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分譲マンション火災報知器の交換費用と時期・工事手順

更新日:2025年12月14日(日)

マンションの安全を守る火災報知器は、適切な時期に交換することが重要です。 本記事では、分譲マンションの管理組合に向け、火災報知器交換の費用相場や交換サイクル(寿命目安)、交換工事の進め方(点検から設計・施工・報告まで)と管理組合での意思決定プロセスについて解説します。

本記事のポイント
  • 火災報知器(住宅用/共用部)の寿命・交換時期と必要性が理解できる。
  • 交換にかかる費用相場や費用を抑えるポイントが具体的にわかる。
  • 交換工事の進め方や管理組合での合意形成プロセスが学べる。

火災報知器の種類と交換義務・寿命目安

マンションに設置される火災報知器は大きく2種類あります。

各住戸内に設置する「住宅用火災警報器」と、共用部に設置する「自動火災報知設備(感知器や受信盤など)」です。それぞれ設置義務や交換時期の目安が異なります。

住宅用火災警報器(各住戸内)の交換時期目安

住宅用火災警報器は、各戸の天井などに設置される独立型の警報器で、火災時に音声やブザーで住人に知らせます。日本では2006年前後に設置が義務化され、現在すべての住宅に設置が求められています(設置場所は寝室や階段など)。法令上は設置義務のみで交換時期の明確な罰則規定はありませんが、総務省消防庁は「住宅用火災警報器を定期点検し、設置から10年を目安に交換する」ことを公式に推奨しています。内部のセンサーや電池など電子部品が約10年で寿命を迎え、火災を感知しなくなる恐れがあるためです。実際、国内メーカー各社の住宅用警報器はおおむね10年で本体交換を推奨しており、業界団体のキャンペーン「とりカエル」でも「10年経ったら火災警報器を取り替えましょう」と呼びかけています。管理組合としては各住戸にいつ警報器を設置したか把握し、設置後10年を超える機器は計画的に交換するようにしましょう。

各住戸の天井に設置された住宅用火災警報器の例(丸型の警報機本体)。住宅用火災警報器は電池式が一般的で、内部電池が切れる頃(設置後10年前後)になると「ピッ」という警告音が定期的に鳴る製品が多くあります。この警告音が鳴った場合は電池切れ=本体寿命のサインなので、電池交換ではなく警報器ごと新品に取り替えてください。半年に1度の定期点検(各住戸でテストボタンを押して音が鳴るか確認)で反応しない機器があれば故障や寿命切れの可能性が高く、やはり交換が必要です。

自動火災報知設備(共用部)の交換時期目安

マンション共用部の廊下やエントランス等には、火災時に建物全体に警報を発する自動火災報知設備(いわゆる「自火報」)が設置されています。これは火災感知器(煙感知器・熱感知器)や発信機(非常ボタン)、火災受信盤(制御盤)などで構成され、一定規模以上の建物では消防法により設置義務があります。自火報設備について法律上明確な交換期限は定められていませんが、常時通電・監視している機器のため年々劣化が進み、メーカーや消防設備業界では15~20年程度での更新を推奨しています。目安として、受信盤(制御盤)は約15~20年、煙感知器や半導体式の熱感知器は約10年、その他の熱感知器は15年程度が耐用年数とされています。これらを超える古い機器は誤作動や故障のリスクが高まるため、計画的な更新工事を検討すべきです。

さらに、自動火災報知設備には「型式失効」制度があります。技術革新や規格改正により旧式で現行規格に合わなくなった機種は型式失効となり、特定防火対象物等では交換が義務づけられる場合があります。例えば古い受信盤や感知器で型式失効品となったものは、消防法令上そのまま使用できず新型機器への取り替えが求められます。一般の分譲マンション(非特定防火対象物)では直ちに法的義務とはなりませんが、安全のため規格外となった旧式機器は早めに交換することが望ましいでしょう。いずれにせよ、自火報設備も住宅用警報器と同様に10年を超えた機器は要注意で、信頼性維持のため15~20年を目安にシステム更新を計画するのが一般的です。

火災報知器交換にかかる費用相場と内訳

火災報知器の交換費用は、交換する機器の種類や台数によって大きく変わります。主に「各住戸内の住宅用火災警報器の交換費用」と「共用部の自動火災報知設備(感知器・受信盤等)の交換費用」に分けて考えると分かりやすいでしょう。

それぞれの費用相場と内訳の一例は以下のとおりです。

住宅用火災警報器(各住戸内)

警報器本体は市販品で1台あたり約2,000~16,000円程度と幅がありますが、一般的なベーシックタイプで1台3,000円前後が目安です。交換作業を専門業者に依頼する場合の工事費は、マンション全戸一斉交換などまとめて依頼することで割安になります。たとえば50戸規模のマンション全住戸で一斉交換するケースでは、工事費用が全体で約5~10万円程度(本体代別)で済み、1戸あたりに換算すると工事費1,000~2,000円程度になります。作業も半日~1日で完了することが多く、専門業者に任せれば安全確実です(住民自身で簡単に取り替え可能な場合でも、高所作業など危険が伴うため業者依頼が望ましいでしょう)。

共用部の感知器・受信盤(自動火災報知設備)

マンション共用廊下や機械室などに設置された煙感知器・熱感知器は、住宅用より高性能・高信頼性の機器であるため単価も高めです。一般的な例では、煙感知器は1台あたり約4万円、熱感知器は1台あたり約1万5千円程度が交換費用の目安です(機種や設置場所によって変動し、この中には機器代と交換作業費を含むことが多い)。共用部の感知器を全数交換する場合や火災受信盤ごと更新する場合は、他の機器も含めトータルで100万円以上のまとまった費用となるケースもあります。自火報設備の交換工事は消防設備士のいる専門業者に依頼し、適切な機種選定や設置工事を行ってもらいます。その際、消防署への工事申請・完了届出まで代行してもらえるのが通常です。

費用を抑えるポイントとして、故障の都度バラバラに交換するより計画的に一斉交換する方が単価を下げやすい傾向にあります。また自治体によっては住宅用火災警報器の設置・交換に対して補助金制度を設けている場合があります。高齢者世帯向けなど条件付きの場合もありますが、自治体の防火担当部署に問い合わせれば補助の有無を確認可能です。管理組合として費用を計画する際は、こうした行政の助成制度も調べて活用しましょう。

火災報知器交換工事の進め方(点検~設計・施工~報告)

火災報知器の交換にあたっては、以下のような典型的な進め方(手順)があります。管理組合が主体となり、専門業者や建物管理会社と連携して計画を進めます。

現状の点検・交換時期の判断

まず日常の消防設備点検(法定で年2回実施)や居住者からの報告を通じて、機器の不具合や設置後の年数を把握します。設置から10年以上経過している、定期点検で反応しない機器がある、誤作動が増えているなどの状況なら、交換工事の計画を検討しましょう。理事会で交換の必要性を議題に上げ、概算費用や影響範囲を確認します。

工事計画の立案・業者選定(見積もり)

交換が必要と判断したら、消防設備の有資格業者に現地調査と見積もりを依頼します。マンションの規模や機器数に応じて複数の業者から相見積もりを取り、金額や提案内容を比較検討することが重要です。必要に応じて消防設備士やコンサルタントに機器選定や更新計画の設計を依頼し、無駄のない適切な工事範囲を見極めます。古い設備から新しい設備への更新では、互換性の問題や消防署への申請図書作成が伴うため、経験豊富な業者を選びましょう。


管理組合での承認・合意形成

工事計画案と見積もりがまとまったら、管理組合で正式に承認するプロセスに入ります。理事会で内容を精査した上で、総会に議案提出して組合員の承認決議を得るのが一般的です(交換費用が修繕積立金から支出される場合などは普通決議事項となります)。この際、住民への丁寧な説明と合意形成が極めて重要です。なぜ交換が必要なのか、放置した場合のリスクやメリット、費用の妥当性を具体的に示し、不安や疑問に答える機会を設けましょう。場合によっては有志の修繕委員会を組織し、一般の組合員にも計画検討に加わってもらうと効果的です。住民自ら検討に関わったプランであれば総会でも合意が得られやすくなります。

交換工事の実施

管理組合で承認されたら、契約した業者と日程調整を行い工事を実施します。共用部機器の交換では共用部の立ち入り制限や一時的な警報停止等の措置が必要になります。また各住戸内の警報器を交換する場合は、全住戸への十分な周知とスケジュール調整が欠かせません。管理会社と連携し、各戸を順番に訪問して作業する日程を組みます。基本的に警報器1台の取替えは数分程度で完了し、先述のとおり50戸規模でも1日で全戸交換が可能です。作業中は誤報防止のため消防署に受信盤の一時停止を届け出る場合もあります。熟練した業者であれば手際よく安全に工事を進めてくれるでしょう。

完了後の点検・報告

すべての機器交換が終わったら、作動試験を行い正常に警報が鳴動するか確認します。消防設備士による最終点検で問題がなければ工事完了です。自動火災報知設備の場合、消防署へ工事完了報告書を提出する必要がありますが、通常この手続きも施工業者が代行します。管理組合は完成図書や保証書類を受け取り、次回の定期点検時から新しい機器の管理台帳に切り替えましょう。交換後も引き続き定期点検を欠かさず、正常作動を維持することが大切です。

火災報知器を交換すべきタイミングと主な契機

既存の火災報知器を交換する具体的なタイミングは、前述の「寿命(設置後10年程度)」が基本の目安ですが、それ以外にもいくつか交換の契機となる要素があります。管理組合として以下のような兆候が見られたら、早めの交換を検討しましょう。

誤作動(不要な警報)が頻発する

火災ではないのに警報ベルが鳴る「誤報」が増えてきた場合、その感知器が経年劣化や汚染によって誤検知を起こしている可能性があります。煙感知式の警報器内部にホコリや小さな虫が入り込むと煙と誤認して警報が作動することがあり、熱感知器でも感知部の劣化で誤作動が起きるケースがあります。定期的に周囲の清掃をしても改善しない場合や、回路自体の老朽化による誤作動と判断される場合は、機器の交換で対処します。誤作動が多いということはセンサーが不安定になっている証拠でもあり、安全を期して新品に替えるのが賢明です。

感度低下や動作不良が見られる

定期点検でテストを行った際に警報が鳴らない、音が極端に小さい、ランプが点灯しない等の不良が確認された機器は、既に故障か寿命切れと考えられます。とくに設置後10年以上経過した機器でこうした不具合が起きた場合は迷わず交換しましょう。また、「焦げ臭い匂いがしたのに警報が作動しなかった」「煙を感知するのに時間がかかった気がする」といった感知性能の低下の疑いがある場合も危険です。経年によるセンサー性能低下や電子部品劣化で火災を感知しづらくなっている恐れがあり、早急な交換が望まれます。

機器の規格廃止・製造中止

前項で述べた型式失効や、メーカーのサポート終了などで部品入手が困難になった機器も交換時期のサインです。とくに自動火災報知設備の受信盤は、メーカーが保守対応を打ち切ると故障時の修理ができなくなります。消防法改正で旧型機器が使えなくなった場合は当然交換義務が発生します。住宅用警報器でも、古い製品は既にメーカーに在庫がなく電池交換もできないケースがあります。機器の型番を調べて最新の適合状況を確認し、旧式化しているようなら早めに更新計画を立てましょう。

火災以外の要因による故障・破損

上階からの漏水や結露、落雷や電源異常などで火災報知器が故障する場合もあります。たとえば漏水が感知器内部に入り込むとショートを起こし作動不良や誤報の原因になります。こうした想定外のダメージが生じた機器は点検で異常を確認次第交換することが必要です。いつ起きるか分からない火災に備える設備ですから、少しでも不安要素があれば新しい機器に交換しておくのが安心です。

まとめ

分譲マンションにおける火災報知器(住宅用火災警報器・自動火災報知設備)は、おおむね10年程度で交換を検討すべき重要な防災設備です。各住戸内の警報器は手頃な費用で交換できますが、放置すると火災に気づけないリスクが高まります。共用部の自火報設備も故障や誤作動が増えてきたら部品の寿命と考え、信頼性確保のため15年前後を目安に更新計画を立てると安心です。交換費用はマンションの規模によって数万円から数百万円と幅がありますが、一斉交換によるコスト圧縮や自治体の補助金活用などで負担軽減も可能です。管理組合は定期点検の結果を踏まえ、理事会・総会で合意形成を図りながら計画的に交換工事を進めましょう。

火災報知器は人命と資産を守る最後の砦です。万一のとき確実に作動するよう、寿命サイクルを意識したメンテナンスを心がけてください。必要に応じて専門家の力を借りれば、費用面・技術面で最適なプランを選択できます。適切な時期に適切な対応を行い、マンションの安全性を高めていきましょう。

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  • 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
  • インターホンのリニューアル工事の支援実績は多数(過去半年で数千戸分、2025年1月現在)。数百戸の多棟型マンションでの実績も複数。社内にはゼネコン、デベロッパー、修繕コンサルティング会社、修繕会社、管理会社出身の建築士、施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

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