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管理者が知っておくべきエレベーター準撤去リニューアルのメリット・デメリットと費用

更新日:2025年03月21日(金)

マンションやビルのエレベーターは、設置から長期間が経過すると、安全性や故障リスクの観点からリニューアル(改修工事)を検討する必要があります。その際、コストと効果のバランスを考え、「準撤去リニューアル」を選択肢に入れる管理者も多いでしょう。 しかし、エレベーターのリニューアルには「制御リニューアル」「準撤去リニューアル」「全撤去リニューアル」の3つの方式があり、それぞれ工事範囲や費用、メリット・デメリットが異なります。本記事では、準撤去リニューアルの特徴を中心に、他方式との違いや費用の目安、選定のポイントを解説します。 エレベーターの最適なリニューアル方法を判断するために、ぜひ参考にしてください。

本記事のポイント
  • エレベーターの準撤去リニューアルの特徴や他の改修方式(制御リニューアル・全撤去リニューアル)との違い、メリット・デメリットを詳しく学べる。
  • リニューアル方式ごとの費用相場や工期の目安を具体的に知ることができ、予算やスケジュール計画の判断材料を得られる。
  • 工事を依頼する際の注意点や補助金活用など、実務的な知識を得ることで、費用を抑え安全・円滑にエレベーター改修を進めるコツを理解できる。

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エレベーターの準撤去リニューアルとは?

エレベーターの準撤去リニューアルとは、一部の設備を残しつつ、主要な部品を新しく交換してエレベーターを刷新する改修工事の一種です。具体的には、各階の扉枠(三方枠)や敷居など建物に埋め込まれた部分をそのまま活用しながら、巻上機や制御盤、エレベーターのかご(乗りかご)などの機器類を最新のものに取り替えます。

この方法により、エレベーターの性能向上や内装の一新が可能となり、新設と同等の水準までリニューアルできます。準撤去リニューアルは「部分リニューアル」とも呼ばれ、エレベーター改修の代表的な方式の一つです。他の改修方法として、既存のエレベーターをすべて撤去し新品に交換する全撤去リニューアル(撤去新設)や、制御装置など一部の機器だけを更新する制御リニューアルがあります。

一般的に、エレベーターは設置から25年程度が改修の目安とされており、この時期を超えると部品の摩耗や安全基準への適合が課題となるため、計画的なリニューアルの検討が推奨されます。

制御リニューアルと全撤去リニューアルとの違い

エレベーター改修には主に「制御リニューアル」「準撤去リニューアル」「全撤去リニューアル」の3種類があります。それぞれ工事範囲や費用、工期が大きく異なりますが、多くの場合、制御リニューアルで十分な改修が可能です。

制御リニューアルは、制御盤や巻上機など制御系のみを最新のものに交換する方法で、費用は約500万~700万円、エレベーター停止期間も数日~1週間程度と最小限に抑えられます​。これにより、安全性や運行の安定性を向上させつつ、コストと工事期間の負担を軽減できます。

一方、全撤去リニューアルは既存エレベーター設備を全て撤去して新設する方法で、費用は約1,500万~2,000万円(機種によっては2,000万円以上するものもあります)と高額になり、工期や運休期間も最長となります​。設備全体の更新による性能向上が見込めますが、費用対効果を考えると、必ずしも必要とは限りません。

準撤去リニューアルは、制御系に加えてかご本体や主要機器も更新するバランスの取れた手法ですが、費用と工期は制御リニューアルよりも増大します。

多くのケースでは、制御リニューアルを行うことで十分な性能向上と安全性の確保が可能です。無駄なコストを抑えつつ、必要な改修を適切に行うことが重要です。

準撤去リニューアルのメリット

準撤去リニューアルには、コスト削減や工事期間の短縮といった大きなメリットがあります。既存の扉枠や昇降路の構造を活かすことで、エレベーターを丸ごと交換する全撤去リニューアルと比べ、費用を大幅に抑えられます。また、工事期間やエレベーターの停止期間も短縮できるため、特に1基しかエレベーターがない建物では、利用者の負担を軽減できる点が大きな利点です。

安全性や信頼性の向上もメリットの一つです。最新の巻上機や制御盤を導入することで、故障リスクが低減し、運行の安定性が向上します。また、地震感知器や停電時の自動着床装置などの安全機能を追加できるため、最新の安全基準に適合したエレベーターへとアップグレード可能です。さらに、高効率モーターや最新の制御技術を採用することで、省エネ性能が向上し、運用コストの削減にもつながります。

また、デザインや快適性の向上もポイントです。準撤去リニューアルでは、エレベーターのかご内装や操作盤が新しくなり、デザインや使い勝手が現代仕様に改善されます。照明やパネルの刷新によって建物全体の印象が向上し、利用者の満足度向上も期待できます。さらに、主要機器を新品に交換するため、当面の大規模修繕が不要となり、維持管理の計画が立てやすくなる点もメリットです。

ただし、費用対効果を考えると、多くのケースで制御リニューアルが最適な選択となる場合があります。制御リニューアルでは、巻上機や制御盤など主要機器を更新できるため、安全性や運行の安定性を確保しつつ、コストを最小限に抑えることが可能です。さらに、工事期間やエレベーターの停止期間が短く、住民の負担を軽減しながら改修を進められます。不要なコストを抑えつつ、必要な部分だけを的確にリニューアルすることで、より効率的な改修を実現できます。

準撤去リニューアルのデメリットと制御リニューアルの優位性

準撤去リニューアルには多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットや制約も考慮する必要があります。

既存設備の流用による制約

準撤去リニューアルでは、各階の三方枠や敷居など、建物に埋め込まれた部分をそのまま活用するため、新しい機器との調整が必要となります。その結果、設計や部品調達に時間がかかることがあり、想定以上に工期が延びるリスクもあります。

エレベーターの停止期間

全撤去リニューアルほど長くはないものの、工期は1ヶ月半から2ヶ月程度かかり、その間はエレベーターが使用できなくなるケースが一般的です。特に高層階に住む居住者や荷物の搬送に大きな影響を及ぼすため、代替措置の検討や事前の周知が不可欠となります。

性能向上の限界

準撤去リニューアルでは、既存の昇降路を活用するため、エレベーターの定員や速度などの基本仕様を柔軟に変更することは難しく、建物の構造によっては期待した改善が実現しにくいケースもあります。特に、かごの大型化や積載量の大幅な増加は、昇降路や出入口のサイズによる制約を受けるため、工事の実施が困難またはコストが大きくなる可能性があります。

費用負担の大きさ

準撤去リニューアルは制御リニューアルと比較するとコストが高く、予算確保が課題となることがあります。費用対効果を考えると、制御リニューアルで十分な改修が可能なケースも多いため、慎重な検討が必要です。

制御リニューアルの優位性

制御リニューアルでは、巻上機や制御盤といった主要機器を最新型に更新できるため、安全性や運行の安定性を向上させつつ、工期やエレベーターの停止期間を最小限に抑えられます。これにより、利用者への影響を軽減しながら効率的に改修を進められます。

また、必要な改修を的確に行うことで無駄なコストを削減しながら老朽化対策を実施できるため、費用対効果の面でも優れた選択肢となります。特に、予算やエレベーター停止期間の短縮を重視する場合、制御リニューアルは最適な改修方法といえるでしょう。

準撤去リニューアルの費用相場とコストを抑えるポイント

準撤去リニューアルの費用は、エレベーター1基あたり約1,200万~1,700万円程度が一般的な目安とされています。ただし、費用は建物の規模やエレベーターの種類(定員・速度)、既存設備の状態、採用する機種やオプションによって変動します。例えば、高層建物で停止階が多い場合や非常用の大型エレベーターでは、1,700万円を超え、さらに高額となるケースもあります。

この費用には、既存機器の撤去・処分、新規機器の製作・据付、必要な建築・電気工事、試運転や検査対応などが含まれるのが一般的です。見積もりを取る際は、付帯工事や諸費用を含めた総額で比較することが重要です。

また、自治体によってはエレベーター改修に対する補助金制度を設けている場合があり、適用されれば費用負担を大幅に軽減できます。事前に地域の補助金情報を確認し、適用条件や申請方法を把握しておくことをおすすめします。

なお、コストを抑えつつ必要な性能を確保する方法として、制御リニューアルという選択肢もあります。制御盤や巻上機などの主要機器を更新することで、安全性や運行性能を向上させつつ、準撤去リニューアルに比べて費用を大幅に削減できる可能性があります。まずは現状の設備状況を正しく把握し、必要十分な改修内容を見極めることが大切です。

準撤去リニューアルの確認申請

エレベーターの準撤去リニューアルを実施する際、原則として建築基準法に基づく建築確認申請は不要ですが、定格速度の変更や積載量の増加を伴う工事を行う場合には申請が必要になる点に注意が必要です。

ただし、これらの変更は技術的・構造的な制約を受けるため、必ずしも実施できるとは限りません。工事の可否については、事前に専門業者と相談し、管理者として適切な判断を行いましょう。

リニューアル工事を依頼するときの注意点

複数業者の見積もりを比較する

リニューアルを検討する際は、一社に決め打ちせず複数の業者から見積もりを取り、内容と金額を比較検討しましょう​。特に現在の保守会社やメーカー系以外に、独立系の専門業者にも相見積もりを依頼することで、競争力のある提案を得やすくなります。見積もり依頼時にはこちらの要望や仕様を明確に伝え、各社で条件を揃えてもらうことが重要です​。金額だけでなく、交換部位の範囲や保証内容、工事実績なども含めて総合的に判断してください。

工事スケジュールと利用者対応

リニューアル工事は計画から完工まで長期間を要するため、早めにスケジュールを立てておきましょう。見積取得や契約、部品製作、確認申請手続きに時間がかかり、全体で半年から1年以上のプロジェクトになることもあります。特に準撤去リニューアルの場合、エレベーターの停止期間が長くなることがあるため、事前に入居者に周知し、エレベーター停止中の支援策を準備することが重要です。例えば、高齢者や障害のある方へのサポート方法(代行スタッフ配置など)を検討し、工事中の騒音や作業員の出入りにも配慮しましょう。

一方、制御リニューアルの場合、エレベーターの機能は基本的にそのままで、制御系の改善が行われるため、準撤去リニューアルほど長期の停止期間にはならないことが多いですが、それでも一定の停止期間が必要です。やはり入居者への周知とサポート体制の準備は重要で、工事中の作業が最小限の影響に抑えられるような配慮が求められます。

法令順守と安全基準の確認

準撤去リニューアルを実施する際、確認申請や完了検査などの法定手続きが必要となる場合があります。そのため、発注前に業者が適切に対応できるかを確認しておくことが重要です。また、リニューアル後のエレベーターが最新の安全基準やバリアフリー基準に適合するよう、必要な設備を導入することが望ましいでしょう。たとえば、車いす対応の手すりの設置、鏡の高さの調整、戸閉安全装置の追加など、改善が必要な項目があれば、工事と併せて検討することをおすすめします。

制御リニューアルを行う場合も、法令順守は不可欠です。制御システムの更新に伴い、新たな法定検査や認証が求められることがあるため、エレベーターの制御機器が最新の安全基準に適合しているかを確認し、既存設備に対してどの程度の改善が必要かを事前に業者と相談しましょう。なお、制御リニューアルでは旧設備のままでも運用可能なケースがありますが、将来的なトラブルを防ぐためにも、可能な限り最新の基準に適合させる改修を検討することが推奨されます。

補助金・減税制度の活用検討

国や自治体の補助金制度や減税措置をチェックしましょう。条件に該当すれば改修費用の一部が補助されたり、一定期間税負担が軽減される場合があります。少々手間はかかりますが、制度を活用することで管理組合や事業者の負担を大きく減らせます。

リニューアル後の保守体制

リニューアル工事後、エレベーターの保守を担当する業者の選定は重要です。通常、リニューアルを施工した会社が引き続き保守を担当するケースが多く、その場合、施工業者が新しい機器の構造や仕様に精通しており、よりスムーズに保守対応が可能となります。新しい機器に対応できる技術力や部品調達力があるか、また、保守体制が安定しているかを確認することが重要です。

別の保守会社に切り替える場合は、リニューアルした設備に対する対応力や対応品質を見極め、今後の保守費用や対応の質についても慎重に判断しましょう。どちらにしても、更新後も安定した稼働を維持するためには、信頼できる保守体制を構築することが不可欠です。

まとめ

エレベーターの準撤去リニューアルは、コストと効果のバランスに優れた改修方法であり、管理者にとって魅力的な選択肢です。全撤去リニューアルはコスト負担が大きいため、予算に制約がある場合は避けるべきですが、一定の改善を実現したい場合には有効な方法と言えます。ただし、エレベーター改修において最もコストパフォーマンスに優れているのは制御リニューアルです。制御リニューアルでは、必要な性能向上と安全性の確保を実現し、費用や工期の負担を抑えつつ、十分な改修が可能です。

リニューアル方式の選定から業者選定、利用者対応、法定手続きまで、慎重な計画が不可欠です。建物やエレベーターの現状を十分に把握し、最適なリニューアルプランを策定することで、信頼できる専門業者と協力し、安全で快適なエレベーター環境を実現できます。

適切なリニューアルは、建物の資産価値を維持するために非常に重要な取り組みです。管理者として、正確な情報を基に最適な判断を行いましょう。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

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