ディー・エヌ・エー(DeNA)グループ 一級建築士事務所

スマート修繕
0120-409-914

9:30~18:00土日祝日も対応

マンション大規模修繕に瑕疵保険は必要?メリットと注意点を解説【2025年最新】

更新日:2025年03月28日(金)

みなさんは瑕疵保険という仕組みをご存知でしょうか? マンションの大規模修繕工事は建物の資産価値維持に不可欠ですが、一方で施工不良や業者倒産といったトラブルリスクも孕んでいます​。実際、あるマンションでは大規模修繕工事開始後わずか2ヶ月で施工業者が倒産し、工事中断や追加費用、住民間の費用負担トラブルに発展しました​。 また、外壁塗装工事完了1年後に塗装が剥がれ落ち、不適切な塗料使用が原因で再施工が必要となったケースも報告されています。こうした予期せぬ不具合や業者対応不能に備える手段として、近年注目されているのがマンションの大規模修繕に対応した「瑕疵保険」です。 本記事では、管理組合の意思決定者(理事長・修繕委員など)向けに、マンションの大規模修繕における瑕疵保険の基礎知識と必要性、そして瑕疵保険加入のポイントを最新情報に基づいて解説します。

本記事のポイント
  • マンションの大規模修繕工事における「瑕疵保険」の必要性や加入メリットを学べる。
  • 工事後の施工不良や業者倒産リスクへの備えとして、瑕疵保険がどのように役立つのか具体的な仕組みがわかる。
  • 管理組合が瑕疵保険に加入するための手続きの流れや費用対効果を具体的に把握できる。

電話で無料相談

0120-409-914

受付時間9:30~18:00土日祝日も対応

Webから無料相談

専門家相談する

XfacebookLINEはてなブックマークメール送信

マンションの大規模修繕と瑕疵保険の基礎知識

大規模修繕とは、マンションの屋上防水や外壁補修、共用設備更新など、築年数に応じて概ね12~15年周期で実施される大規模な改修工事のことです​。居住者が積み立ててきた修繕積立金の多くを投入する重大プロジェクトであり、工事の質とアフターケアが建物の寿命を左右します。

一方、瑕疵保険(かしほけん)とは、工事後に判明した施工上の瑕疵(欠陥や不具合)を補償するための保険制度です。新築住宅には10年間の瑕疵担保保証が法律で義務付けられていますが、マンションの大規模修繕工事版として任意加入できるのが「大規模修繕工事瑕疵保険」です​。

2007年に国土交通省に認可された制度で、共同住宅の大規模修繕の請負契約を対象とし、工事後に施工部分の不具合が見つかった場合の修補費用等をカバーします​。保険の対象となる部位は工事で手を加えた部分のうち、建物の構造耐力上主要な部分(柱や梁など)や雨水の浸入を防止する部分(屋上防水や外壁等)、給排水管・電気設備など幅広く設定されています​。

例えば大規模修繕で施工した屋上防水や外壁塗装に瑕疵があれば、その補修工事費用や原因調査費、必要に応じて仮住まい費用まで保険金支払い対象になります。保険期間は通常5年間(一部部材は2年間)ですが、特約により最大10年まで延長できる商品もあります。こうした瑕疵保険に加入しておくことで、万一工事後に問題が発生しても、管理組合に代わって保険会社が補修費用を負担してくれるのです。

瑕疵保険が必要な理由

施工不良への備え

大規模修繕ほどの大工事でも、残念ながら「完璧な施工」を期すのは難しく、数ヶ月~数年後に何らかの不具合が生じるケースがあります​。たとえば先述のような塗装剥離や防水不良による雨漏り、外壁タイルの剥落、給排水管からの漏水など、放置すれば建物や住環境に悪影響を及ぼす不具合です​。

通常、施工会社は契約上の瑕疵担保責任(一般に2年程度のアフターサービス保証)に基づき無償補修に応じる義務があります。しかし保証期間を過ぎた不具合や、軽微だが何度も発生する修繕などは、追加費用や交渉負担が管理組合側に生じかねません。瑕疵保険に入っていれば、保険期間中に判明した施工不良について保険会社から補修費用が支払われるため、管理組合は余分な出費を負わずに問題解決できます​。

工事会社による迅速な補修が望めない場合でも、保険金を活用して他の業者へ補修を依頼することも可能です。結果として、不具合対応に伴う居住者負担の増加や長期修繕計画の狂いを最小限に抑え、建物コンディションを安定的に維持できます。

施工会社の倒産リスクへの備え

工事中および工事後の期間に施工会社が経営破綻してしまうリスクも無視できません。大規模修繕では工期が長く金額も大きいため、景気動向や資金繰り次第で優良企業でも倒産する可能性があります。もし引渡し後に施工会社が倒産していた場合、通常はアフターサービスや無償補修を受けられず、管理組合が泣き寝入りするしかありません。こうした最悪の事態でも、瑕疵保険に加入していれば管理組合が直接保険金を請求できる仕組みになっています​。

保険契約上、施工会社が存続している場合は保険金の80%が施工会社に支払われ補修対応されますが、施工会社が倒産等で対応不能の場合は発注者である管理組合に100%の保険金が支払われるため、必要な補修費用を確保することが可能です​。実質的に「施工会社の保証を保険会社が肩代わりする」形となり、倒産リスクによる無保証状態から管理組合を守ってくれます。過去の統計でも、瑕疵保険適用案件のうち発生率はごく僅か(0.5%程度)ですが、保険金支払い事例が確認されており​、万が一に備える意義は大きいと言えます。

管理組合にとってのメリット

瑕疵保険加入は単なる金銭補償だけでなく、施工品質の担保や組合運営上の安心材料にもなります。保険適用には事前に施工業者が保険法人の審査を受けて登録する必要があり、加えて工事中には保険法人による所定回数の現場検査が行われます​。第三者検査員(一級建築士等)による客観的なチェックが入ることで、施工不良の未然防止や品質向上が期待できます。専門知識の乏しい管理組合にとって、プロの目による検査が入る安心感は大きいでしょう。

また、瑕疵保険へ加入している事実そのものが組合員への説明材料となり、「万一問題が起きても保険で対応できる」という安心感を居住者に与える効果もあります​。実際、国の住宅支援策でもリフォームや大規模修繕工事で瑕疵保険に入ることが推奨されており、補助金の対象にも組み込まれています​。長期修繕計画上も、工事後しばらくは保険によるバックアップがあることで、計画外の大規模な追加修繕や特別徴収金のリスクを軽減できます。

総じて、瑕疵保険の加入は施工後の不確実なリスクに対する管理組合の安全策であり、建物の長期安定運用に寄与するメリットが多いのです。

加入条件と手続きの概要

瑕疵保険は任意保険であり、施工会社が自動で加入してくれるものではありません。管理組合側で希望する場合は、事前に契約する施工会社に瑕疵保険への加入手続きを依頼する必要があります。施工会社が保険加入するには、まず国土交通大臣指定の保険法人(住宅あんしん保証、住宅保証機構、日本住宅保証検査機構〈JIO〉など)に対して事業者登録を行い、所定の審査を受ける必要があります​。

この事業者登録は各保険法人ごとに有効期間(一般に1年更新)があり、施工業者の財務状況や施工実績など一定の基準を満たすことが求められます。したがって、過去に瑕疵保険の取扱い経験がない業者の場合、登録手続きに時間がかかることもあります。施工会社選定時には、候補業者が瑕疵保険の事業者登録を済ませているか、加入意向があるかを必ず確認しましょう。実際の加入手続きは工事着工前に行います。

施工会社と管理組合(発注者)が連名で保険申込を行い、保険法人による書類審査・着工前検査を受けます​。この開始前検査に合格しなければ保険契約を締結できず、工事開始後からの遡及加入も認められないため注意が必要です​。無事に契約が成立すると工事期間中~完了時にかけて数回の現場検査が行われ、最終検査合格後に保険証券が発行されます​。保険証券には契約内容(対象工事や保険期間、限度額など)が明記され、管理組合にも交付されます。以降、保険期間中に瑕疵が判明した際は、施工会社がまず保険法人へ事故報告を行い、保険会社立会いの下で不具合の調査・補修対応が進められます。

なお、瑕疵保険加入に伴う費用負担については契約時に明確に取り決めておくことが大切です。保険料や検査手数料は基本的に施工業者側が支払いますが、実質的には工事原価に組み込まれるケースが多いため、見積書上で保険料が含まれているか確認するとよいでしょう​。管理組合としては、総会決議で瑕疵保険加入の方針と予算措置を承認しておき、契約書に「大規模修繕工事瑕疵保険に加入すること」を明記させることをおすすめします。万一本体工事とは別に保険料を管理組合が負担する場合でも、工事金額全体から見ればごく僅かなコストで得られる安心は大きいため、前向きに検討すると良いでしょう。

なお、瑕疵保険に関する詳細について知りたい方はこちらのリンクを参照してください。

あんしん大規模修繕工事瑕疵保険の概要

保険料の相場と費用対効果

保険料の相場

大規模修繕瑕疵保険の保険料は、工事内容や請負金額、補償範囲(特約の有無)によって個別に設定されます​。そのため一概には言えませんが、一般的な相場感として工事請負金額の0.4~0.8%前後が目安とされています​。例えば請負金額3,000万円規模の工事であれば、保険料はおおよそ20~25万円程度です​。実際の事例でも、請負額4,800万円・48戸のマンション大規模修繕で保険料は約29万円(請負金額の0.60%)という報告があります​。戸数あたりに換算すれば一戸当たり6千円程度で、長期の安心を買えると考えれば決して高い負担ではありません​。

なお、保険料とは別に施工業者の事業者登録料(年数万円程度)や検査手数料も発生しますが、いずれも工事全体から見るとわずかな割合です。保険料は地域による差はなく全国一律基準で算定されるため、地方物件でも都市部と比べて不利になることはありません。

費用対効果の検討

保険料が数十万円追加になるとして、その費用対効果は十分に見合うと言えるでしょう。仮に瑕疵保険に加入しなかった場合、工事後の不具合補修費は全額管理組合の負担となります。外壁や防水などの再施工には数百万円単位の費用がかかる場合もあり、修繕積立金を取り崩したり不足分を臨時徴収したりする事態も起こり得ます。

瑕疵保険で支払われる保険金の平均額は案件にもよりますが約100万円台と報告されており、中には保険金支払い限度額(契約により1,000万円~数億円​)に迫る大規模補修が必要となった例も想定できます。そうした万一のシナリオに備え、工事費の数パーセント未満の保険料で数百万~数千万円規模の補償を得られる点は大きなメリットです。

保険未加入でトラブル発生時には、結局専門家への調査依頼や弁護士対応などで費用が嵩むケースもあります。瑕疵保険に加入しておけばそうした二次的コストも抑えられる可能性が高く、リスクマネジメントの観点から費用対効果は極めて高いといえます。工事後何も問題が起きなければそれが一番ですが、「備えあれば憂いなし」の保険料と考えれば決して無駄にはならないでしょう。

注意点と意思決定のポイント

瑕疵保険を検討・契約する上で押さえておきたい注意点と、管理組合としての判断ポイントをまとめます。

まず、繰り返しになりますが本保険は法律上の義務ではなく任意加入です​。そのため、施工会社によっては「保険制度を知らない」「手続きが手間」「自社の施工に自信があるので不要」といった理由で提案してこない場合もあります。しかし、管理組合としては保険未加入によるリスクはすべて組合が負うことになる点を認識しましょう。

施工会社が提示するアフターサービスだけに頼るのではなく、「瑕疵保険にも加入すべきか」を理事会で議論し、方針を固めることが重要です。業者選定の段階で瑕疵保険加入の有無を確認し、可能なら保険料を含めた見積もりを比較検討してください。もし最有力の業者が未登録の場合でも、契約前に登録・加入手続きをしてもらえるか交渉する価値はあります。瑕疵保険への対応に前向きでない業者は、リスク管理意識の面で不安が残るため、信頼できるパートナーと言えるか慎重に判断しましょう。

次に、保険の補償範囲と限度も把握しておく必要があります。保険でカバーされるのはあくまで「工事箇所の瑕疵」に起因する不具合です​。経年劣化や日常の損傷、工事範囲外の部分で発生した問題は対象外となります。また、美観上の軽微な問題(塗装の色ムラ等)や、瑕疵と断定できない事象については保険金が下りない場合もあります。いずれにせよ保険請求には客観的な調査と所定の手続きが必要になるため、万一不具合を発見した際は闇雲に業者を変えて直すのではなく、まず施工業者か保険法人に連絡し指示を仰ぐことが肝心です​。日頃から工事記録や図面、写真などを整理保管し、不具合箇所の状況もエビデンスとして残しておくとスムーズに保険対応が進むでしょう。

最後に、意思決定のポイントとして費用対効果と組合内の合意形成があります。瑕疵保険料は工事費総額に比べればごく小さいものの、数十万円規模の支出には変わりありません。理事会や修繕委員会はその必要性を組合員に丁寧に説明し、総会での承認を得るよう努めましょう。幸い、前述した施工不良・倒産リスクへの備えや第三者検査の効果など、組合員にとっても理解しやすいメリットがありますので、具体的な事例やデータを示しつつ説得すれば合意は得られやすいはずです。長期修繕計画や修繕積立金の健全な運用という観点からも、瑕疵保険加入は理にかなったリスクヘッジ策です。将来の役員交代で事情を知らない理事が対応に苦慮するリスクも減り​、組合運営の継続性確保にもつながります。総合的に判断して、「万一に備える保険にも加入しておこう」という結論に至ることが、マンション全体の安心・安全につながるでしょう。

まとめ:マンションの大規模修繕では保険を検討しよう

マンションの大規模修繕における瑕疵保険は、管理組合にとって施工後のリスクに備える強力なセーフティーネットです。施工不良による思わぬ出費や、施工会社倒産による保証消失といった最悪の事態から組合財産を守り、工事成功後の安心を長期間確保してくれます。わずかな保険料負担で数百万円規模の補償と第三者検査の品質保証を得られる点は、費用対効果の面でも優れています。

特に、老朽化が進むマンションが増える中、2025年現在こうした保険制度を上手に活用することは、管理組合のリスクマネジメントの一環として専門家も推奨する流れです。大規模修繕は組合役員にとって腕の見せ所ですが、同時に不確実性も伴います。だからこそ事前に取り得る対策は万全にしておきましょう。瑕疵保険への加入は、その有力な対策の一つです。

長期修繕計画とも整合性を取りながら、保険を賢く活用することで、マンションの資産価値と住環境を将来にわたり守ることができます。管理組合としては、信頼できる施工パートナーと共に瑕疵保険の導入を積極的に検討し、万全の体制で大規模修繕に臨んでください。トラブルに強いマンション運営を実現するために、瑕疵保険は心強い味方となるでしょう。

記事をシェア

XfacebookLINEはてなブックマーク

大規模修繕の支援サービス「スマート修繕」

  • 「スマート修繕」は、一級建築士事務所の専門家が伴走しながら見積取得や比較選定をサポートし、適正な内容/金額での工事を実現できるディー・エヌ・エー(DeNA)グループのサービスです。
  • ボリュームゾーンである30~80戸のマンションのみならず、多棟型やタワーマンションの実績も豊富で、社内にはゼネコン、修繕会社や修繕コンサルティング会社など出身の建築士等が多数いますので、お気軽にご相談ください。
  • 事業者からのマーケティング費で運営されており、見積支援サービスについては最後まで無料でご利用可能です。大手ゼネコン系を含む紹介事業者は登録審査済でサービス独自の工事完成保証がついているため、安心してご利用いただけます。

電話で無料相談

0120-409-914

受付時間9:30~18:00土日祝日も対応

Webから無料相談

専門家相談する

本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

スマート修繕なら

適正価格の工事を実現

0120-409-914

9:30~18:00土日祝日も対応

お問い合わせ
0120-409-914

9:30~18:00土日祝日も対応