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ビルの大規模修繕にかかる費用と工事を成功させるためのポイントを解説

更新日:2025年02月20日(木)

オフィスビルや商業ビルなどの大規模修繕は、マンションなどの居住用の建物とは異なり、具体的な周期などが明確ではありません。 しかし、経年劣化などに伴って、メンテナンスの必要があるのはマンションと同様です。定期的な修繕によって建物の価値を維持することができます。 この記事では、ビルの大規模修繕にかかる費用などの基本知識と、工事を成功させるためのポイントを解説します。

本記事のポイント
  • ビルの大規模修繕を適正な内容/金額で実現する方法がわかる。
  • 信頼できる業者を選ぶためのポイントが明確になる。
  • 計画的な修繕でトラブルを防ぎ、スムーズに工事を進めるコツがわかる。

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ビルの大規模修繕に関する基本知識

大規模修繕とは?

大規模修繕の定義は、建物の劣化した箇所を元の状態に修復し、性能を回復させる工事です。たとえば、外壁の再塗装やシーリングの再施工によって防水性能を取り戻すなどの工事を行います。建物の傷みを予防していく効果もあります。

修繕に対して改修工事・改良工事という表現をする場合は、建物の機能や性能を初期よりも向上させるために行われるものを指します。たとえばバリアフリー対応や防犯性能の向上でテナントの集客力を高めたり、設備の入れ替えで光熱費のコストを下げる工事を行うなどのケースが改修・改良です。

一般的な大規模修繕の工事範囲は、外壁の塗装や補修、防水のためのシーリング再施工、エレベーターなどの共用設備の修繕・交換などが主流です。

日常的なメンテナンスとの違い

建物の性能維持については、大規模修繕とは別に日常的な点検や小規模・中規模のメンテナンスが重要な役割を果たします。共用部分の清掃やごみ収集などを行い、建物をきれいに保ちながら不具合の種を発見することが可能です。

適切なメンテナンスで破損個所や雨漏りなどを早期発見し、都度対応を行うことが大規模修繕の際のコスト削減やビルの長寿命化などにつながります。

大規模修繕工事の際は、専門家の視点で定期的な検査を行い、不具合の発見や修繕計画の調整を行うことも大切です。ビルオーナーの点検・修繕の義務については後述します。

ビルの種類による修繕の違い【オフィスビルと商業ビル】

オフィスビルは企業が本社ビルなどの事業所を構えるビルで、企業がオーナーです。これに対して商業ビルは飲食店、販売、オフィスなどのテナントが入居し賃貸しているビルで、テナントとは別の貸主=ビルオーナーがビル管理を行うという区別となります。

オフィスビルは企業が自社の資産管理の一環で、独断で大規模修繕の計画を差配できるのに対して、商業ビルでは大規模修繕の際に、お客様であるテナントに対するより細かい配慮や、貸主としての責任が生じます。

大規模修繕工事の影響、注意点

オフィスビルも商業ビルも、騒音・振動・日照の制限・窓の外に工事施工者が出入りするなど工事期間の不便については、利用者への影響を最小限にする努力が必要です。

大規模修繕工事中は、企業やテナントの営業時間中の影響を小さくするよう工事内容を検討するなど、ビル運営に関する工夫を行いましょう。

オフィスビルと商業ビルの修繕計画とは?

工事内容

一般的なビル大規模修繕工事の内容は以下です。

  • 補修工事(下地やタイルなど)
  • 塗装工事(外壁・天井・鉄部など)
  • シーリング工事
  • 防水工事
  • 設備工事

ビルの大規模修繕は居住目的のマンションとは異なり、給排水系統・空調・エレベーターなどの設備を正常に維持する点が重要となり、予算に他のウエイトが偏りがちです。

マンションの場合は建物全体の寿命や美観にこだわる傾向があるのに対して、ビルは営業活動の維持が優先であるためです。しかし、長い目で見て「今どこに手を入れるのが得策か」は、専門家と相談しながら、修繕計画をよく検討することが必要です。

修繕周期

ビルは明確な大規模修繕の計画がなされていないケースも多く、老朽化に対して早急な対応が必要な建物も多く見られます。

経年劣化の度合いなどは立地や使用されている部材などで異なるものの、国土交通省も推奨する大規模修繕が必要な周期は10~15年ごと、約12年前後です。これを念頭に修繕計画を立てましょう。

資金計画

ビルの大規模修繕資金は、修繕積立金を区分所有者が負担するマンションとは異なり、オフィスビルは営業上の経費、商業ビルはオーナーの賃料収入から計画的に積み立てる必要があります。

もしくは事業資金として、融資を受けて修繕費用に充てることもできますが、積立によって長期的な修繕計画の原資とし、不慮の不具合にも備えることで、安定した経営につながります。

合意形成

「いくらかけてどのような箇所を修繕するか」は、管理組合の決議で合意形成を行うマンションに対して、ビルの場合は法人格も含めてオーナーの一存が基本です。

つまり、直さないという選択肢も取れるほか、大規模修繕の時期が近いことを考えて、売却も選択肢にすることができます。

しかし、次項で述べる修繕の必要な理由を無視することになるほか、売却の際には購入希望者が修繕コストを慎重に検討する点は、忘れてはいけません。

また、オーナーの一存とはいうものの、商業ビルの場合、テナントに対する説明や協力要請は不可欠です。

ビルの大規模修繕が必要になる理由

資産価値・収益の保全

修繕を怠ったまま使用を続けたビルは、その資産価値を下げてしまいます。そして資産価値の変動は収益の変動につながります。

会社の顔であるオフィスビルは、その会社に関わる多くの人の印象を左右するでしょう。本社ビルの管理や修繕状況は、会社の信用度や企業イメージに関わることがあり得ます。

商業ビルの場合、メンテナンスを行っていないビルは入居率が下がり、賃料を低く設定せざるを得ないことになります。入居者は同じ賃料と立地なら、きれいで安心なビルに入居したいと考えるでしょう。また、売却の際にも価格が下がります。

定期的な大規模修繕を行い、建物状況調査の結果「問題なし」の認定を受けたビルは、売却の際にも早く・高く売ることができます。

利用安全の確保 

不特定多数の人が出入りするビルは、建物の老朽化から、外壁などの建材の剥落で利用者や通行人がケガをするなどのトラブルがあってはなりません。しかし、大規模修繕を行っていれば、そのようなリスクは大幅に下げることができます。

また、防水性能が落ちてしまった建物は、建物内部の湿度によるカビなどの健康被害も懸念されるでしょう。

建物の不具合で賃貸の利用に不都合が生じた場合、賃貸物件のオーナーは民法で規定されている修繕義務を負います(民法606条)。

賃借人の故意や過失が原因となった場合を除き、オーナーが修繕する義務があるのです(このオーナーの修繕を、賃借人は拒むことができません)。

さらに、一定規模以上のビルには、建築基準法による建築設備定期検査や特定建築物定期調査が義務付けられています。

2つの検査の違いは、建築設備定期検査が給排水設備・換気設備などの建物の設備を対象にし、特定建築物定期調査が建物そのもの(敷地・外壁・床・天井・屋上・避難施設等)を対象にする点です。

対象となるビルの規模は、管轄の都道府県や自治体で異なります。

耐久性と美観の向上

前述のように大規模修繕を行うことで建物の寿命を延ばし、長持ちさせることができます。また、内外観が刷新されて美観が復活する、あるいはイメージを一新するリニューアル効果がある点は、商業ビルとしては見逃せないでしょう。

ビルの大規模修繕の周期

大規模修繕の際の工事内容は、建物の各箇所の傷み具合で、ビルによって違いが生じます。単独の工事単位での周期目安は以下となります。

商業ビル・オフィスビル・一般的な修繕周期の目安

修繕周期

工事の範囲

10年~15年

外壁・屋上改修など

15年~20年

空調設備更改など

25年~30年

エレベーターのリニューアルなど

30年~35年

グレードアップ工事など

建物ごとに、劣化診断の結果から「今回は外壁の塗装とエレベーターのリニューアルを施工した方が良い」と判断を行います。その結果、前述の12年前後が平均的な周期となっています。

修繕周期を決める要素

修繕時期の判断は劣化診断の実地調査によって行いますが、ビルそれぞれの修繕周期を左右する要素は以下の通りです。

  • 新築・前回の修繕からの経過年数
  • 設備の構成や建物・設備の使用頻度
  • 設備のこれまでの定期保守の頻度・内容
  • 立地(気温、海浜から近いための塩害・豪雪地帯の融雪剤の影響など)

ビルの大規模修繕に必要な費用

ビルの大規模修繕にかかる費用の目安

大規模修繕で必要な費用は前述のような点のほか、ビルの規模によっても幅がありますが、数千万円単位の費用が必要となることが多いでしょう。

全く同じ内容の工事で見積もりを依頼しても、得られる結果の費用は同じではありません。施工の依頼先によって実施する工事内容や金額に違いが出るほか、関わる管理会社やコンサルタントによって費用・中間マージンの違いがあるためです。

どのような方式で業者を選定し、工事を進めていくかは費用を大きく左右します。このため、業者の選定は相見積もりでしっかり比較し、工事監理も依頼先に任せきりにしないことをおすすめします。

また、修繕のコストについては建物の傷みの進行や水漏れなどのトラブルが発生してから対応する流れより、定期的に対応したほうが結果として費用は安くなることが多いです。

以下は工事の種別ごとの費用の目安です。

大規模修繕費用の目安

工事範囲

費用目安

外壁・屋上改修など

1,000万円~

空調設備更改など

2,500万円~

エレベーターのリニューアルなど

1,000万円~

グレードアップ工事など

1,000万円~

経費の計上のしかた

大規模修繕は多額の費用をかけることになりますが、経費にする際は注意が必要です。1千万円以上の工事費がかかる固定資産の耐用年数を延長したり資産価値を増加させたりする修繕工事を行うときは、「修繕費」ではなく「資本的支出」で処理する必要があります。

ただし、資本的支出は新たに取得した資産の扱いで減価償却の計上が可能となります。資本的支出における減価償却の詳細については、以下もご参照ください。

参考:資本的支出を行った場合の減価償却|国税庁

ビルの大規模修繕を成功させるためのポイント

計画と予算

修繕計画は下図のように中期と長期に分けて立案し、管理します。

計画

長期修繕計画

中期修繕計画

周期

30〜50年

5〜10年

目的

大規模修繕工事の実施時期、修繕費積立の計画を作成するため。

具体的にいつ・どのような優先順位で工事を行うかを決めるため。

長期修繕計画を持つことで、実施時期と工事計画の概要から、修繕積立金の貯えを計画できるようになります。資材や人件費の高騰、新工法や新商品の登場で施工コストが下げられるケースなど、予算は変動するため、長期・中期計画共に定期的な見直しが大切です。

借り入れの場合、融資の依頼先は民間の金融機関や日本政策金融公庫が対象となります。事業資金の借り入れとなるため、修繕工事の効果なども含めた事業計画の提出が必要となります。

コスト削減の方法

「そろそろ時期だから」というのではなく、劣化調査診断で必要な工事範囲を見極めます。今回ぜひ行う必要がある項目と、次回の大規模修繕時に先送りできる項目とを切り分け、無駄のない進め方や依頼内容に絞り込みましょう。

また、大規模修繕の際に合わせてビルの機能・性能をアップする改良工事も一度に行うことで工事に伴う諸費用を集中させ、分けて施工するよりもコスト削減につなげられることもあります。

候補の業者が決まったら相見積もりを取得し、価格だけでなく工事内容のコストパフォーマンスもしっかり比較することが大切です。

業者選定のコツ

施工業者を選ぶ際には、依頼したい内容に近い修繕の施工実績が豊富な業者を選びましょう。依頼する工事の分野に対する専門性の高さも重要です。

また、施工後の保証内容やアフターフォローが充実しているかについても、比較することが大切です。施工後の関与に積極的である点は、その工事1回限りではなく、長いお付き合いをするという意志の証しにもなるでしょう。

なお、公平で癒着や談合などが起きる余地がないようにすることも、良心的でコストに見合った工事にする上で大切です。特定の方の人選や、競争のない業者選定は避けましょう。

その他

ビルの大規模修繕を成功させるためには、工事の騒音やにおい、工事関係者や車両の出入りなどで生じるトラブルを未然に防ぐという対策も必要です。

オフィスビルの場合、工事によって各部署の業務に支障が出る場合は、事前に具体的な説明やお知らせなどの情報共有を行うことで、業務フローやスケジュールの変更などの準備に対応できるようにします。一時的に特定の部屋やエレベーターの一部が使えなくなるなどの事例をあらかじめ確認し、想定しておきましょう。

商業ビルはテナントへの説明で、営業を休止さえざるを得ないなど施工期間に生じる問題について、テナントへの来客にも配慮した説明が、施工中のトラブルを防ぐことになります。

まとめ

ビルの大規模修繕にかかる費用などの基本知識と、工事を成功させるためのポイントを解説しました。

本来、12年程度の周期で行う大規模修繕ですが、ビルの場合は居住用物件よりも後手に回りがちです。資産価値や美観の向上を図り、利用者の安全上のリスクや不便を事前に避けるためにも、修繕計画の策定と費用の積み立ては、未着手の場合、すぐに実行されることをおすすめします。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

別所 毅謙

別所 毅謙

マンションの修繕/管理コンサルタント歴≒20年、大規模修繕など多くの修繕工事に精通。管理運営方面にも精通しており、アドバイス実績豊富。 過去に関わった管理組合数は2千、世帯数は8万を超える。 メディア掲載「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、「NIKKEI NEWS NEXT」、「首都圏情報ネタドリ!(NHK)」、「めざまし8」、「スーパーJチャンネル」。

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