三菱のエレベーターのリニューアル方法は?費用や工事に必要な準備を解説
更新日:2025年03月14日(金)
三菱エレベーターは最初の昇降機製造・販売から2025年で90年の歴史があり、省スペース、省エネルギーとともに、安心・安全・快適な設計が特徴です。しかし、どんなに優れた機器でも、長期間の使用での劣化や故障は避けられません。 この記事では、三菱エレベーターのリニューアルについて、費用や工事に必要な準備を解説します。
- 本記事のポイント
- 三菱エレベーターのリニューアルがもたらす安全性向上のメリットを学べる。
- エレベーターリニューアル工事の費用相場とコスト削減のコツがわかる。
- メーカー系と独立系業者それぞれの特徴や選定方法を把握できる。
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三菱エレベーター|リニューアルのメリット
安全運行と耐用年数
マンションの三菱エレベーターリニューアルの最大の目的は、運転中の事故や災害時の脆弱さの可能性を減らし、安心運行を守ることです。
エレベーターが故障を起こすと、利用者の安全や建物の管理に支障をきたし、壊れてしまった部品については、修理費用も多くかかります。不調をきたす前にメンテナンスやリニューアルをすることが、エレベーターを安全に長持ちさせることにつながります。
エレベーターの税法上の寿命は、法定償却耐用年数で17年とされています。また一般的な計画耐用年数としては、25年程度で三菱エレベーターの装置の一部、あるいは全体の交換をするリニューアルが望ましいとされています。
年々変化する安全基準や環境対策、地震対策などの社会的ニーズに対応するためにも、メンテナンスと合わせたリニューアル計画が必要になるほか、製造年が古くなると在庫部品が減少し、供給が不可な状態に至ることもあるためです。一般的には20年弱でメーカーの計画耐用年数が設定され、部品供給が終了していきます。
居住者のニーズ対応
エレベーターにも時節に合わせた性能アップの要素が存在します。まず、年々改訂される高度な耐震基準への適合が挙げられます。
地震のP波(初期微動)やS波(本震)それぞれを感知して安全装置が対応し、管制運転を行います。停電や地震などの災害時に、エレベーターを最寄りの階まで自動的に運転させる「自動着床装置」は閉じ込めを防止し、避難をしやすくします。
度重なる大地震の発生から、法的な耐震指針は1998年、2009年、2014年に改訂されているため、現行の安全基準に達しなくなったエレベーターは、「既存不適格」となることがあります。
ただし、既存不適格のエレベーターも、通常のメンテナンスを行って使い続けることができます。
このほか、人の通過を検知して閉まりかけた扉を開ける「マルチビームセンサー」や、車椅子利用者や目の不自由な方向けに操作ボタンを改修する「福祉対応」、印象を改善するデザインのリニューアルなどが可能です。
居住者にどのようなニーズがあるか、管理組合の調査や提案が必要となります。
現行法規対応が必要な場合も
既存不適格の三菱エレベーターで、確認申請が必要なリニューアルや改修工事を行う場合は、現在の法令に合致させる必要があります。
その場合、既存不適格対応は、以下の設備を設置する改修が必要となります。
- 戸開走行保護装置(UCMP)
- 地震時管制運転装置
- 予備電源(停電時自動着床装置用)
これらの設備は、地震などの際に最寄り階に自動停止・開扉したり、扉が開いたまま運転できないようにしたりすることができます。この仕組みの義務付けは、実際に起きた閉じ込め事故や戸開走行事故をきっかけに行われた法整備によるものです。
なお、確認申請が必要なリニューアルは以下のようなものが該当します。
- エレベーターを全て取り替える場合
- 定格速度を引き上げる場合
- 昇降行程を延長する場合
- 主要な支持部分、かご、駆動装置、制御盤をまとめて取り替える場合
参考:エレベーターの定期検査と「既存不適格」について|国土交通省
三菱エレベーター|リニューアル費用の相場
三菱エレベーターのリニューアル費用はどのくらいかかる?
リニューアル工事は3種類に分類され、三菱エレベーターのリニューアルの費用相場は以下が目安となります。
工事種別 | 内容 | 相場(1基あたり) |
制御リニューアル | インバーター制御や操作基盤、配線などの入れ替えを行う | 1,400万円~ |
準撤去リニューアル | 各階に設置されているEVの三方枠や敷居などは既設のものを利用し、ロープ・制御盤・巻き上げ機などを取り替える | 2,000万円~ |
全撤去新設 | 既存のエレベーターや付属物すべてを撤去、新設する | 3,000万円~ |
※年式や方式(ロープ式と油圧式)などによって、リニューアル費用に差があります。
三菱エレベーターのリニューアル費用を抑える方法
分譲マンションやビルのエレベーター交換工事では、相見積もりを依頼した場合でも、同様の施工内容に対して、工事費用に大きく開きが出ることがあります。
適正でない見積もり内容や中間マージン、キックバックが生み出すコストがその要因となります。事業者選びのプロセスを透明にし、第三者機関のサポートを活用することでリニューアル費用を抑えることが可能になります。メーカーや管理会社に任せきりにしていると実態が見えづらくなるため注意が必要です。
費用面ではメーカー以外の独立系の事業者にも、見積もりを打診して比較してみることが重要です。
なお、三菱エレベーターのリニューアル工事には補助金が支給される場合があります。防災対策改修工事を対象に、国と地方自治体より11.5%~13%、最大300万円~950万円が支給されます。要件に該当するかを確認しましょう。
三菱エレベーター|リニューアルの流れと注意点
要望のとりまとめ
最初に、リニューアルの目的や効果、予算などを取りまとめます。
リニューアル工事には、その規模の違いで「全撤去新設」「準撤去」「制御」の3つの方式があります。必要かつ無駄のないプランとするために、どの方式が適しているか、専門家のサポートを得ながら検討しましょう。
居住者の方は、今まで正常に動いているものに高額のリニューアル費用を投入する意義が伝わりにくいため、この段階で安全性などに対する説明を意識することが大切です。また、耐震やバリアフリーなど、オプションとして何が求められるかの調査も行いましょう。
候補事業者の選定
続いて、要望にマッチした候補事業者をピックアップします。三菱エレベーターの修繕というと、製造メーカーの三菱系に依頼するものという印象がありますが、独立系の事業者には数多くのメリットがあり、コストダウンの選択肢として注目され、近年急速にシェアを伸ばしています。
候補選定の際は、以下の基準を意識しましょう。
- 修繕や改修の要望にマッチしている
- 会社の安定度や業績が信頼できる
- 対応エリア内である
経営状況、施工事例や実績ほか、パンフレットの記載内容から比較一覧を作成し、候補を選びます。必要に応じて事業者から資料を取り寄せましょう。
同じ施工の質でコストを削減するためには、これまでの管理会社や施工会社におまかせの状況ではなく、施主側としても独自の調査を行いましょう。また、メーカー以外の独立系事業者への依頼を柔軟に検討することをおすすめします。
メーカー系・独立系には、以下のようにそれぞれのメリットとデメリットがあります。
メーカー系事業者 | メリット | ・自社製品の知識や経験値にすぐれる ・サポートが手厚い ・大手の安心感 |
デメリット | ・費用が高額 | |
独立系事業者 | メリット | ・費用が安い(人件費や広告費が抑えられるため) ・メーカーの枠を超えた柔軟な経験値と対応範囲 ・工期の調整もしやすい ・メーカー出身の技術者も多く、一定の技術力が期待できる |
デメリット | ・部品調達に時間がかかる場合がある |
見積もりの比較
候補各社の現地調査や関連図書の提出などを経て、複数社から見積もりをもらい、比較しましょう。
この段階で要望と照らし合わせて、見積もりの修正を依頼することもあります。内容の妥当性や細かさなどを比較したり、事業者を1社に絞るために、第三者機関の専門的なサポートを得ることをおすすめします。
依頼先の事業会社と施工内容が決まったら、総会で決議を得ましょう。
施工
区分所有者の同意を得て、工事請負契約を締結します。工事が開始してからも、工事内容の確認や品質チェックにもとづいた改善依頼を行います。また、工事中の居住者の不便などについてトラブルを未然に防ぐよう、施工業者の担当者と連携して居住者への説明や告知をしていくことも必要です。
三菱エレベーターのリニューアル|まとめ
三菱エレベーターのリニューアルについて、費用や工事に必要な準備などを解説しました。エレベーターのリニューアルは、居住者の安全と利便性を守る大切な工事ですが、その効果や意義が分かりにくく、工事のコストパフォーマンスについても把握がしにくいものです。6階建てマンション・中規模以下の準撤去・制御のみのリニューアル工事で数百万円、2基の工事となると数千万円の見積もり価格差が生じることもあります。公平な第三者機関のサポートのもとで、柔軟な事業者選びや工事内容選びを行うことをおすすめします。
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- エレベータのリニューアル工事の支援実績は多数(過去1年で数百基、2025年2月現在)。特殊品である高速、油圧、リニア、ルームレスの実績もあり、社内にはエレベーター会社、ゼネコン、修繕会社など出身の施工管理技士等の有資格者が多数いますので、お気軽にご相談ください。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者