マンションのベランダにひさしを後付けすることは可能?注意点と費用を解説
更新日:2026年01月30日(金)
マンションのベランダにひさし(庇)を後付けして、雨よけや日差し除けをしたいと考える方もいるでしょう。洗濯物が雨に濡れるのを防いだり、夏場の直射日光を和らげたりできれば、バルコニーがもっと快適な空間になります。しかし、分譲マンションのベランダは居住者の専有スペースでありながら、建物全体の共用部分として扱われるため、勝手にひさしを取り付けることには注意が必要です。 本記事では、マンションのベランダにひさしを後付けすることが可能かどうか、考慮すべき管理規約上のポイントや代表的なひさしの種類とメリット・デメリット、費用相場、工事の手順について解説します。
- 本記事のポイント
- ベランダにひさしを後付けする際の管理規約や法的制約と可否の判断基準がわかる。
- 固定式・可動式・オーニングなど代表的なひさしの種類ごとのメリット・デメリットを理解できる。
- 費用相場や申請・施工の手順、専門家に相談する際のポイントまで実務的に学べる。
マンションのベランダにひさしを後付けすることは可能か?
まず結論から言うと、マンションのベランダにひさしを後付けするのは容易ではありません。ベランダ(バルコニー)は専有部分ではなく「専用使用権が認められた共用部分」であり、壁や天井といった外装部分も共用部に含まれるため、マンション購入者が自分の判断だけでベランダに庇を設置することは基本的に認められておらず、管理組合(理事会)の許可が必要になります。管理規約で禁止事項として定められているケースも多く、仮に申請しても承認を得るハードルは高いのが実情です。
さらに注意すべきなのは、法規制や安全面での問題です。マンションによっては建築時に庇を設置しなかった理由として、建築基準法の斜線制限(高さ制限)や日影規制といった法律上の制約が考えられます。例えば最上階の窓に庇を付けると建物高さが制限を超える場合や、庇が隣地に対する日影条件に抵触する場合には、後付けしたくても法的に設置できないのです。
また、安全上の観点からも避難経路の確保が重要です。マンションのベランダは非常時の避難通路として指定されていることが多く、避難の妨げになる構造物の設置は禁止されています。固定式の屋根を後付けする場合、柱や梁が避難の障害物となり得るため認められません。同様に、「外壁に穴を開けずに設置できるから大丈夫だろう」と思われがちな可動式のひさしやオーニング(後述)についても、緊急時の取り外しや倒壊のリスク、そして建物の外観変更の問題から、基本的にはマンションでは取り付けできないと考えておいた方がよいでしょう。マンションでは外壁の塗装を勝手に変えられないのと同様に、建物外観を損なう恐れがある庇の増設は原則禁止とされているのです。
以上のように、マンションのバルコニーへの庇後付けは管理規約上も法律上も厳しい制約があります。ただし、絶対に不可能というわけではありません。まずはお住まいのマンションの管理規約や使用細則を確認し、庇や日除け設置に関するルールを把握しましょう。
ルール上許可の余地がある場合は、管理組合に相談してみる価値があります。その際には専門家(建築士)や施工業者に相談し、法的に問題がない設計プランを用意した上で提案すると、承認が得られる可能性が高まります。また、「取り外し可能で非常時にすぐ撤去できる簡易な日よけ」であれば許可されるケースも考えられます。例えば突っ張り棒式で設置する日除けオーニングや、簾(すだれ)・シェードカーテンといった後付け可能な日よけ用品であれば、建物を傷つけず容易に撤去できるため規約上認められる場合もあります。風で飛ばされないよう十分注意が必要ですが、このように工事を伴わない代替手段も検討してみてください。
後付けひさしの代表的な種類とメリット・デメリット
マンションでの設置ハードルは高いものの、一般的にベランダへ後付けできる庇にはどのような種類があるか知っておきましょう。ここでは固定式・可動式・オーニングという代表的なタイプについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介します。
固定式ひさし(テラス屋根)
アルミフレーム+透明なポリカーボネート板などでできた固定式の屋根です。建物の外壁やベランダ床に金具や支柱を固定して設置します。一度取り付ければ常に雨や直射日光を遮れるため、洗濯物が濡れにくく室内の温度上昇も抑えられるメリットがあります。アール型(先端が曲線状)やフラット型(平坦な板状)などデザインのバリエーションがあり、アール型は雨風の吹き込みを防ぎやすく、フラット型は開放感があるという特徴があります。それぞれ機能性は優れていますが、設置には建物躯体への穴あけ工事が必要になるためマンションでは許可が下りにくく、また強度を保つための支柱が避難経路を邪魔するリスクもあります。戸建て住宅であれば人気のリフォームですが、マンションの場合は施工できる条件が非常に限られる点が制約です。
可動式ひさし(開閉式屋根)
必要に応じて開閉や角度調整ができる後付け屋根です。代表的なものに手動または電動で巻き取り・展開するリトラクタブルなテント型の庇があります。晴天時には日よけとして広げ、強風時や不要な時には収納できる柔軟性がメリットです。日差しの角度に合わせて庇の角度を細かく調節できるため、固定式よりも高い日除け効果が得られる場合もあります。また可動式とはいえ設置にはある程度の固定が必要で、マンションの高層階では風圧も強いため、安全面から管理規約で禁止されていることがほとんどです。強風時にはたたまないと煽られて破損する恐れがあること、可動部のメンテナンスが必要になること、耐久性が固定式ほど高くないことなどのデメリットも理解しておきましょう。
オーニング(日よけテント)
オーニングは庇状に張り出す可動式の日よけテントの一種で、キャンバス地のシートを巻き取り式のフレームで開閉します。上記の可動式庇の具体例であり、最近では窓やテラスに後付けする日よけとして普及しています。手動ハンドル式の他、電動リモコン式のものもあり、使いたいときだけサッと広げられる手軽さが魅力です。色やデザインも豊富で景観に合わせやすく、庇を設置するよりおしゃれな演出ができる点もメリットでしょう。
デメリットとしては、防雨性能は限定的で主に日除け目的であること、長期間張りっぱなしにすると生地が色褪せや劣化しやすいこと、そしてマンションでは繰り返しになりますが外壁等への取り付けが制限されるため利用できる場面が限られることが挙げられます。賃貸や分譲マンション向けには、上下に突っ張るポールで固定する自立式オーニングも市販されていますので、壁にネジ留めせず設置可能な商品を検討するとよいでしょう。
設置にかかる費用相場とマンションでの注意点
後付け庇の設置費用は、選ぶ製品や規模、施工条件によって幅がありますが、おおよその相場を把握しておきましょう。一般的なテラス屋根(固定式庇)であれば、製品本体と工事費を合わせて約10万~20万円前後が目安です。形状(アール型かフラット型か)やサイズによっても異なりますが、概ねこの程度の予算を考えておくと良いでしょう。
一方、オーニング(日よけテント)の場合は製品価格に大きな幅があります。DIYで設置可能な簡易タイプなら製品代が2万円前後から購入可能ですが、耐久性やサイズは限定的です。本格的にリフォーム業者に依頼して壁付けタイプや独立式オーニングを設置する場合、本体価格だけで10万~20万円程度が一般的で、さらに取付工事費が数万円かかります。電動式にする場合は電源工事代も加算されるため、総額で数十万円規模になることもあります。
マンションで庇を設置する際の注意点として、費用以上に重視すべきなのが事前の手続きや近隣への配慮、安全確保です。まず管理組合への申請・承認は必須であり、所定の手続きを踏まない無許可工事は厳禁です。申請の際には、設置する庇の仕様書や図面、施工方法、業者名、工事日程などを詳細に提出する必要があります。管理組合側ではそれらを審査し、建物構造への影響や外観統一性、安全性を検討した上で許可可否を判断します。総会での決議事項になるケースもありますので、スケジュールに余裕を持って申請しましょう。
また、工事にあたっては近隣住戸への説明と配慮も欠かせません。ベランダでの工事作業により騒音や振動が発生したり、作業員の出入りがあります。特に上階や隣接住戸には「外壁でこのような工事を行う」旨を事前に知らせ、理解を得ておくとトラブル防止につながります。庇を設置することで周囲の部屋からの見え方が変わったり、最上階なら庇の影が下階に落ちる可能性もありますので、その点も含め周囲への影響を確認しておきましょう。
安全基準の順守も重要です。強風や豪雨に耐えられる構造か、落下・飛散防止策が取られているか、使用材料は防錆・耐久性の高いものか、といった点を専門業者にきちんと確認してもらいます。高所での設置となる場合は足場や高所作業車が必要になり、費用も増加しますが、安全のために省略はできません。日本住宅性能表示基準などで定められた風圧試験に合格した製品を選ぶ、雪の多い地域なら耐積雪仕様の庇を選ぶといった配慮も求められます。
さらに、住宅の保証への影響にも注意しましょう。新築後間もないマンションでは、構造躯体や防水に関する保証期間中である場合があります。一般に外壁へ穴を開けてアンカー固定する工事を行うと、施工部分についてメーカー保証や住宅瑕疵担保責任保険の適用外となってしまう可能性があります。後で雨漏りなどの不具合が生じても保証が無効になるリスクがあるため、事前に施工会社やマンションの管理会社に保証への影響を確認することが大切です。
最後に、DIYでの取り付けは避けるべきです。マンションの場合、たとえ許可がおりた工事でも、資格を持たない個人が行う施工は認められません。無理なDIYは建物を傷つけたり事故につながる危険もあります。必ず信頼できるプロの施工業者に依頼し、工事中の安全管理や施工後のチェックも徹底してもらいましょう。
ひさし設置までの流れ(見積もり取得→申請→施工)
実際にマンションのベランダへ庇を取り付ける場合、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは、見積もり取得から管理組合への申請、そして施工に至るまでの一般的な流れを説明します。
事前相談と見積もり取得
まずは複数の施工業者に相談し、ベランダの状況や希望する庇の種類を伝えて見積もりを依頼します。マンション固有の事情(階数、構造、管理規約の条件など)も共有し、施工可能な方法を検討してもらいましょう。現地調査が必要な場合は日程を調整し、実際に寸法や取り付け位置、構造を確認してもらいます。専門業者であれば、管理組合への申請に提出するための図面や説明資料も用意してくれることが多いです。
管理組合への申請・許可取得
業者から提示されたプランと見積もりをもとに、マンションの管理組合に工事申請を行います。所定の「専用使用部分変更届」や「工事申請書」に必要事項を記入し、見積書や図面、カタログスペック、工事工程表などの資料を添付して提出します。理事会や必要に応じて居住者総会で審議が行われ、承認がおりて初めて工事が可能となります。管理組合から追加の条件や指示(例えば「外壁と同系色の落ち着いた色味の庇にすること」「工事は平日日中に限ること」など)が出される場合もあるので、求められた事項があれば計画に反映させましょう。許可が下りる前に契約金を支払ったり工事日を確定させたりしないよう注意が必要です。
施工工事と完了報告
管理組合の許可後、施工業者と正式に契約を結びます。工事日程を近隣に周知し、当日は担当者立会いのもとで安全第一に作業を進めます。ベランダ内の養生をしっかり行い、ドリル等で外壁に穴開けする際も、躯体内部の防水処理を確実にしてもらいます。数時間から1日程度の工事で庇本体の取り付けは完了するケースが多いですが、大がかりな足場設置が必要な場合は数日かかることもあります。工事完了後、管理組合に完了報告書や写真を提出し、問題なく施工が行われたことを確認してもらいます。必要に応じて管理組合や管理会社の担当者による現場検査が行われ、承認内容と相違がないかチェックされます。
施工後は、新しく設置した庇が適切に機能するかを自分でも確認しましょう。雨天時に漏水がないか、風が強い日にぐらつきがないか、日差しの遮り具合は十分かなどを点検し、気になる点があれば早めに施工業者に相談します。
また、庇を長持ちさせるために定期的な清掃やメンテナンスを行うことも大切です。落ち葉やゴミが屋根上に溜まっていないか、金具の緩みやパネルの破損がないかなど、年に一度はチェックすると良いでしょう。高所作業になる場合は無理をせず、業者にメンテナンスを依頼してください。
第三者の専門家に相談するメリット
マンションの庇設置工事のように、専門的な知識や複数業者との調整が求められる工事では、管理組合や個人だけで判断・対応することに限界があります。そのため、利害関係のない第三者の専門家に相談しながら進めることで、工事をよりスムーズかつ適正に進行させることが可能になります。
まず大きなメリットとして、適法性や仕様の妥当性を専門的な視点で確認できる点が挙げられます。建築やマンション修繕に精通した専門家であれば、「庇の設置が法令上可能か」「構造や安全面に問題はないか」「建物全体との整合性が取れているか」といった点を客観的にチェックできます。こうした専門的な裏付けがあることで、管理組合内での説明や合意形成も進めやすくなります。
次に、複数の施工業者からの見積もりを公平に比較・検討できる点も重要です。第三者の専門家が関与することで、見積金額だけでなく、工事内容や仕様、数量の過不足などを専門的に精査することが可能となります。これにより、価格の妥当性を判断しやすくなり、過剰な工事や不要なコストを避けることにもつながります。結果として、管理組合や住戸所有者が納得感を持って業者を選定できる環境が整います。
さらに、計画立案から工事完了まで一貫して助言・支援を受けられる点も見逃せません。専門家が全体の流れを把握しながら進行をサポートすることで、工事中のトラブルや認識のズレを防ぎやすくなります。発注者側にとっては、専門知識の差による不安や情報格差を軽減し、より透明性の高いプロセスで工事を進められることが大きな安心材料となります。
このように、第三者の専門家に相談することで、専門知識の不足を補いながら、複数の選択肢を冷静に比較検討し、適正な内容・価格で工事を進めることが可能になります。庇の後付け工事に限らず、大規模修繕や共用部分の改修工事などにおいても有効な進め方といえるでしょう。管理組合の役員や工事担当者は、早い段階で専門家に相談することを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
マンションのベランダに庇(ひさし)を後付けすることは、居住性の向上につながる魅力的なアイデアですが、実現するには管理規約上の制約や法的ハードル、そして安全面の配慮など多くの課題があります。基本的にはマンションでは勝手な増築が禁止されており、許可を得ること自体が難しいケースが多いです。しかし、建物や地域の状況によっては管理組合の合意のもとで特別に認められる可能性もゼロではありません。その場合は、今回ご紹介した固定式・可動式・オーニングといった庇の種類それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、自宅の用途に合ったベストな方法を慎重に選びましょう。
費用相場を把握するとともに、手続き面での準備(見積もり取得から申請書類の作成など)もしっかり行う必要があります。マンション特有の近隣配慮や保証の問題も踏まえ、計画段階から丁寧に検討を進めてください。専門業者やコンサルタントの力を借りることで、法律や技術的な不安要素は大きく軽減できます。また、専門家の知見とネットワークを活用することで安全かつ適正な工事を実現できるでしょう。
快適な暮らしと建物の美観・安全を両立させるために、ルールを守りながら賢く工事を進めることが大切です。本記事を参考に、マンションのベランダ改善に役立つ最適な方法を検討してみてください。快適な住環境づくりにお役立ていただければ幸いです。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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