タワマンの大規模修繕は難工事?工事内容と費用・事業者選定のコツや成功事例を解説
更新日:2025年01月09日(木)
建物の規模が大きく戸数が非常に多いことから、「普通の規模のマンションでも大変なのに・・」と考えられがちなタワマン=タワーマンションの大規模修繕ですが、実際にどうなのでしょうか。 確かにタワマンの大規模修繕工事自体には、さまざまな技術上の難点があると言われています。 この記事では、タワマンの大規模修繕工事の工事内容や工期、費用、業者選定などについて、一般的な規模のマンションとの違いや、困難を克服した成功事例をご紹介いたします。
- 本記事のポイント
- タワーマンションの大規模修繕で、適正な価格と質の高い工事を実現する方法がわかる。
- 信頼できる業者を見極めるポイントが明確になる。
- タワマンならではの課題を把握し、工事の進行をスムーズにするコツがわかる。
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タワマンの大規模修繕とは【概要】
この項では、タワマンの大規模修繕の概要についてご説明します。
タワマンの歴史がいつから始まるかは諸説ありますが、おおむね30年以上となります。技術が進んでもその大規模修繕工事の難易度は完全に解決を見ていません。
タワマン(タワーマンション)とは?
タワーマンションの法的な定義はありませんが、一般的な通念として20階建て・高さ60m以上のマンションを指します。
古くは1970年代から供給が開始され、建築基準法の改正が行われた1997年以降、日影規制や容積率記載の緩和でタワーマンションの着工数が増えていきました。
建物の大きさから、修繕の工事は大規模となり、そのための技術も日進月歩で改善されてきています。
タワマン大規模修繕の現状
1997年以降、2003年頃に建設が急増したため、2025年は多くのタワマンが竣工から22年目を迎え、大規模修繕の時期となります。
中高層マンションは足場の方式などの施工方法が変わり、複雑になります。マンションの仮設工法は「鋼製足場」「ゴンドラ」「移動昇降式足場」の3種類がありますが、足場が適用可能な建物の高さ45m=マンションの14~15階を超えると、外壁工事をゴンドラなどによる無足場で行うためです。この点は時代を経ても変わっていません。
また、高所ならではの作業効率の悪さや天候の制約、特殊な工法を用いるケースなどが、タワマンの場合の工事の難易度を高めています。
タワマンの大規模修繕が難しい理由
なぜ、タワマンの大規模修繕は難しいと言われるのか。その理由について、さらに詳細を解説します。
工事期間の長さと費用
超高層マンションの工期目安は、1フロアで最大1か月と通常よりも長めとなります。そのため、1年から2年程度の工期を要します。
参考:大規模修繕工事の工期例
物件所在地 | 規模 | 工期 |
---|---|---|
東京都江東区 | 地下1階付33階建、約1080戸 | 約1年半 |
神奈川県川崎市 | 地下2階付49階建、約690戸 | 約2年 |
東京都豊島区 | 地下2階付38階建、約350戸 | 約1年2ヶ月 |
強風で工事が止まることや、資材や人の移動にエレベーターの使用が前提になることなども、工期が長くなる原因です。
費用の問題も気になります。長期修繕計画に対して必要な資金が不足しているマンションの割合は、全国で34.8%で、5年間で2倍以上に増えています。(2018年・国土交通省の調査)
タワーマンションは工事規模の大きさから、費用も数億~10億円単位にのぼります。資本的支出に相当する改修や設備交換なども、一度に行うと相当な費用がかかるでしょう。
総額は非常に高額となりますが、この費用が「高いか安いか」でいえば、スマート修繕での見積もり取得の実例でも「1戸あたりの費用は一般的なマンションと変わらない」ことが多い、といえます。
これは、規模に比例して相応に戸数も多いためです。但し、後述の通り「工事の困難さ」があるマンションでは、どうしても費用が高くなることがあります。個々のマンションの形状・特性に応じて大きく変わるのもタワマンの特徴ですので、十分に検討を重ねてください。
戸数の多いマンションは修繕積立金も貯えやすく、しっかりと設定された修繕積立金が滞納なく集まっていれば、費用が不足することは少ないでしょう。
工事の困難さ
工事の難しさは、規模の大きさだけが原因ではありません。タワマンは建築時の最新技術が使われていることが多く、補修方法や補修材料なども、その都度の技術開発が求められることがあります。
また、高級物件としてのステータスを購入する要素もあるタワマンは、外形が凝った造形の物件も多く、その分だけ工事が難航する側面もあります。
さらに、軽量化の需要からタワマンの外壁に使われるALCボード(発泡コンクリート製)は、塗膜やパネル間のコーキングに問題が発生すると、強度や防水に問題が出るため、丁寧な補修が不可欠となります。
合意形成の問題
工事内容もさることながら、工事内容の決議に向けた合意形成の難しさは、タワマンならではの要素があります。
500戸から600戸に及ぶ所有者の合意形成は、その数だけで難航しますが、タワマンに多い賃貸物件のオーナーは、自らが生活していないため修繕工事に非協力的なケースが珍しくありません。
また、高層階ほど念入りに外壁修繕を行う必要があるため、高額の費用を要し、居住階によって工事の必然性への温度差がある点も問題です。低層階の人も、専有面積の広さに応じて修繕費用を負担することになるためです。
参考:令和5年 今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ|国土交通省
※タワマンの大規模修繕決議の困難さにも触れています
タワマン大規模修繕・事業者選定のコツ
ここまで述べたように、タワーマンションの大規模修繕ならではの困難さがあることから、改修工事を専門に行っている事業者を選ぶことがとても重要です。以下で事業者選定のコツを解説いたします。
修繕技術への対応力を確認する
まず、新築時の施工会社以外にタワーマンションの大規模修繕が技術的に対応可能か、数社の候補を選び、打診し、見積もり依頼を行いましょう。以下の2点がポイントです。
- 最新の特殊技術の施工箇所の修繕対応が可能か
- タワマンの大規模修繕工事実績がどの程度あるか
また、一般的な規模のマンションでも必要な下記の点も、業者選定のポイントとなります。
- 見積もりの細かさ
- 建物調査の丁寧さ
- 企業規模、社歴、施工実績
- 工事保証、アフターサービス
また、精度の高い見積もりを得るためには、管理組合からの細かい要件や要望の提供も大切ですので、丁寧に準備を行いましょう。
見積もり価格の妥当性を検証する
管理会社やコンサルタント経由の言い値にならないよう、相見積もりで工事費用の妥当性をしっかり検証しましょう。
競争原理が働かない、あるいはキックバックやリベート前提の決定プロセスでは、大切な修繕積立金を無駄に投じてしまう可能性があります。
タワマンの大規模修繕は大きなビジネスチャンスですので、さまざまな会社が最新の技術や工夫でしのぎを削っており、それを利用しないのは機会損失となるでしょう。
検証には技術上の知識も必要となりますが、管理組合と居住者の立場に立てる第三者のサポートを受けて、劣化診断から業者選定までを行うことをおすすめします。
タワマン大規模修繕の成功事例
タワーマンションならではの問題を解決し、費用削減やスムーズな工事進捗に成功したタワーマンション大規模修繕の事例をご紹介いたします。
成功事例
施工規模 | 350世帯 + 低層階店舗部分 |
費用総額 | 4.5億円(税抜) |
工事期間 | 約10ヶ月 |

複数社からの見積もり取得や減額提案、吹き抜け部分などの不必要な工事を除外できる判断などをしっかりと行い、結果としては戸あたり130万円を切る金額となった事例です。
店舗部分を含めると400世帯を超えるマンションと同等のため、実質的には戸あたり115万円を切る数字となっています。また、長周期化の素材・工法等も取り入れているため、スペックとしても高い工事を実現することができました。
まとめ
タワマンの大規模修繕工事の工事内容や工期、費用、業者選定などについて、一般的な規模のマンションとの違いや、困難を克服した成功事例をご紹介いたしました。
大規模修繕工事の合意形成の難しさは、居住者と管理組合の距離を近づけるコミュニケーション手段を進めることによって改善された事例もあります。
また、通常の大規模修繕費用に不安がない場合でも、イレギュラーな出費も想定されます。大地震などの災害時に、外壁材の傷みをすべてチェックして補修を行ったりすることも考えられるため、管理組合では余裕を持った資金調達のシミュレーションを行いましょう。
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- ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者

別所 毅謙
マンションの修繕/管理コンサルタント歴≒20年、大規模修繕など多くの修繕工事に精通。管理運営方面にも精通しており、アドバイス実績豊富。 過去に関わった管理組合数は2千、世帯数は8万を超える。 メディア掲載「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、「NIKKEI NEWS NEXT」、「首都圏情報ネタドリ!(NHK)」、「めざまし8」、「スーパーJチャンネル」。
二級建築士