ダクタイル鋳鉄管の耐用年数とマンション修繕:概要から更新判断まで
更新日:2026年02月19日(木)
ダクタイル鋳鉄管は、マンションなどの建物における重要なライフライン(上水道管など)を支える配管素材です。その耐用年数(寿命)はどのくらいあるのでしょうか? 本記事では、ダクタイル鋳鉄管の概要、使用される場所、耐用年数の目安、劣化リスクと確認方法、更新の判断基準、他素材との比較、そして長期修繕計画での位置づけまでを詳しく解説します。マンション所有者・管理者が合理的に更新時期を判断するための知識を提供します。
- 本記事のポイント
- ダクタイル鋳鉄管の特性や耐用年数の目安、他素材との違いが理解できる。
- 劣化リスクのサインや更新(交換)判断の基準がわかる。
- 長期修繕計画への位置づけや配管更新の実務的な考え方が学べる。
ダクタイル鋳鉄管とは?
ダクタイル鋳鉄管(ダクタイル鉄管)は、従来の鋳鉄管(ねずみ鋳鉄管)に替わる素材として開発された水道管です。「ダクタイル」とは英語で「延性がある」という意味で、その名の通り延性(粘り強さ)と強度が高いことが特徴の鋳鉄製の管になります。
鋳鉄に含まれる炭素(黒鉛)の形状を片状から球状に改良することで、割れにくく曲げに強い性質を持たせています。1950年代に実用化され、日本では昭和30年代以降、水道管を中心に下水道・ガス管など幅広い分野で普及しました。特に上水道の導水・送水・配水管などでは現在最も多く使われている管材で、古いねずみ鋳鉄管からの更新にも用いられています。
ダクタイル鋳鉄管の特性として、耐久性や耐震性に優れる点が挙げられます。厚みのある鋳鉄製で強度が高く、継手部も伸縮・可とう性を持つ構造のため、地盤沈下や地震時の振動にも追従しやすい設計です。また金属管の中では比較的腐食に強いことも利点で、防食被膜やライニングにより内部・外部の腐食を抑制できるようになっています。一方で重量が重いため取り扱いに注意が必要であり、埋設環境によってはポリエチレンスリーブ(防食シート)による外面防食対策が推奨されます。
マンションにおけるダクタイル鋳鉄管の使用箇所
マンション設備でダクタイル鋳鉄管が使われる主な箇所は、上水道の引き込み配管です。道路の本管から建物内の受水槽や増圧ポンプまで水を導く給水管として、比較的大口径の配管にダクタイル鋳鉄管が採用されることがあります。特に1970年代以降に建設されたマンションでは、従来のねずみ鋳鉄管に替わってダクタイル鋳鉄管が敷設されているケースが多く見られます。また、敷地内の幹線給水管(団地など複数棟がある物件で各棟に水を分配する配管)や、消火用の配管など、地中に埋設されて長距離にわたる配管にも耐久性の高いダクタイル鋳鉄管が用いられることがあります。
一方、建物内部の細径の給水・給湯管や排水管には、ダクタイル鋳鉄管ではなく鋼鉄管(亜鉛メッキ鋼管)やステンレス鋼管、塩ビ管などが使われるのが一般的です。ダクタイル鋳鉄管は主に地中に埋設される比較的大径の幹線向けであり、建物内の配管は口径や施工性の面から別の素材が選択されます。そのため、敷地内埋設の給水本管や古い鋳鉄管から更新されたダクタイル鋳鉄管といった「見えない部分」の配管がどのような状態か、長期的に維持管理していく必要があります。
ダクタイル鋳鉄管の耐用年数の目安
ダクタイル鋳鉄管の耐用年数(使用可能な期間)は、設置環境や防食対策によって大きく変動します。会計上は水道管路の法定耐用年数は40年と定められていますが、これは減価償却の基準に過ぎず、実際の使用可能期間を示すものではありません。実際には40年を経過したからといって直ちに破損・漏水するわけではなく、適切な環境下ではさらに長期間使用できることが各種調査で確認されています。
厚生労働省のガイドラインでも、配管の種別ごとに以下のような実際の耐用年数の目安が示されています。
ねずみ鋳鉄管(古い普通鋳鉄管): 約40~50年程度
鋼管(鉄管): 約40~70年程度(防食ライニングの有無等で差異)
ダクタイル鋳鉄管(防食対策なし): 約40~80年程度
ダクタイル鋳鉄管(耐震継手・防食対策あり): 約60~100年程度
このように、ダクタイル鋳鉄管は従来の鋳鉄管よりも長寿命であり、耐震性や防錆性能を備えた製品では最大で100年程度の使用も期待できるとされています。もちろん、個々の配管が置かれた環境や維持管理状況によって寿命は前後します。特に海岸埋立地や酸性土壌など腐食環境が厳しい場所では耐用年数が短くなりやすく、一方で良好な土壌環境下では目安より長持ちするケースもあります。また、旧式のねずみ鋳鉄管については経年劣化による脆化が進み、製造後50年以上経過した管では漏水・破裂のリスクが高まるため、多くの自治体で計画的な更新が進められています。
劣化のリスクと配管状態の確認方法
ダクタイル鋳鉄管も長期間使用する中で徐々に劣化(老朽化)が進行します。主な劣化要因は腐食と機械的ストレスです。外面は土壌中の酸素や水分、酸性度、土中電流などの影響で腐食(サビ)が発生し、金属部が徐々に減肉していきます。特に外面防食の塗装や被覆が損傷している箇所では局所的に腐食が進みやすくなります。内面については上水道用の管ではセメントモルタルライニングが施されているため水による腐食は抑えられていますが、ライニングのひび割れや剥離があればその部分からサビが発生する可能性があります。また、継手部など構造上厚みや強度の弱い部分は、地震や地盤沈下などによる物理的な応力で破損しやすく、経年でゴム輪やボルトが劣化すると耐震性も低下します。
このような劣化リスクを把握するために、マンション管理者は定期的な配管の点検を心がけることが重要です。埋設された給水本管は直接目視しづらいですが、例えば配管からの漏水兆候(地面の湿潤や陥没、漏水音)、水圧の低下、水質の異常(赤水や濁り)などのサインがないか日常的に注意します。建物内の他の給水管で赤水が発生している場合は、原因が鋳鉄系の配管腐食による可能性もあるため、併せて確認します。
専門的な調査としては、埋設管を一部掘り出して外観や肉厚を調査する方法があります。また近年では、配管内にセンサーを挿入して漏水の兆候や腐食の進行を検知する技術、音波や電磁波を用いた非破壊検査技術も研究・実用化されつつあります。高額ではありますが、重要な配管について劣化診断を実施し、更新の適切なタイミングを判断する参考にすることも可能になってきています。
更新(交換)の判断基準
ダクタイル鋳鉄管を含む給水管の更新時期を判断する際には、配管の経過年数と現在の劣化状況、そして信頼性要求(水漏れ許容度や耐震性要求)を総合的に考慮します。具体的な判断基準として、以下のポイントが挙げられます。
経過年数による判断
前述の耐用年数の目安を参考に、配管が製造後ある程度の年数(例えば50~60年程度)を経過している場合は更新を計画します。特に1950~60年代に布設された古い鋳鉄管や、1970年代前半までの非耐震継手のダクタイル鋳鉄管は、経年劣化や耐震性の不足から優先的な交換検討対象となります。
劣化・障害の発生状況
配管からの漏水事故が発生した、あるいは点検で肉厚の著しい減少や腐食孔が確認された場合は、局部補修ではなく予防的な全体更新を検討します。漏水が頻発している配管や、断水トラブルの履歴がある場合も早めの更新判断が必要です。
環境要因
配管が埋設されている土壌が腐食性の高い環境(例: 埋立地や湿地帯、海岸沿い)にある場合、標準より短い周期での交換が合理的です。逆に良好な地盤環境であれば多少延命も可能ですが、それでも経年に伴うリスク増大は避けられないため、過信は禁物です。
耐震・防災上の要求
大地震時でも断水リスクを最小化する必要がある重要な配管(基幹管路や高層マンションの水道幹線など)は、耐震継手付きの新しいダクタイル鋳鉄管や他の耐震性の高い素材への更新が推奨されます。旧式配管をそのまま使い続けることは、災害時の被害拡大につながるためです。
他工事との連動
大規模修繕工事や敷地内の掘削工事(外構工事など)を行うタイミングで、老朽配管を同時に更新することでコスト効率よく施工できます。計画的に他の工事と合わせて配管更新を実施することも検討しましょう。
以上のような観点から、配管更新の優先度と時期を判断します。マンションの場合、管理組合や所有者だけで判断が難しいケースも多いため、設備コンサルタントや専門業者の診断を仰ぐことも有効です。
他素材の配管との比較
建物の配管に使われる主な素材ごとの特性と耐用年数の一般的な目安を比較してみましょう。
ダクタイル鋳鉄管
金属管の中では耐久性・耐震性・耐腐食性に優れ、大口径配管向き。寿命は60年以上~最大100年程度と長い。ただし重量があり施工には重機を要する。主に水道本管など地中幹線に使用。
ねずみ鋳鉄管(普通鋳鉄管)
昔の水道管素材で、硬く脆い。延性が低く衝撃や振動で割れやすいため耐震性に難がある。寿命は40年前後で、現在はダクタイル鋳鉄管等への更新が進められている。
鋼管(ライニング鋼管など)
炭素鋼製の管。強度・加工性に優れるが、防錆処理をしないと錆びやすい。内面に樹脂やモルタルのライニングを施したものが上水道や消防配管で使われる。耐用年数は40~60年程度だが、腐食環境次第ではそれより短くなる。
硬質塩化ビニル管(VP管)
プラスチック製の管で、錆びない軽量な素材。一般住宅の給水管や建物排水管に広く使われ、コストが安い。耐用年数は30~40年程度。経年で硬化して割れやすくなることや、寒冷地で凍結に弱い点に注意。地震時は継手部分から抜けやすいが、耐衝撃性を高めた改良品もある。
ポリエチレン管(PE管)
柔軟性の高いプラスチック管で、近年普及が進む。腐食せず、曲げられるため地震にも強い。主に戸建てや小規模配管で使用されるが、大口径の配水本管にも適用が始まっている。耐用年数は50年以上とされ、試験的には100年以上の耐久性も期待されている。
ステンレス鋼管
錆びにくいステンレス製の管。中小径の給水・給湯管としてマンションでも1990年代以降増えている。耐久性は高く50年以上もち得るが、塩素濃度が高い水では腐食割れのリスクがある。柔軟なフレキシブル管もあり、耐震性も良好。価格は高め。
以上の比較からも、ダクタイル鋳鉄管は長寿命かつ耐久性の高い素材であることが分かります。ただし、万能というわけではなく、腐食環境への対策(スリーブ装着など)や継手部の耐震仕様の有無によってパフォーマンスが変わる点には留意が必要です。マンション管理では、他素材の配管(例えば屋内の亜鉛メッキ鋼管や排水の鋳鉄管など)も含め、適材適所で使われている配管それぞれの寿命を把握し、総合的に維持管理を行っていく姿勢が大切です。
長期修繕計画における位置づけ
マンションの長期修繕計画を策定する上でも、配管類の更新時期や費用は重要な検討項目です。一般的に、専有部を除く共用部分の給排水管は築30~40年ほどで更新時期を迎えるとされ、多くのマンションでは2回目の大規模修繕(築25~30年前後)にあわせて給水管更新工事が計画されます。ただしこれは主に屋内の亜鉛メッキ鋼管や銅管など腐食しやすい管材の場合であり、ダクタイル鋳鉄管のように耐用年数が長い管については、より長期のスパンで計画を立てる必要があります。
敷地内埋設のダクタイル鋳鉄製の給水本管については、長期修繕計画の中で想定耐用年数(例えば60年など)を見据え、他の設備更新とバランスを取りながら計画に組み込むことが望ましいでしょう。例えば築60年近くになる時期に更新工事を予定して修繕積立金を手当てしておく、あるいは築40年時点で劣化調査を実施して残存寿命を評価し、その結果に基づき更新時期を修正するといった対応が考えられます。重要なのは、配管は目に見えにくいため計画から漏れがちですが、漏水事故が起これば居住者の生活へ直結する深刻な影響を及ぼすため、必ず計画的な更新を視野に入れておくことです。
また、水道事業者(自治体)との連携も長期的には必要です。建物を給水する引込管は、水道メーターまでが事業者管理、そこから先が建物管理というケースが多いですが、古い引込管の更新工事を実施する際には事前に水道局と調整し、断水時間の確保や工事手順を協議する必要があります。自治体によっては老朽管更新の助成制度や技術支援を行っている場合もありますので、情報収集に努めましょう。
まとめ
ダクタイル鋳鉄管はマンションの給水インフラを長期にわたり支える信頼性の高い配管素材です。その耐用年数は環境条件によりますが、おおむね60年から場合によっては100年近くに及ぶ長寿命が期待できます。一方で、経年による劣化や想定外の環境要因で寿命が短くなるリスクもゼロではありません。マンション所有者・管理者としては、ダクタイル鋳鉄管を含む様々な配管の特徴と寿命を正しく理解し、定期的な点検と計画的な更新を心掛けることが重要です。
本記事で紹介した情報や目安を参考に、自身のマンションの配管状況を把握し、必要に応じて専門家の意見も取り入れながら、長期修繕計画に反映していきましょう。そうすることで、ライフラインである給水設備の信頼性を維持し、将来にわたって安心・安全なマンション運営を実現することができます。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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