マンションのアスベスト除去費用:リスクから補助金・業者選定まで
更新日:2026年01月30日(金)
マンションの大規模修繕やリフォーム時に見落とせない問題の一つに、アスベスト(石綿)の存在があります。とりわけ1970~80年代築のマンションでは建材への広範な使用が疑われ、適切に管理されずアスベスト繊維が飛散すれば深刻な健康被害(肺がん・中皮腫など)を引き起こすリスクがあります。 本記事では、マンション管理組合の役員や所有者の方向けに、アスベストの潜在箇所とリスク、除去工事の法的義務、費用相場と変動要因、補助金制度、そして安全・適正価格な業者選定のポイントについて解説します。適切な知識と対策により、マンション全体の資産価値と居住者の健康を守りましょう。
- 本記事のポイント
- どこにアスベストが使われているかと健康リスク、除去の法的義務が理解できる。
- 除去費用の相場や費用に影響する要因、自治体の補助金制度の活用方法を学べる。
- 適正価格で安全な業者選定のコツと、第三者専門家を活用するメリットがわかる。
マンションに潜むアスベスト使用箇所とリスク
古いマンションだからといって「うちは大丈夫」と油断は禁物です。吹き付けアスベストが施工された時代のマンションでは、以下のような共用部や専有部にアスベスト含有建材が使用されている可能性があります。
共用部
地下駐車場や機械室の天井・梁に吹き付けられた耐火被覆材、廊下・エントランスの天井ボード、階段室・外壁の下地材など
設備周り
ボイラー室や配管シャフト内のパイプ保温材・断熱材、空調ダクトのパッキン材、エレベーター昇降路の耐火材
専有部
各住戸の天井板や壁材(ロックウール吸音板、ケイ酸カルシウム板等)、キッチン・浴室の床材(クッションフロアやビニール床タイル)、給湯器やレンジフード周りの断熱パッキン
屋根・外装
屋上のスレート瓦、バルコニー隔板や軒天ボード、外壁サイディングボードなど
これらの建材は通常は固化しており、普段の生活でただちに害を及ぼすわけではありません。しかし老朽化や工事で破損すれば、目に見えない微細な石綿繊維が空気中に飛散し、居住者の健康リスクを高めます。実際、国は1960年代~80年代半ば築の建築物を「リスクの高い年代」と位置付けており、特に1970年代にはマンションで吹き付けアスベスト使用が確認されています。アスベスト繊維を長期間吸い込むと肺の線維症(じん肺)や悪性中皮腫、肺がんなどを発症する恐れがあり、潜伏期間が数十年に及ぶ点も危険です。
こうした健康被害の深刻さから2006年以降、建築材料としてのアスベスト使用は全面禁止となりました。
古いマンションにお住まいの場合、まず専門業者による調査で状況を把握し、必要な対策を講じることが肝要です。
アスベスト除去工事に関する法的義務
「工事に着手する前にアスベストの有無を調査する」――これはマンションに限らず建築物全般で守るべき鉄則です。現在の法律では、改修・解体等で石綿を含む恐れのある部分に手を加える際、有資格者による事前調査が義務化されており、それを怠ると罰則を科される可能性があります。
2022年の法改正(石綿障害予防規則等)により、この事前調査は規模の大小を問わず必須となり、一定規模以上の工事では結果を所轄の労働基準監督署へ電子報告する仕組みも導入されました。
また2023年10月からは、調査を実施できる者として国が認定する「建築物石綿含有建材調査者」など一定の資格保有者によって調査を行うことが義務付けられています(資格を持たない者による調査は不可)。事前調査の結果は書面に記録し少なくとも3年間保存するほか、作業現場に備え付けて労働者にも周知しなければなりません。
調査の結果アスベストが検出された場合、今度は行政への届出・報告を含む法定手続きが必要になります。大気汚染防止法や労働安全衛生法に基づき、一定規模以上の除去工事を行う際には事前に都道府県等へ「石綿作業計画」の届出を提出し、作業完了後にも完了報告書を提出しなくてはなりません。
また、現場を管轄する労基署や自治体環境部局とも連携し、作業開始14日前までの届出や飛散防止対策の実施状況報告など、必要な法定手続きに漏れなく対応することが求められます。こうした行政対応は通常、選定した除去業者(石綿取扱作業主任者のいる専門業者)や管理会社が代行しますが、管理組合としても提出書類や許可証の状況を把握し、法令順守に努める必要があります。
なお、自治体によっては国の規制に加えて独自の条例や報告制度を設けている場合もあるため、専門業者の助言を得ながら適切に対処しましょう。法律を守らず無許可で工事を行えば、事業者だけでなく発注者(管理組合)も責任を問われる可能性があります。法令遵守は安全管理の基本であり、マンション全体の信頼維持にも直結する重要事項です。
アスベスト除去費用の相場と費用に影響する要因
アスベスト除去工事の費用は、一概に「○○万円」と言えないほど幅があります。費用相場は除去対象となる建材の種類や面積、建物の構造や高さ、作業レベル(飛散性の程度)、必要な飛散防止措置の規模、さらには廃棄処分場までの距離や地域の処分単価によって大きく左右されます。
国土交通省の調査によれば、たとえば吹き付け材など飛散性が高いレベル1建材の除去工事では、1㎡あたり約2~5万円前後が一般的な相場とされています。しかし、吹き付けアスベストのように負圧隔離装置の設置や気中濃度測定など厳重な養生措置が必要なケースでは、その分人件費や工期も増加し費用が大きく跳ね上がります。
逆に、石膏ボードやケイカル板といった成形板(レベル3建材)中心であれば飛散リスクは低めですが、それでも撤去数量が多かったり搬出経路が悪かったりするとコストは嵩みます。
さらに、作業に伴う産業廃棄物処理費(飛散性が高い廃石綿等は厳重な二重包装と許可業者による運搬処分が必要)や、法定書類作成・届出対応に係る事務手続き費用、作業監督者の配置費用なども加算されるため、見積額の精査が重要になります。
費用に影響する主な要素を整理すると以下の通りです。
建材の種類・レベル
吹付け材(レベル1)は養生・除去に手間がかかり高額になりがち。成形板(レベル3)は比較的低コストだが量が多ければ総額は増える
作業範囲・面積
処理面積が小さいほど1㎡あたり単価は割高になりやすい(初期準備の固定費があるため)。大規模になると割安になる傾向。
建物条件
階数が高い・敷地が狭い等で足場やクレーン等の仮設が難しい場合、養生施工に余計な手間・費用が発生。室内の天井高や梁の有無、固定設備の多寡も作業効率に影響。
飛散防止措置
負圧機や集じん機の台数、隔離養生エリアの規模、作業員の防護装備、空気中濃度測定回数など、安全対策を充実させるほどコスト増となる。
廃棄物処理
除去材の運搬距離や処分費用は地域差があり、都市部では処分単価が高め。大量の廃棄が出る場合、処理費だけで数十万円規模になるケースも。
その他
工程管理費(専門技術者の常駐監督や報告書作成)、居住者対応費(仮住まい提供やクリーニング費)など特殊要因も含め、案件ごとに見積り条件は異なる。
なお、除去ではなく封じ込め・囲い込みで対応する場合、一時的には費用を大幅に抑えられます。劣化の進んでいないレベル2・3建材で薬剤塗布による封じ込めやボード被覆による囲い込みを行えば、除去に比べ工期も短く費用負担も小さくて済むメリットがあります。
しかし封じ込め・囲い込みは将来的なリスクを完全になくすものではなく、いずれ建物を解体・改修する際には結局アスベストを除去しなければなりません。また日本の建築基準法では、大規模な増改築時には基本的に既存部分も含めアスベストを除去することが求められており、例外的に増改築部分が全体の1/2未満の場合のみ封じ込め等が許容されています。したがって、根本的な解決策としては除去が最も安全であり、費用とのバランスを考慮しつつ最適な工法を選択する必要があります。
自治体の補助金制度と申請条件
国および自治体では、民間建築物におけるアスベスト対策工事を促進するため補助金制度が整備されています。国土交通省によれば、国が制度を創設し各自治体が窓口となって補助金を支給する仕組みがあり、中には事前調査の段階から補助対象とする自治体もあります。
除去工事そのものに対しても、自治体によっては費用の一部を助成してくれる制度があり、補助額は概ね数十万円から100万円程度が上限とされるケースが多いです。自治体ごとに支援内容や条件は様々で、予算枠や申請期間も毎年変動します。マンション管理組合としては管轄自治体の最新情報を収集し、条件に合致する場合は工事着手前に補助金申請の相談を行いましょう。
申請には管理組合の議決書や見積書、アスベスト分析調査結果報告書など複数の書類が必要になるため、準備には時間的余裕を持つことが大切です。補助金を上手く活用できれば数百万円規模で負担軽減も可能ですので、積極的に検討すると良いでしょう。
安全・適正価格な業者選定の難しさと第三者の専門家による支援
アスベスト除去工事は高度な専門技術と厳格な法令順守が求められるため、業者選びはマンション管理組合にとって大きな課題です。相見積もりを取って比較しようにも、提示された工法や養生内容、見積金額の妥当性を素人だけで判断するのは容易ではありません。むしろ極端に安い見積もりにはずさんな飛散防止対策や違法な処分のリスクが潜み、高すぎる見積もりでは不要な工事や過剰請求の可能性も否定できません。実績や資格をしっかり持った信頼できる業者を選定し、適正な価格で安全な工事を実現するには、第三者の専門的サポートを得るのが賢明です。
外部専門家の力を借りることで、管理組合だけでは難しい調査内容の精査・見積もり妥当性の確認・施工過程の第三者管理が実現し、結果的に安全で適正価格なアスベスト除去工事を行うことができます。
まとめと今後の対応
マンションにおけるアスベスト問題は、放置すれば居住者の健康や資産価値に直結する重大な課題です。一方で、正しい知識に基づき適切に対応すれば決して恐れる必要はありません。本記事で解説したポイントをおさらいすると
使用箇所とリスク
1970~80年代築のマンションでは天井・壁・配管・床材など多岐にわたりアスベスト含有建材が潜んでいる可能性があり、老朽化や工事で繊維が飛散すると健康被害(肺疾患等)のリスクがあります。
法的義務の遵守
工事前の事前調査は法律上必須であり、2022年以降は結果報告、2023年以降は調査資格者要件も強化されています。アスベスト検出時には都道府県や労基署への計画届出・作業完了報告が求められ、違反すれば罰則もあり得ます。
費用相場と変動要因
除去費用は1㎡あたり数万円~数十万円と幅があります。建材の種類・劣化度や建物条件、養生措置の規模、廃棄物処理費など様々な要因で増減します。小規模工事ほど割高になりやすく、厳重な飛散防止策が必要なケースでは費用が大きく膨らみます。
補助金制度の活用
国・自治体にはアスベスト調査や除去工事への補助金があり、事前申請により費用の一部を公的に負担してもらえる可能性があります。自治体により内容は様々ですが、調査費用で上限20~25万円、除去費用で上限100万円前後の補助が一般的です。適用条件(建築年や規模、申請時期など)を確認の上、利用できる制度は積極的に申請しましょう。
業者選定と外部支援
アスベスト工事の業者選定は専門知識が不可欠です。見積額の安さだけで判断せず、実績・資格を重視して選ぶ必要があります。専門家による支援サービスを活用すれば、見積もり比較から工事監理まで第三者の目でチェックでき、安全とコストのバランスが取れた工事を実現できます。
管理組合は主体者として、アスベスト対応に率先して取り組むことが求められます。まずは信頼できる専門業者に調査を依頼し、結果に応じた除去または封じ込め計画を立てましょう。居住者への丁寧な情報提供と合意形成も不可欠です。補助金申請や業者選定では行政機関やコンサルタントの力も借りつつ、法令を遵守した安全第一の対策を講じてください。適切なアスベスト対策によって、マンションの快適な居住環境と資産価値を将来にわたって守っていきましょう。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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