リニアエレベーターのリニューアル費用を抑える現実的な方法とは
更新日:2025年05月31日(土)
近年注目されているリニアエレベーターは、従来の巻上機+ロープ方式とは異なる駆動システムを採用した、次世代型のエレベーターです。一部のリニアエレベーターはロープやベルトを併用する方式を採っていますが、オーチス製を含む一部の機種では、リニアモーターを用いて磁力でかごを直接駆動するタイプも存在します。こうしたシステムは、これまでの常識を覆す革新的な技術として注目を集めています。 とはいえ、どれほど先進的なシステムであっても、長年使用すれば他のエレベーターと同様にリニューアルが必要になります。 本記事では、リニアエレベーターの基本構造から、リニューアルにかかる費用の実情や注意点、そしてコストを大幅に削減するための現実的な選択肢までを詳しく解説します。オーチス製リニアエレベーターのリニューアルを検討されている管理組合の皆様に向けて、判断材料となる実用的な情報をお届けします。
電話で無料相談
24時間対応通話料・相談料 無料
Webから無料相談
専門家に相談する
リニアエレベーターとは?
リニア式エレベーターは、リニアモーターを用いてかごを直接駆動する仕組みを持ち、巻上機や従来型のロープを用いない点が特徴です。オーチス製の一部機種では、磁力によって静かかつスムーズな運転を実現しています。
このシステムの大きな特長は、上下の移動にとどまらず、横・斜め・曲線方向にも移動できる自由度の高さにあります。昇降路に設置されたコイルに電流を流して磁場を作り、その磁力でかごを浮かせて動かすという原理です。
主なメリットには以下があります。
- 機械室が不要なため、省スペース設計が可能
- 振動や騒音が少なく、快適な乗り心地を提供
- 摩耗部品が少ないため、メンテナンスコストや故障リスクが軽減
一方で、特殊な技術や専用部品が使われているため、リニューアルや修理の際には高い専門性とコストが求められるという課題もあります。
リニアエレベーターのリニューアル方法
リニアモーターを使ったエレベーターは、独自の技術体系を持つため、従来のロープ式エレベーターとは異なるリニューアル手法が求められます。ここでは、代表的な3つの方法を紹介します。
制御システムリニューアル
最も一般的な改修方法です。リニアモーターの制御装置や電源、安全システムを最新型へ交換します。磁気センサーや位置検出装置の高精度化、駆動回路の最適化などにより、安全性と運用効率の向上が図れます。
※制御リニューアルは既存メーカー(オーチス社)のみ対応可能です。
準撤去リニューアル
建物に設置された既存エレベーター設備のうち、コンクリート製の昇降路など構造的な躯体部分を残しながら、主要な機器や機構を新しいシステムへと更新する方法です。
全面的な入れ替えに比べて工期やコストを抑えやすく、建築制約のある施設でも実施可能です。
※この方法は、リニアエレベーターに関する知見と施工実績を持つ一部の専門業者であれば、オーチス社以外でも対応可能です。
全面リニューアル
既存のエレベーター設備をすべて撤去し、最新のリニア式システムに刷新する方法です。安全性・性能の向上が最大化できますが、設備・施工費用が高額になります。
リニア式からマシンルームレスロープ式への切替でコスト削減を実現
実は、こうした専用技術で構成されたリニア式エレベーターのリニューアルには、大きなハードルがあります。
リニア式に対応できる施工業者が極めて限られているため、オーチス社などの製造元による提案に依存せざるを得ない状況が多いのです。その結果、価格競争が起こらず、改修費用が高止まりする傾向があります。
当サービス「スマート修繕」では、オーチス製リニア式エレベーターを、より汎用性の高いマシンルームレスロープ式エレベーターに切り替えるという新たな選択肢を提案し、このリニューアル手法により、費用を抑えながら、将来的な保守費用や部品供給リスクも軽減できます。
リニアエレベーターのリニューアル費用の目安
リニア式エレベーターのリニューアル費用は、従来のロープ式エレベーターと比較して改修費は1.5~2倍に膨れ上がるケースが一般的です。リニア式エレベーターのリニューアルは、全面リニューアルで約2,500万円~5,000万円ほどの費用がかかります。
コスト削減の解決策:マシンルームレスロープ式への切替
このような高額なリニューアル費用を抑えるために、オーチス製のリニア式エレベーターを汎用的なマシンルームレスロープ式エレベーターに切り替える工法があります。
・リニューアル費と保守費が大幅に安くなる(約1,700万円~2,000万円程度)
・将来的な部品供給リスクが減る
・メンテナンス業者の選択肢が広がるため、競争原理が働き価格が下がる
リニアエレベーターの改修するときの注意点
リニア式エレベーターは先進的な技術を採用している分、改修にはコストも手間も大きくかかります。ここでは、改修時に注意すべきポイントと、費用を抑える現実的な方法をご紹介します。
注意点①:対応できる業者が限られている
リニア式エレベーターは特殊な構造のため、対応できる業者が限定されるのが現実です。
とくに、磁気制御や位置検出といった高度な技術が必要となるため、メーカーに頼らざるを得ず、価格競争が起きにくい=工事費が高額になる傾向があります。
注意点②:部品供給と将来の保守が不透明
リニア式は部品が汎用化されていないため、製造終了=修理不能となるリスクが高いです。
しかも、技術の進歩が早いため、従来よりライフサイクルが短い可能性もあります。
注意点③:建物との相性や法規制への対応も複雑
リニア式の構造は独特で、建物の昇降路や構造との適合調査が必須になります。
場合によっては、部分的な改修でも建築確認申請が必要になり、手間とコストがさらにかさむケースもあります。
リニアエレベーターの工事を安く済ませるにはどうすればよい?
高額になりがちなリニア式の改修工事ですが、「汎用的なマシンルームレスロープ式エレベーターへ切り替える」という選択肢を取ることで、コストを大幅に削減できます。
マシンルームレスロープ式への切替によるメリット
- 部品や保守の選択肢が増える(=価格競争が生まれる)
- 将来の部品供給・メンテナンスも安心
- 保守メンテナンスを多くの独立系業者に対応してもらえるため保守費用も安価
まとめ:高額なリニア式エレベーターの改修、見積もりと選択肢の見直しが鍵
リニア式エレベーターの改修には、技術面・部品調達・建物との適合性など、いくつかの制限や費用面での負担がかかることがあります。メーカーからの高額な提案をそのまま受け入れるのではなく、マシンルームレスロープ式への切り替えを含めて選択肢を再検討することが、確実なコストダウンにつながります。
リニューアル=現状維持ではなく、よりコスト効率のよい方向への「切り替え」も選べる時代です。
「スマート修繕」では、オーチス製のリニア式エレベーターに関して、マシンルームレスロープ式への切替提案を含むセカンドオピニオンのご提供が可能です。メーカーの見積もりが高すぎると感じた方、長期的な維持費も含めて見直したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
エレベーター等修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- エレベータのリニューアル工事の支援実績は多数(過去1年で数百基、2025年2月現在)。特殊品である高速、油圧、リニア、ルームレスの実績もあり、社内にはエレベーター会社、ゼネコン、修繕会社など出身の施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
- 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。
電話で無料相談
24時間対応通話料・相談料 無料
Webから無料相談
専門家に相談する
こちらもおすすめ
本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者

坂本 高信
独立系最大手のエレベーター会社にて、営業現場および管理職として18年間従事。リニューアル、保守、修繕といった複数の部署で実務経験を積み、営業部長などの管理職も歴任。多様な案件を通じて、エレベーターの運用と維持に関する専門知識を培う。その豊富な現場経験を活かし、エレベーターリニューアルに関する実用的かつ現実的な視点から記事を監修。