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大規模修繕で使える補助金一覧|各地域の特色、申請方法、事業者の決め方も解説

更新日:2024年12月11日(水)

10数年単位で行う大規模修繕の際には、非常に高額の費用を要します。修繕積立金が不足する事態は、どんなマンションでも起こり得ます。 そこで本記事では、工事資金不足解決の有効な手段として、大規模修繕に利用できる補助金や助成金について解説します。大規模修繕の予算検討・補助金の検討をされる際の参考にしてください。

本記事のポイント
  • マンションの修繕を対象とする補助金や助成金の活用方法がわかる。
  • 補助金申請のための具体的な条件や申請手続きのポイントがわかる。
  • 大規模修繕工事を進める際の事業者選定のポイントが明確になる。

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マンションの大規模修繕に役立つ補助金

本来修繕するべきマンションを、時期を過ぎても放置した場合は、以下のようなさまざまなリスクを伴います。

  • 修繕期間を過ぎた箇所の傷みが進行し、適正な時期の施工に比べて費用が余計にかかる
  • マンションの取引価格が下がり、区分所有者の資産価値が減少してしまう
  • 外壁などの剥がれ・落下によって通行中の人に危険が及ぶ


このように、大規模修繕は適切な時期に行うことが必要です。また、入居者の負担を抑えて工事を行うためには、予算を賢く使う以外に、助成金を受ける方法があるのです。

修繕積立金の予算不足に対応するには

大規模修繕のための修繕積立金の値上げは、入居者の生活に直接影響を与えるうえ、修繕積立金の高いマンションは中古市場でも敬遠されるため、資産価値も下げてしまいます。したがって、大規模修繕の際は極力工事費を抑えながら、適切な箇所の補修を行う必要があります。

見積もった大規模修繕の費用に対して修繕積立金が不足した場合、以下の方法で対策します。

  • 助成金や補助金を受ける
  • 不足額を一時金徴収する
  • 不足額を金融機関からの借り入れする
  • 見積もりを見直す

    なお、管理費は管理組合の運営や、管理会社への委託費用などで日常的に使う費用で、大規模修繕には原則として使えません。

大規模修繕に交付される補助金の主旨

大規模修繕のための補助金や助成金は管轄の都道府県・自治体に申請して交付を受けます。市民生活に資する工事=危険防止・耐震、バリアフリー・建物の危険防止などが補助金の主旨です。

なお、補助金は期間内に応募して、審査に通ることで支給されるもの、助成金は条件を満たしていれば審査を受ける必要がないものという違いがあります。どちらも返済の義務はありません。

大規模修繕で使える主な補助金の種類・金額の目安【2024年10月】

補助金制度対象の大規模修繕の施工の中には、居住者に直接のメリットが伝わりにくいものもあります。暮らしやすさ、資産価値の維持、防災、遵法など、今回の大規模修繕で何が本当に必要かを組合で検討したうえで、総会で審議を行いましょう。

アスベスト除去等事業補助金【東京都の例】

2006年(一部の箇所は2012年)まで施工に使用されてきたアスベストの健康被害から入居者を守るために、アスベスト調査や除去工事の補助金が設けられています。

地域によって差はありますが、アスベスト分析調査には10~25万円、アスベスト除去には100~120万円の補助金が給付される例が多いようです。

具体例(東京都目黒区)

名  称

アスベスト(石綿)調査助成制度

助成金額

費用の半額(限度額:戸建10万円、分譲集合住宅・事業用建築物20万円)を助成

申請条件等

・区内にある建築物で平成18年8月31日以前に建築(着工)されたものが対象
・先着順に受付し、当該年度の予算額に達した時点で終了


劣化調査診断費補助金【神奈川県の例】

劣化診断は建物診断ともいわれ、大規模修繕の前に工事の範囲や仕様を決める判断のために行います。

調査費用の補助は、15~20万円が給付されるケースが多いです。

具体例(神奈川県横浜市)

名  称

横浜市 マンション再生支援事業(検討費助成)

助成金額

1年度あたり検討活動費用の1/2まで(上限30万円)

申請条件等

・築30年以上の分譲マンションであること。
・対象マンションが横浜市マンション登録制度へ登録していること。

耐震改修費用補助金【大阪府の例】

耐震改修費用補助金は、大規模地震発生でマンションが倒壊することで、住民だけでなく近隣への被害の拡大を防ぐために、改修工事費用を補助する制度です。

1戸あたり20~60万円の補助金が給付されるケースが多いようです。

具体例(大阪府堺市)

名  称

マンションの耐震改修補助

助成金額

補強設計は2/3、補強の施工は1/3を助成(強度や面積に応じた上限あり)

申請条件等

・昭和56年5月以前に着手したマンション
・敷地面積が概ね500平方メートル以上

共用部のバリアフリー化工事補助金【兵庫県の例】

共有部分のバリアフリー化は、高齢の方も安心して暮らせるよう、段差の解消や通路の拡幅、手すりの設置などを行います。

築年を経過して高齢化が進み始めたマンションでは、比較的住民の理解を得やすい修繕でしょう。平均して30~100万円の補助金が給付されます。

具体例(兵庫県西宮市)

名  称

人生いきいき住宅改造助成事業

助成金額

・工事の金額は75,000円(税込)以上が対象
・工事費の合計金額に応じて助成額を決定

申請条件等

(1)平成5年9月30日以前に建築確認を受けた・1棟21戸以上の規模
(2)平成5年10月1日~平成14年9月30日に建築確認を受けた・1棟21~50戸の規模
※住宅以外の用途に使用している部分は除く

省エネ対策等補助金【東京都の例】

省エネ対策等補助金は、地球環境への負荷を減らす目的で、住まいのエネルギー使用効率を上げる工事に補助されるものです。入居者には光熱費の削減と住まいの快適性アップというメリットがあります。

省エネ設備は専有部分に設けることが多いため、マンションで利用できるケースは比較的少ないですが、高遮熱塗装をした場合などで5~100万円の補助金給付があります。

具体例(東京都品川区)

名  称

住宅改善工事助成事業(エコ&バリアフリー住宅改修)

助成金額

マンション管理組合、賃貸住宅個人オーナー向け:工事費用(税抜)の10%・上限100万円

申請条件等

・この制度を初めて利用すること
・予約申込時点で着工前で、令和7年2月28日(金)までに助成申請書類を提出する
・ 区内施工業者に発注して行う工事であること ほか

エレベーター防災対策改修補助金【千葉県の例】

エレベーター防災対策改修補助金は、地震や災害時にマンション内のエレベーターが安全に利用可能にするための工事補助制度です。

金額は、100~250万円の補助金が給付されるケースが多いです。

具体例(千葉県浦安市)

名  称

分譲集合住宅のエレベーター防災対策整備費補助金

助成金額

・要した経費の3分の1以内の額(千円未満の端数は切り捨て)
・P波感知型地震時管制運転装置、停電時自動着床装置は1基あたり50万円が限度。非常用電源は1棟あたり100万円が限度

申請条件等

・市内の分譲集合住宅の管理組合が対象

・既設エレベーターに防災対策装置のいずれかか、全ての設置を行う工事
・エレベーター自体を新設(増設)する工事は対象外。


補助金の対象にはこのほか、各自治体でマンション管理のアドバイザーやマンション管理士の派遣費用を補助する制度もみられます。

補助金の探し方と申請の方法

実際に現在管轄自治体で適用できる補助金を探す方法をご説明します。また、申請の流れや、どのような点に注意したらいいかも、併せてご確認ください。

自治体で探す|各地域の特色

補助金の情報は、自治体ごとのホームページがもっとも確実なメディアといえます。申請期限や先着順での終了、年度ごとの内容変更や実施の有無がありうるためで、常に最新の情報を確認しましょう。

大規模修繕の補助金は、地域ごとでそれぞれの政策にのっとり、制度を設定しています。

その理由としてたとえば、都市部では古くからの物件が多く、大規模修繕での老朽化対応やバリアフリーが急がれる傾向にあります。また、沿岸部でも海岸に近いエリアでは、湿度や塩害などで修繕の頻度がそのほかの場所に比べて大幅に増えるでしょう。

補助金・助成金制度紹介サイトの利用

自治体のサイト以外にも、補助金・助成金制度を紹介する記事がネット上に見られます。ただし、情報の鮮度にはくれぐれも注意しましょう。期待した補助金制度の実施が、今年度はなかったということもあるためです。

このほか、選定中、あるいは決めた施工事業者に相談しながら補助金の申請先を決めることもできます。

下記はマンション大規模修繕の際に申請できる、自治体ごとの概要をまとめたもので、年1回は更新されています。

ご参考:マンション管理適正化推進センター・国土交通省発表資料

令和6年度 分譲マンション共用部分の改良工事等に対する支援制度 (全国版)|マンション管理適正化推進センター

地方公共団体における耐震改修促進計画の策定予定および耐震改修等に対する支援制度の整備状況について|国土交通省


大規模修繕の補助金申請の流れ

補助金の申請から交付までの流れは、以下を参考にしてください。

ステップ

内容

1.点検依頼と見積もり

点検を依頼し、その結果で必要な補修箇所とその規模、予算を出してもらう。複数の業者に依頼するのが基本。

2.補助金制度の確認

大規模修繕の内容が明確になったら、並行して適用できる補助金制度を確認する。

3.書類準備と申請

必要な書類を揃え申請する。必要書類は自治体や申請する補助金の種類によって異なる。

4.審査~交付決定

審査を要する補助金の場合は審査を待つ。補助金交付決定通知書が届いたら、業者と当該調査や施工の契約をする。

5.工事~実績報告書提出

提出した事業計画書に沿って着工・竣工し、完成後に工事の実績報告書を自治体に提出。


審査は価格に問題がなく、補助金の目的に合った工事であれば問題はありません。施工完了後に実績報告の提出と公費の全額支払いののちに、補助金が交付されるという順番になります。

大規模修繕の事業者の決め方

工事の事業者決定は、経験値の少ない管理組合の方だけでは困難な面があるかと思います。適正価格を実現するためには、決定プロセスの透明性も必要です。以下は工事の事業者選びの際の基準です。

事業者を選ぶポイント

どのような事業者が信用しやすいかは、基本として以下の要素が大切です。

  • 同規模マンションについての大規模修繕の実績が多いか。その施工額
  • 保証やアフターサービスが充実しているかの比較=長く頼れる業者か
  • 現場監督・フロントの人柄や、修繕委員との相性に問題が無いか

上記をもとに、専門家のアドバイスを受けながら検討しましょう。

まとめ

工事資金不足解決の有効な手段となる、大規模修繕の補助金や助成金について解説しました。

大規模修繕の補助金や助成金は、前述のように自治体によって実施内容が異なり、どの地域も同じ行政サービスが受けられるわけではありません。また、管理組合から住民への説明も、回数や手間を重ねた末の決定となり、議決の必要も出てくるでしょう。

実施の予定時期に先だって、早めの計画スタートを切ることをおすすめします。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

別所 毅謙

別所 毅謙

マンションの修繕/管理コンサルタント歴≒20年、大規模修繕など多くの修繕工事に精通。管理運営方面にも精通しており、アドバイス実績豊富。 過去に関わった管理組合数は2千、世帯数は8万を超える。 メディア掲載「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、「NIKKEI NEWS NEXT」、「首都圏情報ネタドリ!(NHK)」、「めざまし8」、「スーパーJチャンネル」。

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