マンションの給排水管の専有部分の交換費用は?寿命や工事の進め方を解説
2024/09/03
マンションの給排水管は、日常生活に欠かせない重要な設備です。しかし、長年の使用により劣化が進むと、漏水や詰まりなどのトラブルが発生します。専有部分における給排水管の交換は、原則は区分所有者が費用を負担して行うことになっていますが、マンション管理組合全体として共用部分、専有部分どちらも交換するケースもあります。 この記事では、マンションの専有部の給排水管について、交換費用、給排水管の寿命、リニューアル工事の種類、工事の進め方などについて解説します。これらの情報が少しでも皆様のお役に立つと幸いです。
目次
マンションの給排水管、専有部分の交換費用
給排水管は時間の経過とともに劣化するため、定期的な点検と交換が必要です。
専有部分の給水/給湯管、排水管の交換費用は、様々な要因によって変わります。重要ポイントは以下の通りとなります。
交換する配管の位置
露出配管と埋設配管では施工量、それに伴う費用が大きく変わります。埋設配管の場合、一部の壁や床を解体、内装含めて復旧する必要があるため、費用がかさみます。
交換する配管の対象範囲
専有部分のどの範囲まで交換するかによって費用が大きく変わります。例えば、キッチンやバスルームだけなのか、全体なのかで異なります。
交換する配管の種類
給水/給湯管と排水管では、使用材料の原価や施工難易度が異なるため、費用が大きく変わります。給水/給湯管には銅管やポリエチレン管、排水管には硬質塩化ビニル管(塩ビ管)や鋳鉄管が使用されることが多いです。
工事会社
適切な工事会社に頼まないと高額になる傾向があります。例えば、給排水管の工事を専業としていないゼネコンや大規模修繕の工事会社にお願いした場合は、関与する会社が必要以上に増え(いわゆる「多重下請け」、「一式丸投げ」)、高額になってしまいます。一方で、地元の小規模な会社にお願いした場合、仮に費用を抑えることができたとしても、信頼性(それに伴う組合内での合意形成のしやすさ)、工事品質/工事中の応対品質、アフターサービスに注意が必要となるケースがあります。
マンションの専有部分の給排水管の交換費用は、一般的には数十万円から100万円程度となります。例えば、キッチンやバスルームの部分的な交換であれば20万円~50万円、全体の配管を交換する場合は50万円~100万円程度となることが多いです。
少なくない費用が必要となりますが、給排水管からの漏水問題は、ご自宅の給水や排水におけるご不便のみならず、お隣や下階のご住民とトラブルに発展するリスクをはらんでいるものであるため、適切なタイミングで実施されることをおすすめいたします。
マンションの給排水管の寿命
法定耐用年数(減価償却期間の目安)においては、給水管・排水管ともに建物付属設備に分類され、15年と定められています。
実際には、法定耐用年数よりも長く利用されるケースが多く、2~3回目のマンションの大規模修繕や、その前後のタイミング(築25~40年目)で改修工事をするケースが多いです。
給水管/排水管リニューアル工事の種類
給水管/排水管工事の内容は「更新工事(≒ 取替え)」と「更生工事(≒ 洗浄、保護による延命)」に分けられます。
更新工事
古くなった給水管/排水管を取り外して廃棄し、代わりに新しい給水管/排水管を取り付ける取替え工事です。
更生工事(ライニング)
給水管/排水管の内部を洗浄し、防錆処理などを行う工事です。
具体的には、給水管/排水管内部の錆/油などを洗浄したうえで、特殊な樹脂をコーティングし、錆/汚れを予防します。
更生工事は、専門用語で「ライニング」と呼ばれます。
更新工事と比べて、工事の期間が短い、工事費用が安い、騒音/振動/ほこりなどの発生が少ないなどのメリットがあります。また、より幅広い現場に対応可能です。
一方、更新工事とは異なり、あくまで劣化した管の延命措置で、更生工事の際に配管に負荷を与えてしまうという問題があります。また、更生工事は、既設の配管内部を研磨作業で削るため、経年劣化によって配管の厚みが薄くなっているなど、配管の劣化状態によっては更生工事を採用できないケースがあるため、事前調査をしっかり行う必要があります。
老朽化がある程度進行した配管の場合は、更生工事で延命してもすぐに不具合が発生してしまい、結果として更新工事を行うということになるため、最終的により多くの手間とコストがかかってしまうケースもあります。
なお、更生工事は確立された工法であり、以前から改良が繰り返されて、最近では給水管・排水管内に樹脂をコーティングする際に、ドライヤーを入れて固めているので健康被害等のリスクはほぼないとされています。
給排水管リニューアル工事の進め方
自己負担で行うか、管理組合で行うか
マンションの専有部分の給排水管の改修工事を進める際には、まず区分所有者が自己負担で行うか、管理組合を通じて行うかを決定する必要があります。専有部分の給排水管は個人の所有物となるため、基本的には自己負担での交換が求められます。しかし、マンション全体の給排水管リニューアルが必要な場合、一斉にやることで費用削減したい場合(数十%下がることが期待できます)、共用部分に関わる工事が発生する場合は、管理組合を通じて行うケースがあります。
国土交通省が作成したマンション標準管理規約では、「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる」とされています。原則は、専有部分の給排水管工事については、区分所有者が費用を負担して実施すべきものとなっているものの、あらかじめ長期修繕計画に専有部分の給排水管工事について記載し、管理規約で、専有部分の工事費用についても修繕積立金から拠出することを規定しておくことで、共有部分、専有部分どちらの給排水管についても管理組合全体として交換工事を実施できると定められています。
工事会社に依頼する際に注意すべきポイント
以下のポイントを押さえておくことが重要です。
【相見積もりを行うこと】
1社の随意契約となると、競争環境の不足などを背景に高額となってしまう傾向があります。
【工事会社の経営状況/施工実績の確認】
工事後にも品質保証/アフターサービスを鑑みると『やって終わり』というわけにはいかず、事業の継続性が期待できる会社を選ぶ必要があります。また、工事品質/工事中の応対品質の担保のために、お願いしたい工事の施工実績(その中でも元請実績)がしっかりある会社を選ぶ必要があります。
【施工範囲、工事内容の確認】
相見積もりに参加している各社の施工範囲、更生工事か更新工事か、使用材料、保証内容/期間、別途費用の存在、工事期間/断水期間の長さなどを確認する必要があります。
数十頁ある見積書、施工範囲を示す図、品質保証などの付帯条件を示す資料を適切に確認しないと、金額は一番安いが、施工範囲が狭く、使用材料のグレードが低く、保証内容/期間の条件が不利であり、工事品質/工事中の応対品質は芳しくなく、かつ別途費用を鑑みると実は高い会社を選んでしまうということが起こり得ます。
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この記事の著者
鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
この記事の監修者
別所 毅謙
マンションの修繕/管理コンサルタント歴≒20年、大規模修繕など多くの修繕工事に精通。管理運営方面にも精通しており、アドバイス実績豊富。 過去に関わった管理組合数は2千、世帯数は8万を超える。 メディア掲載「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、「NIKKEI NEWS NEXT」、「首都圏情報ネタドリ!(NHK)」、「めざまし8」、「スーパーJチャンネル」。
二級建築士
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