための支出は単なる修理とは区別されることがわかります。

なお、税務上は支出の名目ではなく実質で判断されるため、たとえ「〇〇修繕工事」と呼んでいても内容的に価値増加や耐用年数延長があれば資本的支出とみなされます。逆にいえば、名目が「更新」「改良」であっても実質が原状回復なら修繕費にできるということです。

エレベーター制御盤修繕が資本的支出と認められる要件

エレベーターの制御盤(コントロールパネル)は建物附属設備の中核であり、経年で部品の劣化や技術陳腐化が進むため、おおよそ20~25年程度で交換やリニューアルが必要になる設備です。

制御盤の交換費用は高額ですが、この支出が資本的支出に該当するか修繕費として処理できるかは工事の目的と内容によって判断されます。

基本的な判断基準は前述の通り、「価値や耐用年数の増加」があるかどうかです。具体的にエレベーター制御盤の場合で考えてみましょう。例えば制御盤が故障し、エレベーターが動かないため壊れた部品を同程度のものに交換して動作を復旧させるのであれば、それは元の機能を取り戻すための修理に過ぎず修繕費(収益的支出)と考えられます。

一方、古いリレー式の制御盤を最新型のマイコン制御盤に取り替えるようなケースでは、動作の安定性向上や省エネ性能の向上、安全機能の追加(例:戸開走行保護装置の追加による事故防止機能向上など)が見込まれ、資産の機能・価値が以前より高まる部分があります。このような新機能の付加や性能グレードアップを伴う改修は資本的支出に該当することになります。

実務上厄介なのは、エレベーター制御盤の更新工事が修繕費部分と資本的支出部分の両方を含むグレーゾーンとなり得る点です。制御盤交換では古い機能を維持するための費用と、新たな付加価値を加える費用が混在する場合があります。国税庁の基準では、そのように一つの工事に修繕費か資本的支出か明確でない部分がある場合、その不明瞭部分の金額が60万円未満または資産の前期末取得価額の10%以下であれば、全体を修繕費として処理して差し支えないとされています。

しかしエレベーター制御盤の更新費用は数百万円規模になるのが一般的で、この60万円・10%ルールの枠を超えるケースが多いため、安易に全額を修繕費計上するのはリスクがあります。実際、制御盤交換工事の費用の一部が新機能による価値向上分と認められる場合には、その分を資本的支出(固定資産計上)として、残りを修繕費として分けて処理することも可能です。例えば「通常の同等品に交換すれば500万円ですむところ、高性能な制御盤導入で700万円かかった」という場合、超過分の200万円を資本的支出として資産計上し、500万円を修繕費とするような区分も認められます。このように工事内容と費用内訳を精査し、原状回復部分とグレードアップ部分を適切に仕分けすることが重要です。

管理組合会計における資本的支出の扱い

マンション管理組合の会計では、日常の管理収支を扱う管理費会計と、将来の大規模修繕に備える修繕積立金会計を区分経理するのが一般的です。

エレベーター制御盤の更新のように長期修繕計画に基づき修繕積立金から支出される大型工事は、その支出の性質(資本的支出か費用的支出か)によって組合財務諸表への表れ方が異なります。

資本的支出と判断された場合、支出額は管理組合の固定資産(建物等)の帳簿価額に加算されます。つまり、修繕積立金という現預金が減少する代わりに、建物附属設備などの資産が増加したという仕訳になり、貸借対照表上は建物の帳簿価値が増える形で財政状態に反映されます。

一方、費用的支出(修繕費)に該当すると判断された工事費用は資産計上せず、その期の費用(支出)として一括計上されます。この場合、当期の活動計算書(損益計算書)上で大きな修繕費支出が発生し、組合の当期収支は大きくマイナスになるでしょう。

したがって、管理組合の貸借対照表や収支計算書に与える影響も資本的支出か修繕費かで変わります。資本的支出として資産計上すれば、組合の純資産(繰越剰余金)は減少せず、建物等の資産価値が積み上がる形になります。

一方、修繕費として費用処理すれば、当期純利益(剰余金)はその分減少します。例えば発生年度に大規模修繕費用を全額費用処理すると会計上赤字計上となる場合もあり得ますが、資本的支出として計上すれば減価償却費として徐々に費用化されるため財政状態の見かけ上の安定性は増すでしょう。

もっとも、どちらが組合財政に有利かは税務上の問題だけでなく組合員への説明や長期的な資産価値維持も踏まえて判断すべきであり、適切な区分処理を行うことは組合会計の透明性確保と説明責任の履行のために重要です。

なお、2022年度に創設されたマンション管理適正評価制度においても、「管理費と修繕積立金の区分経理」や「直近5年間の修繕工事の履歴情報」が評価項目とされています。特に修繕積立金会計から支出した修繕工事の履歴は金額の大小にかかわらず整備して提出することが求められており、1件でも記録が欠けていれば高評価(◎)は得られない仕組みです。

資本的支出か修繕費かの判定に悩んで記録を怠ると、こうした第三者評価にも影響を及ぼしかねません。管理組合として、どの工事にいくら掛かり、どの会計(修繕積立金 or 管理費)から支出したのかを適切に記録・管理することがますます重要になっています。

実際、国土交通省も修繕履歴データの管理システム構築を推進しており、その中で工事ごとに「実施年月」「工事内容」「工事費用」「施工者名」「支出元(一般会計・修繕積立金会計の別)」等を入力・検索できるようにすることが提唱されています。このように修繕履歴と費用内訳を体系的に整理することが、会計区分の適切な運用と組合運営の信頼性向上につながります。

資本的支出にするメリット・デメリットと留意点

エレベーター制御盤の交換費用を資本的支出(資産計上)とするか修繕費とするかは、税務面・会計面でそれぞれメリットとデメリットがあります。

ここでは主なポイントを整理します。

税務上の扱いと節税効果の差

資本的支出とした場合、その支出は新たな資産取得と同様に扱われ耐用年数にわたり減価償却によって費用化します。一方、修繕費であれば支出した年の必要経費として全額を計上できます。そのため、仮に管理組合や区分所有者に課税所得が発生している場合(例えば組合が駐車場収入や受取利息で黒字計上している場合、あるいは区分所有者が自身の部屋を賃貸に出して不動産所得がある場合)、修繕費として一括経費計上できればその年の課税所得を大きく圧縮できるメリットがあります。

逆に資本的支出では当期に一度に経費化できる金額が減価償却費の額(耐用年数に応じた按分)だけになるため、初年度の節税効果は小さくなります。

例えば、あるオーナーの不動産所得が年間1,000万円あるケースで、制御盤交換費用400万円を全額修繕費にできれば課税所得は600万円に減りますが、資本的支出にするとその年は耐用年数に応じた一部(例えば40万円など)しか経費にならず課税所得は高いままになります。

短期的なキャッシュフローの観点では修繕費処理の方が有利ですが、長期的には毎年少しずつ減価償却できる資本的支出にも節税効果が分散する形で現れます。

財務諸表への影響と資産価値の把握

前述の通り、資本的支出とすれば組合のバランスシート上で建物価値が増加し純資産の目減りを防げるため、組合財政の健全性を見せやすいという側面があります。

組合決算書を見たときに、資本的支出として計上された工事は資産の取得として扱われますから、例えば将来マンションの購入希望者に管理組合の財務内容を開示する際にも「〇〇設備更新工事により建物附属設備の帳簿価額が増えている=適切な投資がなされている」と評価されるかもしれません。

一方、修繕費処理ではその年の費用として消えるため帳簿上資産価値は増えず、工事実施後も建物の簿価は変わりません。しかし実態として設備更新で性能向上していれば、帳簿価額に表れなくともマンションの実質的な価値維持・向上には寄与しています。したがって、帳簿上の数値だけでなく工事内容を踏まえて資産価値を把握・説明することが大切です。

税務調査リスクと適正な区分

短期的な節税を狙って本来資本的支出にあたる工事まで無理に修繕費で処理することは危険です。税務当局は工事契約書や議事録の記載内容、実際の施工内容を精査した上で実質的に判断します。もし資本的支出に該当する改良工事を意図的に修繕費計上していると指摘された場合、利益操作とみなされ追徴課税等のリスクがあります。

管理組合自体は収益事業を行わない限り法人税の課税対象にはなりにくいものの、区分所有者個人の不動産所得の経費計上について税務署がチェックする可能性もあります。グレーなものは専門家の判断を仰ぎ、根拠をもって処理を決定することが肝要です。

補助金利用時の留意点

エレベーターの制御盤交換では、国や自治体から補助金が受けられるケースもあります(例:国交省の「エレベーターの防災対策改修事業」による戸開走行保護装置設置への補助など)。補助金は魅力的ですが、その多くは防災・安全向上といった付加価値を伴う改修が条件のため、結果的に工事内容は資本的支出の要素を含むことになります。

この場合、補助金を得ても工事費を修繕費として一括経費にできない(資本的支出として資産計上し減価償却する)可能性があり、期待したほどの節税効果が得られないケースもあります。補助金額と税務処理を総合的に勘案して判断する必要があります。

以上のように、資本的支出と修繕費それぞれにメリット・デメリットがあります。マンションの長期的な維持管理計画とキャッシュフロー、税務面での適正さ、組合員への説明のしやすさ等を踏まえ、総合的に判断することが重要です。

まとめ

エレベーター制御盤の修繕費を資本的支出とするには、価値向上や耐用年数延長といった明確な要件を満たす必要があります。その判断には税務上の基準や技術的な視点が関わり、一筋縄ではいかない場合もあります。管理組合としては、公的ガイドラインや専門家の助言を参考にしつつ、将来を見据えた最善の処理方法を選択することが求められます。

適切な会計処理と透明性の高い情報開示によって、組合員の信頼を確保しながらマンションの資産価値を守っていきましょう。

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  • 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
  • エレベータのリニューアル工事の支援実績は多数(過去1年で数百基、2025年2月現在)。特殊品である高速、油圧、リニア、ルームレスの実績もあり、社内にはエレベーター会社、ゼネコン、修繕会社など出身の施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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