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老朽化キュービクル交換に活用できる補助金制度の解説

更新日:2025年10月31日(金)

施設やマンションで使われる高圧受電設備(キュービクル)は、老朽化により事故のリスクや性能の低下が懸念されます。こうした設備の交換工事では、国や自治体が提供する補助金制度を活用することで、工事費用の負担を軽減することが可能です。 本記事では、キュービクル交換が必要となる主な理由や利用できる補助金制度の概要、申請方法と注意点について詳しく解説します。安全かつ省エネな最新設備へ計画的に更新するためのポイントを押さえましょう。

本記事のポイント
  • キュービクル交換が必要となる理由(安全・省エネ・法令対応)と、更新の最適なタイミングが理解できる。
  • 経産省・環境省・自治体の補助金制度の概要、補助率、対象設備、申請方法を体系的に学べる。
  • 採択率を高めるための事前準備・書類作成・スケジュール管理のポイントがわかり、失敗しない補助金活用計画を立てられる。

キュービクル交換が必要になる主な理由

老朽化による安全性低下と効率悪化

キュービクルは設置から15年以上が経過すると、内部機器の絶縁劣化や接点摩耗が進み、動作不良・漏電・過熱などのトラブルが発生しやすくなります。外装のサビや異音、異常発熱といった劣化サインを放置すれば、感電や火災といった重大事故につながるおそれもあります。

また、古い機器では変圧・制御性能の低下により電力ロスが増え、効率の悪化から電気料金の無駄な増加を招くこともあります。安全面と省エネの両立のためにも、性能が低下したキュービクルは早めに高効率型の新機器へ交換することが望まれます。

災害対策と法規制への対応

地震や台風などの自然災害時に老朽化した受変電設備が損傷すると、長時間停電や漏電火災などの二次被害を引き起こす可能性があります。実際、近年の大規模地震では変電設備の倒壊や故障による停電が報告されており、耐震性・信頼性の高い新型設備への更新は防災の観点からも重要です。

さらに、1970年代以前に製造された油入変圧器などには、有害物質であるPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれている場合があります。PCB廃棄物等処理特措法により、これらは2027年3月31日までに適正処分を完了することが義務とされています。古いキュービクルを交換してPCB含有機器を撤去・処分することは、法令遵守だけでなく、災害時の環境汚染リスク低減にもつながります。

キュービクル交換に活用できる主な補助金制度

国の「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」(経済産業省)

キュービクル内の変圧器更新には、経済産業省が実施する「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」など、国のエネルギー効率化補助制度を活用できます。
この制度では、高効率変圧器(キュービクル式高圧受電設備を含む)への更新に対し、設備費の3分の1以内(上限1億円) の補助を受けられます。採択されれば、機器購入費の大きな助けとなります。

公募は毎年度実施され、申請期間が限られているため、早めの情報収集と準備が必要です。
また、環境省が実施する制度では、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む古い変圧器 の分析・処理に要する費用の2分の1以内(上限額あり) が助成対象となります。PCB混入の疑いがある設備は、調査から処分まで一連のプロセスを補助対象として申請できる場合があります。

地方自治体による独自の補助制度

国の制度に加えて、地方自治体でも独自に省エネ設備導入を支援する補助金・助成金を設けているケースがあります。
たとえば、東京都葛飾区の「かつしかエコ助成金」 では、中小企業等を対象に省エネ設備更新費用の1/4(上限100万円) を補助しており、事前相談によりキュービクル交換も対象になる場合があります。
また、埼玉県 では高効率空調などの導入に対して最大500万円(補助率1/2) の補助制度を実施しており、個別相談によりキュービクル更新にも適用できる事例があります。

このように、補助金の内容や条件は自治体ごとに異なります。まずは所在地の自治体(環境政策課、産業振興課など)が発表している省エネ関連助成制度を確認し、「設備更新」「省エネ化」「環境負荷低減」 などのキーワードに該当する補助金がないか調べてみましょう。
適用できる制度を上手に活用すれば、更新コストを大きく抑えつつ、安全で省エネな電気設備への更新が実現できます。

補助対象となる交換設備の条件と仕様

高効率機器(トップランナー変圧器)の導入が必須

補助金を受けるためには、交換後に導入するキュービクルや変圧器が一定の省エネルギー性能基準を満たしていることが条件です。

具体的には、国の省エネ補助金制度では「省エネルギー基準達成率125%以上」という高い性能要件が定められており、いわゆる高効率変圧器(トップランナー変圧器)の採用が求められます。この高効率変圧器は、従来機よりも電力損失を大幅に抑えることができ、電気料金の削減とCO₂排出量の低減の両立が可能です。

補助金を活用してこうした最新機器へ交換することで、安全性の向上・省エネ効果・環境負荷の低減を同時に実現できます。

補助対象となる範囲と経費の考え方

補助金の対象となるのは、基本的にキュービクル一式の更新工事であり、老朽化した機器の一部だけを交換する場合は対象外となるのが一般的です。つまり、「受変電設備全体を高効率機器に置き換える」ことが前提です。

また、補助金で支援されるのは主に設備本体(新設キュービクル機器)の購入費用であり、撤去工事・設置工事・付帯配線工事などは補助対象外になる点にも注意が必要です。

そのため、補助金を活用しても全体費用の一部は自己負担となるのが通常です。見積もりを取る際には、補助対象となる費用と自己負担分を明確に分けて計画を立てましょう。

マンション管理組合の場合の注意点

補助対象となるのは、高圧受電契約(原則50kW以上)の自家用電気工作物として設置されているキュービクルです。
分譲マンションの共用部で高圧受電契約を結んでいる場合(例:エレベーター、共用照明、防災設備などに電力供給している場合)は対象となる可能性があります。一方で、低圧契約(一般的な家庭用)マンションや小規模施設では対象外になることが多いため、事前に管理会社や工事業者、または補助金事務局に確認しておくと安心です。

補助金の申請方法と必要書類

募集要項の確認と事前準備

補助金を活用するためには、まず国の補助金ポータルサイト(例:jGrants、資源エネルギー庁HPなど)や、所在地の自治体ホームページから最新の公募要領を入手し、申請条件を確認することが出発点です。

募集要項には、

  • 応募できる事業者・団体の条件(中小企業、管理組合、法人など)
  • 対象となる設備・工事期間
  • 提出書類の様式・提出先
    などが詳細に記載されています。

特に国の補助金は毎年度で制度内容が変更されるため、前年の情報をそのまま使わず、必ず「令和◯年度○○補助金」の最新版を確認しましょう。

また、募集期間が短く(1か月程度の場合も)、必要書類の準備に時間がかかるため、事前準備を早めに進めることが採択の第一歩です。

主な提出書類と申請の流れ

補助金申請では、技術・費用・事業体制を客観的に示すため、多くの書類を整える必要があります。主な提出書類は次の通りです。

  • 交付申請書(所定の様式)
  • 事業計画書(または実施計画書):工事の目的・効果・スケジュールを明記
  • 経費内訳書:設備費や工事費の明細
  • 設備仕様書・カタログ・図面:対象機器の性能を証明
  • CO₂削減効果の計算書:更新後の省エネ効果を示す資料
  • 見積書(通常は2社以上から取得)

法人や管理組合などの申請者は、次のような書類も必要です。

  • 登記簿謄本または設立証明書
  • 直近の決算書や会計報告書
  • 反社会的勢力排除に関する誓約書

国の補助金の場合、申請はオンラインシステム(jGrants)経由で行い、必要情報を入力・ファイルを添付して送信します。自治体補助金の場合は、紙の申請書類を窓口や郵送で提出する方式が一般的です。

審査・採択から補助金受け取りまでの流れ

  1. 申請受付(公募期間内)
     ↓
  2. 書類審査・採点(内容・省エネ効果・費用妥当性など)
     ↓
  3. 採択通知・交付決定
     ※交付決定前に工事契約を締結すると補助対象外になる場合があるため注意。
     ↓
  4. 工事実施・完了報告(実績報告書提出)
     工事完了後、支出証拠書類(請求書・領収書・施工写真等)を添付して報告。
     ↓
  5. 補助金の確定・支払い
     確認後、指定口座に補助金が振り込まれます(後払い方式が一般的)。

申請から実際の入金までには数か月~半年程度かかることが多いため、工事費用の支払い計画をあらかじめ調整しておくと安心です。

マンション管理組合で申請する場合のポイント

マンション共用部のキュービクル更新で補助金を申請する場合、申請主体は管理組合(法人格がある場合)または管理会社による代行申請が可能です。

ただし、書類の作成や効果試算などは専門的な内容を含むため、電気工事業者やコンサルタントと連携して進めるのがおすすめです。

採択率を上げるためには、見積りやCO₂削減効果などの根拠を明確に示すことが重要です。

申請時の注意点と採択されるためのポイント

適切な計画と書類作成で採択率を高める

補助金申請は競争率が高く、同じ制度に多数の事業者・管理組合が応募します。

採択されるためには、制度の目的(省エネ・脱炭素化の推進)に合致した計画づくりが何より重要です。

単なる老朽化設備の更新ではなく、

  • 省エネ効果(電力損失の削減率)
  • CO₂排出削減量
  • 長期的なコスト削減見込み
    などを具体的に数値で示すと、審査上の評価が高まります。

また、書類の形式や提出ルールが細かく定められているため、不備のない書類作成が採択への基本条件です。見積書や効果試算には客観的な根拠を添え、内容に一貫性を持たせましょう。申請書類の記載に不安がある場合は、補助金申請に慣れた施工業者やコンサルタントへ事前相談することをおすすめします。

スケジュール管理と手続き上の留意点

補助金の公募期間は短く、募集開始から締切まで1か月程度のケースが一般的です。さらに、予算上限に達すると締切前でも受付が終了することがあります。したがって、募集が始まる前から制度情報を収集し、早めに計画と書類準備を進めることが成功のカギです。

申請にあたっては、次のような点に注意してください。

① 交付決定前に工事に着手しない

交付決定の通知を受ける前に契約・発注・着工した場合、その費用は補助対象外となります。「交付決定後の着工」が原則であることを必ず確認しましょう。

② 見積書の比較と対象外経費の把握

補助金申請では、2社以上の見積比較が求められる場合が多いです。また、補助対象外となる経費(例:旧設備の撤去・運搬・処分費、付帯工事費など)がある点にも注意し、自己負担分を含めた総予算を明確化しておくことが大切です。

③ 事前相談・要件確認の徹底

自治体によっては、申請前に事前相談やエネルギー診断の受診が義務付けられています。
(例:東京都葛飾区の「かつしかエコ助成金」では、申請前の区への相談が必須)
また、機器性能の要件(トップランナー変圧器など)や必要書類の様式に不明点がある場合は、遠慮せずに窓口へ確認することが確実です。

④ コンプライアンスの遵守

申請時には、暴力団排除条項に関する誓約書や法令遵守の確認書の提出が求められます。管理組合・企業いずれの場合も、適正で透明性のある手続きを徹底することが信頼性の証となります。

採択後の対応も重要

無事に採択された後も、

  • 工事契約・着工のタイミング
  • 工事完了報告(実績報告書・支払い証拠書類の提出)
  • 期日までの報告完了
    などの管理を怠ると、補助金の交付取消や減額のリスクがあります。

補助金を活用したキュービクル更新は、書類準備・スケジュール管理を丁寧に進めることで確実に成果が得られます。管理組合・事業者ともに、早めの情報収集と計画的な準備を意識して取り組みましょう。

まとめ:補助金を活用して、計画的かつ安心なキュービクル更新を

定期的な更新が欠かせないキュービクル(高圧受電設備)は、国や自治体の補助金制度を活用することで、安全性の向上と省エネ化を両立しながら費用負担を大幅に軽減できます。

マンション管理組合やビルオーナー、中小企業の設備担当者にとっても、老朽化した受変電設備の交換は避けて通れない重要な課題です。早めに補助制度の情報収集と準備を進め、予算確保と工事計画を並行して立てることで、スムーズで確実な更新が実現します。

補助金の力を上手に活かしながら、計画的にキュービクルを更新し、安心・安全でエネルギー効率の高い設備環境を整えましょう。

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  • ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

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