マンション大規模修繕高騰の背景と管理組合の対策
更新日:2026年02月19日(木)
近年、マンションの大規模修繕工事にかかる費用が予想以上に上昇しており、多くの管理組合や区分所有者が頭を悩ませています。数年前に策定した長期修繕計画と比べて見積額が大きく乖離し、現在の修繕積立金では不足するのではないかと不安の声も増えています。こうした修繕費用の高騰は一時的な現象ではなく、資材価格や人件費の上昇など建設業界全体の構造的変化が背景にあるとされています。 本記事では、マンション大規模修繕費用高騰の具体的な要因とそれが長期修繕計画・積立金計画に与える影響を整理し、管理組合としてどのように対応すべきか、費用抑制や合理化のための実践的な対策を解説します。
- 本記事のポイント
- 大規模修繕費用高騰の要因とその影響を理解できる。
- 長期修繕計画や積立金計画の見直し方法がわかる。
- 費用抑制・業者選定などの実践的な対策が明確になる。
修繕工事費用高騰の背景と要因
大規模修繕の費用がここまで上がっている主な理由として、以下のような複数の要因が重なっていることが挙げられます。
建設資材価格の急騰
近年、塗料・防水材・金属部材など建築資材の原材料価格が世界的な需給ひっ迫や物流コストの上昇などにより大幅値上がりしています。特に輸入資材は円安など為替影響も受け、数年前と同じ仕様でも材料費が跳ね上がり、「なぜこんなに高いのか」と驚く原因になっています。資材高騰により、防水塗料や足場材まで含め工事全体のコストベースが押し上げられています。
人件費の高騰と職人不足
建設業界では慢性的な人手不足と技術者高齢化が深刻です。若手職人が十分確保できず、限られた人材の奪い合いによって人件費は上昇傾向にあります。大規模修繕工事は高所作業など専門技能が要求されるため経験豊富な職人が不可欠ですが、その確保コストが年々増大し、結果として修繕費全体を大きく押し上げる要因となっています。
修繕需要の集中とインフレ影響
バブル期前後に建設された多くのマンションが築30年前後となり、一斉に大規模修繕の時期を迎えているため、施工業者への発注が集中しています。需要過多の状況では各社とも余力が少なく、価格競争が働きにくいため工事費用が高止まりしやすくなります。加えて、ウクライナ情勢による資源高やコロナ後のサプライチェーン混乱に伴う世界的インフレも建築コストを押し上げており、修繕費増大に拍車をかけています。こうした複数の要因が重なった結果、大規模修繕費用の上昇は一過性ではなく継続的な傾向となっているのが現状です。
安全対策・施工管理コストの増加
近年は労働安全基準の強化や周辺環境への配慮要求が高まり、足場の安全基準強化・防音養生の徹底・近隣対応など施工時の管理コストも増加しています。これらは表面に見えにくいものの必要不可欠な費用であり、以前よりも工事全体の間接費用がかさんでいる要因です。安全対策費や現場管理の手間増大により、結果として見積額が上がることに繋がっています。
以上のような背景により、「前回工事より見積額が1.5倍になった」「数年前より倍近い金額を提示された」といったケースも珍しくなくなっています。実際、資材高騰・職人不足による人件費上昇で大規模修繕工事の見積額が数年前の1.5倍~2倍になるケースもあり、修繕積立金の不足や管理費値上げを検討せざるを得ない管理組合も出てきています。
長期修繕計画・積立金計画への影響
大規模修繕費用の高騰は、各マンションの長期修繕計画や積立金計画にも大きな影響を及ぼしています。多くのマンションでは過去に策定した長期修繕計画に基づき積立金を算出・設定していますが、想定以上の工事費上昇により当初計画の予算では修繕積立金が不足する可能性が高まっています。特に築年数の経過した物件では、予定していなかった設備更新や下地補修が追加で必要になる場合もあり、積立金だけではまかないきれないケースが見られます。
こうした資金不足に陥ると、管理組合は不足分を補うため追加の一時金徴収(臨時の負担金)や金融機関からの借入れを検討せざるを得ません。しかし一時金の徴収は各区分所有者にとって大きな負担で合意形成も難航しがちであり、借入れにも返済や金利負担の問題があります。つまり修繕費の高騰は、資金計画の見直しや組合内の合意形成にも直結するリスクを孕んでいるのです。管理組合としては早めに現状を把握し、計画修正や追加資金策を検討する必要に迫られています。
修繕費用高騰に対応する管理組合の実用的対策
以上の状況を踏まえ、修繕工事費用の高騰に対して管理組合が取るべき費用抑制・合理化策として、以下のようなポイントが現実的に有効だと考えられます。
長期修繕計画の見直しと現況反映
一度作った長期修繕計画も永続的なものではなく、社会情勢や建設コスト、建物の劣化状況に応じて定期的に見直すことが重要です。過去の低い物価水準を前提としたままでは実施時に資金不足を招きかねません。現在の工事単価やインフレ動向を反映して計画をアップデートし、必要に応じて修繕積立金の増額や工事内容の調整を行います。計画を現状に合わせて修正しておけば、直前になって積立金不足や一時金徴収といった事態を避けやすくなります。
工事項目の優先順位付けと過剰修繕の抑制
大規模修繕で予定される全ての工事を一度に実施する必要は必ずしもありません。建物の安全性・耐久性に直結する重要工事(防水や外壁の劣化補修など)を最優先とし、景観向上や設備更新等の改善目的の工事は次回以降に延期するなどメリハリをつけた計画も検討すべきです。特に費用高騰期において「今すぐやらなくても支障がない工事」は無理に実施せず、部分補修や延命措置でしのぐことも一つの戦略です。
実際、雨漏りや重大な腐食がなければ外壁塗装の周期を5~10年延ばすケースもあり、これは手抜きではなく状態確認に基づく合理判断とされています。このように柔軟な発想で「本当に必要な工事だけを選ぶ」ことが、住民負担の急増や無駄な出費を防ぐ鍵となります。
複数社からの相見積もり取得と交渉
必ず複数の施工業者から見積もりを取り、内容と金額を比較精査することが基本です。一社だけの提示額では高騰分が適正か判断できませんし、複数社競合があって初めて価格交渉の余地も生まれます。また見積内訳を建築の専門知識を持つ第三者にチェックしてもらうことで、不必要に高額な項目や過剰仕様が含まれていないか精査することもできます。
管理会社や設計事務所と施工業者が癒着し、最初から特定業者で受注が決まる「出来レース」を避けなければなりません。そうした不正を防ぐためにも、見積もり比較と適切な入札プロセスを経て透明性を確保することが費用抑制につながります。
発注時期の調整(景気や市況を見極めた計画)
工事を実施するタイミングも費用に影響します。建設業界全体が繁忙で職人や資材が不足している時期よりも、比較的需給が緩和された時期を選んだ方が見積もり交渉に有利になる可能性があります。また上述のように現在は戦争やコロナ後インフレ等で明らかにコスト高の時期であるため、無理に今大規模修繕を強行すれば高値掴みになり住民負担が急増するリスクがあります。もちろん劣化が深刻なら延期はできませんが、状態次第では工事時期を意図的にずらすことも選択肢です。
ただし単に先延ばしにすると劣化が進みかえって後日工事範囲が拡大して費用増となる恐れもあります。そのため専門家に調査診断を依頼し建物状態を正確に把握した上で、延命措置で対応可能か、何年まで猶予が許されるかを検討することが重要です。景気や市場動向を味方につけつつ建物の健全性も維持できれば、将来的により有利な条件で大規模修繕を実施できる可能性もあります。
以上のように、マンション大規模修繕の費用高騰時代においては、従来通りの画一的な進め方ではなく柔軟で戦略的な対応が求められます。管理組合としては現状を正しく把握し、計画や発注方法を見直すことで、必要な修繕を確実に実施しつつ無駄な負担を抑えることが可能です。早め早めの情報収集と準備を行い、適切な専門家の力も借りながら進めることで、修繕積立金不足や不本意な値上げに悩まされない持続可能なマンション管理を実現していきましょう。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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