大規模修繕で業者選定するときに注意すべきこと5選|マンションの修繕を任せるならどこ?
更新日:2025年02月21日(金)
多額の費用と長期間をかけて行う大規模修繕ですが、業者選定の成否がコストや工事の質、期間の短縮などにつながり、成功の大きなカギとなります。 大規模修繕の業者選定の際に注意すべきことは、主に以下の5点です。 1.相見積を取得する 2.信頼できる業者を選ぶ 3.業者の規模や施工実績を確認する 4.業者の社風や担当者との相性を見極める 5.工事保証やアフターサービスを確認する この記事では、大規模修繕で業者選定するときに注意すべきこと5選について解説し、工事を成功に導くためにマンションの修繕を任せる業者選定の良い方法について理解を頂きます。これらの情報が少しでも皆様のお役に立つと幸いです。
- 本記事のポイント
- マンションの大規模修繕で、適正な価格と質の高い工事を実現する方法がわかる。
- 信頼できる業者を見極めるポイントが明確になる。
- 工事後のトラブルを防ぎ、安心して修繕を進めるコツがわかる。
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マンション大規模修繕・業者選定の重要性
無駄のない予算で施工をしてもらう
大規模修繕工事の費用は、同じ依頼内容でも、依頼先によって違いが出ます。業者選定がうまくいかなかったことで、本来もっとコストを下げられるところを、高値で発注してしまう場合があるのです。
無駄のない金額で大規模修繕工事を終えるためには、候補業者選定および、提示された見積もり内容のチェックを、専門家のサポートを受けながら行うことが必要です。
見積もり時よりも実際の工事費が膨らんでしまうケースがあり、これも注意が必要です。ただし、工事期間に起きた資材の高騰が影響することもあり、足場をかけてからでないと正確な金額が出せない外壁タイルの補修など、あとで正確な金額が分かる内容もあります。
これらの点については、価格の変動はやむを得ないとして、その旨正確な説明を事前に受けている必要があると言えるでしょう。
施工不良を防ぐ
大規模修繕業者選定の際に「ここはいつものところよりとても安いから」というケースで要注意なのが、施工の品質です。
施工業者選定がうまくいかなかった場合、施工中および竣工後も、施工不良によるトラブル対応のリスクがあります。施工中には分かりにくくても、2~3年程度で雨漏りやタイルの剥がれなどが発生することもあります。
良質な施工や、不良個所の対応など価格の安さだけで選ばず、実績のあるしっかりした業者選定が大切です。
スムースでトラブルのない施工をしてもらう
大規模修繕工事を担当する業者に求められるのは、工事の質や価格だけではありません。工事の進め方、居住者や周辺環境への配慮、工期の遅延をなるべく出さない施工管理など、依頼先によって工事の進め方にも差が出ます。
工事の進め方を事前にチェックするのは難しいですが、大規模修繕工事業者を選定する際には後述する業者のコミュニケーションの質の良し悪しをチェックしたり、Web上での評判を調べるなどを行いましょう。
工事会社・見積もりの3つの選定方式
候補となる業者が決まったら見積もりなどを材料にして、選定する段階となります。大規模修繕工事業者を選定する際には主に以下の3つの方式が行われています。
- 特命随意契約
- 競争入札方式
- 見積もり合わせ方式
特命随意契約
特命随意契約は特定の1社のみ指定して見積もりをとり、契約する業者選定方式です。この方式は新築時に施工した会社や管理会社、もしくはそれらの関連会社が選ばれることが多いです。
すでに情報共有や信頼関係ができ上がっている相手と進められることで、大規模修繕工事業者を選定する際の管理組合の負担が少ない点が、特命随意契約のメリットと言えるでしょう。管理会社の関連会社である場合は、日常の管理業務と連動した施工やアフターフォローが可能な点も魅力です。
しかし、そのまま1社に依頼し続けた場合、競争原理やチェック機能が働かない点は、大きなリスクとなります。管理会社関連の業者の場合、管理会社が管理組合の財政事情を知っていることも多く、支払い可能な上限の金額ありきで見積もりを出す可能性もあります。
他社から見積もりを取って比較したところ、総工費に数千万円の差が出たということもあります。特命随意契約で選定を進める場合は、見積もり内容の妥当性=工事内容に見合った金額かをチェックする、もしくは信頼できる機関や専門家にチェックしてもらうことが必要です。
競争入札方式
競争入札方式は、公募か指名によって複数の入札希望会社を選んだ上で、競争入札を行なう業者選定方式です。
競争入札方式のメリットは、大規模修繕工事の内容を仕様書のレベルまで詰めたうえで入札を募るため、候補業者の比較検討ポイントが価格に絞られ、比較検討がやりやすい点と、価格競争を促すことで、リーズナブルな金額を得る可能性がある点です。
入札する業者も、金額だけを決めれば良いため、診断やプレゼンに割く労力が低いと言えるでしょう。
しかしデメリットとして大きいのは、談合の可能性です。入札する業者が談合を行えば、価格競争は成り立ちません。
また、入札のための前提条件をそろえて金額だけの勝負になる事で、大規模修繕の施工方法や資材の利用などについて、独自の前向きな提案がなされにくいことにもなります。
仕様書を作成して入札を募る設計監理方式の際の談合について、2017年に国土交通省が通達を出し、注意喚起する状況にまで至っています。
参考:設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)|国土交通省
見積もり合わせ方式
見積もり合わせ方式は、設計図書や現地説明会を提供することで複数の施工会社に見積もりを依頼し、その内容を比較しながら1社に絞り込む業者選定方式です。
相見積もりを複数の会社に依頼し、価格以外に各社の提案内容を比較して施工業者選定を行います。
見積もり合わせ方式のメリットは、競争原理も働きながら不正が起きにくく、適切な価格で良質の施工が期待できることでしょう。
デメリットとしては、見積もりの際の依頼条件をどこまで具体的に形に出来るかによって、見積もりの精度に開きが生じてしまう点が挙げられます。
また、各社腕の見せどころで多彩な見積もりが得られる反面、見積もり内容を比較するために、業者選定の際には専門的なサポートが必要になる点にも注意しましょう。
業者選定・3方式のメリット/デメリット
特命随意契約 | メリット | 選定の際の管理組合の負担が少ない |
デメリット | 言い値になる可能性がある | |
競争入札方式 | メリット | 業者が参加しやすく価格競争も促せる |
デメリット | 談合のリスクがある | |
見積もり合わせ方式 | メリット | 公正で前向きな提案が得られる |
デメリット | 業者の絞り込みに専門的なサポートが必要 |
マンション大規模修繕・業者選定の流れ
以下では見積もり合わせ方式の場合の、大規模修繕工事業者の選定の流れをご紹介します。
候補業者のリストアップ
管理組合独自の調査や他のマンションの管理組合の紹介、管理会社の紹介、公募などによって施工会社の候補をリストアップし、資料となる書類を取り寄せます。
書類選考
パンフレットや資料などを業者から取り寄せ、書類選考で絞り込みを行います。会社概要や施工実績、独自の強みなどから、今回の大規模修繕工事に合った業者かどうかを確認していきます。
長期的な視点で見て、今後継続して依頼できる対応力がありそうかも確認しましょう。
見積もり依頼
候補となった会社に見積もり要項書と設計図書を提供して大規模修繕の見積もり依頼を行い、併せて現地説明会で現場の状況を確認してもらい、質疑応答を行います。
この段階で要望や依頼事項はしっかり伝えましょう。たとえば管理組合が行った事前調査の結果、改良工事で居住者からの要望が多い点などは共有しておきます。
依頼先から見積もりが集まったら、得られた内容のチェックを行います。
面談・プレゼンテーション
候補として残った会社に依頼をして、見積もり内容の詳細説明・工事の提案を受けます。
ここで金額や工事内容について軌道修正を行い、再見積もりを依頼するケースもあります。質疑応答での対応ぶりもよく確認しておきましょう。
この面談を経て、施工会社を1社に絞り込み、工事請負契約を締結します。
マンション大規模修繕・業者選定で注意すべきこと5選
この項では、専門的な見地のサポートも得ながらどのように業者選定を進めるか、注意すべきことをご紹介します。
- 相見積を取得する
- 信頼できる業者を選ぶ
- 業者の規模や施工実績を確認する
- 業者の社風や担当者との相性を見極める
- 工事保証やアフターサービスを確認する
相見積を取得する
大規模修繕工事業者を選定するうえで相見積は欠かせません。複数社から見積もりを取得することで、工事の質や価格の妥当性が比較できます。専門家がチェックすれば、その業者が工事をどのような考え方でとらえているかも分かります。
見積もりは価格だけでなく、工事内容や工事範囲、仕様をよく確認しましょう。とくに指名を得るために安くしているような見積もりは、手抜き工事や追加費用発生のリスクがあるため、慎重にチェックして見抜く必要があります。
これまでの流れや何らかの事情で、どうしても1社に依頼し続けたいという場合も、見積内容についてセカンドオピニオンを依頼することをおすすめします。
信頼できる業者を選ぶ
信頼できる業者とは、以下の2つの点を満たしていることを指します。
- 質の良い工事を適正価格で行ってくれる
- 公正な選考プロセスで選ばれる
これまで管理会社に任せてきた選考を、公正な第三者機関のサポートを活用しながら管理組合独自で行うことが、信頼できる業者を選ぶことにつながります。
新築時に建築した業者や、管理会社の関連業者は、前述のように競争原理が働かず、言い値の傾向となります。また、区分所有者、特に理事と密接な関係にある業者を選定することは、バックマージンのリスクから避けるべきでしょう。業者間の談合リスクについても同様です。
コストアップの注意が必要な関係性
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業者の規模や施工実績を確認する
依頼する候補の会社の確認ポイントは、とくに最初の候補選びの段階において「規模」と「施工実績」が指標となります。
会社の規模、実績、安定度は大切ですが、会社の規模が大きければ安心な反面、人件費や下請けの中間マージン、広告費などが反映されて費用が高めになる傾向もあるため、他の要素とも照らし合わせ、幅広い視野で比較しましょう。
大規模修繕の施工実績は依頼する工事に近い規模、内容のものが多いか、マンション修繕を専門的に行っている業者であるかがポイントとなります。
業者の社風や担当者との相性を見極める
「担当者で対応は変わる」という意見もありますが、問い合わせへの姿勢(丁寧さ・知識量)や良心的な見積もり、担当者の対応などは、社風・経営姿勢も大きく関わります。
業者ごとの対応力や、コミュニケーションの質をチェックしましょう。自社の営業の都合よりも、顧客を優先する姿勢を確認したいところです。
もちろん担当者の人柄も、トラブルなく工事を進捗できるかのバロメーターとなります。
工事保証やアフターサービスを確認する
工事後の補償内容やアフターサービスは各社で違いがあるため、その点も要チェックです。
保証期間の長さと保証の内容(対象箇所と、どのような対応がしてもらえるか)が比較の対象です。
以下は工事内容別の、保証期間の基準となる年数です。
工事内容 | 工事の平均保証年数 |
---|---|
下地(躯体)補修工事 | 5年 |
シーリング工事 | 3~5年 |
外壁塗装工事 | 5~7年 |
天井塗装工事 | 2~3年 |
鉄部塗装工事 | 1~3年 |
バルコニー防水工事 | 3~5年 |
屋上防水工事 | 10年~ |
保証の中には「次回の施工を約束することを条件にこの部分を保証」という条件付きの保証もあります。
また、大規模修繕瑕疵保険への加入があれば、施工会社の倒産や経営不振などでアフターサービスを受けられない状況になっても、保険で対応可能となります。
対象部分は保険商品によって異なりますが、保険期間は1~10年が一般的です。瑕疵保険の加入の有無は必ず確認しましょう。
まとめ
大規模修繕で業者選定するときに注意すべきこと5選および、工事を成功に導くために、マンションの修繕を任せるための業者選定方法について解説しました。
公正な選考プロセスで、良い業者を選定するためには、管理組合・理事会の業務負荷が増えます。第三者機関による専門的なサポートがあれば、大規模修繕を広い視野で確認し、セカンドオピニオンも受け入れやすくなります。
居住者からの貴重な原資を無駄なく遣い、資産価値を効果的に維持する大規模修繕を目指しましょう。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者

別所 毅謙
マンションの修繕/管理コンサルタント歴≒20年、大規模修繕など多くの修繕工事に精通。管理運営方面にも精通しており、アドバイス実績豊富。 過去に関わった管理組合数は2千、世帯数は8万を超える。 メディア掲載「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、「NIKKEI NEWS NEXT」、「首都圏情報ネタドリ!(NHK)」、「めざまし8」、「スーパーJチャンネル」。
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