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マンション地下ピットの雨水トラブルの原因と対処法

更新日:2025年08月25日(月)

近年、記録的な豪雨によって短時間に大量の雨が降り、マンション地下のピット内に雨水が流れ込むケースが増えています。排水能力を超える雨水が侵入すると、排水ポンプが正常でも排水が追いつかず浸水してしまうことがあります。また建物の老朽化や設備不良により、従来は問題なかった地下ピットに雨水が溜まるトラブルが発覚することもあります。地下ピットは普段目にしない場所のため、実害が出ない限り気付きにくく、発見が遅れると被害が深刻化しがちです。 本記事では、マンション地下ピットに雨水がたまる原因や放置するリスク、効果的な対策、点検・修繕工事を依頼する際のポイントや費用目安について解説します。

本記事のポイント
  • 地下ピットに雨水が溜まる原因と仕組みを理解できる。
  • 放置した場合に起こるリスクや被害の具体例がわかる。
  • 効果的な対策や業者への依頼方法を学び、安全を確保できる。

地下ピットに雨水がたまる原因とは?

マンション地下ピットに雨水がたまる主な原因は、地下からの湧水や構造上のすき間からの浸水、排水設備の不備(排水ポンプの故障やドレン詰まり)、および敷地の排水設計不良による雨水流入です。いずれもマンションで実際に発生している典型例であり、専門業者の調査で原因が特定できます。

地下ピットに水が溜まる原因として、地下水(湧水)がコンクリートの隙間から湧き上がってくる、コンクリート劣化によるひび割れや打継ぎ部から雨水が漏れ出すケースが多く、地下ピットは地面より低い構造上、豪雨時に周囲の地盤に染み込んだ雨水が蓄積し、入隅(コーナー部)や小さなひび割れから浸水することもあります

以下に主な原因について詳しく解説します。

地盤や構造の問題(湧水・ひび割れ)

地下水位が高い地域では、地下ピットに地下水が染み出しやすくなります。コンクリートの微細なすき間や施工不良の継ぎ目から地下水が侵入し、常に湿った状態になることがあります。また経年劣化で生じた躯体コンクリートのひび割れや、防水処理の不備も雨水・湧水の浸入口になります。激しい雨が降った際には地下部分まで水が浸透し、そうしたひび割れや入隅部からピット内に漏水が発生します。新築時に十分な防水対策がなされていない場合や、施工不良によって構造上の欠陥がある場合も、地下ピットに水が溜まる一因となります。

排水ポンプの故障

地下ピットに水が入っても通常は排水ポンプで外部へ排出する設計になっています。しかしポンプが故障・停止すると水を排出できず、ピットが満水状態になります。排水ポンプは交互運転や予備機の設置で信頼性を高めていますが、機器自体の寿命(一般に耐用年数は5~10年程度)や部品摩耗による性能低下、さらには停電や故障で作動しない事態が起こり得ます。例えば機械式駐車場の地下ピットでは、ポンプが動かないと豪雨時に車両が冠水する深刻な被害につながる可能性があります。定期点検を怠ってポンプの不良に気付かないと、知らぬ間に水位が上昇してしまいます。

ドレンや排水管の詰まり

地下ピットには各所の排水が集まるドレンや配管がありますが、落ち葉やゴミの蓄積で詰まると排水能力が低下します。実際によくあるのが、ピット内の排水口にビニール袋や枯れ葉が詰まりポンプに異物が入り込んで動かなくなるケースです。こうした詰まりが原因で排水不良に陥り、雨水が引かず溜まりっぱなしになることがあります。定期清掃やストレーナー(ゴミ受け)の設置をしていないマンションでは注意が必要です。

外構の排水設計不備

建物周辺(外構)の雨水排水が適切でないと、地表の雨水が地下ピットへ流入する恐れがあります。例えば敷地内の側溝や雨水桝が詰まっていたり、勾配不良で雨水が建物側へ流れてしまうと、行き場を失った雨水が地下ピットの開口部やすき間から侵入します。特に大雨時には、想定外の経路で雨水が建物下に集まるケースもあります。外構排水の能力不足や設計ミスは見過ごされがちですが、地下ピット浸水の隠れた原因となるため、敷地全体の排水計画の点検も重要です。

雨水がたまると何が問題?放置によるリスク

雨水が地下ピットにたまった状態を放置すると、建物や居住環境に多方面の悪影響が生じます。湿気がこもりやすい地下空間ではカビや腐敗菌が繁殖し、独特の悪臭が発生します。堆積した汚泥が酸素不足で腐敗すると、硫化水素などの有害ガスを生じ、健康被害や酸欠事故につながる危険もあります。

また、水に浸かった鉄部やコンクリートは腐食・劣化が進み、鉄筋の断面減少や構造耐久性の低下を招きます。さらに、ポンプ・バルブ・ケーブルなどの設備も故障しやすくなり、電気系統では漏電やショートから火災・感電事故に至る可能性があります。エレベーターや機械式駐車場では、制御盤や電装系の浸水によって運転停止や高額修理が必要になるケースも発生します。

加えて、停滞水はゴキブリやチョウバエなどの害虫発生源となり、通風経路を通じて居住区画へ侵入する恐れがあります。こうした問題は衛生・安全の両面に影響し、放置すれば建物価値や居住者の快適性を大きく損なうため、浸水は早期に排水・清掃し、再発防止策を講じることが不可欠です。

地下ピットの雨水対策はどうすべきか?

地下ピットで雨水トラブルを防止するには、防水処理の強化と排水設備の維持管理を両面から行う必要があります。具体的には、ピット内部の防水施工(塗膜防水やFRPライニングなど)による浸水防止策、排水ポンプの定期点検・老朽更新による排水機能の確保、排水経路(ドレンや配管)の定期清掃による詰まり防止、そして必要に応じてピット内の換気や乾燥設備を設置し湿気を抑える対策が効果的です。

主な雨水対策を以下にまとめます。

防水処理の強化

地下ピット内部の床・壁面に防水工事を施し、コンクリート自体に水が染み込まないようにします。代表的な工法は塗膜防水とFRP防水です。塗膜防水はウレタン系やポリマーセメント系の防水材を何層も塗り重ね、乾燥硬化させて防水膜を形成します。FRP防水はガラス繊維マットにポリエステル樹脂を染み込ませて硬化させる工法で、硬く丈夫な防水層を作ることができます。FRPは耐久性・耐食性に優れ、地下ピットのような常に湿気や水圧のかかる場所でも効果的です。また止水剤の注入(樹脂注入工法)も有効です。微細なひび割れからの漏水には、発泡ウレタン樹脂や高圧注入による止水材をコンクリート内部に送り込み、隙間を埋めて浸水ルートを遮断します。これら防水・止水工事を組み合わせ、雨水や湧水がそもそもピット内に入ってこないようにすることが第一の対策です。

排水ポンプの点検と更新

地下ピットに必須の排水ポンプは、常に良好な稼働状態を保つよう定期点検が欠かせません。マンションでは通常2台のポンプを交互運転させ冗長性を持たせていますが、それでも経年劣化は避けられません。一般に水中型ポンプの寿命は5~10年程度と短いため、異音・不動作など兆候があれば早めに新品交換を検討します。ポンプ点検では電流値や揚水量のチェック、フロートスイッチの動作確認、逆止弁の機能確認などを行い、非常用予備電源の整備も重要です。近年の豪雨に備え、ポンプの能力に余裕を持たせた上位機種への更新や、予備ポンプの追加設置も検討すると安心です。定期点検と適切な更新により、排水設備が肝心なときに動作しないというリスクを防ぎます。

ドレン・配管の定期清掃

地下ピット内の排水口(ドレン)や集水桝、排水配管は、少なくとも年1回程度は定期清掃して詰まりを防ぎます。土砂や枯葉・ゴミが堆積すると排水経路が細くなり、ポンプの吸い込み不良やオーバーフローの原因となります。清掃の際はピット底に溜まった泥やゴミをバキュームなどで除去し、ドレン配管内も高圧洗浄で洗い流します。特に秋口は落ち葉が入り込みやすいため注意が必要です。必要に応じて落ち葉侵入防止ネットやストレーナーを釜場(ピットの最深部)に設置すると効果的です。物理的にゴミが入り込まない工夫と日常的な点検清掃によって、排水経路の詰まりを未然に防止できます。

ピット内の換気・乾燥

地下ピットは構造上密閉性が高く湿気がこもりがちなので、換気設備や乾燥措置も有効です。多くのマンションではピット内に換気扇(強制換気装置)が設置されていますが、長年動かしていないと機能低下している場合があります。点検時に換気ファンが正常稼働しているか確認し、不調なら交換しましょう。平常時から換気・乾燥に配慮し、カビや結露が発生しにくい環境を維持することが望ましいでしょう。

点検・修繕工事を依頼するときのポイント

地下ピットの雨水問題を解決するには、原因を正確に突き止めた上で適切な修繕工事を行う必要があります。そのためには、雨水侵入の原因調査を専門家に依頼すること、信頼できる専門業者を選定すること、そして工事の費用相場と見積もりの取り方に注意することが重要なポイントです。

以下に具体的なポイントを解説します。

原因調査の重要性

まず雨水が溜まる根本原因を突き止めないと、場当たり的な対処では再発する恐れがあります。専門の調査会社や建築士に依頼し、雨水侵入の原因調査を実施しましょう。調査では地下ピット内の水を一旦排出・乾燥させ、どこから水が染み出すか入念に観察します。加えて地下水位や周辺土壌、水道配管からの漏水の有無などもチェックし、湧水なのか雨水なのか、構造的欠陥なのかを判断します。マンションによっては雨水なのか給排水管からの漏水なのか切り分けが難しいケースもあるため、第三者の専門家に診てもらうことが重要です。

専門業者の選定基準

修繕工事を依頼する業者は、信頼性と専門性の高いところを選びましょう。具体的には、止水工事や防水工事の実績が豊富で、マンションの地下構造に詳しい業者が望ましいです。業者選定時には過去の施工事例や資格(防水施工技能士、一級建築士等)の有無を確認します。また利害関係にも注意が必要です。管理会社任せにすると、管理会社がデベロッパー系列である場合など、十分な対応が期待できないケースもあります。客観的な立場で診断・提案してくれる第三者の専門家(例えばマンション管理組合向けコンサルタントや独立系の調査会社)に相談すると安心です。

工事費用の目安と見積もりの取り方

地下ピット関連工事の費用は内容や規模によって幅がありますが、相場観を知っておくと予算計画の参考になります。防水塗装や止水注入のみの場合と、排水ポンプ交換や配管改修を含む場合では費用が大きく異なります。一例として、エレベーターピット漏水の止水工事では工事費用が40万円程度(規模に応じ変動)となります。もちろん現場状況によって増減しますが、複数の業者から相見積もりを取れば、おおよその適正価格を把握できるでしょう。見積もり依頼の際は、各社に同じ調査結果や要望を伝えて比較することが大切です。内訳や工法の提案内容も注意深く確認し、不明点は遠慮なく質問しましょう。またマンションの長期修繕計画に防水工事やポンプ更新が含まれている場合は、計画と調整して実施すると費用捻出がしやすくなります。工事内容によっては助成金や保険(施設賠償責任保険など)の適用可能性もあるため、管理組合として情報収集しておくと良いでしょう。

まとめ:早期発見・早期対応が地下ピット浸水を防ぐカギ

マンションの地下ピットに雨水が溜まるトラブルは、近年の豪雨増加や建物の劣化により誰にでも起こり得る問題です。しかし早期発見と早期対応によって、被害を最小限に抑えることができます。定期点検でピット内に雨水滞留がないか確認し、異常があれば原因を調査してすぐに対策工事を実施しましょう。専門業者による防水処理や排水設備の整備、そして日頃からの清掃と換気による予防策の積み重ねにより、地下ピット浸水の発生リスクが大幅に低減します。本記事を参考に、雨水トラブルのない快適で安全な住環境を維持していきましょう。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

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