キュービクル PCB 検査:マンション設備のPCB問題と対応ガイド
更新日:2026年02月19日(木)
ポリ塩化ビフェニル(PCB)はかつて電気機器の絶縁油などに広く使われましたが、強い毒性から製造・使用が禁止されました。近年、このPCBを含む古い変圧器やコンデンサー等がマンションのキュービクル内に残存している可能性が注目されており、法律で定められた処分期限が迫っています。 マンション管理者・所有者は、自身の設備にPCB汚染がないか「キュービクルPCB検査」を行い、適切な対応を取ることが社会的にも求められています。
- 本記事のポイント
- PCB汚染のリスクと検査の必要性、法令上の対応義務が理解できる。
- PCB検査・処分の流れや費用相場、補助制度の活用方法がわかる。
- マンション設備管理における安全対策と長期修繕計画への組み込み方を学べる。
キュービクルPCB問題の背景と検査の必要性
PCBとは何か?
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は人工合成の油状化合物で、電気絶縁性や耐熱性に優れていたため、変圧器・コンデンサー・安定器などの電気機器で絶縁油やコンデンサの誘電体として幅広く使用されました。しかしPCBは難分解性で環境中に蓄積しやすく、毒性も強いことが判明し、1968年のカネミ油症事件(米ぬか油へのPCB混入による大規模中毒事件)を契機に問題視されました。
日本では1972年(昭和47年)にPCBの製造が中止され、その後PCBの新規使用も禁止されています。現在ではPCBを含む機器や廃棄物は「特別管理産業廃棄物」として厳格に管理・処分しなければなりません。
なぜ今PCB検査が必要なのか?
PCB使用の停止から数十年が経過しましたが、古い電気設備には依然としてPCBを含有した機器が残存している可能性があります。特にマンションなどの高圧受電設備(キュービクル)に設置された昭和~平成初期製造の変圧器・コンデンサーは、絶縁油がPCBで汚染されている可能性があります。これらは環境上非常に有害であるため、国はPCB特別措置法によって全てのPCB廃棄物を安全に処分することを事業者の義務とし、処分の期限を令和9年(2027年)3月31日までと定めました。この期限を過ぎると事実上処理ができなくなる(処理業者の受け入れ停止)うえ、法律違反となり行政指導や罰則の対象ともなるため、いままさにPCB検査と対策が急務なのです。
なお、こうしたPCB含有機器の処理期限問題は一般に「キュービクル2027年問題」とも呼ばれ、全国的にマンション・ビル管理者への注意喚起が行われています。マンションの管理組合やオーナーは「自分の所には関係ない」と思わず、過去に設置された古い設備を総点検し、PCB汚染の有無を確認する必要があります。
対象となる設備と判定基準(変圧器・コンデンサーなど)
マンションで注意すべきPCB対象機器
マンションの電気設備でPCB汚染の可能性がある主な機器には、以下のようなものがあります。
受変電設備内の変圧器(トランス)
高圧から低圧に電圧を変換する装置。古い油入変圧器の絶縁油にPCBが含まれている可能性があります。
力率改善用コンデンサー(進相コンデンサー)
受電設備や分電盤に設置され、電力の力率調整に使われる装置。こちらも内部の油にPCBを含む製品が存在しました。
蛍光灯など照明用安定器
照明器具内の安定器(バラスト)に小型コンデンサーが内蔵されており、1950~60年代製造のものには微量PCBが含浸されたものがあります。特に昭和32年~47年(1957~1972年)頃までに製造された安定器はPCB使用の可能性が高く、古いマンションの共用部照明などに残っていれば交換が推奨されます。
これらの他にも、マンションではエレベーターの駆動装置や制御盤内のコンデンサー、非常用発電機・モーターに附属するコンデンサーなどもチェック対象です。要は「1970~80年代に製造された油入り電気機器」は広く疑いの目を持つ必要があります。
判定基準:製造年式とPCB汚染の可能性
設備にPCBが含まれるかどうかは外見からは判断が難しいため、製造年と型式情報が重要な手がかりになります。国のガイドラインでは、以下の製造時期の機器にPCB汚染の可能性があると示されています。
変圧器・リアクトル類(絶縁油交換が可能な機器)
1993年(平成5年)以前に製造されたものは、絶縁油に低濃度PCBが混入している可能性があります。
コンデンサー類(密封型の機器)
1990年(平成2年)以前に製造されたものは、絶縁油に低濃度PCBが含まれる可能性があります。
高濃度PCB機器との違い
なお、1972年以前に国内製造された古い変圧器・コンデンサーには、絶縁油として高濃度のPCBが使用されたものがあります。こうした機器(いわゆる高濃度PCB使用機器)は処分期限が既に2023年3月で終了しており、現時点で所有していると重大な法令違反です。もしマンション内に昭和40年代以前の非常に古い受電設備が残存している場合、至急専門業者に相談して適切な措置を取る必要があります。
PCB検査の流れと必要な届出
検査・処理の全体フロー
キュービクル内機器のPCB有無を確認し、必要なら処理するまでの基本的な流れは次のとおりです。
機器情報の調査
まず設備の台帳や銘板から機器の製造年・メーカー・型式を調べ、前述の判定基準に照らしてPCBの疑いがある機器をリストアップします。マンションの場合、高圧受電設備の変圧器・コンデンサーのほか、受電設備周辺のリアクトルや分電盤内コンデンサーまで漏れなく確認します。
専門業者による採油・分析
PCB汚染の疑いがある変圧器などについては、電気主任技術者や専門業者に依頼して絶縁油サンプルを採取し、分析機関でPCB濃度を測定します。使用中の機器に穴あけして採油する作業は危険を伴うため必ず停電時に資格者が実施します。また、密閉型のコンデンサーや安定器は穿孔すると使用不能になるため、稼働中のものは分析せず廃棄時に処分場で分析する方法もあります(その場合廃棄前に汚染の疑いありと届出が必要です)。
分析結果の判定
分析の結果、PCB濃度が0.5mg/kg(=0.00005%)を超える場合は「PCB汚染あり」と判定されます。検出されなかった場合(不検出)は当該機器はPCB対象外となり、この証明書を保管することで届出は不要です(※証明書は将来まで保管推奨)。一方、汚染ありと判定された機器は低濃度PCB廃棄物として法に沿った処理手続きを踏む必要があります。
行政への届出
PCBを含む機器が判明したら、まず都道府県知事等への届出を行います。これはPCB特措法に基づく「PCB廃棄物の保管状況等届出」で、PCB含有機器の種類・数量や保管場所などを報告するものです。使用中の自家用電気工作物(受電設備)だった機器を廃止した場合は、電気事業法に基づき経済産業省産業保安監督部への届出(使用中のPCB含有電気工作物廃止届等)も必要になります。届出書の様式は各都道府県HP等で入手できます。届出後は、処分が完了するまで毎年状況を更新して報告する義務があります。
処分・無害化処理の実施
届出を終えたら、速やかに処理業者へ処分を委託します。高濃度PCB機器の場合は国の中間貯蔵事業(JESCO)で処理しますが、マンションのキュービクルで問題となる低濃度PCB機器は環境大臣認定の無害化処理施設または都道府県許可業者(民間)に委託して処理します。処理委託契約を結び、専門の収集運搬業者による密封容器での運搬を経て、機器は分解・PCBの無害化処理がなされます。処理の完了後、処理業者から交付される処分終了報告書をもって、行政への最終届出(処分終了届)を提出します。これで一連の手続きが完了です。
必要な届出と期限
上記フローの中でも特に届出について整理すると、PCB含有機器を確認した段階で「PCB特措法に基づく届出」が必要となり、その後も毎年度6月末まで保管・処分状況の報告を継続する義務があります。また使用中の機器を廃止した場合には電気事業法関係の届出が速やかに必要です。これら届出を怠ると罰則の対象となりますので注意してください。なお、PCB廃棄物は他者への譲渡・譲受けが原則禁止されています(売却や中古流通は不可)。必ず許可を持つ処理業者に委託し、自ら処分せずに保管し続けることもないようにしましょう。
費用相場と活用できる補助制度
PCB検査・処理にかかる費用相場
PCB汚染の調査および機器の処理にはまとまった費用がかかります。概算の相場感としては、分析費用が1台あたり数万円台(絶縁油1検体あたり約5万~15万円程度)、処分費用(収集運搬+無害化処理)が機器1台あたり数十万円~100万円以上、さらに機器交換費用(新しい変圧器やコンデンサーへの更新工事費)は数百万円規模になることもあります。このように総費用は数十万から数百万円単位になり得るため、計画的な資金手当てが必要です。マンション管理組合の場合、長期修繕計画や修繕積立金の中でこうした設備更新費用を織り込んでいくことが望ましいでしょう。
国の補助制度(PCB処理支援策)
費用負担を軽減するため、国および自治体による補助・助成制度も活用できます。環境省は近年、PCB汚染変圧器の処理を促進し省エネ型機器への更新を支援するため「PCB廃棄物処理支援事業(脱炭素化促進事業)」を実施しています。この制度では、中小事業者等を対象に「PCB分析費用の1/10補助」および「変圧器交換費用の1/3補助(上限100万円)」が受けられる仕組みになっており、要件を満たせばマンション管理組合なども申請可能です。例えば老朽変圧器を高効率型に交換する場合、分析から処分・新設工事までを一体的に行う計画を提出すれば、国から最大100万円の補助金交付を受けられます。補助金は年度ごとに公募期間や予算枠があるため、利用を検討する場合は早めに情報収集し申請準備を進めると良いでしょう。
自治体の助成例
自治体によっては独自の助成制度を設けている場合もあります。例えば東京都ではPCB廃棄物の早期処理を図る観点から中小企業向けに処理費用補助を行った事例があり、北海道や富山県でも低濃度PCB汚染変圧器の分析・処理費用に対する助成制度が実施されています。お住まいの自治体の環境担当部署や産業廃棄物担当課のホームページを確認し、該当する補助金・助成金がないか調べてみましょう。国の補助制度と併用できる場合、負担軽減効果は大きくなります。
PCB問題を後回しにしない ― 計画修繕・専門家活用で実現するスマートな解決
計画的な更新でリスクとコストを最小化
PCB問題への対応は、マンション設備の計画的修繕の一環として捉えることが重要です。高圧受電設備(キュービクル)内の変圧器や開閉器といった機器は一般に設置後15~25年程度で更新時期を迎えるとされ、老朽化による事故リスクやエネルギー効率の低下を踏まえて長期修繕計画に組み込まれます。PCBを含む古い変圧器・コンデンサーも例外ではなく、法令上そのまま使い続けることが許されない機器ですから、適切な更新計画を立てる必要があります。単に処分するだけでなく後継機器への交換まで含めて計画し、他の大規模修繕工事(受電設備全体の更新や照明のLED化等)とタイミングを合わせることで、工事の効率化や停電影響の軽減を図ることも可能です。
「後手対応」ではなく「先手対応」を
処分期限が近づいた駆け込み期には、分析機関や処理業者の予約が混み合い、通常より時間と費用が余計にかかる懸念があります。また、仮に2027年直前になってPCB含有が判明した場合、新しい変圧器の調達に半年以上要するケースもあり、処分自体は間に合っても肝心の電気設備が復旧できないというリスクもあります。こうした事態を避けるためにも、「いつか交換するつもり」で放置するのではなく早期に調査・意思決定を行うことが肝心です。幸い国や自治体の補助制度も現在利用可能な状態にありますので、これらを活用して計画的かつ経済的にPCB機器の交換・撤去を進めましょう。
専門家の活用と住民への説明
技術的な調査や処理手続きは専門性が高いため、信頼できる電気保安法人や廃棄物処理業者に相談するのが賢明です。見積もりを複数社から取り、工事内容や費用内訳を比較検討するとともに、補助金申請の代行実績がある業者であれば手続きを任せることもできます。マンション管理組合の場合、大規模修繕委員会等で計画を立案し、必要に応じて専門家からオーナーや居住者向けにPCB処理の必要性や安全対策について説明してもらうと良いでしょう。PCB処理は法令遵守はもちろんマンション全体の安全・環境配慮にも繋がる取り組みです。住民の理解と協力を得ながら、スマートに問題解決を図ることが求められます。
まとめ
マンションの「キュービクルPCB検査」とその後の対策は、放置すれば法令違反となりかねない重要課題です。PCBは人や環境に有害な物質であり、古い受変電設備や照明器具内に潜んでいる可能性があります。
本記事で述べたように、まずは設備の製造年や型式から疑わしい機器を洗い出し、必要に応じて専門業者による油の分析でPCB汚染の有無を確認しましょう。もしPCBを含む機器が判明した場合は、直ちに行政への届出を行い、2027年3月31日までの確実な処分に向けて計画を進める必要があります。処分の実施にあたっては費用面の検討も不可欠ですが、国や自治体の補助制度を活用することでコストを抑えることが可能です。
マンションの長期修繕計画にPCB機器の更新を組み込み、「キュービクル2027年問題」に備えたスマートな設備管理を行ってください。適切なPCB検査と計画的な対処によって、法的リスクを回避しつつ安全で安心なマンション運営を実現しましょう。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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