マンション築30年目に必要な大規模修繕工事の項目と費用相場を解説
更新日:2025年10月29日(水)
本記事では、築30年目に必要となる主な修繕項目や費用相場、住民合意形成のポイント、「スマート修繕」の支援サービスについて解説します。 計画的かつ合理的な修繕を実現し、「次の30年」も安心して暮らせるマンション再生を目指すための実践的なガイドとしてお役立てください。
- 本記事のポイント
- 築30年時点で必要となる主要な修繕項目と劣化のサインを理解できる。
- 費用相場や修繕積立金の目安、コストを抑えるための実践的な工夫を学べる。
- 補助金・減税制度の活用や合意形成の進め方など、賢い修繕計画の立て方を知ることができる。
築30年で迎える大規模修繕の重要性
築後30年前後の分譲マンションでは、建物全体の老朽化が顕在化し始めます。外観上の劣化だけでなく、構造体内部や給排水管など目に見えない部分にも劣化が進行し、漏水事故や設備トラブルなど暮らしへの支障が現れやすくなります。
おおよそ30年目に実施する大規模修繕工事(一般に2回目の大規模修繕に該当)は、建物の安全性と資産価値を維持する上で極めて重要な節目となります。適切な修繕を怠れば、資産価値の低下や居住環境の悪化を招き、将来的な建物寿命にも大きく影響しかねません。
国土交通省もマンションの高経年化問題に警鐘を鳴らしており、築30年を超えるマンションでは「給排水設備の劣化」や「耐震性への不安」を抱える管理組合が5割以上にのぼったと報告しています。
また7割超の管理組合が「居住者の高齢化による運営への影響」に不安を感じているとの調査結果もあり、高経年マンションでは修繕のみならず管理運営面の課題も顕在化しています。
こうした背景からも、築30年のタイミングで計画的な大規模修繕に取り組み、建物の性能回復と向上を図ることは、安心・安全な暮らしと資産価値維持の要といえるでしょう。
30年目の大規模修繕で想定される主な工事項目
築30年前後のマンションで行う大規模修繕工事は、建物の安全性・機能性・快適性を再構築するために多岐にわたる工事項目が必要となります。
具体的には以下のような工事が想定されます。
- 外壁の補修・塗装工事
ひび割れ補修や外壁塗装の塗り替え。美観回復だけでなく、防水性能を高め、タイル剥落などの事故防止にも繋がります。
- 屋上・バルコニーの防水工事
経年劣化した防水層の改修・再施工。雨漏り防止とともに、紫外線や熱による劣化から建物を保護します。
- 共用部鉄部の塗装・補修
手すりや階段など鉄部の再塗装・交換。サビの進行を防ぎ、安全性と美観を維持します。
- 給排水管の更新工事
各住戸や共用部の給水管・排水管の更生(ライニング)または取替え。築30年ほどで配管内部の錆詰まりや漏水が顕在化するため、赤水・漏水事故を防ぎ耐用年数を延ばす重要な工事です。
- エレベーターのリニューアル
制御盤や巻上機など昇降機の主要部品交換。経年による故障予防に加え、運転の静音化・省エネ化など性能向上も期待できます。耐震改修(地震時管制運転装置や非常用電源の設置)も検討され、自治体によっては補助金対象です。
- 共用設備・防災設備の改良
受水槽の耐震タイプへの更新、非常用照明や消火設備の点検・更新、インターホン更新などもこの時期にまとめて行われるケースが多くあります。防犯カメラ増設・オートロック強化など防犯性向上工事も検討に値します。
- エントランス・共用部の改修
自動ドアの交換、照明LED化、バリアフリー対応(スロープ設置や段差解消、手すり取付け)など、高齢化や省エネに対応した改修を行います。これらは居住者の利便性向上だけでなく、将来の購入希望者に対する魅力向上にも繋がります。自治体によっては共用部のバリアフリー化工事に補助金を出す例もあります。
以上が代表的な工事項目ですが、建物の構造や規模、築年数までの維持状況によって必要な工事は異なります。事前の劣化診断(建物調査)を専門業者やコンサルタントに依頼し、劣化状況に見合った工事仕様と優先順位を検討することが不可欠です。その上で設適切な修繕工事の計画を立案し、見積積算することで、無駄のない的確な工事内容を把握できます。居住者の日常生活への影響を最小限に抑えるために、工程管理(スケジュール策定)にも配慮が必要であり、工事前には掲示板や説明会で周知徹底して協力体制を築くことがスムーズな進行の鍵となります。
大規模修繕工事の費用相場と修繕積立金の目安
築30年前後のマンションでは、一般的に2回目以降の大規模修繕工事の費用が初回(築12~15年頃)よりも高額になる傾向があります。
国土交通省の「マンションの修繕工事に関する実態調査」(2021年公表)によると、1回目の大規模修繕工事の総工事費は「4,000~6,000万円」の範囲が最も多く、2回目では「6,000~8,000万円」が最多となっています。すなわち、2回目の工事費は1回目の約1.5倍に増加するケースが多いという結果です。
同調査による全体の中央値は7,600万~8,700万円、平均値は1億1,000万~1億5,000万円に達しており、戸数規模によっては1億円を超えるプロジェクトとなることも珍しくありません。これらの金額には共通仮設費(足場など)は含まれないため、実際の発注時にはさらに費用が上振れする可能性もあります。
費用を戸あたりに換算すると、1戸あたり約75万~125万円の負担が発生する事例が半数以上を占めています。国交省調査でも、「100~125万円」が27.0%で最も多く、「75~100万円」が24.7%と報告されています。したがって、50戸規模のマンションでは総額5,000万~6,000万円強、100戸規模なら1億円超が一般的な費用感といえるでしょう。
これらの費用に備えるのが修繕積立金ですが、近年は建設資材価格や人件費の高騰が長期的に続いており、想定よりも大幅に工事費が上昇するケースが増えています。
特に、ウクライナ情勢の影響や円安による輸入資材の価格上昇、建設業界の人手不足による労務費上昇などが重なり、2020年代に入ってからの工事単価は5年前と比べても1~2割程度上昇しているといわれています。このため、当初の長期修繕計画で見込んでいた積立金では不足が生じ、計画の見直しや追加徴収、借入などを検討する管理組合も少なくありません。
国土交通省の「修繕積立金に関するガイドライン(2021年改訂)」では、マンションの規模別に積立金の目安を示しています。たとえば、20階建以上の高層マンションでは月額338円/㎡程度、20階未満の中高層マンションでは252~335円/㎡程度が平均的な水準とされています。ただし、これらはあくまで標準値であり、建物の劣化状況、外壁仕上げ、設備更新周期などによって必要額は大きく異なります。
建設費の高止まりが続く現状を踏まえると、少なくとも5年ごとに長期修繕計画を見直し、最新の工事単価や物価動向を反映して積立額を調整していくことが不可欠です。また、急な費用増加に備えるため、金融機関の修繕積立金融資制度や自治体の補助金制度を活用するなど、多角的な資金計画を検討することが望まれます。
築30年前後で見られる劣化の実例と過去20年との差異
築30年頃になると、マンション各所に具体的な劣化の症状が現れてきます。
以下は築30年超で頻発しやすい劣化トラブルの例です。
- 屋上・バルコニーからの雨漏り
防水層の劣化により、トップコートのひび割れや防水シートの剥離が進行し、室内への雨水浸入事故が起こりやすくなります。
- 給排水管のサビ・閉塞・漏水
館内の鋼管配管では内面腐食が進み、赤水(錆び水)が出たり、水圧低下・詰まりが生じたりします。更に腐食が進めばピンホールからの漏水事故に繋がり、階下住戸への被害など大きな問題となります。
- 外壁のひび割れ・コンクリート剥離
経年による躯体コンクリートの中性化や乾燥収縮でクラックが発生します。放置すると雨水が侵入して鉄筋腐食を招き、コンクリート片の剥落事故につながる恐れがあります。タイル仕上げの建物ではタイル浮き・落下のリスクも増大します。
- シーリング材の硬化・隙間
外壁目地や窓周りのシーリング(コーキング)が経年で硬化・収縮し、防水性が低下します。隙間から浸水すると外壁内部で漏水被害が広がるため、定期的な打ち替えが必要です。
- 電気設備・機械設備の不具合
受変電設備や給水ポンプ、照明設備などが老朽化し、故障や性能低下が起こりやすくなります。エレベーターも部品摩耗や制御装置の劣化で故障頻度が上がり、更新時期を迎えます。機械式駐車場がある場合はチェーンの摩耗やモーター故障が発生する時期です。
- 防犯・通信設備の陳腐化
オートロックやインターホンが旧式化して故障が増えたり、監視カメラの画質不良など機能低下が見られます。インターネット配線(共用部の同軸・電話線)が時代遅れとなり高速通信に非対応な場合、居住者ニーズに応えられなくなる懸念もあります。
これらの劣化現象は、一見すると小さな不具合に思えるかもしれません。しかし放置すると被害範囲が拡大し、建物全体の寿命や安全性に深刻な影響を与えかねません。例えば漏水を放置すればコンクリート構造体まで傷み補修範囲が広がりますし、設備故障を放置すれば居住者の生活インフラ(給水・エレベーター等)に突然支障が出る恐れがあります。
築20年程度までの比較的若い時期であれば、こうした深刻な問題はまだ表面化していないケースも多く、1回目の修繕では外観の美観維持や部分的な補修が中心でした。しかし築30年ともなると建物の根幹に関わる性能部分の劣化が本格化するため、過去20年の修繕内容とは質的に異なる「本格的な改良・改修工事」が求められます。
また、過去20年との差異として無視できないのが社会環境の変化です。昨今、建設業界では人件費高騰や資材価格の上昇が顕著で、修繕工事費用も昔に比べ高額化する傾向があります。
例えば同規模・同内容の工事でも、20年前に比べ現在は数割増の見積額となるケースもあります。また、マンションの居住者層の変化も合意形成に影響するポイントです。築30年ともなると、当初入居した世代が高齢化する一方、新たに中古購入した若年世代や賃貸入居者も混在し、修繕への意識や経済的負担感に世代間ギャップが生じやすくなります。
さらに法制度や技術の変化もあります。省エネ性能に関する新基準の登場や、エレベーターの耐震改修ガイドライン策定(国交省, 2016年)、2022年施行の管理計画認定制度では「長期修繕計画は30年以上の期間で2回以上の大規模修繕を含むこと」が認定基準に盛り込まれるなど、従来にはなかった視点が求められています。
これらを踏まえ、築30年時の修繕では単なる原状回復に留まらず、バリアフリー化・省エネ化・防災力向上といった価値向上型の改修要素も積極的に盛り込むことが推奨されます。実際、近年は太陽光発電パネル設置や非常用発電機の導入、防災備蓄倉庫の新設などを同時に実施する管理組合もあり、これらには自治体補助や税制優遇が適用できる場合があります。築30年はマンションの再生とアップグレードの分岐点ともいえる時期であり、過去の延長線上ではない発想で計画を見直すことが重要です。
長期修繕計画の見直しと住民合意形成の進め方
大規模修繕工事を成功させるには、計画段階での入念な準備と住民の合意形成が不可欠です。特に築30年規模の2回目修繕では、建物の状況だけでなく居住者の高齢化や所有者の入れ替わりなど人的要因も絡み、合意形成が複雑になる傾向があります。ここでは、長期修繕計画の見直しポイントと合意形成の進め方を整理します。
● 長期修繕計画の見直し
国土交通省のガイドラインでは、長期修繕計画は少なくとも5年に1度の定期見直しを推奨しています。修繕周期や費用は建物の劣化状況や物価動向に応じて柔軟に調整する必要があるためです。実際、ガイドラインの2021年改訂では修繕周期の目安に幅を持たせる変更がなされ、外壁塗装の塗替え周期は「12年」から「12~15年」に、換気設備の交換は「15年」から「13~17年」に緩和されました。これは一律に○年と決めるのではなく、各マンションの個別事情に合わせて最適な時期を判断すべきという考え方です。
従って、築30年を機に長期修繕計画をアップデートする際は、最新の劣化診断結果や直近の工事履歴、今後見込まれる工事内容を反映し、計画期間も従来より長め(少なくとも30年超)に再設定することが重要です。
国の管理計画認定制度でも「計画期間30年以上・大規模修繕2回以上」が求められており、今後はより長期的な視点で計画を組むことが標準となります。マンション管理センターの提供するような客観的な計画チェックサービスや、自治体の「計画修繕支援制度」を活用し、専門家の助言を得ながら計画を練り直すと良いでしょう。
計画見直しの結果、将来的な修繕積立金の増額が必要となる場合は、総会決議に向けた根拠資料の作成も重要です。客観的データに基づく計画であれば、住民の理解も得やすくなります。
● 修繕委員会の設置と情報共有
国交省ガイドラインでは、大規模修繕準備における修繕委員会の設置と情報公開の徹底が基本ルールとして挙げられています。
通常、理事会だけで日常管理と修繕準備を両立するのは負担が大きいため、有志の組合員からなる修繕委員会を組織し、専門知識を持つメンバーにも協力を仰ぐとよいでしょう。委員会では工事内容や業者選定について調査・検討し、その都度理事会や全組合員へ報告します。
議事録や調査報告書、見積比較表など資料は適宜開示し、透明性の高いプロセスを踏むことで「修繕工事の意思決定が不透明になりがち」という不信感を払拭できます。近年はITを活用して、進捗状況を電子掲示板や回覧メールで共有するマンションもあります。情報共有を密に行い、「自分たちのマンションを良くするプロジェクト」という共通認識を醸成することが大切です。
● 住民説明会と合意形成
大規模修繕では区分所有者である住民全員の合意が不可欠です。特に費用負担が絡むため、総会決議では慎重な説得が求められます。
通常、修繕工事実施の決議は区分所有法上は普通決議(過半数賛成)事項ですが、工事内容によっては共用部変更に当たるため特別決議(4分の3以上)の同意が必要な場合もあります。
そのため、正式決議の前段階として住民説明会を複数回開催することが望ましいです。説明会では劣化診断の結果報告や修繕設計者からの工事内容説明を行い、写真や図面を用いて 必要性を視覚的に伝える工夫をします。
専門的な話は管理会社やコンサルタントにも同席してもらい、質疑応答に丁寧に答えましょう。加えてアンケート調査を事前に実施し、住民の不安や要望を把握しておくと議論がスムーズです。高齢の方や多忙な方には書面配布で情報提供し、できるだけ多くの組合員が意思決定に参加できる環境づくりをします。特に若年層と高齢層で修繕への関心や優先度が異なることがあるため、お互いの立場を理解し歩み寄るための対話の場が重要です。
なお、第三者の専門家から「この工事内容と費用は妥当である」というお墨付きをもらっておくと、総会で提案する際の説得材料になります。セカンドオピニオンを活用して専門家の客観的評価を得ておけば、反対意見への対応も論理的かつ冷静に行えるでしょう。
以上のプロセスを経て、管理組合内で十分な合意形成が図れれば、総会決議も円滑に進みます。合意形成には時間を要するため、遅くとも工事実施の2年前から準備に着手し、計画策定・資金計画・住民協議を順次進めることが望まれます。また、合意形成後も油断せず、工事中のコミュニケーション(進捗報告や苦情対応)を継続することで、信頼関係を保ちながら大規模修繕を成功させることができます。
コスト削減策
大規模修繕の費用負担は管理組合にとって大きな懸念材料ですが、工夫次第でコストを抑制する具体策もいくつか存在します。ここでは、近年注目される発注・技術面でのコスト削減策と、新しいサービス導入例について解説します。
● 工事内容・仕様の精査によるコスト最適化
むやみに工事範囲を広げたり過剰仕様にすると費用は膨らみます。専門家の視点で「本当に必要な工事か」「代替工法はないか」を精査することで、無駄なコストを省けます。
現状を踏まえた柔軟な施工方法の採用や、グレードダウンではなく適材適所の仕様見直しによってコスト圧縮が可能です。他にも、工事時期を早めすぎないことで長期的な回数を減らし、結果的に将来コストを削減するという発想も重要です。実際、築12年での早期修繕を見直し18年まで延期した結果、将来的な大規模修繕回数を1回減らせるケースもあります。
ただし、闇雲な先送りは劣化を拡大させ逆効果にもなり得るため、専門家の診断に基づく適切なタイミング調整が前提となります。
● スマート修繕等のセカンドオピニオンサービス活用
「スマート修繕」は、大規模修繕の見積診断とコスト削減支援を専門に行うもので、管理組合にとって心強い味方です。一級建築士事務所のプロが独自の見積データベースを用いて提出見積の査定を行い、既存見積もりから90%以上の確率でコスト削減に成功しています。
このサービスは劣化診断の手配から施工業者の紹介、工事中の監督支援まで一貫して専門コンサルタントが伴走し、適正な工事内容・価格の実現をサポートします。特徴的なのは、管理組合側の利用料が無料である点で、既に他社で見積取得済みの場合でもセカンドオピニオンとして気軽に相談可能となっています。
第三者サービスを活用すれば、「提示された見積が適正か判断できない」「業界の慣習で高止まりしていないか不安」といった管理組合の悩みを解消し、公正で納得感のある取引に近づけるでしょう。専門家のお墨付きを得ることで総会説明時の裏付けとなり、住民の安心感や工事方針への信頼性も高まります。費用面の不安が大きい場合は、積極的にこうしたセカンドオピニオンを取り入れることを検討しましょう。
● 補助金・減税制度の活用
国や自治体はマンションの計画修繕を促進するため、多様な支援策を用意しています。
代表的なものを挙げると
- 劣化診断補助
大規模修繕前の建物劣化診断費用を一部助成(例:東京都千代田区は調査費の2/3・上限50万円を補助)
- 共用部改修工事補助
外壁改修・防水・給排水管更新・耐震改修・バリアフリー化等の設計・工事費を補助(例:東京都中央区は工事費の10%の2/3補助・上限1,000万円)
- 耐震診断・改修補助
旧耐震(1981年以前建築)マンション対象。耐震診断や耐震補強工事費を補助(自治体により割合・上限額設定)
- 防災対策設備補助
エレベーターの地震時管制運転装置や非常電源装置設置、防災倉庫設置など災害対策工事への補助(例:千葉県浦安市は費用1/3補助・上限50~100万円)
- 環境配慮改修補助
屋上・壁面緑化工事費補助(例:杉並区は屋上緑化25,000円/㎡補助など)、高断熱サッシ導入補助、省エネ改修補助金(国交省の長期優良住宅化リフォーム推進事業等による戸当たり最大80~160万円補助)など、エコリフォーム系の制度
- 税制優遇
2022年度に創設された「マンション長寿命化促進税制」は、一定の条件を満たす大規模修繕工事を行い、かつ所定の「長寿命化計画の認定」を受けたマンションを対象に、翌年度の固定資産税(建物部分)を最大1/2減額する特例措置です。
この制度は、管理組合が修繕工事を円滑に進めるための合意形成を後押しする目的で導入されました。
当初は2025年度までの時限措置とされていましたが、その後の税制改正により、
令和9年(2027年)3月31日までに工事が完了したものが対象となるよう適用期限が延長されています。
したがって、現在は2022年度~2026年度(工事完了が2027年3月末まで)の間に実施される修繕工事が減税対象となります。
この税制では、以下のような条件を満たすことが求められます。
- 築20年以上かつ総戸数10戸以上の分譲マンションであること
- 長寿命化に資する一定の修繕工事(外壁、屋上防水、設備更新など)を実施していること
- 国土交通省の基準に基づく「長寿命化計画」の認定を受けていること
- 工事完了後3か月以内に市区町村へ申告すること
減税額はマンション全体の建物固定資産税の最大1/2相当が1年度分減額される仕組みで、特に中~大規模の修繕工事を控えるマンションにとっては、実質的な負担軽減効果が期待できる制度です。
なお、今後の税制改正により再延長や制度内容の見直しが行われる可能性もありますが、現時点(2025年)では「2027年3月末まで」が正式な適用期限として運用されています。修繕工事を検討する管理組合は、長寿命化計画の認定準備とスケジュール調整を早めに進めておくことが重要です。
まとめ:築30年の大規模修繕でマンションを再生する
築30年前後で迎える大規模修繕は、マンションにとって 「建物の再生」と「管理体制の再構築」 を同時に果たす絶好の機会です。適時適切な修繕工事を実施することで建物の寿命を延ばし、快適な居住環境と資産価値を維持・向上させることができます。
そのためには、国や行政が発信するガイドラインや支援制度を積極的に活用し、経験と専門知識に基づいた計画策定が不可欠です。管理組合役員の方々は、長期修繕計画の見直しを起点に、住民の理解と協力を得ながら合意形成を進めてください。
そして、スマート修繕のような新サービスやプロのセカンドオピニオンもうまく取り入れて、公正で納得性の高いプロジェクト運営を目指しましょう。
築30年は単なる老朽化ではなく「次の30年」への出発点です。
適切な大規模修繕と管理の工夫により、マンションは歳月を経てもなお良好な状態を保ち、将来世代にも価値ある資産として引き継ぐことができるでしょう。組合役員の皆様におかれては、専門家や行政とも連携しつつ、ぜひ自信を持って大規模修繕に取り組んでいただきたいと思います。適切に計画・実行された修繕工事は、きっとマンションの輝きを取り戻し、そこに暮らす全ての人々に安心と満足をもたらすはずです。
大規模修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
- 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
24時間対応通話料・相談料 無料



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