マンション管理組合の住民アンケート:目的・作成ポイントと活用テンプレート
更新日:2026年01月22日(木)
マンション管理組合の理事会では、大規模修繕や共用設備の改修、防災対策などに際して、居住者の意向を把握するための「住民アンケート」の実施が有効です。 本記事では、住民アンケートを行う目的とメリット、アンケート作成時の基本原則、そしてテーマ別のアンケート質問テンプレート例をご紹介します。
- 本記事のポイント
- 管理組合がアンケートを行う目的やメリットが明確に理解できる。
- アンケート設問の基本原則や回答率を上げる工夫がわかる。
- 用途別の質問テンプレートを使い、すぐに実践できる設計方法を学べる。
住民アンケートを実施する目的とメリット
マンション管理組合が住民アンケートを行う主な目的は、居住者全員の声を把握し、合意形成をスムーズにすることです。アンケートを通じて日頃の生活で感じている不具合や要望を集めることで、専門家による建物診断だけでは見えない劣化や問題点を把握できます。これにより、修繕工事や設備改修の計画に的確に反映でき、住民の納得感を高めることができます。
また、アンケートの実施自体が居住者の意識啓発につながる点も重要です。質問に答える過程で「自分たちのマンションに何が必要か」を考えるきっかけとなり、工事への関心や協力姿勢を高める効果があります。
さらに、住民満足度の向上とトラブルの未然防止にも寄与します。管理組合が積極的に居住者の声を聞き運営に反映すれば、小さな不満や潜在的な問題点を早期に察知できるため、後のクレームや対立を防ぐことができるでしょう。実際、不動産管理の現場でも「入居者の声を積極的に聞き、運営に反映させることでトラブルの防止につながっている」と指摘されています。
要するに、住民アンケートには合意形成の促進、住民満足度の向上、そしてトラブル予防という三つの大きなメリットがあります。理事会としてはアンケート結果を真摯に受け止め、マンション管理の意思決定に活かすことで、住民との信頼関係を強め健全な組合運営につなげましょう。
アンケート作成時の基本原則
効果的なアンケートにするには、設問設計の工夫と回答しやすい形式が欠かせません。
以下に基本となるポイントを整理します。
質問数と形式の最適化
アンケートは質問数が多すぎると負担となり回収率が下がります。質問は絞り込み、3~10問程度に抑えるのが目安です。また、居住者が直感的に答えやすいよう選択式(チェックボックスや〇×形式)を中心に設計しましょう。専門用語の多用は避け、やむを得ず使う場合は注釈を添えるなど、誰にでも分かる表現を心がけます。例えば「室内に雨漏りがありますか?」という質問では、「ある/なし」の二択にするだけでなく、「※雨漏りの場所(天井・壁・床)や時期もお答えください」のように具体的に書ける欄を設けると回答者も迷いません。
自由記述欄の活用
基本は選択式で簡便にしつつ、最後に自由記述の欄を設けておくと、選択肢では拾いきれない個別の意見を集めることができます。国土交通省のマンション合意形成マニュアルでも「アンケートだけでは表面的な意見しか把握できないこともある」と指摘されており、必要に応じて直接ヒアリングや自由意見の場を併用することが望ましいとされています。自由記述欄により「その他のご意見」を募ることで、住民ならではの創意工夫や隠れたニーズを発見できるでしょう。
匿名性の検討
回答者が本音を述べやすくするために、匿名アンケートとすることも一案です。個別の回答内容を特定の部屋や個人に結び付けないようにすれば、遠慮なく意見を書いてもらえます。ただし、匿名にすると誰が未回答か追跡できないため、全戸回収を目指すには工夫が必要です。回収BOXをエントランスに設置したり、Webフォームで収集する場合もアクセスコードを配布して一回限り回答できる形にするなど、プライバシーと回収率向上のバランスを取りましょう。
配布・回収方法の工夫
高齢者から若年層まで幅広い世代がいるマンションでは、アンケート配布方法も複数用意すると回収率が上がります。紙アンケート用紙を各戸ポストに投函して郵送回収(返信用封筒を同封)する方法に加え、インターネットに慣れた世帯にはオンラインフォームで回答できるQRコードやURLを案内する方法も有効です。締切日を明記し、中間時点で未提出者へリマインド(掲示板への周知や個別ポスティング)を行うことも検討しましょう。理事や担当者が直接各戸を訪問して回収するのは手間ですが、可能な範囲で声かけすることで回答率向上と住民との対話機会創出に役立ちます。
以上の基本原則を踏まえれば、住民がストレス無く回答でき、かつ実効性の高いアンケートを作成できます。
代表的なアンケートテーマ別のテンプレート
下記に、マンション管理組合でよく実施されるアンケートの代表例として、大規模修繕前の意識調査、設備改修の希望調査、防災対策に関する意見収集、総会や理事会運営に関する満足度調査の4テーマについて、それぞれ3~5問程度の質問例テンプレートを提示します。実際にアンケートを作成する際の叩き台としてご活用ください。
1. 大規模修繕工事前の意識調査テンプレート
大規模修繕工事の実施にあたって、居住者の認識や懸念事項を事前に把握するためのアンケートです。建物や設備の不具合報告と、工事への期待・不安を尋ねます。
質問例は以下のとおりです。
- 現在、お住まいの住戸内や共有部分で気になる不具合はありますか?(複数選択可)
- 例:雨漏り・水漏れ/壁のひび割れ/カビ・結露の発生/扉や窓の立て付け不良/特になし など
- 例:雨漏り・水漏れ/壁のひび割れ/カビ・結露の発生/扉や窓の立て付け不良/特になし など
- 共用施設で改善してほしい点はありますか?(複数選択可・該当箇所を記入)
- 例:エントランスの老朽化/エレベーターの動作/駐車場・駐輪場の設備/ゴミ置き場の衛生面/防犯カメラの不足 など
- 例:エントランスの老朽化/エレベーターの動作/駐車場・駐輪場の設備/ゴミ置き場の衛生面/防犯カメラの不足 など
- 次回の大規模修繕工事についてどの程度認識していますか?(単一選択)
- a. 内容や時期までよく理解している
- b. なんとなく聞いたことがある程度
- c. 全く知らなかった
- 修繕工事に対して不安に感じる点があれば教えてください。(複数選択可)
- 例:工事費用の負担増/工事期間中の生活への影響(騒音・居住制限)/工事内容への不明点/施工業者への信頼性/特に不安はない など
- 例:工事費用の負担増/工事期間中の生活への影響(騒音・居住制限)/工事内容への不明点/施工業者への信頼性/特に不安はない など
- 大規模修繕を機に実施してほしい改善やグレードアップがあれば自由にお書きください。(自由記述)
- (記入例:バリアフリー化のためエントランスにスロープ設置、宅配ボックスの新設 など)
1・2問目では日常で感じる具体的な不具合箇所を洗い出します。居住者アンケートは建物診断では発見できない細かな修繕ポイントをあぶり出す有益な情報源となります。例えば「冬場の結露がひどい」「窓枠から隙間風が入る」といった声が多く寄せられたマンションでは、診断上は問題なかったサッシを先行的に更新し、居住環境の改善につなげたケースがあります。
3問目では情報周知の程度を測り、4問目でコストや生活影響など住民の不安要素を把握します。最後の自由記述では、住民発のアイデア(例:「どうせ足場を組むなら太陽光パネル設置も検討しては?」等)を募ります。これら回答は理事会で十分検討し、必要に応じて専門家と相談の上、工事計画や事前説明会の資料に反映させましょう。
2. 共用設備改修に関する希望アンケートテンプレート
インターホンや火災報知器、給湯器など共用設備・機器の更新を検討する際に、各住戸の状況や希望する機能を調査するアンケートです。設備更新は全戸に関わるため、事前に利用者のニーズを把握しておくことが重要です。
質問例は以下です。
- 各戸に設置されている〇〇(該当設備)の不具合状況をお知らせください。(単一選択)
- a. 現在、不具合なく正常に動作している
- b. 軽微な不具合がある(時々調子が悪い等)
- c. 大きな故障・不具合がある/動作していない
- 現行の〇〇について、不便に感じている点はありますか?(複数選択可)
- 例:操作しづらい/音や表示が見えにくい/故障が頻発する/機能が時代遅れ など
- 例:操作しづらい/音や表示が見えにくい/故障が頻発する/機能が時代遅れ など
- 将来的に〇〇をリニューアルする場合、あったら良いと思う機能を選んでください。(複数選択可)
- 例:(インターホンなら)カメラ付きで来訪者録画/スマートフォン連動機能/ハンズフリー通話/非常呼び出しボタン など
- 例:(火災報知器なら)音声案内付き/各戸への自動通報連絡機能/〇〇 など
- 例:(インターホンなら)カメラ付きで来訪者録画/スマートフォン連動機能/ハンズフリー通話/非常呼び出しボタン など
- 〇〇(設備)の更新工事にあたり、特に心配な点・要望があれば教えてください。
- (記入例:○月は在宅率が低いので避けてほしい、交換時に操作説明会を開いてほしい など)
1問目で各戸の現状(故障の有無)を確認し、緊急性や優先度を判断します。例えばインターホン更新なら「故障が相次いでいる」回答が多ければ早期交換の裏付けになります。
2問目では現行機器の課題を洗い出し、3問目で新しい設備に求める機能要件を整理します。管理組合内で役員だけで決めるのではなく、アンケートで住民の意見を募って必要な機能をまとめておくことが肝要です。
こうした事前準備により、後で「こんなはずではなかった…」という行き違いを防ぎ、メーカーや業者にも共通の仕様要求を提示できます。
最後に4問目で工事日程やサポートへの要望を自由記述で聞きます。インターホン交換など各戸入室工事が伴う場合、「全戸一斉交換時には各住戸の在宅確認が必要になるため、別途日程調整のアンケートを行うと良い」旨を管理会社から助言されるケースもあります。アンケート結果は理事会で共有し、機種選定や施工業者選定の資料とします。こうして住民ニーズを踏まえた上で総会に提案することで、スムーズな決議・承認が得られやすくなるでしょう。
3. 防災対策・備蓄に関する住民意見収集テンプレート
地震や台風など災害への備えについて、マンション全体の防災体制や各家庭の準備状況を把握し、今後の対策に活かすためのアンケートです。近年、防災への関心は高まっており、マンションでも備蓄品の整備や安否確認方法の検討が重要となっています。
質問例は以下です。
- お住まいのマンションで、防災マニュアルや防災備蓄品の用意はありますか?(単一選択)
- a. 防災マニュアル・備蓄品ともに整備されている
- b. どちらか一方はあるが、もう一方はない
- c. どちらも無い/わからない
- マンションとして備蓄すべき物資や設備で不足していると感じるものはありますか?(複数選択可)
- 例:飲料水/非常食/簡易トイレ/発電機・蓄電池/救助工具(ジャッキ・バール等)/医薬品/特に思いつかない など
- 例:飲料水/非常食/簡易トイレ/発電機・蓄電池/救助工具(ジャッキ・バール等)/医薬品/特に思いつかない など
- 各ご家庭で備蓄している非常用品はどのくらいの量ですか?(単一選択)
- a. 3日分程度(最低限)
- b. 1週間程度
- c. 2週間以上備蓄している
- d. ほとんど備蓄していない
- 災害時に不安に感じる点や、マンションで強化してほしい防災対策があればお聞かせください。(自由記述)
- (記入例:安否確認の方法を決めておきたい、防災訓練に参加したいが平日昼間は難しい など)
1問目ではマンション全体の現状把握を尋ねます。例えば「お住まいのマンションに防災備蓄品(救助用品、発電機、食料、医療品、災害用トイレなど)はありますか?」といった質問は、国の調査でも用いられています。これに対する回答で、備蓄品未整備であれば組合として検討を促すべきです。
2問目は備蓄の中身について不足を感じるものを選んでもらいます。「非常用トイレがない」「発電設備が欲しい」など具体的要望が見えてくるでしょう。
3問目では各家庭の備蓄日数を自己申告してもらい、自助の備え状況を把握します。「ほとんど備蓄していない」が多ければ、防災セミナーの開催や啓発が必要かもしれません。
4問目の自由記述では、防災に関する漠然とした不安や要望を受け付けます。高層階なら「停電時の給水が心配」、高齢世帯なら「車椅子避難の経路を確認したい」など個々の状況に根差した声が出てくるはずです。集まった意見をもとに、防災委員会の設置や備蓄計画の見直し、避難訓練の企画など具体策につなげましょう。マンションごとに事情は異なるため、自治体が公表している「マンション防災マニュアル作成の手引き」等も参照しつつ、適切な防災対策を講じることが大切です。
4. 総会や理事会運営に関する満足度調査テンプレート
マンション管理組合の総会運営や理事会の活動について、区分所有者(組合員)の満足度や意見を把握するアンケートです。組合運営への信頼感を高め、課題を洗い出すために有効で、いわばマンション版の「顧客満足度調査」と言えます。
質問例は以下のとおりです。
- 理事会の運営全般にどの程度満足していますか?(5段階評価)
- 5:非常に満足 4:満足 3:どちらとも言えない 2:やや不満 1:不満
- 5:非常に満足 4:満足 3:どちらとも言えない 2:やや不満 1:不満
- 総会の議案説明は分かりやすく、適切だと思いますか?(5段階評価)
- 5:十分分かりやすい …(以下同上)… 1:全く分かりにくい
- 5:十分分かりやすい …(以下同上)… 1:全く分かりにくい
- 管理会社や管理員の対応について評価をお聞かせください。(5段階評価)
- 5:とても満足 …(以下同上)… 1:不満で改善を望む
- 5:とても満足 …(以下同上)… 1:不満で改善を望む
- 組合活動(イベントや防災訓練など)の実施頻度・内容には満足していますか?(5段階評価)
- 5:大変満足 … 1:全く満足していない/興味がない
- 5:大変満足 … 1:全く満足していない/興味がない
- 管理組合や理事会に対するご意見・ご要望があれば自由にお書きください。(自由記述)
質問1~4は主要項目ごとに満足度を数値化する形式です。具体的な設問内容は各マンションの状況に応じて調整しますが、例として「理事会主催イベントに関する質問7項目」「理事会活動全般について10項目」「マンション生活全般について11項目」にわたり5段階評価で尋ねるケースもあります。
評価対象としては「理事会の頻度・議事録公開の迅速さ」「総会資料の充実度」「管理費や修繕積立金の妥当性」「ルール遵守の徹底度」「コミュニティ活動の充実度」などが考えられます。アンケート項目は組合運営のKPI(重要評価指標)とも言えるため、継続実施して推移を追うのも良いでしょう。
最後の自由記述で寄せられた具体的な意見は宝の山です。住民の声をすくい上げて即改善する姿勢を示すことで、「管理組合は居住者の満足向上に努めている」という信頼感につながります。調査結果は回収率や平均満足度を次回総会で報告したり、議事録に添付するなど見える化することが望ましいでしょう。
クラウド活用によるアンケートの効率化
従来、紙ベースで行われがちだったマンションの住民アンケートですが、最近ではクラウドサービスを活用して配布・回収・集計まで一括管理する動きが広がっています。
クラウド型アンケートシステムを利用すれば、居住者はスマートフォンやPCから手軽に回答でき、理事会側はリアルタイムで集計結果を確認できます。集計データは自動でグラフ化・レポート化されるため、結果の分析や可視化にかかる手間が大幅に軽減されます。
さらに、その分析結果を総会の説明資料にそのまま反映するといったことも容易です。たとえば、アンケート結果のグラフをスライドに貼り付けて「◯◯について◯割の住民が不安を感じています」と示せば、根拠に基づいた提案として住民の理解を得やすくなるでしょう。
クラウドアンケートの利点は他にもあります。回答の匿名性を担保しつつ重複回答を防ぐ機能、未回答者へのリマインドメール送信、自由記述のテキストマイニングによる傾向分析、といった高度な機能もサービスによっては利用できます。また紙回収では難しい回答期限の自動管理やデータの長期蓄積も可能です。
ITツールの導入ハードルが高い場合は、まず無料で使えるオンラインフォーム(Googleフォーム等)から始めても良いでしょう。重要なのは、アンケート実施後のフォローまで含めて一連のプロセスを効率化し、得られた住民の声をマンション管理に活かすサイクルを定着させることです。
まとめ
住民アンケートはマンション管理組合にとって強力な武器です。適切な目的意識を持って設問を工夫し、クラウドの力も借りながら実施すれば、合意形成の円滑化や住民満足度向上に大いに役立つでしょう。ぜひ本記事のテンプレートやポイントを参考に、次回の理事会運営に取り入れてみてください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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