マンション大規模修繕の設計監理方式とは?専門家の役割、費用相場、注意点を解説
更新日:2025年08月29日(金)
マンションの大規模修繕工事を控え、どの発注方式を採用すべきか迷っていませんか?管理組合にとって悩みどころの一つは、施工会社に工事を一任する「責任施工方式」と、建築士など専門家による「設計監理方式」のどちらで進めるかという点です。 本記事では、設計監理方式の定義や責任施工方式との違い、設計監理を担当する専門家の役割、費用の目安などを整理して解説します。あくまで参考情報として紹介するものであり、実際の採用判断は慎重に行う必要があります。 また、管理組合が納得のいく大規模修繕を進めるためのポイントとして、見積精査や中立的な支援を受けられる第三者サービスの活用例についても触れます。トラブル防止や費用管理に役立つ情報としてお役立てください。
- 本記事のポイント
- 透明性の高い発注方式の選択と仕組みを理解できる。
- 実務に役立つ費用相場と契約形態の選び方がわかる。
- 信頼できる専門家選びとリスク回避のコツが身につく。
設計監理方式とは何か?責任施工方式との違い
大規模修繕工事では、代表的な発注方式として「設計監理方式」と「責任施工方式」があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを押さえた上で、管理組合としてどのように進めるかを検討することが重要です。
設計監理方式
管理組合が建築士事務所などのコンサルタントと設計し統一仕様書で工事業者選定をサポートする業務・監理業務委託契約を結び、施工は別途選定した施工会社が行います。コンサルタントは調査診断から修繕内容の検討、設計(仕様書作成)、工事中の現場監理までを担当します。施工会社は提示された設計・仕様に従って工事を実施します。設計監理方式のメリットは、施工とは独立した第三者が関与することで工事内容や価格の透明性が得られる点です。一方で、施工会社と契約を分けるため管理組合の対応がやや複雑になることや、複数の業者が関わることで談合のリスクが高まることがデメリットとして挙げられます。
責任施工方式
施工会社が設計・施工・工事監理のすべてを一貫して担当します。管理組合は施工会社と直接契約を結び、計画の初期段階から工事完了までを一社に任せる形になります。メリットは、打ち合わせ相手が一社に集約され、対応がわかりやすい点です。デメリットは、第三者のチェック機能が働かないため、見積金額や施工品質の妥当性が不透明になる可能性があることです。そのため、必要に応じて信頼できる第三者に見積や工事状況の確認を依頼することが望ましいとされています。
設計監理を行う専門家の役割
設計監理方式における専門家とは、一般的に建築士事務所やマンション管理士事務所など、大規模修繕コンサルティングを行う第三者機関を指します。彼らの役割は、管理組合や住民には難しい技術的な部分を担い、公平かつ客観的な立場から修繕計画を進めることにあります。
具体的には、建物の劣化状況を専門的に調査・診断し、優先すべき工事箇所や適切な工法を見極め、修繕内容の仕様書を作成する「設計」業務を行います。また、複数の施工会社から見積もりを取得・比較し、管理組合に最適な業者選定の助言や契約締結のサポートも行います。工事が始まると、現場を定期的に巡回して施工が仕様書通りに行われているかを監督(工事監理)し、進捗や品質をチェックして報告することも重要な任務です。
設計監理コンサルタントは、管理組合やマンション管理会社が日常業務では担えない専門技術面をフォローし、管理組合の「代理人」としてプロジェクトを支援します。第三者性を保つことで発注プロセスの透明性は高まりますが、複数の業者が関わる設計監理方式では、談合や不正なバックマージン(リベート)が完全に防げるわけではありません。それでも、第三者が関与することで一定のチェック機能は働きます。
さらに、建築士や施工管理技士といった有資格者が関与することで、管理組合や居住者が専門的知見不足による不安を解消でき、工事内容への理解や納得感も高まります。例えば、「劣化状況や修繕内容の妥当性が判断できない」「施工会社の提示する方法や費用が適切か心配だ」といった住民の声に対して、第三者の視点から説明や助言が行われるため、合意形成がスムーズになります。
設計監理方式を採用した場合の費用相場と内訳
設計監理方式を採用する際に気になるのが費用負担です。あくまで目安として、設計監理業務を委託するコンサルタント費用は工事総額の5~10%程度で算出されることが多く、1億円規模の大規模修繕工事であれば、500万~1,000万円前後が設計監理業務全体の相場感となります。実際にはマンションの規模や劣化状況、工事範囲によって変動しますが、予算計画上は修繕工事費の数%程度を目安に検討するとよいでしょう。
以下は、設計監理費用に含まれる主な業務項目です。
- 調査診断費:建物の劣化状況を把握するための事前調査や設備点検などにかかる費用
- 工事業者選定補助業務費:複数の施工会社から見積もりを取り、比較・評価を行う際のサポートにかかる費用
- 設計費:修繕内容の設計図書(図面・仕様書)の作成や工法・材料の検討にかかる費用
- 工事監理費:工事着工後の現場巡回・検査、施工会社への指示・是正勧告などの監督費用
- 積算・見積精査費:施工会社から提出された見積書の内容チェックや妥当性検証、必要に応じた交渉費用
- 会議・報告費:修繕委員会や理事会、住民説明会での資料作成や報告、打ち合わせ対応費用
- 予備費:追加調査や設計変更、契約外対応が発生した場合に備えた費用
これらすべてを包括して契約する場合もあれば、フェーズごとに契約を分けるケースもあります。包括契約は管理組合の手間を減らせますが、費用はやや高めになる傾向があります。分離契約は段階ごとに発注でき柔軟性がありますが、その都度業者選定や契約手続きが必要となるため労力が増えます。自組合の規模や方針に合わせ、契約形態や報酬基準(割合か固定か)、成果指標の設定などを事前に明確にしておくことが重要です。
設計監理方式を導入する際の注意点(契約・第三者性・癒着防止)
設計監理方式には多くの利点がありますが、導入にあたってはいくつか注意すべきポイントも存在します。専門家に依頼するとはいえ、最終的な発注者は管理組合です。後悔のないプロジェクトにするためにも、以下の点に留意しましょう。
契約内容の明確化と誓約取得
コンサルタント業務を委託する際は、契約書に業務範囲や報告義務、報酬基準を明確に定めてください。また、必要に応じて「談合のあっせんやバックマージンの収受は行わない」といった内容の誓約書提出を求める方法もあります。契約段階で倫理遵守を宣言させることで抑止力とします(ただし悪意ある業者には効果が限定的との指摘もあります)。
第三者性の確保(利害関係に注意)
コンサルタントが真に中立であるかを見極めることも重要です。例えば特定の施工会社から紹介料(リベート)を受け取るような関係性があれば、公平な監理は期待できません。実際に「設計監理者が施工会社と裏でつながっていて、厳しく指摘できなくなる」「設計者が自社の設計業務を獲得したいために、本来まだ不要な工事を強引に進めてくる」といったケースも報告されています。契約前に候補コンサルタントへ利害関係の有無を確認し、必要なら第三者の視点を交えながら慎重に判断してください。
談合・癒着リスクへの対策
業者間の談合や不正なキックバックを防ぐために、管理組合側でも工夫が必要です。例えばコンサルタントが紹介してきた施工業者以外にも相見積もりを依頼し、市場競争性を確保することが推奨されています。一社推薦のみで決めてしまうと、裏で金額調整されている恐れがあるためです。また、「見積内容に少しでも不自然な点があれば、公的な相談窓口(国交省が委託する住宅リフォーム・紛争処理支援センターやマンション管理センターなど)に相談する」といったオプションも頭に入れておくとよいでしょう。疑わしい状況ではいったん立ち止まり、第三者のチェックや助言を仰ぐ勇気も求められます。管理組合自身が情報収集と意思決定を主体的に行い、「業者任せにしない」姿勢を持つことが何よりの防止策です。
管理組合による設計監理コンサルタントの選定ポイント
では、管理組合が設計監理方式を成功させるためには、どのようにコンサルタント会社を選べばよいのでしょうか。ここでは、コンサルタント選定時に押さえておきたいポイントを整理します。
複数の候補から提案を聞き比較する
いきなり一社に絞らず、必ず複数のコンサルタントに声をかけましょう。2~3社程度に相談して提案内容や進め方の説明を聞くことで、それぞれの考え方や手法の違いが見えてきます。選択肢を広げて比較検討することで、管理組合に合った最適なパートナーを見極めやすくなります。多少手間は増えますが、そのプロセス自体が組合にとって勉強にもなり、後悔の少ない意思決定につながるでしょう。
過去実績や資格の有無を確認する
候補コンサルタントの実績は重要な判断材料です。同規模・同程度のマンション大規模修繕のコンサル経験があるか、成功事例や担当した物件数などを確認しましょう。また、一級建築士や一級施工管理技士といった有資格者が在籍しているかどうかもチェックポイントです。豊富な実績と確かな技術基盤を持つコンサルタントであれば、設計監理方式において心強い味方となってくれるはずです。逆に、異常に安い見積額を提示してくる業者には注意が必要です。極端な低価格で契約を取り、その裏で施工業者からバックマージンを得ようとする悪徳コンサルの存在も過去に問題視されています。適正価格で実績を積んでいる信頼できる相手かどうか、総合的に見極めましょう。
管理組合の方針やスタンスを理解してくれるか
コンサルタントと言えど万能ではありません。管理組合ごとに「できるだけコストを抑え最低限の機能維持ができればよい」のか、「将来も見据えて常にベストな状態を保ちたい」のか等、修繕に対する考え方や優先順位は異なります。打ち合わせ段階でこちらの方針をしっかり伝え、それに対して柔軟に対応・助言してくれるかを確認しましょう。
一方で、「全部お任せしたい」という姿勢を組合側が見せすぎるのも危険です。「何でもうちに任せてください」と安易に請け負うコンサルタントの中には、水面下で施工会社と癒着し談合まがいのことを行うケースもあるからです。適度に協力し合いつつも、組合主導で決める部分は決めるというバランス感覚を持って対応してくれる相手が理想です。
公平・中立な姿勢を徹底できるか
最後に改めて、コンサルタントの第三者性について確認します。提案内容や契約条件の中で不透明な点がないか、特定の業者ばかり推してこないかなどをチェックしましょう。可能であれば「発注プロセスの各段階で複数社比較を行う」「リベートは一切受け取りませんと明言している」など、公正さを担保する取り組みを持っている会社だと安心感が高まります。近年の報道を受け、企業HP上でコンプライアンス宣言を出しているコンサルタント会社もありますので参考にしてください。管理組合としても契約後の定期報告や合意形成プロセスに積極的に関与し、コンサルタント任せにしない姿勢を示すことが健全な関係構築につながります。
以上のポイントを踏まえ、必要に応じてコンペ方式(複数社による提案プレゼン・見積競争)を行うのも有効です。コンペ形式にすると選定に時間と労力はかかりますが、その分「なぜこのコンサルタントに依頼するのか」という根拠が明確になり、組合内の納得感も得やすくなります。複数の専門家の話を聞く過程自体が、理事や修繕委員にとって建物維持管理の知見を深める良い機会にもなるでしょう。
第三者支援サービスの活用例:見積精査や中立的な支援
コンサルタント選びや発注方式に不安がある場合、第三者の支援サービスを活用するという選択肢もあります。弊社サービス「スマート修繕」は、マンションやビルの大規模修繕工事において、施工会社選びから見積取得・評価、契約、工事中のチェックまで、一貫して管理組合に伴走支援するサービスです。専任のコンサルタントが管理組合の立場で複数の施工会社を紹介・相見積もりを取得し、見積精査(妥当性チェック)や契約交渉のサポート、工事期間中の品質チェック、サービス独自の工事完成保証を行います。これにより、適正な内容・金額での工事実施を後押しします。
スマート修繕では独自の見積データベースを活用し、提示された見積が適正かどうかを客観的に査定します。不適切に高い項目があれば是正提案を行い、適正価格への交渉も支援します。その結果、管理組合では気づきにくい無駄な上乗せコストを削減できる可能性があります。また、悪質なコンサルタントや施工業者による談合やバックマージンのリスクも、第三者チェックを通じて客観的に評価できるため、安心して工事を進められます。
スマート修繕は、元マンション理事長の経験者が立ち上げたサービスで、徹底して管理組合目線での支援を行っています。「適正な工事内容・価格で大規模修繕を行いたい」「第三者のプロに相談しながら進めたい」という管理組合は、ぜひお問い合わせください。
まとめ:管理組合主導で安心・納得の大規模修繕を
大規模修繕工事の発注方式として、設計監理方式は専門家の知見と客観的チェックを取り入れられる有力な選択肢です。責任施工方式に比べコンサルタント費用が発生するものの、見積精査によるコスト削減や品質確保などのメリットによって、十分その価値が見込めます。また、設計監理方式を成功させるには信頼できるパートナー選びが不可欠です。契約内容の確認や中立性の担保など注意点を踏まえ、実績豊富で組合の立場に立ってくれるコンサルタントを見極めましょう。
もし発注プロセスに不安がある場合は、公的機関の相談窓口やスマート修繕のような第三者サービスの利用も積極的に検討してください。管理組合自らが情報収集し、必要に応じて外部の力もうまく借りながら進めることで、「適正な工事を適正な価格で行う」という本来の目的にかなった大規模修繕を実現できるでしょう。管理組合主導で透明性と納得感の高いプロセスを築き、将来の資産価値向上にもつながる満足度の高い修繕プロジェクトにしていきましょう。大切なのは常に組合目線を忘れず、第三者の知恵も活かしつつ冷静に判断することです。今回ご紹介したポイントが、その一助となれば幸いです。
大規模修繕の支援サービス「スマート修繕」
- 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
- ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
- 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者
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