マンション大規模修繕は18年周期で可能?従来12年周期との比較と成功のポイント
更新日:2025年07月31日(木)
マンションの大規模修繕工事は一般的に「12年周期」が目安とされてきました。これは国土交通省のガイドラインや、建築基準法で外壁調査をおおむね10年ごとに義務付けた改正(平成20年)との兼ね合いから、約12年で大規模修繕を実施するのが標準的だったためです。 しかし近年、「18年周期」というキーワードが管理組合や理事会で話題に上るようになっています。高額な修繕コストと居住者負担を考え、修繕のスパンを延ばせないかという関心が高まっているのです。この記事では、この詳細について考察しています。
- 本記事のポイント
- 国交省の調査やガイドライン改訂に基づき、従来の12年周期から18年へ延ばす選択肢の妥当性が理解できます。
- 修繕回数削減や居住者負担軽減といった利点だけでなく、劣化リスクや資金準備の課題も具体的に学べます。
- 劣化診断・長期資金シミュレーション・スマート修繕活用など、実効性ある見直し手法とその効果を確認できます。
18年周期の背景と根拠(国交省ガイドラインや実態調査より)
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、マンションの長期修繕計画は「30年以上かつ大規模修繕工事が2回以上含まれる期間」で立てることが基本とされています。従来ガイドライン上は大規模修繕の周期目安を約12年としていましたが、2021年の改訂で各工事項目ごとに「12〜15年程度」と幅をもたせる記載に変更されています。つまり、使用する部材や工法によっては15年程度まで延ばせる可能性が示唆されたのです。
実際、国交省の令和3年度「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、全体の約7割が12〜15年周期で大規模修繕を実施しており、平均では約13年となっています。初回の大規模修繕は中央値で築14年(平均約15.6年)ほどで行われており、従来はこの範囲内が大半でした。しかし近年は技術の進歩や保証制度の整備によって18年程度まで延伸するケースも出始めています。
こうした取り組みが18年周期という選択肢の裏付けとなっており、「大規模修繕=12年周期」という固定観念が見直されつつあると言えるでしょう。
修繕周期を延ばすメリットとリスク(資金計画・劣化リスク・居住者負担)
修繕周期を18年など長く延ばすことには大きなメリットがありますが、同時にリスクも伴います。ここでは資金計画や建物劣化、区分所有者負担の観点からメリットとデメリットを整理します。
メリット(長周期化の利点)
修繕の周期を長くすることで、マンションの寿命を迎えるまでに必要な大規模修繕の回数を抑えることができます。たとえば、従来の12年周期を18年周期に延ばせば、長期的に見ると工事回数を1回以上減らせる可能性があり、それに伴って総工事費の削減につながります。
また、大規模修繕は多額の費用負担に加え、工事期間中の騒音や足場設置などで居住者の生活にも影響があります。周期を延ばすことで、そうした経済的・生活的な負担を軽減できる点も長周期化のメリットといえます。
リスク・注意点(延伸に伴う懸念)
一方で、修繕周期をむやみに延ばすことにはリスクもあります。最も懸念されるのは、建物の劣化が予想以上に進行し、外壁タイルの剥落や防水性能の低下など、重大な不具合につながる可能性があることです。こうした劣化を放置すると、落下事故や補修費用の増大を招く恐れがあります。
実際、国土交通省のガイドラインでは、12年周期が一般的とされる中で、「たとえ18〜20年周期で計画していても、定期調査で劣化が確認されれば早期に修繕を行うべき」とされています。また、経年劣化に応じた小規模な補修を適切に行わないと、建物そのものの寿命が短くなるリスクもあります。
さらに、周期を延ばすためには高耐久な材料や工法を導入する必要があり、その分1回あたりの工事費用は高額になる傾向があります。資金面では、次の修繕までの期間が長くなるぶん、積立金に余裕を持たせておかないと、将来の工事に支障をきたす可能性も考えられます。
また、居住者の安心感という点では、修繕の間隔が長いことで「本当に建物の状態は大丈夫なのか」といった不安の声が出ることもあります。長周期化を進める場合は、建物の維持管理体制や調査・点検の実施状況などを丁寧に共有し、理解と合意を得ることが大切です。
実際の大規模修繕の事例と費用の推移(12年・15年・18年での比較)
では、実際に修繕周期を延ばした場合の費用はどのように推移するのでしょうか。業界動向や実例を踏まえて12年・15年・18年周期のケース比較を見てみます。
国土交通省の調査データでは、修繕工事の回数を重ねるごとに1回あたりの費用は増加傾向にあることが示されています。築年数が進む2回目以降の工事では部材の交換や全面的な補修が必要になる箇所が増え、費用が膨らみがちです。一方で、前述のように周期を延伸すれば総回数自体を減らせるため、長い目で見たトータルコストは削減できる可能性があります。例えば12年周期で60年間に5回行う場合と、15年周期で4回行う場合を比べると、1回分の大規模工事(数千万円〜数億円)を丸ごと省略できる計算です。18年周期なら3〜4回程度に抑えられるため、さらに削減効果は大きくなります。
もっとも、1回あたりの工事費は長周期化するほど上がる傾向もあります。高耐久仕様により材料費や工事手間が増えるためですが、それでも総額では長期で見れば安くなるケースが多いでしょう。事例として、東京都内のある大規模マンション(約350戸)では、一部に長寿命型の材料を採用した18年周期相当の工事を行いながら、他社試算より約19%も費用を減額できました。また名古屋市のマンション(約65戸)では従来8,100万円と見積もられていた修繕工事費が約6,700万円(約18%減)に収まったケースもあります。これらは新しいアプローチや適切な発注手法によって、長周期化とコスト削減を両立した事例です。
修繕計画を見直すときの注意点(長期修繕計画・劣化診断・優先順位の見極め)
「修繕周期を見直したい」と考えたとき、管理組合がまず取り組むべきは現行の長期修繕計画と建物コンディションの再評価です。計画変更にあたっては以下の点に注意してください。
長期修繕計画の再点検・資金シミュレーション
長期修繕計画は最低でも5年ごとに見直し、現状を反映させることが国交省から推奨されています。まず現在の計画期間や周期が適切か、修繕積立金の積立額と支出予定が合致しているかを確認しましょう。修繕周期を延ばす場合は、次回工事時に資金が不足しないよう積立金シミュレーションを慎重に行います。必要に応じて積立金の増額や一時金徴収の有無など、資金面の対策も検討しましょう。
専門家による建物劣化診断の実施
延伸の是非は建物の状態次第です。「まだまだ綺麗だから延ばせるだろう」という感覚だけで判断するのは危険です。まずは建築士等の専門家に劣化診断を依頼し、外壁・鉄部・防水・設備配管など各部位のコンディションを客観的に把握します。診断結果によっては計画通り工事を延長しても問題ない部分と、延長すると不具合リスクが高まる部分(例:防水や外壁の一部劣化が進行)とが見えてきます。この現状把握なしに周期変更を決めることは避け、延伸できるかどうかの根拠を把握します。
改修の優先順位と範囲の見極め
診断結果を踏まえ、どの工事を今回実施し、どの工事を次回以降に見送るかを検討します。たとえば劣化の激しい外壁や屋上防水は予定通り行う一方、状態の良い設備機器の更新は次回に延ばす、といった優先順位づけです。国交省のガイドラインにもあるように、修繕計画は各マンション固有の事情に合わせて柔軟に変更すべきものです。「全部まとめて延長」ではなく、必要な所には適時手を打つことで、延伸によるリスクを抑えられます。
法令遵守と安全確保
周期見直しの際も、建築基準法に基づく定期報告(外壁全面調査は原則10年ごと)や自治体の指導はきちんと守る必要があります。仮に長期計画で18年周期としていても、法定点検で問題が見つかれば臨機の補修が不可避です。また定期点検を怠って事故が起これば管理組合の責任が問われかねません。「延ばせるなら放置して良い」という訳ではないことを肝に銘じ、安全第一で計画を見直しましょう。
以上のように、長期修繕計画の緻密な見直しと専門家の診断結果に基づく計画調整が、修繕周期延長の成否を分けます。慎重に検討を重ね、組合全体で合意形成を図ったうえで計画変更に踏み切ることが重要です。
「スマート修繕」でできること(中立的な診断、費用の見える化、合理的な進め方で、修繕周期の最適化を支援)
スマート修繕は、マンションの管理組合を支援する修繕工事の見積・工事支援サービスです。第三者である専門家が伴走し、適正な工事内容と価格を実現することを目的としています。
透明性・コスト削減・専門家の中立的サポートを特徴とする新しい仕組みであり、「18年周期」のような修繕計画の最適化にも貢献します。
スマート修繕の特徴をいくつか挙げます。
中立的な建物診断で、必要な工事を見極め
スマート修繕では一級建築士事務所の専門家が建物の劣化状況を診断します。管理会社や施工業者に依頼する場合と異なり、「工事ありき」ではなく劣化状況に応じて「工事延期」や「部分補修」の提案をしています。第三者の視点で本当に必要な工事だけを見極めるため、不必要な工事を実施するリスクを避けられます。
費用の見える化
登録会社制で複数の優良施工会社から相見積もりを取り、さらに過去データに基づく見積査定で価格の妥当性をチェックします。その結果、管理組合は複数社の見積提案を比較検討でき、相場とかけ離れた高額見積もりで発注するリスクがなくなります。既存の見積もりから数十パーセントのコストダウンを実現したケースもあり、適正価格の見極めが重要かがわかります。
設計監理不要の合理的プロセス
従来はコンサルタント(建築士事務所など)が修繕仕様を設計し、施工会社を入札で選び、工事監理を行う方式が一般的でした。スマート修繕では、施工会社選定から契約、工事中のサポート、工事完成まで専門家がワンストップで支援します。そのため検討にかかる期間や手間が大幅に圧縮され、実際計画期間は設計監理方式の半分以下で済む場合もあります。プロセスの短縮がコスト削減にもつながり、管理組合の負担軽減と工事費高騰の抑制に寄与します。
コストダウンと安心の仕組み
スマート修繕に登録する施工会社は管理会社系列でない独立系のみで、リベートや談合といった慣習を嫌う優良企業が揃っています。サービス利用料も発注者(管理組合側)は無料(施工会社からのマーケティング費で運営)となっており、気軽にご相談いただけます。さらにサービス独自の「工事完成保証」で、スマート修繕が工事完成を保証します。透明性と信頼性の高い仕組みで、実際にこれまでの支援実績では、平均で15〜20%以上のコスト削減を実現しています。
以上のように、スマート修繕を活用すれば、建物の状態を正確に把握しながら、費用面の透明性も確保できます。こうした仕組みによって、修繕計画の見直しがしやすくなり、18年周期といった長期スパンでの修繕も、現実的な選択肢として検討できる可能性が高まります。
導入事例と成果(修繕コストの適正化・トラブル回避の実績)
スマート修繕では、これまでに数多くのマンション・ビルで導入いただき、修繕コストの最適化やトラブルの未然防止といった多数の実績があります。以下に、代表的な事例をご紹介します。
【事例①】大規模タワーマンション(東京都・約350戸)
当初、他社の見積は約5.5億円でしたが、スマート修繕のサポートにより約4.5億円まで圧縮(約19%減)。一部には長周期化対応の高耐久材料も取り入れつつ、必要な工事内容の見直しと適正な競争入札によって、大幅なコストダウンと品質の両立を実現しました。
【事例②】中規模マンション(神奈川県・約37戸)
管理会社経由の従来見積と比較して、最終的な工事費は25%以上の削減に成功。品質・納期・対応面いずれもご満足いただき、「全ての面で納得のいく内容だった」との声をいただいています。修繕費用の透明化と納得感のある進行で、組合内の合意形成にもつながりました。
【事例③】賃貸マンション(愛知県・一棟オーナー)
スマート修繕で相見積もりを実施した結果、当初想定されていた金額のほぼ半額というご提案に至り、費用対効果の高い修繕を実現しました。提案内容の丁寧な説明と迅速な対応で、安心して進められたとご評価いただきました。
一部の実績をご紹介しましたが、スマート修繕では「工事内容の妥当性」と「費用の適正性」を両立する仕組みによって、余計な支出や不要な工事を回避し、市場原理を働かせた納得感のある価格での工事実施を可能にしています。
また、「相場がわからないまま高額な工事を発注してしまう」「管理会社の提案をそのまま受け入れてしまう」といった従来ありがちな課題も、スマート修繕のご利用により確実に防ぐことができます。
大規模修繕に不慣れな管理組合の皆さまでも、専門的な知見と実績豊富な支援を通じて、安心・納得の修繕計画を進めていただけます。
まとめ:18年周期を成功させる鍵は「点検・診断の精度」と「仕組み選び」
大規模修繕の周期を18年へ延ばすことは、総費用の抑制や修繕積立金の負担軽減に寄与する、有効な選択肢のひとつです。ただし、その実現には建物の安全性・資産価値を損なわないための工夫が必要不可欠です。
とくに重要となるのが、「劣化の兆候を的確に捉える点検・診断の精度」と、「価格・品質のバランスがとれた工事を実現できる発注プロセス」です。周期延伸は、漫然と先送りするものではなく、建物の状態を根拠に判断し、合理的かつ透明性のある手法で進めていくべき取り組みです。
管理組合だけで判断を抱え込むのではなく、専門的な視点や最新の仕組みを取り入れることで、無理のない長期修繕計画が立てられます。周期の見直しを検討している段階であれば、一度専門家に相談し、複数の方法を比較検討してみることをおすすめします。将来にわたって安心して暮らせる住まいのために、今できる最善の選択を考えていきましょう。
大規模修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
- 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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