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無足場工法のメリットとデメリット|工法の選択基準と費用相場を解説

更新日:2025年07月30日(水)

本記事では、無足場工法の具体的なメリット・デメリットを解説し、どんな基準で工法を選択すべきか、そして気になる費用相場について詳しく説明します。建物の工法について知りたい方は参考にしてみてください。

無足場工法とは?

無足場工法(足場仮設不要工法)とは、その名の通り建物や構造物の外壁や屋根などの工事を行う際に仮設足場を設置せずに作業員が高所作業を行う施工方法です。従来は高所での安全な作業のために足場を組む必要がありましたが、無足場工法では高所作業車やロープアクセス技術、ゴンドラ装置などを駆使して作業箇所に直接アクセスします。例えば、作業員が屋上から2本の安全ロープを用いてぶら下がりながら作業するロープアクセス工法や、屋上から吊り下げた箱型の作業台に乗り込んで昇降するゴンドラ工法が代表的です。足場を使わないため建物の外観や周辺環境への影響も最小限に抑えられ、狭い敷地や人通り・交通量の多い場所でも工事が可能な点が大きな特徴です。

無足場工法は近年特に都市部で需要が高まっています。その背景には、建物が密集していて足場を設置するスペースが確保できない現場が増えていることがあります。実際、隣接する建物との間隔が数十cmしかないケースもあり、従来の足場工法では物理的に施工が難しい状況が生じています。また部分的な外壁補修や調査だけを行いたい場合に、建物全体に大掛かりな足場を組むのは非効率的です。このようなピンポイントの修繕ニーズにも無足場工法は適しており、迅速かつ効率的に作業が進められます。一方で、高層建築や外壁形状が複雑な建物では機材の設置や作業自体が難しく、無足場工法を適用できないケースもあります。こうした適用条件の見極めも重要であり、メリットだけでなくデメリットもしっかり把握した上で採用する必要があります。

無足場工法のメリット

無足場工法にはさまざまな利点があります。ここから無足場工法のメリットを3つ紹介します。

足場代の節約と工期の短縮

無足場工法最大のメリットは、仮設足場にかかるコストと時間を大幅に削減できることです。足場の設置には一般に工事全体費用の20~30%もの高額なコストがかかり、高層建物や大規模修繕では足場代だけで数百万円に達する場合もあります。

足場を設置・解体する手間が省けることで準備期間も短縮され、工期自体も大幅に短くなります。特に緊急の補修や調査が必要な場合、無足場工法なら迅速に作業に取りかかれるため、施主にとっても工事の負担期間が減る利点があります。加えて、足場架設・撤去に伴う人件費も不要になるため労務費の節約にもつながり、全体として予算内で効率的に施工を進めやすくなります。このように、費用面・時間面で経済的メリットが大きい点が無足場工法の第一の魅力です。

防犯面や安全面での安心

無足場工法には防犯上および安全上の利点もあります。まず、防犯面については、仮設足場を設置しないことで工事期間中の不審者侵入リスクを大幅に減らせる点が挙げられます。従来の足場が建物外部に組まれていると、足場を伝って空き巣などが高所の窓から侵入する恐れがありますが、無足場工法ならその心配がありません。居住者にとってこの防犯性の高さは大きな安心材料になります。

次に安全面では、足場を使わないことで足場そのものに起因する事故リスクを回避できるというメリットがあります。建設現場の労災事故原因で最も多いのは「高所からの転落」ですが、その中でも足場からの落下事故が大半を占めると指摘されています。無足場工法では足場組立・解体作業が不要なため、このような足場絡みの墜落事故が起こる可能性を減らすことができます。

さらに、台風や地震時に足場が倒壊・飛散するといった災害リスクもありません。実際、仮設足場は強風でシートごと倒壊する事故例もありますが、無足場工法ならそもそも大型仮設物が存在しないため周囲への危険を低減できます。以上のように、無足場工法は居住者の安心感や現場の安全性向上にも寄与する工法と言えます。

近隣環境への影響が少ない

無足場工法は周辺環境や近隣への配慮という点でも優れています。まず、足場の組立・解体に伴う騒音や圧迫感がないため、工事中の近隣住民やテナントへのストレスを抑えられます。従来工法では鉄パイプを組む金属音や大型機材の作動音が発生しがちですが、無足場工法ならそうした工事特有の騒音を大幅に軽減できます。その結果、住宅密集地や商業地域でも周囲に気兼ねなく作業を進めやすく、近隣から苦情が出にくいという利点があります。

また、建物周囲に足場を設置しないため景観を損ねる期間が短く、住民の日常生活や店舗の営業にも与える影響が少なくて済みます。足場設置による日照や通風の遮断、出入り口の一時的な閉塞といった問題も起こりません。

加えて、無足場工法は敷地の狭い場所でも施工可能という環境上のメリットもあります。仮設足場を組むには通常建物から最低70cm程度のスペースが必要ですが、隣接する建物との隙間がそれ以下しかない場合でもロープやゴンドラであれば作業を行えます。このように無足場工法は近隣や周辺環境への負荷を減らしつつ施工できるため、都市部や住宅密集地で特に有効な手法となっています。

無足場工法のデメリット

便利な無足場工法ですが、一方で注意すべき点も存在します。ここから無足場工法のデメリットを3つ説明します。

適用できる建物・作業範囲に制限がある

無足場工法は全ての建物・工事に万能というわけではなく、適用範囲に限りがある点に注意が必要です。まず、建物の形状や構造によっては機材を設置できず施工が難しい場合があります。例えば、超高層ビルの上層階や外壁に大きな張り出し(オーバーハング)がある建物では、ロープやゴンドラで作業箇所に近づくこと自体が困難で、無足場工法では対応しきれないケースがあります。また、広い面積に及ぶ大規模な工事では、足場を組まないことで却って作業効率が落ちてしまう可能性も指摘されています。足場があれば作業員が安定した床の上を自由に移動して広範囲を同時に施工できますが、無足場工法では上下左右への移動にどうしても制約があるためです。その結果、建物全体の塗り替えや張り替えといった大規模改修では、足場を使った方が効率的な場合もあることを念頭に置く必要があります。つまり、無足場工法は狭所での部分補修や小~中規模工事に適している一方、建物の高さ・規模や形状によっては採用が難しいという限界があります。

施工品質の確認が難しい

仮設足場を使わないことで生じる問題として、施工後の仕上がり確認がしにくい点が挙げられます。通常の足場工法であれば、施工完了後に職人や現場監督、施主(建物オーナー)自身が足場に上って近くで仕上がりを点検することが可能です。しかし無足場工法では足場がないため、高所部分の状態を間近で確認することが原則できません。そのため、工事結果のチェックは写真や双眼鏡等に頼らざるを得ない場面が出てきます。細かな施工不良や見落としが発生しても発見が遅れるリスクが高まり、特に高所での施工では品質管理が難しくなると指摘されています。

また、建物の所有者や住民からすると作業の様子を直接見られないため、不安を感じる場合もあるでしょう。無足場工法で工事を行う際は、施工業者に丁寧な写真報告や説明を求めたり、必要に応じて第三者検査を依頼するなどして、見えにくい分を補う確認体制を整えることが大切です。

対応できる業者が少なく、安全管理が重要

無足場工法は特殊な技術と機材を要するため、施工に対応できる業者が限られている点にも注意が必要です。従来の足場工事とは勝手が違うため、豊富な経験と資格を持つ専門チームでないと安全かつ良質な施工を行うのは難しく、依頼できる業者の選択肢が狭まりがちです。結果として、理想的な業者を見つけにくかったり、競争原理が働きにくい分費用交渉の余地が小さい場合もあります。

また、無足場工法を名乗っていても実績の浅い業者だと、施工品質や安全対策に不安が残る恐れもあります。そのため、業者選定に際しては過去の施工事例や口コミ評価、資格保有状況などを十分調査し、信頼できるプロに依頼することが重要です。

そして何より、無足場工法は高所作業が中心となるため徹底した安全管理が不可欠です。足場という物理的な作業床がない分、作業員一人ひとりの安全装備や技能に依存する部分が大きくなります。万一装備の不備やヒューマンエラーがあると、作業員の墜落だけでなく工具の落下による第三者被害など重大事故につながりかねません。実際、無足場工法では作業員はフルハーネス安全帯と二重の命綱を常時正しく使用し、適切なアンカーを設置して作業します。

こうした高度な安全措置と訓練を習熟している業者でなければ施工は任せられません。以上のように、無足場工法を採用する際は対応可能な専門業者選びと安全管理の徹底というハードルがあることを認識しておきましょう。

工法の選択基準と費用相場

無足場工法と足場工法にはそれぞれ適した場面があり、現場の状況に応じて使い分けることが重要です。最後に、どんな基準で工法を選択すればよいかと、無足場工法の費用相場について解説します。

工法選択の主な基準

以下のポイントを考慮して、無足場工法が適しているか判断します。

建物周辺のスペース

隣接建物との距離が狭く足場を組むための70cm程度のスペースが確保できない場合は、無足場工法の採用を検討します。隣接建物との隙間が数十cmしかないような環境では足場設置自体が困難であり、無足場工法で施工するのが一般的です。一方、周囲に十分な空き地があり足場設置に問題がなければ、足場工法も視野に入ります。

隣地使用の可否

足場を立てるためにどうしても隣接地を借りる必要があるケースでは、隣地所有者の承諾が得られるかが判断基準になります。法律上、建物の修繕目的で必要な範囲なら隣地の使用を請求できますが、隣人の承諾がなければその住居に立ち入ることはできないと民法で定められています。隣接する建物のオーナーと面識がなかったり関係が良好でないと承諾が得られず、結果として足場が組めないこともあります。その場合は無足場工法など足場に頼らない工法を選ぶ必要があります。

工事の規模・内容

工事範囲が建物全体に及ぶ大規模改修なのか、一部の補修や調査といった限定的なものなのかで適切な工法は変わります。部分的な補修であれば足場を組むのは非効率なので無足場工法が有力候補になりますし、逆に外壁全面の張替えや塗替えなど広範囲にわたる工事では足場を用いた方が効率的な場合があります。作業箇所が点在する場合も、機動力に優れる無足場工法が向いています。

建物の高さ・形状

中低層程度までであれば無足場工法(特にロープアクセス)で対応可能ですが、超高層建築や屋上に機材設置スペースがない建物では難易度が上がります。また外壁に複雑な装飾や深い凹凸があるとロープやゴンドラが接近できない場合もあり、このような構造上アクセス困難な場合は足場工法を選択せざるを得ません。事前に専門家に現地調査を依頼し、無足場で施工可能か見極めてもらうことが大切です。

以上の基準を踏まえつつ、安全性と費用対効果を総合的に判断して工法を選択することが重要です。迷った場合は無理をせず、無足場工法に精通した業者や建築の専門家に意見を仰ぐとよいでしょう。

無足場工法の費用相場

外壁塗装や補修工事を検討する際、費用面は管理組合・ビルオーナーにとって大きな関心事です。「無足場工法(ロープアクセス工法)」は、足場の設置を省略できる分、総工費の削減につながるとして導入が広がっています。では、実際の相場はどの程度なのでしょうか?

無足場工法の費用は、建物の高さや規模、施工範囲・工事内容によって大きく異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。

【小規模な部分補修】40万円〜100万円前後

【中規模な外壁塗装・補修】150万〜400万円前後

【大規模な建物全体(10階建て以上)】500万円〜1,000万円超

この金額には、高所作業に必要なロープ機材や作業員の特殊技能費、安全管理費などが含まれています。

一方、従来の足場工法では、足場の設置費用だけで総工費の約20〜30%を占めることも珍しくありません。

参考までに、足場の設置費用は次のような水準です。

  • 相場:1㎡あたり600〜1,000円前後
  • 中小規模ビルでも100万〜300万円以上の足場代が発生するケースもあります

そのため、足場を設置せずに済む無足場工法を選ぶことで、2〜5割程度のコストダウンが可能になるという事例もあります。無足場工法は、特に以下のようなケースで費用対効果が高くなります。

 

  • 高所の一部補修や外壁調査など、施工範囲が限定的な場合
  • 人通りが多く足場設置が難しい都市部のビル・マンション
  • 工期を短縮したい/景観や日照を妨げたくない場合

一方で、建物全周に及ぶ大規模改修や、繰り返しロープ設置が必要なケースでは、人件費がかさむため、かえって足場工法のほうが合理的となることもあります。無足場工法はコスト削減につながる有効な手段ですが、建物や工事内容により向き・不向きがあります。そのため、実際に検討する際は、

  • 複数業者からの相見積もり
  • 足場工法と無足場工法それぞれの費用・施工条件の比較
  • 建物構造や周辺環境をふまえた専門家のアドバイス

を受けることが重要です。

スマート修繕では、無足場工法・足場工法の両方に対応できる施工会社のご紹介から、見積比較・仕様調整まで無料でサポートしています。

ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ:専門家に相談しよう

無足場工法のメリット・デメリット、選択基準や費用感について解説しました。足場を使わない工法は、狭い敷地や迅速な工事が求められる場面で費用・時間両面の大きな効果を発揮します。一方で、建物条件によっては適用が難しく、安全管理や業者選定にも注意が必要です。結論として、最適な工法は現場ごとに異なるため、経験豊富な専門家に相談することが一番の近道です。

建物の状態や周辺環境を踏まえ、プロの視点で工法を判断してもらうことで、無足場工法のメリットを最大限に活かしつつデメリットをカバーする施工計画を立てられます。無足場工法を検討している場合は、ぜひ信頼できる専門業者や公的機関のアドバイスを仰ぎ、最適な工事方法を選択してください。適切な工法選びと確かな施工によって、大切な建物の維持修繕を安全かつ効率的に行いましょう。

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  • ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
  • 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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