排水管更生工事の費用は？、耐用年数、工法、発注時のポイントなどを解説

排水管更生工事（ライニング工事）とは

排水管更生工事（ライニング工事）は、既存の排水管の内部に新たなライニング材（樹脂）を施すことで、排水管の機能を回復させる技術です。排水管の交換を伴わずに行えるため、建物の構造を大きく改変することなく、コストや時間を抑えながら排水管の寿命を延ばすことが可能となります。

一方、更新工事は既存の排水管を完全に除去し、新しい排水管を設置する方法です。更新工事は、排水管が著しく劣化している場合や、更生工事では対応できない場合に選択されることが多いです。ただし、建物の構造を一部解体する必要があるため、工事期間が長くなり、費用も高くなる傾向があります。

排水管更生工事のメリットは低コスト、低負荷／短期間です。既存排水管を取り外す必要がないため、ご住民に与える悪影響が少ないです。また、排水管の交換に伴う廃棄物の量が抑えられるため、環境負荷を軽減できます。

一方で、排水管更生工事にはデメリットもあります。例えば、既存の排水管が著しく損傷している場合、更生工事では十分な効果が得られないことがあります。また、更生材の選定や施工方法に専門的な知識と技術が求められるため、信頼できる工事会社に任せないと、施工時／施工後に各種問題が発生するリスクがあります。

更生工事は更新工事と比較して、コストなど各種パフォーマンスに優れますが、適用範囲が限られるとういう問題があります。そのため、排水管の状態を適切に調査診断し、最適な工法（更生工事か更新工事か、部位によって分けるかなど）を検討することが重要となります。

排水管更生工事の費用

工事の範囲／規模や工法、配管位置、使用材料によって大きく異なりますが、
マンションの戸あたり費用は一般的には10万円～となります。

排水管更生工事の費用は主に以下の要素によって決まります。

１．工事の範囲／規模

排水管更生工事を行う範囲が「共用部だけなのか専有部も含むのか」、建物の構造／規模、排水管の長さ／直径、配管配置、内装などなどによって費用は非常に大きく変動します。

２．工法／使用材料の選択

排水管更生工事には、塗布ライニングや樹脂ライニングなど、いくつかの工法があります。それぞれの工法には特有のプロセスと使用材料があり、これが費用に影響します。例えば、樹脂ライニングは耐久性に優れていますが、材料費や施工技術量に高いコストがかかることが多いです。

３．施工期間と人件費

工事期間が長引くと、それに伴って人件費も増加します。特に、建物使用を制限する場合、作業時間を限定する場合、夜間作業が必要な場合は、追加費用が発生することがあります。

４．付帯工事

排水管更生工事には、周辺設備の補修や一時的な仮設設備の設置が必要となることがあります。これらの付帯工事も費用に含まれます。例えば、工事中に仮設の排水設備を設置する場合、その費用が追加されることになります。

個別性が高い工事となるため、複数の工事会社から提案をうけ、比較選定することが重要となります。また比較選定においては、更生工事の範囲／工法、使用材料、保証などの詳細を確認のうえで適切に合意形成を図る必要があります。

排水管の寿命

排水管の寿命は、使用されている素材や環境条件、メンテナンスの頻度によって大きく変わります。

一つの目安として、法定耐用年数（減価償却期間の目安）がありますが、給水管・排水管ともに建物付属設備に分類され、15年と定められています。

一般的に、金属製の排水管（例えば鋳鉄や銅）は、20〜30年の寿命があるとされています。プラスチック製の排水管（例えばポリ塩化ビニルやポリエチレン）は、耐久性が高く、50年程度使用できることがあります。しかし、これらの寿命はあくまで目安であり、実際には使用状況や設置環境によって左右されることが多いです。

※排水管が「耐火二層管」の場合は、改修が不要となる場合が多いです。耐火二層管の内管は排水用硬質塩化ビニル管（塩ビ管）を使用しているため、発錆がなく、固形物の沈着も少なく安定した排水性能を保つことができるという特徴があります。また、酸やアルカリなどの排水に浸食されにくい耐薬品性や遮音性、耐震性にも優れているため、マンションやホテル、オフィスビルなど多くの建物で耐火二層管が使用されています。

排水管更生工事の工法

排水管更生工事の工法には、主に「塗布ライニング」と「樹脂ライニング」の2種類があります。それぞれの工法に特徴があり、建物の状況や排水管の状態に応じて最適な方法が選択されます。

その１：塗布ライニング

「塗布ライニング」は、排水管の内壁に特殊なコーティング剤を塗布する方法です。この工法は、既存の排水管の内側に新しい保護層を形成し、腐食や劣化を防ぐ効果があります。塗布ライニングの大きなメリットは、工事期間が比較的短く、コストが抑えられる点です。特に軽度の劣化が見られる排水管に対しては、効率的かつ効果的な方法となります。一方、塗布ライニングの寿命は10年程度とされているため、延命したに過ぎず10年経過後には再度改修を検討しなければなりません。また、深刻な損傷（管に穴が開いている）がある場合には、他の工法が必要となる場合があります。

その２：樹脂ライニング

 「樹脂ライニング」は、排水管の内側に樹脂を注入し、固化させることで新しい内壁を形成する方法です。この工法は、排水管の耐久性を大幅に向上させる効果がある画期的な方法です。樹脂の種類は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などがあり、FRP（繊維強化プラスチック）も利用されます。樹脂ライニングのメリットは、既存の排水管の形状やサイズに関係なく適用できることです。配管に穴が開いていても施工可能な更生工事のため、高圧洗浄で錆を完全に取り除くことができます（※継手部分の破損など、管の状態によっては施工できない場合があります）。また、樹脂の種類や硬化方法を選ぶことで、様々な環境条件や使用目的に対応することが可能な工法です。寿命は40年程度と長く、新たな管に入れ替える更新工事と同等の耐久性が得られますが、塗布ライニングと比べると工事期間が長く、コストも高くなる傾向があります。

どちらの工法も、建物の居住者に対する影響を最小限に抑えることができる点が評価されています。工事中の騒音や振動が少なく、建物を取り壊す部分が最小限で済むため、居住者の生活に大きな支障をきたすことはありません。

マンションの排水管更生工事を工事会社に発注するときのポイント

その１：工事の種類を確認する

排水管の更生工事には主に「塗布ライニング」と「樹脂ライニング」の2つの方法があります。それぞれの工法には特長と適用条件があり、どちらがマンションの現状に最適かを見極めるためには、業者から詳しく説明を受けることが必要です。また、工法によって工事期間や費用が異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。

その２：複数の工事会社から見積取得する

マンションの排水管更生工事は多額の費用がかかるため、複数の工事会社からリニューアル工事の見積取得をする必要があります。単に総額だけを見るのではなく、工事範囲、使用材料、工期、保証内容などの違いをしっかり確認しましょう。サービス内容、信頼性、そして現場代理人の資質も含めて総合的に判断することが重要となります。