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機械式駐車場の法定点検は義務化されている? 業者の選び方や注意点

更新日:2025年04月14日(月)

機械式駐車場は、都市部のマンションや商業施設で広く活用され、限られたスペースに多くの車両を収容できるメリットがあります。しかし、その一方で、定期的なメンテナンスを怠ると故障や事故のリスクが高まります。そのため、法定点検の有無が気になるところです。 実際、国土交通省によれば平成19年度以降だけでも機械式駐車場で一般利用者が死亡・重傷となる事故が少なくとも26件発生しており、子どもが亡くなる痛ましい事故も起きています​。その意味では、法定点検があるようにも思えなくもありません。果たして、機械式駐車場に法定点検は存在するのでしょうか? 本記事では、管理者やオーナーの方向けに機械式駐車場の法定点検について、基本知識から頻度・費用、業者選定や発注時のポイントまで徹底解説します。安全で信頼性の高い駐車場運営のためにぜひ参考にしてください。

本記事のポイント
  • 機械式駐車場の法定点検は法的義務ではないものの、安全性確保や事故防止のために必要であることを学べる。
  • 機械式駐車場の適切な点検頻度や、維持費・修繕費の具体的な相場、費用に影響する要素がわかる。
  • 点検業者選定の際に注意すべきポイントや契約内容の決め方、発注時の留意事項を具体的に把握できる。

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機械式駐車場の法定点検とは?

機械式駐車場の法定点検とは、機械式駐車設備を安全に運用するために定期的に実施する点検作業のことです。本来「法定点検」という言葉は法律で義務づけられた検査を指しますが、機械式駐車場の場合、エレベーターのような厳密な法定検査制度は存在しません。

それでも、機械装置の故障や劣化を早期に発見し重大事故を防ぐために、専門業者による計画的な点検・保守が不可欠です。点検作業では駐車装置全体の動作確認や各部の状態チェックを行います。例えば、以下のような項目が点検されます。

機構部の動作確認

昇降や旋回など装置の基本動作に異常がないかテストします。動作中の異音や振動も確認します。

部品の摩耗・劣化点検

ワイヤーロープやチェーン、ベルト類の摩耗具合、油圧シリンダーのオイル漏れの有無などをチェックします。必要に応じて給油や部品交換を行います。

安全装置の機能確認

非常停止ボタンやセンサー、インターロック(扉が開いたまま動作しない仕組み)など、安全確保のための装置が正常に働くか試験します。

ボルト・ナット類の緩み確認

構造体を支えるボルトの締付け状態を点検し、緩んでいれば増し締めします。

電気系統の点検

配電盤やモーターの温度・異臭の確認、配線の劣化チェック、必要に応じた絶縁抵抗の測定などを行います。

このように、機械式駐車場の点検では機械的・電気的な総合チェックを実施し、不具合が見つかれば調整・修理など適切な措置を講じます。定期点検を継続することで、事故の未然防止だけでなく装置の寿命延長や美観維持にもつながり、結果的にコスト削減にも寄与します。管理者としては、単なる義務感ではなく「安全確保と資産価値維持のための投資」という意識で点検に取り組むことが重要です。

機械式駐車場の法定点検は義務化されているのか?

結論から言えば、機械式駐車場の定期点検は法律上の義務(法定検査)として明文化されているわけではありません​。エレベーター等は建築基準法に基づく年次検査が義務付けられていますが、機械式駐車場には国が定めた定期検査制度が存在しないのが現状です。そのため「法定点検」という言い方をしても、法律で頻度や項目が直接規定されているものではありません。

しかし、法律で義務がないからと言って点検を怠ってよいわけではありません。機械式駐車場の管理者(オーナー)には利用者の安全を確保する責任があります。国土交通省が策定したガイドラインでは、管理者は機械式駐車場を常に安全な状態に維持するため、専門業者による定期的な保守点検を実施すべきことが明確に示されています​。

実際、ガイドライン「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」において、管理者は自ら点検を行わない場合は保守点検業者と契約を結び、機械式駐車設備の使用頻度に応じた定期点検を実施させるものとされています​。これは法律上の強制ではないものの、事実上「安全管理上の義務」といえるでしょう。

加えて、万一点検を怠ったことで事故が起きれば、管理責任を問われる可能性があります。民事上は損害賠償責任、場合によっては業務上過失致死傷など刑事責任に発展するリスクもあります。実際の事故例からも、適切な点検・保守をしていれば防げたと考えられるケースが少なくありません。

以上より、機械式駐車場の点検は法律に定めがなくても実質的には「必須」と考えるべきです。法令遵守という観点だけでなく、利用者の命を守るために主体的に取り組みましょう。

機械式駐車場の点検はどれくらいの頻度で実施するのか?

機械式駐車場の点検頻度は、国土交通省のガイドラインで「1~3ヶ月に1度」が目安とされています​。これは機種のタイプや利用頻度に応じて調整すべきものですが、少なくとも四半期に一度、多くの場合は月例点検として毎月1回程度の専門業者による点検が推奨されます​。

例えば、利用頻度が高かったり屋外に設置され雨風にさらされる駐車場では、1〜2ヶ月に1回ペースでこまめに点検した方が安全です。逆に利用台数が極めて少ない装置でも、3ヶ月に1回は最低限プロによる点検を受けるようにしましょう。

日常点検(簡易点検)の重要性も見逃せません。専門業者による定期点検とは別に、管理員やオーナー自身が日常的に装置の様子を確認する習慣をつけると良いでしょう。具体的には、「毎日運転前に支障物が装置内にないか目視確認する」「運転操作時に異常な音がしないか耳を澄ます」「非常停止ボタンや警報ブザーを定期的に試してみる」などです。

簡単なチェックでも不具合の早期発見につながりますし、業者点検のタイミング以外で発生したトラブルの兆候に気付ける場合があります。

なお、業者による年次点検や精密検査も検討しましょう。毎月・毎週の点検では主に動作確認や消耗部品の交換が中心ですが、例えば年1回程度はモーターや制御盤の精密測定(絶縁抵抗値の確認等)や大掛かりな調整を行うケースもあります。こうした包括的なメンテナンス計画を立て、「日常点検+定期(専門)点検+長期的な精密点検」を組み合わせていくことで、安全性と装置寿命のバランスを最適化できます。ガイドラインの目安を下回らない頻度で、自社の駐車場の状況に合わせた点検スケジュールを策定することが大切です。

機械式駐車場の維持費用

点検費用の目安

機械式駐車場の維持管理費用は、装置の種類や規模、契約内容によって異なります。一般的には、1パレットあたり1回の点検費用は3,500円~4,500円程度(2025年現在)で、年4回以上の定期点検が推奨されています。これを年間の費用に換算すると14,000円~18,000円程度となるため、月額では約1,500円程度です。

修繕費用の目安

機械式駐車場の修繕費用は、主に22年~28年ごとに行われる大規模修繕(部品交換や装置更新)として発生します。1パレットあたり80万円~150万円が一般的な目安とされています。

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年改訂)によると、機械式駐車場の方式別の修繕費の目安は以下の通りです。

参考:「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」|国土交通省


機械式駐車場の機種(方式)


修繕工事費(1台あたり月額)​

2段(ピット1段)昇降式

6,450円/台・月

3段(ピット2段)昇降式

5,840円/台・月

3段(ピット1段)昇降横行式

7,210円/台・月

4段(ピット2段)昇降横行式

6,235円/台・月

エレベーター方式・垂直循環方式

4,645円/台・月

その他(上記以外の方式)

5,235円/台・月

機械式駐車場1台あたりの月額維持費用は、点検費用と修繕費用(将来的に発生する部品交換や装置更新に備えるための積立金)は、方式別にみると4,645円~7,210円が目安となり、年間では約6万円~8万円程度を見込んでおくとよいでしょう。

留意点として、機械式駐車場の維持費は装置の稼働率に関わらず固定的にかかる点が挙げられます。たとえ駐車場の空き区画が多く利用率が低くても、装置全体の点検・維持費は基本的に変わりません​。

そのため、使用者が減って駐車場収入が目減りしている状況では、一台あたりの維持コスト負担が相対的に大きくなってしまいます。管理組合などでは、駐車場使用料収入と維持費のバランスを長期的に考え、必要に応じて維持費用を補填する積立金を確保しておくことが重要です。

契約形態による費用の違い

機械式駐車場の保守契約には、定期点検と消耗部品交換のみを行う「POG契約」が一般的です。POG契約では、定期点検費用が比較的抑えられる一方、故障時の修理費用は都度発生します。そのため、設備の劣化状況や長期的なコストを考慮しながら契約内容を決定することが重要です。

なお、フルメンテナンス契約については、一般的な機械式駐車場管理には適用されず、リース契約時に限られるため、本記事では詳細な説明を割愛します。

点検を依頼する業者の選び方

機械式駐車場の保守点検を依頼する業者を選定する際は、価格だけでなく技術力や実績、対応力などを総合的に評価することが肝心です​。具体的には、次のようなポイントに着目すると良いでしょう。

対象機種に関する専門知識と経験

自社の駐車装置と同型または類似の装置を扱った豊富な実績があるか確認します。メーカー系列の業者であれば自社製品について詳しい強みがありますし、独立系業者でも多数の機種を経験していればノウハウが期待できます。技術者資格の保有状況も参考になります。

緊急時の対応力

24時間365日対応のコールセンターや迅速な出動体制があるかを確認しましょう。深夜や早朝の故障にも駆け付けてもらえる業者であれば安心です。契約内容によっては緊急対応費用が別途かかる場合もあるので、その点も含め比較検討します。

提示された保守内容と範囲

見積もり時に、どこまでの作業・部品が含まれているか明確に説明を受けましょう。点検項目や頻度、消耗部品の交換範囲、故障時の修理費用負担などを把握します。各社で提案内容が異なる場合はチェックリストを用いて比較すると効果的です。国交省の指針でも、契約前に必要情報を業者から提示させ、内容を十分精査するよう求めています​

見積金額の妥当性

価格は安いに越したことはありませんが、極端に安い場合は作業内容の省略や経験不足によるものではないか注意します。複数社から見積もりを取り相場感を把握しましょう。また、値引き交渉だけでなく契約内容の精査(不要な作業の除外や頻度調整)によってコスト最適化を図ることも可能です。

以上を踏まえ、信頼できる業者を選ぶためには総合評価が重要です。国土交通省のガイドラインでも「価格のみによって決定するのではなく、専門技術者の能力や実績、緊急時対応力等を総合的に評価すること」と明記されています​。特にマンション管理組合などでは従来から契約している業者を何となく継続しがちですが、定期的に契約内容や料金を見直し、必要に応じて複数社の提案を比べることが大切です。

メンテナンスを依頼するときの注意点

業者に機械式駐車場の点検・メンテナンスを発注する際には、契約内容や進め方についていくつか注意すべきポイントがあります。以下に主な注意点をまとめます。

契約範囲と作業内容を明確化する

点検契約を結ぶ際は、点検の頻度、項目、含まれる作業内容(清掃・給油・消耗部品交換の範囲など)を詳細に取り決めましょう。契約書に盛り込むべき事項については国土交通省もチェックリストを提示しています。特に修理対応の扱い(どこから追加料金になるか)や緊急対応費用の有無などはトラブルになりやすいため、事前に確認・明記しておくことが重要です。

見積もり時に十分な情報提供を行う

新しく業者に発注する場合は、事前に装置のメーカー・型式、設置年月、現在の不具合状況や過去の修理履歴などを伝えましょう。可能であれば業者に現地確認の機会を提供し、装置の実物を見てもらった上で見積もりを出してもらいます。情報不足のまま契約すると、後から「想定外の劣化が見つかった」として追加費用が発生する恐れもあります。

緊急時の連絡手順・対応体制を取り決める

契約時に、故障や閉じ込め事故など緊急事態が起きた際の連絡窓口や対応プロセスを確認しておきます。例えば「24時間受付のコールセンターに連絡→○時間以内に技術者到着→復旧までの代替措置」等のフローを双方で共有します。また、夜間・休日の出動費用の扱いも事前に合意しておくと安心です。

点検報告書の受領と記録保存

点検実施後には必ず点検報告書や作業記録票を受け取りましょう。どの項目を点検し、どんな結果だったのか、不具合や調整内容まで詳しく報告してもらいます。それらの書類はファイリングして保管し、次回以降の点検や将来の装置更新時に活用します。管理者が交代する場合にもこれら記録を引き継ぐことが大切です(国交省指針でも文書の保存・引継ぎが求められています)。

契約更新・業者変更時の注意

定期契約は1年ごとや複数年で更新されるケースがありますが、更新前には必ず内容と費用を見直しましょう。必要に応じて他社から相見積もりを取り、より良い提案がないか検討します。ただし業者を変更する際は、旧業者から新業者へ装置の情報共有(取扱説明書や過去の点検記録の引渡しなど)を確実に行い、引継ぎ漏れがないようにします。また、メーカー系から独立系に替える場合は純正部品の入手方法や保証の扱いも確認しておきましょう。

以上の点に留意することで、契約後の「こんなはずではなかった」というトラブルを防ぎ、スムーズに点検業務を進めることができます。特に初めて機械式駐車場の保守を発注する場合は、専門用語や装置の仕様に戸惑うかもしれません。その際は遠慮せず業者に説明を求め、必要であれば第三者の専門家に同席してもらうのも良策です。安全管理と契約管理の両面からしっかり準備し、信頼関係に基づいた発注を心がけましょう。

まとめ:法定点検は義務ではない

機械式駐車場の法定点検について、導入背景から頻度・費用、業者選定や契約上の注意点まで解説しました。繰り返しになりますが、機械式駐車場の点検は法律上の義務ではないものの、利用者の安全確保と設備の長寿命化のために不可欠な取り組みです。国土交通省のガイドラインでも「1~3ヶ月に1度を目安」に専門技術者による点検を行い必要な措置を講じることが強く推奨されています​。管理者・オーナーの方は、このガイドラインを一種の標準と考えて計画的な保守点検を実施していきましょう。

適切な点検とメンテナンスを継続すれば、重大事故の防止だけでなく装置の故障頻度も減り、結果的に修繕コストの削減や利用者からの信頼向上につながります。逆に点検を怠れば、人命に関わる事故リスクや高額な修理費用の発生に加え、駐車場の長期使用停止による管理上の大きな課題につながる可能性もあります。

最後に、安全で円滑な駐車場運営は日々の小さな管理の積み重ねです。利用者への周知徹底(機械式駐車場の正しい使い方や注意事項の掲示)、異常を感じた際の迅速な対応、そして専門家との連携が重要となります。管理者自身が設備の状態に関心を払い、プロの力もうまく借りながら、機械式駐車場の安全性向上に努めましょう。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

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