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大規模修繕における鉄部塗装の重要性と費用・工程・注意点を徹底解説

更新日:2025年07月30日(水)

大規模修繕とは、マンションなど建物全体の劣化をまとめて補修し、安全性や美観を維持するために約12~15年周期で実施される工事です。その中で鉄部塗装とは、建物の共用部にある鉄製部材(手すりや扉枠など)に塗装を施すメンテナンスのことを指します。鉄部は時間とともに塗膜が劣化し、塗装が剥がれると内部の金属が露出して錆(サビ)が発生します。放置すれば錆が広がって構造の強度低下や見た目の悪化を招くため、大規模修繕工事において鉄部塗装は欠かせない工程となっています。 国土交通省が定める「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年改訂)でも、屋上防水や外壁塗装等の周期が12~15年とされる一方、鉄部塗装は雨ざらし部分・非雨ざらし部分とも5~7年程度での実施が推奨されています。このように他の工事より短いサイクルで塗り替えが必要になることから、鉄部塗装は建物の健全性を保つ上で非常に重要です。鉄部を定期的に塗装しておくことで建物の美観を維持できるだけでなく、錆や腐食の発生を防いで構造の安全性を確保できます。

鉄部塗装が必要な理由(錆・腐食・劣化による被害)

錆・腐食の防止と安全性向上

鉄は無防備なまま放置すれば空気中の水分で錆び始め、やがて内部まで腐食が進行します。錆が広がると金属が脆くなり、最終的には穴が開いて少し触っただけで崩れるほど強度が低下することもあります。例えば鉄製の外階段に大きな錆穴が開いた場合、耐久性が著しく低下して人が踏み抜く事故につながりかねません。鉄部塗装を行い錆の発生自体を防ぐことで、手すりがグラグラになる、扉枠が腐食して扉が閉まらない等の重大な問題を未然に防ぎ、建物の安全性を守ります。

建物の美観維持と資産価値への影響

錆びた鉄部は見た目に悪く、塗装の剥がれや変色は建物全体の印象を損ねてしまいます。外観の劣化したマンションは資産価値の低下を招き、賃貸マンションであれば入居者の満足度低下や新規入居者の敬遠につながり、結果的に空室増加に繋がる恐れもあります。鉄部塗装によって共用部が綺麗に保たれていれば、建物全体が明るく印象づけられ、資産価値の維持・向上にも寄与します。

以上のように、鉄部塗装は美観上の理由だけでなく建物の寿命延長や安全確保、資産価値維持の要であることが分かります。国土交通省の調査によれば、築年数が進むにつれ大規模修繕で鉄部塗装工事が実施される割合が高まる傾向にあります。これは建物が古くなるにつれ鉄部の劣化リスクが増大し、塗装の重要性が増すことを裏付けています。

鉄部塗装の対象部位と点検タイミング(階段手すり・玄関扉・フェンス・鉄骨階段など)

鉄部塗装の対象となる部位

マンション共用部分には意外に多くの鉄製品があります。具体的には以下のような箇所です。

手すり類

廊下やバルコニー、階段の手すり(支柱や笠木を含む)

階段・階段扉

鉄骨造の外階段や非常階段、およびその出入口扉

玄関ドア・枠

各住戸の玄関扉(鋼製ドア)とその枠

フェンス・門扉

屋上や敷地境界の鉄柵、エントランスの門扉

設備ボックス類

郵便ポスト、消火栓ボックス、メーターボックスなどの筐体

配管・設備

鉄製の給水管・排水管の露出部、避雷針、機械式駐車場の鉄骨部分 など

これらの箇所は定期的に点検し、塗膜の劣化や錆の有無をチェックする必要があります。特に雨ざらしになりやすい屋外階段や手すり、フェンス等は劣化が早いため注意が必要です。国交省ガイドラインでは鉄部塗装の目安周期をおおむね5~7年と示していますが、実際には建物の立地環境や部位の条件によって劣化スピードは異なります。海沿いや工場地帯のように錆びやすい環境では4~6年程度で塗り替えが必要になる場合もあります。したがって、少なくとも年1回程度は鉄部の定期点検を行い、錆の発生や塗装の剥がれが見られたら早めに対処することが肝心です。

大規模修繕の時期に合わせるのが理想ではありますが、鉄部塗装に関しては足場を組まずに施工できる箇所も多いため、劣化が進んでいる場合は大規模修繕を待たず単独で塗装工事を行うケースも増えています。長期修繕計画の中では、外壁塗装など他工事とは別のタイミングで鉄部塗装を盛り込んでおくと良いでしょう。

鉄部塗装の工程(ケレン→下塗り→中塗り→上塗り)

鉄部塗装工事は下地処理と複数回の塗り重ねによって初めて長持ちする塗膜が形成されます。その主な工程を順を追って解説します。

ケレン(下地処理)

最初に行うのがケレン作業です。ケレンとはサンドペーパーや電動工具を使って鉄部に付着した古い塗膜や錆を丹念に研磨除去する作業のことです。この下地処理を怠って錆や汚れが残ったまま上から塗装しても、塗料が下地に十分密着せず短期間で剥がれや不良を起こしてしまいます。錆が酷い場合は電動サンダー等で念入りに削り落とし、場合によってはわざと表面に細かい傷(目粗し)を付けて塗料の付着性を高めます。ケレン完了後は塗らない部分にビニールやマスキングテープで養生を施し、塗料の飛散から建物や設備を保護します。

下塗り(錆止め塗料の塗布)

下地処理と養生が終わったら、まず下塗りとして鉄部専用の錆止め塗料(プライマー)を塗ります。錆止め塗料は亜鉛や防錆顔料を含んでおり、鉄と空気・水分の遮断層を作ることで錆の再発を防ぐ役割を果たします。下塗りをしっかり行うことで、この後に塗る上塗り塗料が素材に密着しやすくなり、塗膜全体の耐久性も向上します。

中塗り(上塗り塗料の1回目)

次に中塗りとして上塗り用の仕上げ塗料を塗ります。通常、仕上げ塗料は同じものを2回に分けて塗り重ねるため、中塗りはその1回目にあたります。ウレタン塗料・シリコン塗料・フッ素塗料など選定した塗料をハケやローラーで均一に塗布し、乾燥させます。

上塗り(仕上げ塗装の2回目)

最後に上塗りとして仕上げ塗料の2回目を塗ります。中塗りと上塗りを重ねることで所定の膜厚(塗膜の厚み)を確保し、色ムラのない美しい仕上がりと十分な保護効果を得ます。上塗り塗装が完了したら養生を撤去し、塗り残しやムラがないか最終確認して工事完了です。

以上が基本的な工程ですが、施工業者によって品質に差が出やすいポイントでもあります。適切なケレンと三度塗りを実施することで強固な塗膜が形成される一方、悪質な業者の場合、中には錆止めを省略したり上塗りを1回しか塗らないといった手抜き施工を行う例も報告されています。確実に品質を担保するためには、信頼できる業者へ依頼しつつ、発注者側でも各工程が適切に実施されているかチェックすることが重要です。

鉄部塗装の費用相場(㎡単価・塗料種類・劣化度合い)

鉄部塗装の費用は施工面積と劣化度合い、使用する塗料によって大きく変動します。

ここでは一般的な相場観を示します。

まず㎡あたりの単価としては、おおよそ3,000~5,000円/㎡が一つの目安です。ただし実際の費用は部位ごとの形状や大きさによって変わります。例えば鉄骨階段全体の再塗装であれば約10~30万円、共用部の長いフェンスなら約5~15万円程度、各住戸の玄関扉1枚なら2~3万円前後が一般的な相場です。小さな郵便受けや消火器ボックス程度であれば数千円~1万円台で済むケースもあります。

次に塗料の種類による違いです。塗料にはウレタン系、シリコン系、フッ素系などグレードがあり、高耐久なものほど材料費・施工費は割高になります。例えばフッ素樹脂塗料は耐用年数が15~20年と長くシリコンより約2倍も長持ちする反面、単価も高めです。一方、ウレタン塗料は費用が安い代わりに耐久年数は10年未満と短めになります。劣化度合いも無視できません。錆が軽微なうちは簡易なケレンで済みますが、深刻な錆びつきがある場合は入念な下地処理や部材交換が必要となり、その分人件費・材料費が増加します。さらに高所作業で足場の設置が必要な場合は足場代が別途発生し、工事項目によっては数十万円規模になることもあります。

以上を踏まえ、正確な費用は物件ごとの状況によって異なるため、専門業者に現地調査と見積もりを依頼することが大切です。安易に「〇㎡で一律いくら」と断言する業者には注意し、塗料の種類や下地調整の範囲まで含めて比較検討しましょう。

業者選びで失敗しないためのポイント(施工不良・保証・実績)

鉄部塗装工事を成功させるには、信頼できる業者選びが重要です。

ここでは、業者選定時に注目すべきポイントを解説します。

施工内容の徹底確認(手抜き工事の防止)

鉄部塗装では下地処理や塗り重ねの有無で耐久性に差が出ます。悪質な業者の中には「錆止め塗装をせずに上塗りしてしまう」「規定の回数より塗り回数を減らす」などの手抜きを行う例もあります。契約前に工程を詳細に説明してもらい、ケレン作業や錆止め塗装を省略しないことを明示的に確認しましょう。

施工中も管理組合側で工程ごとの仕上がりを見ておくと安心です。ケレン後の素地の状態や塗り重ね状況を写真で報告してもらうなど、品質管理に積極的に関与する姿勢がトラブル防止につながります。

使用塗料と保証内容の確認

提案された塗料が建物の長期修繕計画に合ったグレードかをチェックします。安価な塗料を使えば初期費用は抑えられますが、その分早い周期で再塗装が必要になり結果的に割高になる恐れがあります。逆に高品質な塗料を採用すれば、通常5年周期の鉄部塗装を次回は10年後でも大丈夫というように延命できるケースもあります。多少費用が上がっても耐久性の高い塗料を選ぶことで、将来的なメンテナンスコスト削減につながるか検討しましょう。

また保証期間も重要です。鉄部塗装工事の一般的な保証期間は1~3年程度と比較的短いのが実情です。保証の対象範囲(塗膜の剥離や著しい錆発生など)と期間を契約前に確認し、引き渡し後も定期点検を行って早期に不具合を発見できる体制を整えておくことが求められます。

施工実績・信頼性の評価

業者の施工実績や経験も重要な判断材料です。特に鉄部塗装は職人の技量による差が出やすいため、豊富な経験を持つ業者を選ぶことが肝心です。過去の施工事例や顧客の評判などから信頼に足る会社か見極めましょう。

これらのポイントを踏まえて業者を選定すれば、「塗ったのにすぐ錆びてしまった」「追加費用が発生した」といった失敗を防ぎ、納得のいく鉄部塗装工事が実現できるでしょう。なお、見積もりは必ず複数社から取り、価格だけでなく工程内容や使用材料、保証条件まで比較することが大切です。

よくある質問(Q&A)

Q1: 鉄部塗装の適切な周期・頻度はどのくらいですか?

A: 国土交通省のガイドラインでは5~7年に一度程度が目安とされています。一般的にも5年前後を目安に再塗装を検討する管理組合が多いです。ただし立地環境によって錆発生のスピードは異なるため、沿岸部など錆びやすい環境では4~6年周期に縮めたり、逆に屋内の鉄部など錆びにくい箇所は多少延ばすケースもあります。重要なのは定期点検で劣化状況を把握することで、錆や塗膜劣化が目立ってきたら計画より早めでも塗装を実施する柔軟さが必要です。

Q2: 鉄部塗装をしないとどうなりますか?

A: 塗装を怠ると錆が進行し、金属が脆くなって穴が開いたり破損したりする危険性があります。手すりの破断や階段の崩落など重大事故につながる恐れもあり、放置が長引くほど後の補修費用も増大します。

Q3: 鉄部塗装工事で居住者にどんな影響がありますか?

A: 塗料の臭気と作業中の一時的な制限に注意が必要です。塗装中は溶剤臭がするため換気し、玄関扉の塗装時は乾燥する約2時間は扉を開け閉めできません。施工日程は事前に調整され、塗りたて部分に触れないなど掲示された注意を守れば大きな支障なく過ごせます。

Q4: 鉄部塗装に使用する塗料はどのように選べば良いですか?

A: ポイントは耐久性とコストのバランスです。耐久年数の長い高級塗料ほど価格は上がります。例えばフッ素樹脂塗料は15年以上持ちますが費用も高めで、ウレタン系塗料は安価な反面7~10年程度で再塗装が必要になると言われます。長期的な視野では、少し高価でも耐久性の高い塗料を選ぶと塗り替え周期を5年から10年程度に延ばせる場合もあり、結果的にトータルコストを抑えられます。管理組合の修繕計画に沿って、次回塗装までの期間や予算を考慮し、業者と相談して最適な塗料を選定すると良いでしょう。

まとめ:鉄部塗装で建物の安全性と資産価値を守る

大規模修繕における鉄部塗装の重要性、そして適切な施工方法や注意点について解説しました。鉄部塗装は建物の安全性と資産価値を守る生命線と言っても過言ではありません。定期的な塗装メンテナンスによりマンションの寿命は延び、適切に維持管理された建物は市場での評価も高まります。築年数が経っていても手入れの行き届いたマンションは住民に安心感を与え、良好な居住環境を長く提供できます。

管理組合やオーナーの方は、鉄部塗装を含む長期的な修繕計画を策定し、早め早めの点検・補修を心がけてください。信頼できる専門業者の協力のもと、適切なタイミングで確実な鉄部塗装工事を行うことで、建物の美観・安全性・資産価値を末永く維持していくことが可能です。

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  • 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
  • ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
  • 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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