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マンション修繕積立金不足への対処法

更新日:2025年12月23日(火)

マンションの大規模修繕に備える「修繕積立金」が不足する問題が多くの管理組合で顕在化しています。物価高や当初計画の甘さなどを背景に、必要な修繕資金が足りなくなるケースが増え、国土交通省の調査では修繕積立金が計画に対して不足しているマンションが全体の3割以上に上ると報告されています。修繕積立金不足は計画通りの修繕工事を困難にし、建物の劣化や資産価値の低下を招きかねない重大な問題です。 本記事では、マンション管理組合の方々に向けて、修繕積立金不足が生じる背景と原因を整理し、不足に直面した際に取り得る実務的な対処法について解説します。

本記事のポイント
  • 修繕積立金不足が起きる背景と主な原因を整理できる
  • 不足に直面した際の具体的な対処法(増額、一時金、借入、工事見直しなど)を学べる
  • 管理組合として早めの対応や専門家活用、合意形成の進め方がわかる

修繕積立金不足が生じる背景と原因

修繕積立金が不足してしまう主な要因として、以下のような背景が指摘できます。

建設コストの高騰による積立不足

近年のインフレや資材価格の上昇、人手不足に伴う人件費高騰などで修繕工事費が当初予想より大幅に増加しています。例えば、建築費指数を見ると2020年代に入ってからも上昇が続いており、工事費全体が10年前に比べて2割以上増えるなど、当初の長期修繕計画で想定した単価では賄いきれないケースが生じています。こうした工事費の高騰により、積立金の見込みと実際の必要額との乖離が拡大し、不足を招く原因となっています。

新築時の積立金設定の低さ

分譲マンション販売時には、購入者の月々の負担を抑えるために修繕積立金が意図的に低く設定される傾向があります。管理費は管理会社(デベロッパー系列)が利益を得るため高めに設定される一方、修繕積立金は引き渡し後に区分所有者が積み立てる資金であり、販売側に直接利益をもたらさないためです。その結果、新築当初の積立金額が過小に見積もられ、後年に大幅な値上げが必要になるケースが少なくありません。

国土交通省もこの問題に対応し、ガイドラインで新築時の積立金設定額を将来必要額(均等積立した場合の基準額)の60%以上とする案を示すなど(※)、極端に低い設定を抑制しようとしています。

※国交省は2024年に段階増額方式での値上げ幅を最大1.8倍までとする方針や、新築時徴収額を基準の0.6倍以上とする基準を提示しています。

長期修繕計画の精度と見直し不足

各マンションでは長期修繕計画に基づき積立金額を算定しますが、その計画期間や内容が実態に合わない場合も積立不足を招きます。旧来の長期修繕計画は期間を30年程度とする例が多く、築30年超で必要となる2回目の大規模修繕やその後の費用が十分織り込まれていないケースがありました。

国交省はガイドライン改訂(令和6年改訂)で計画期間を「30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間」とするよう求め、計画期間不足による積立金不足リスクの軽減を図っています。

しかし、実際には計画通り積み立てていても不足が生じるマンションは多く、長期修繕計画の定期的な見直し(目安5年ごと)が実施されていないとの調査結果もあります。計画策定時の工事単価が古く物価上昇を反映していない、計画自体を長期間更新せず精度が低下している、といった場合に不足が発覚しやすくなります。

建物の長寿命化と区分所有者の高齢化

マンションの寿命が延び大規模修繕の回数が増えるほど、必要な総費用は増大します。その一方で、住民(区分所有者)の年齢が上がるにつれ収入は定年などで減少傾向となり、積立金の負担増に合意を得にくくなる現実的な問題もあります。実際、購入時40歳前後だった世帯主も築15~20年で定年期に差しかかり、計画通り積立金を引き上げようとしても「毎月の負担増は困難」との反対意見に直面しやすくなります。「生活に支障が出る」「年金生活では払えない」といった声から総会で値上げ案が否決され、結局積立金が不足してしまうマンションも少なくありません。こうした居住者の高齢化・収入減による合意形成の難しさも、積立金不足に拍車をかける要因です。

修繕積立金不足への主な対処方法

修繕積立金が不足していることが判明した場合、管理組合としては以下のような選択肢で対応策を検討できます。それぞれメリット・留意点がありますので、組合の実情に合わせた判断が必要です。

積立金の計画的な増額

長期修繕計画を見直し、今後の不足見込みに応じて月々の修繕積立金を引き上げます。当初から段階増額方式を採用しているマンションでは将来的な値上げを織り込んでいますが、早めに増額に着手するほど1回あたりの負担増を抑えられる利点があります。増額には総会での決議が必要で、住民の理解を得るには客観的なデータに基づく丁寧な説明が欠かせません。将来一時金を徴収するよりトータルでは各戸の負担が軽減できる可能性が高いため、早期に少しずつ積立金を引き上げていくことが重要です。

臨時の一時金(臨時徴収)

大規模修繕の実施時期に合わせ、不足分を区分所有者から一度限りの「一時金」として徴収する方法です。不足分を各戸で均等割りするか、区分所有する専有面積の広さに応じて算出します。全戸一律で公平ですが、世帯ごとの負担額が数十万円から100万円以上になるケースもあり、一度にまとまった資金を用意できない住戸が出るリスクがあります。一時金を徴収するには事前に管理組合の総会決議が必要です。大きな負担を強いられることになるため反対意見も出てくるでしょう。特に一時金が高額になればなるほど議決も難航しやすくなります。一時金を徴収できればよいですが、簡単なことではないことを理解しておきましょう。

金融機関からの借入(ローン活用)

修繕積立金だけでは不足する資金を、金融機関からの融資(ローン)で補填する方法です。銀行から管理組合向けローンを受けるほか、独立行政法人住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」など公的な融資制度を活用することもできます。住宅金融支援機構の融資は全期間固定金利で借入時点で返済額が確定するため返済計画が立てやすく、管理組合で直接借り入れる場合は各区分所有者が一時金を用意する必要がないという利点があります。借入金は将来の管理組合員が返済していくことになるため慎重な検討が必要ですが、資金調達の選択肢として検討価値があります。

修繕工事内容・仕様の見直し

計画されている工事項目について、緊急性や劣化状況の優先度を見極め、工事の範囲や仕様を再検討することで費用圧縮を図ります。劣化の程度に応じて今すぐ実施すべき工事と、後回しにできる工事とを分類し、すべての工事項目を一度に実施するのではなくまずは優先すべき内容から取り組み、必要性の低い工事については時期をずらして対応するという考え方が基本となります。

ただし、足場の設置を伴う工事(外壁補修・ベランダの塗装など)は一括実施のほうが結果的にコスト効率に優れるケースもあります。足場の設置と解体にはそれぞれ数百万円規模の費用がかかるため、工事を分割することでこの費用が二重に発生する可能性があります。

また、スケジュールの見直しに伴う再設計や調整そのものにもコストや総会の承認が発生します。規模や状況によっては追加の費用が必要になるケースもあるため、計画の変更を軽く考えるべきではありません。

行政の補助金・助成金の活用

改修工事の内容によっては、国や自治体の補助制度を利用できる場合があります。例えば、耐震改修工事、浸水対策工事、省エネルギー改修工事などに対して設計費用や工事費用を支給する制度が各地で設けられています。地方公共団体の助成制度が利用可能なケースもあるため、計画している工事が補助対象に該当しないか確認するとよいでしょう。補助金を活用できれば組合の費用負担を大幅に減らせるため、専門コンサルタントや自治体の窓口に相談して情報収集することが大切です。

まとめ:早めの対応と専門家の活用でマンションを守る

修繕積立金の不足問題は、マンションの老朽化が進む日本において今後ますます顕在化すると予想されます。しかし、本記事で述べたように、早期に実態を把握し計画を見直すこと、必要に応じて積立金の増額や外部資金の活用、工事計画の調整など適切な対策を講じれば、十分に乗り越えられる問題でもあります。重要なのは、理事会が中心となって住民と課題を共有し、合意形成に向けた努力を怠らないことです。その際、信頼できる外部の専門支援を得ることで、費用面・技術面での不安を解消し、合意形成をスムーズに進めることが可能になります。

マンションは区分所有者全員の大切な資産です。修繕積立金不足という課題に直面したときこそ、専門家の知見や公的支援制度を積極的に活用し、計画的でスマートな修繕を実現していきましょう。それにより、将来にわたって安全・安心なマンション生活と資産価値の維持を両立させることができるのです。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

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