大規模修繕の責任施工とは? 設計監理方式との違いやメリットを解説
更新日:2025年09月25日(木)
マンションの大規模修繕を進める際に、工事の発注方法によって進め方や結果が大きく変わります。代表的な発注方式には「責任施工方式」と「設計監理方式」があり、それぞれに特徴と注意点があります。どちらを選ぶかはマンション管理組合にとって重要な判断ですが、「何が違うの?どちらが良いの?」と迷う方も多いでしょう。 本記事では責任施工とは何か、設計監理方式との違いを解説し、さらに責任施工方式のメリット・注意点を整理します。加えて、施工を依頼する工事会社の選定方法(特命随意契約・競争入札・見積もり合わせ)、責任施工方式で大規模修繕を成功させるポイントを紹介します。
- 本記事のポイント
- 責任施工方式と設計監理方式の違いや特徴がわかる。
- 契約方式ごとのメリット・デメリットや注意点を学べる。
- 責任施工方式で大規模修繕を成功させるポイントがわかる。
大規模修繕の責任施工方式とは?
マンションの大規模修繕工事では、発注方式によって工事の進め方や成果が大きく変わります。その中で「責任施工方式」は、管理組合が施工会社と直接契約を結び、調査診断から設計、施工までを一社に一任する方式です。
施工会社が劣化診断や修繕計画の作成まで担うため、設計と施工が一体化しているのが大きな特徴です。工事の企画から完了までの窓口が施工会社1社に集約されることから、「設計施工一括方式」とも呼ばれます。
管理組合は、公募や紹介などを通じて複数の施工会社に提案や見積もりを依頼し、内容や金額を比較検討したうえで信頼できる1社を選定します。契約後は選ばれた施工会社が企画・設計から施工、工事監理まで一貫して担当するため、意思疎通や判断がスムーズになりやすいのも利点です。
ただし、この方式ではコンサルタントなど第三者を介さないため、管理組合自身の主体性と責任が大きくなります。施工会社との打ち合わせや合意形成を丁寧に重ねることが重要であり、設計監理方式に比べて準備のフローは簡素に見えても、組合側が主導して工事を進めていく姿勢が求められます。
責任施工方式の特徴
工事の効率化
設計と施工を同じ会社が担うため、計画段階から現場を踏まえた実現性の高いプランを立てやすく、調整や段取りもスムーズに進む。
窓口が一本化
調査から施工までを一社が担当するため、管理組合とのやり取りがシンプルになり、意思決定や問題対応が迅速。
安心感のある進行
施工会社が全体を統括するため、責任の所在が明確で、工事の進行に安定感がある。
留意点として、第三者による客観的なチェックが入らないため、管理組合側で補完策を講じることが推奨されます。
設計監理方式の特徴
「設計監理方式」は、施工会社に直接一任せず、第三者の専門家(コンサルタント)を介して工事を進める方法です。
・管理組合は建築士事務所やコンサルタント会社と契約し、調査診断・設計・工事監理を依頼
・施工会社は別途選定され、コンサルタントが施工を監理
・設計と施工を分離することで、第三者による客観的なチェック体制が整う
設計監理方式では、管理組合とコンサルタント、管理組合と施工会社という二つの契約関係が発生します。コンサルタントが仕様書を作成し、施工会社の選定や工事監理も行います。
一方、設計監理方式では手続きや費用が増えるほか、施工会社との癒着や談合のリスクも指摘されています。透明性を高める工夫は必要ですが、管理組合にとっては手間や負担が増える点も覚えておく必要があります。
責任施工方式と設計監理方式の比較ポイント
第三者の介在
責任施工方式は施工会社1社に直接任せ、窓口を一本化して意思決定がスムーズになるが第三者の客観的なチェックはない。設計監理方式では施工会社とは別にコンサルタントが入り、工事の監理やチェックを行う。
契約・費用の違い
責任施工方式は契約相手が施工会社のみで、コンサルタント費用は発生しない。設計監理方式はコンサルタント契約・報酬が別途必要となり、手続きや費用の負担が増える。
管理とチェック体制
責任施工方式は一元管理で効率的だが、管理組合自身が工事内容や進行を把握・判断する必要がある。設計監理方式は専門家による監理体制が整い、施工品質や価格の妥当性を第三者視点で確認できる。
責任施工方式は、発注手続きがシンプルで効率的に進められる反面、管理組合自身が主体的に関与し、施工内容や進行状況を把握する姿勢が不可欠です。
設計監理方式は、専門家の知見を借りることで施工品質や価格の妥当性を第三者の視点で確認できるメリットがある一方で、不適切なコンサルタントによる癒着や談合のリスクも指摘されています。手続きや費用が増える点も含め、メリットと課題を十分に理解した上で、自分たちのマンションに適した方式を選ぶことが重要です。
責任施工方式のメリット・注意点
メリット
責任施工方式の最大の魅力は、施工会社に一括して任せられることで、工事全体を効率的かつ安心して進められる点です。特に注目したいポイントは以下の通りです。
コストを抑えやすい
外部コンサルタントを起用しないため、その費用を節約できる。一般に設計監理方式では工事費とは別に数%~数十%程度のコンサルタント料がかかるが、責任施工方式ならこの費用を削減可能。限られた修繕積立金を工事費用に集中できる。
契約・調整がシンプル
管理組合と施工会社1社との契約だけで済むため、発注までの段取りが比較的簡単。煩雑な仕様書作成やコンサルタント探しの手間が省け、準備期間を短縮できる。窓口が施工会社に一本化されることで、問い合わせや打ち合わせもスムーズ。問題や相談があれば直接施工会社とやり取り可能で、意思疎通が取りやすい。
責任所在が明確
調査・設計から施工までを1社が担当するため、工事工程の一貫性が保たれる。途中での引き継ぎミスや認識ズレが起きにくく、トラブルが発生しても責任の所在が明確で対応がスピーディー。
多様な提案を比較できる
複数の施工会社から自由な発想で提案を受けられる。各社の経験や技術を活かした修繕プランを比較できるため、管理組合のニーズに合った最適な工事計画を選択しやすい。他マンションでの実績や新しい工法の提案も得られる可能性がある。
注意点
責任施工方式には管理組合として留意すべき点もあります。
第三者監理が弱い
施工会社が自社工事を管理するため、独立したチェック体制は弱く、工事品質や工程の見落としリスクがある。
見積内容の比較が難しい
各社が独自に設計・提案するため、単純な金額比較が難しく、妥当性の判断には専門知識が必要。
管理組合の負担が大きい
施工会社選定、契約交渉、工事状況の把握など、多くの役割を管理組合自らが担う必要がある。知識や経験が少ない場合、負荷が大きくなる。
施工会社選定のリスク
信頼できない会社を選ぶと、工事品質や進行に影響が出る。途中での業者変更は難しく、最初の選定が非常に重要。
責任施工方式には、管理組合として注意すべき点もあります。ただし、これらは第三者のチェックや外部サポートを取り入れることで補うことが可能です。
スマート修繕を活用して負担を軽減
責任施工方式では、管理組合が工事内容や進行状況を把握して判断する必要があり、一定の知識や手間が求められます。
管理組合の負担やリスクは、スマート修繕のコンサルティングを活用することで大幅に軽減できます。スマート修繕が、施工会社選定のサポートや見積もり内容の精査、進行管理まで一貫してサポートするため、安心して責任施工方式を採用することが可能です。
スマート修繕を活用すれば、信頼できる施工会社を選びながら管理組合の負担を抑え、高品質な修繕を効率的に進めることができます。
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工事会社選定と見積もり方式
大規模修繕では、発注方式とは別に「工事会社の選定方法」や「見積もりの取り方」も重要です。代表的な方式には以下の3つがあります。
特命随意契約
信頼できる施工会社を1社に絞り、直接契約する方式。迅速に発注できるメリットがある。一方で、競争原理が働かないため適切な工事内容・価格が分かりにくい点はデメリット。
競争入札
仕様や条件を統一した上で複数社から入札を募り、最も条件の良い会社を選ぶ方法。工事会社各社に同じ仕様書が渡されるため、条件を揃えて価格や提案力を競わせることができる。
見積もり合わせ
施工会社が現地調査を行ったうえで独自の提案・見積もりを行う。責任施工方式のメリットである「多様な提案を受けられる」点を活かし、内容と価格を比較して最適な工事会社を選定する方法。
一方、
・提案内容や金額の比較が難しい
・選定作業の負担が大きい
といった課題もあります。
スマート修繕で見積もり合わせの課題を解決
スマート修繕は、この見積もり合わせ方式を採用しています。専門家によるサポートにより、複数の見積もりを整理・精査し、工事内容と金額の妥当性を分かりやすく提示。さらに進行管理まで支援することで、管理組合の負担を大幅に軽減します。
多様な提案を比較できるメリットはそのままに、比較や選定の難しさというデメリットをスマート修繕が補います。
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責任施工方式で大規模修繕を成功させるポイント
責任施工方式は効率的で安心感のある方式ですが、管理組合の主体性や準備が不足するとリスクもあります。成功に導くためには、次の3つのポイントを押さえましょう。
1. 信頼できる施工会社を選ぶ
施工会社の選定が最も重要です。実績や技術力はもちろん、過去の施工先マンションの評判やアフターサービス体制まで含めて総合的に評価しましょう。複数社から提案・見積もりを取り、金額だけでなく対応姿勢や提案内容をしっかり比較してください。現地調査に立ち会い、要望を伝えるとともに各社の説明を直接確認することで、信頼性を見極めることができます。契約前には工事範囲や保証内容を明確にして、不明点を残さないことも大切です。
2. 管理組合内で知識を共有・準備する
責任施工方式では、管理組合が学びながら進める姿勢が欠かせません。理事や修繕委員間で情報を共有し、セミナーや行政・協会の大規模修繕ガイドラインを活用して基礎知識を身につけましょう。過去の事例を調べたり、専門家にアドバイスを求めることも有効です。十分な準備と知識を持つことで、工事の質や判断の精度を高められます。
3. 第三者チェックや保証を活用する
責任施工方式は第三者の監理が弱いため、補完策を組み合わせることが効果的です。建築士などの専門家に設計や見積を確認してもらう、工事中にスポット検査を実施して品質を点検する、保証制度を活用するなどの方法があります。こうした仕組みを加えることで、責任施工方式の利点を保ちながら、安心して修繕を進められます。
大規模修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
- 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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