マンションでキュービクルを交換する際に必要な届出・申請とスマートな進め方
更新日:2026年01月22日(木)
マンションやビルの高圧受電設備であるキュービクル(受変電設備)の更新工事を行う際には、法令に基づく各種の届出・申請手続きが欠かせません。届け出を怠ると違法となり、設備の使用停止や罰則につながる恐れもあります。また更新工事自体も高額になりやすく、管理組合やオーナーには大きな負担です。 本記事では、キュービクル交換時に必要な主な届出手続き(電気事業法関係や消防署・電力会社への対応)と所要期間、注意点を整理します。安心・安全かつ賢明に設備更新を進めるためのポイントを押さえておきましょう。
- 本記事のポイント
- キュービクル更新に伴う電気事業法・消防法上の届出義務と罰則を理解できる。
- 管理組合やオーナーが対応すべき申請手続きと所要期間のポイントがわかる。
- 進め方の注意点や専門家活用による安全で効率的な工事のコツが学べる。
電気事業法に基づく届出義務とペナルティ
キュービクルのような高圧受電設備(自家用電気工作物)を設置・使用する場合、電気事業法により以下の義務が課されています。
①設備が技術基準に適合するよう維持すること、②保安規程(設備の保安管理ルール)の制定・届出・遵守、③主任技術者(有資格の電気主任技術者)の選任・届出などです。
これらは経済産業省(産業保安監督部)への所定手続きを伴う法的義務であり、違反した場合は処罰の対象となります。例えば、主任技術者を選任しなかった場合は最大300万円以下の罰金、選任届を提出しなかったり虚偽の届出をした場合も最大30万円以下の罰金が科せられます。改善命令に従わないような悪質なケースでは、最悪の場合その設備の設置許可取り消し(使用禁止)といった措置もあり得ます。こうした厳しい規定があるのは、高圧電気設備の事故が周囲に及ぼす影響が大きいためで、安全確保と法令遵守は何より重要です。
キュービクル交換時に必要となる主な届出・申請
老朽化したキュービクルの更新工事は、法的には新規に高圧受電設備を設置する場合とほぼ同じ扱いになります。そのため事前に各種官公庁への届出や承認手続きを進め、必要書類が受理されてから工事に着手することが求められます。
以下にマンション管理組合やオーナーが行う主な届出・申請とその提出先をまとめます。なお、一般的な高圧受電設備(受電電圧6,600V級)であれば経産省への工事計画届出(事前の工事計画の届け出)は2003年以降不要とされています(特別高圧受電など一部の例外を除く)。しかし、保安規程や主任技術者の選任届など基本的な手続きは従来通り必要ですので、漏れなく対応しましょう。
各届出の提出先と流れは以下のとおりです。
消防署への「電気設備設置届出」
消防法に基づき、キュービクルを新設・交換する場合は「工事開始の7日前まで」に所轄消防署へ「電気設備等設置届出書」を提出します。高圧設備は電気火災のリスクがあるため、防火上の観点から事前届け出と設置後の検査が義務付けられています。届出を行わずに工事を始めることはできず、工事完了後には消防署の設備検査に合格して初めて使用が認められます。非常用電源として受電設備を利用する場合は、追加で「非常電源設置届出書」の提出も必要です(消防法第17条)。消防署への届出・検査には時間の余裕をもって臨みましょう。
経済産業省(産業保安監督部)への届出
電気事業法に基づく手続きとして、経産省の地方支分部局である産業保安監督部にも書類を提出します。具体的には、「保安規程」の届出および「主任技術者(電気主任技術者)選任届」を提出しなければなりません(小規模な例外を除き必須)。
保安規程とは受電設備の維持管理方法を定めた社内ルールであり、設備の使用開始前までに策定・届出が必要です。また第三種以上の有資格者を主任技術者に選任し、氏名等を届出ます。既存設備でこれらの届出済みの場合も、キュービクル更新で設備容量や構成が変わる場合は速やかに保安規程の変更届や主任技術者の変更届を提出しましょう。提出先は設置場所を所管する産業保安監督部(経産省の地域事務所)です。管轄区域が複数にまたがるような特殊なケースでは、本省(経済産業大臣)への届出となります。
電力会社との事前協議・工事申請
工事に際しては、管轄の電力会社(送配電事業者)との打ち合わせも不可欠です。電力会社は受電設備を電気的に接続する相手方ですので、工事計画の段階から設備構成や停電方法について事前協議を行い、問題点がないか確認します。公的な許認可ではありませんが、電力会社が協議に同意しなければ電気の供給停止・再送電の調整ができず、結果として工事や設備利用が進められません。特に停電日時の確定や受電再開の手続きなど、電力会社との調整事項は多岐にわたるため、計画段階から早めに相談しておくことが重要です。
契約電力や受電方式を変更する場合は契約手続きも伴います。また工事当日は電力会社立会いのもとで停電・送電を行う必要があるため、工事予定日の1〜2か月前までには所定の工事申請を済ませるよう心掛けましょう。経験豊富な電気工事業者であれば電力会社との調整手順を把握していますので、不安な場合は業者に早めに相談すると良いでしょう。
補足
このほか、大規模施設でエネルギーの使用量が特に多い場合は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づく届出(工場等判断基準の変更届出)が必要となるケースもあります。該当するマンション・ビルは限られますが、契約電力の大幅な変更などが生じる際には行政への確認が推奨されます。
また、建物の構造に影響するような増設工事では建築基準法上の手続きが発生する可能性もあります。計画段階で各方面の専門家に相談し、必要な手続きを洗い出しておきましょう。
電気主任技術者の選任と外部委託について
高圧受電設備を設置する事業所には、国家資格である電気主任技術者(主任技術者)を選任する義務があります。一般的なキュービクルでは第三種電気主任技術者以上の有資格者を充てる必要があり、先述のとおり経産省への届出が必要です。マンション管理組合や中小ビルのオーナー企業では社内に資格者がいないケースも多いため、その場合は各地域の電気保安協会や登録電気保安法人などに業務を委託し、外部の主任技術者に保安管理を担ってもらいます。
実際、キュービクルの法定点検(月次点検・年次点検など)やトラブル時の対応は、この主任技術者が中心となって行います。万一、選任した主任技術者が退職・異動した場合は速やかに後任を選任し直し届出をする必要があります(空位のまま放置すれば前述のとおり法違反です)。日常的な保守点検についても、選任した主任技術者もしくは委託先の保安担当者と連携して計画的に実施し、設備の安全と安定稼働を維持しましょう。
キュービクル更新工事の費用が高額になりやすい理由
キュービクルの更新には数百万円規模の費用がかかるのが一般的で、場合によってはそれ以上になることもあります。他の設備更新に比べ高額になりやすい主な理由は次のとおりです。
機器本体価格の高さ(資材価格の高騰)
キュービクル内の変圧器や開閉器など主要機器そのものの価格が高額です。近年は省エネ対応機器への切替に伴い変圧器の大型化・値上がりが決定しており、新型への更新は従来より大幅なコスト増につながる見通しです。また銅や鉄など電気機器に使われる資材価格が世界的に高騰し続けていることも、機器更新費用を押し上げる要因となっています。
施工条件による人件費の増加
現地の状況次第では作業難易度が大きく変わります。例えば屋上や高所にあるキュービクルでは大型クレーン車の手配が必要になる場合がありますし、機器設置スペースが手狭な現場では通常より人手と時間がかかります。またテナント稼働中のビルや居住中のマンションでは夜間・早朝の工事とせざるを得ないケースも多く、深夜割増などで人件費が増す要因となります。こうした現場条件によって工事施工費は増減し、条件が厳しいほどコスト高になる傾向があります。
付帯工事・撤去処分費用
キュービクル本体の交換に加え、老朽化した高圧ケーブルの張り替えや基礎土台の補修工事、既存設備の撤去・廃材処理といった付帯作業にも費用がかかります。とくに古い変圧器油に有害物質のPCBが含まれている場合、法令に従った分析・処分が必要で非常に高額です。また機器更新に伴い電気設備の竣工図(図面類)を新たに作成・整備する費用も発生します。
停電対策や工事スケジュール調整
キュービクルの更新工事中は受電を停止するため、建物全体が停電します。マンションの共用部や病院など、長時間の停電が許されない施設では仮設発電機や仮設受電設備を用意して工事中に一時的に電力供給する対応が不可欠です。この仮設電源の設置費もまとまった額になります。また工事を夜間や休日に集中的に行えば利用者への影響は抑えられますが、その分夜間施工の割増料金がかかるなどコスト増要因となります。停電時間を短縮するため通常より作業人員を増やしたり工程を分割するといった対策をとれば、人件費・機材費が追加発生します。
以上のように様々な要因で費用が膨らみやすいため、キュービクル更新工事では複数業者から見積もりを取り内容・金額を比較検討することが重要です。実績のある電気工事業者であれば、現場条件に応じた効率的な施工計画やコストダウン案を提案してくれる場合もあります。管理組合としては、信頼できる業者を慎重に選定し、納得のいく見積もりで発注するようにしましょう。
まとめ
キュービクルの老朽化対策は、放置すれば停電事故や火災リスクを招く重大事項ですが、費用や手続きのハードルから先送りされがちです。だからこそ信頼できる専門家の力を借りて、「賢く、安全に」設備更新を実現することが重要です。専門家のサポートにより、安心・納得のいく形で高圧受電設備を次の世代へと更新し、マンション・ビルの安全と資産価値を守っていきましょう。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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