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マンションの大規模修繕に関する費用や周期、 よくあるトラブルや注意点を紹介

更新日:2025年02月10日(月)

大規模修繕工事は、マンションの資産価値や寿命を左右する重要な内容です。新しいマンションが多く建設される一方で、適正な大規模修繕が行われなかった古い建物は価値や維持コスト、周囲への影響など、さまざまなリスクや注意点を抱えてしまいます。 しかし、メンテナンスに多額の費用がかかって、居住者の生活や管理組合の運営に負担にならないかも注意すべきポイントです。 この記事ではマンションの大規模修繕について、費用はどの程度でどの時期に行うか、トラブルなく適正価格で行うコツ、費用が不足している際はどうするかなど、基礎的な疑問にお答えします。

本記事のポイント
  • 大規模修繕の費用相場を把握することで見積もりを確かめれる。
  • 工事の質を保ちつつ、コストを抑えるためのポイントが明確になる。
  • 大規模修繕を適正価格で実現するためのコツがわかる。

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マンションの大規模修繕とは?【費用・周期】

 

マンションなどの集合住宅のメンテナンス費用や周期は建物や立地によって異なりますが、管理組合の総意によって、計画を作っておく必要があります。この項で内容を確認してください。

建物を作り、管理するうえでの基準を示す建築基準法で、大規模修繕は「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕」と定義されています。

しかしながら、この建築基準法での定義とは違い、マンションの大規模修繕工事については「足場を掛けて行う建物全体の表面素材の補修・改修・修繕工事」を指しています。

また、マンションは居住者全員が利用する共用部分と、特定の居住者のみが利用する専有部分に分けられるため、共用部分は大規模修繕で維持管理し、専有部分は居住者それぞれが補修やリフォーム、リニューアルなどを行います。

大規模修繕工事の主な内容

  • 仮設工事(足場、仮設事務所などの設置)
  • 下地補修(外壁タイルの貼替、ひび割れの補修)
  • シーリング(外壁目地材の取り替え)
  • 塗装(鉄部、外壁などの塗り替え)
  • 防水(屋上、バルコニー、廊下など)
  • 2回目以降の工事(給排水管、エレベーター、機械式駐車場など)
  • バリューアップ工事(バリアフリー化、宅配ボックスの設置など)

また大規模修繕にあたりませんが、その一環として行われる場合もあるものとして、改良工事があります。改良工事とは機能の維持を超えて、もともとの初期性能よりも高水準の性能や機能、居住性を得るための工事です。

たとえば時代の流れに合わせて宅配ボックスを全戸分設置したり、外壁を最新の断熱塗料で施工して室内の快適性を向上させたりするなどがこれにあたります。

大規模修繕実施の費用の相場は? 

国土交通省の実態調査によると、全国のマンションの大規模修繕工事の費用相場は以下の通りです。

※仮設工事費と消費税を含む

この費用はあくまで平均的な相場であり、建物の規模や構造、建築年代、使われている資材、傷み具合、雪害や海風などの立地環境に左右されます。

また、マンションの外壁の総面積は延べ床面積に比例しません。同じ延べ床面積でも建物が細長かったり、凸凹が多かったりすると外壁の面積が増えて費用が高くなります。

使用する塗料や建材のグレードによってもコストがかなり左右されます。しかし、グレードの高い資材を使用することで修繕の周期を延ばせるため、一概に高グレード=高コストとは言えません。

続いて、国土交通省の実態調査による大規模修繕の際の居住者の1世帯当たりの負担金額は以下です。

※仮設工事費と消費税を含む

こちらも居住者それぞれの戸あたりの専有面積によって負担金額の割合が異なるため、実際の負担額は一律ではありません。また、戸数が多いマンションは1戸当たりの修繕費用負担が低くなる傾向にあります。

建物の劣化調査診断と、見積もりを取得する事によってはじめて具体的な予算感が確認できます。

出典:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査|国土交通省

大規模修繕実施の周期は何年ごと?

 

国土交通省のガイドラインによる見解では、マンションの大規模修繕工事の改修周期は12~15年とされています。また、前出の実態調査では平均改修周期は13年が最も多く、次いで12年・14年・15年と、やはり全体の約7割が12~15年周期で実施されています。

建築技術の進歩によって、以前よりも改修周期が長く変更になってはいるものの、油断をすることはできません。周期は予算と同様、マンションの構造や仕様、立地、予算組みの計画などによってさまざまです。

大切なのは建物のそれぞれの特性に応じて、あらかじめ長期的な視点で改修を計画しておくことだと言えるでしょう。


出典:長期修繕計画作成ガイドライン|国土交通省

マンション大規模修繕の重要性

 

マンションが安全性や快適性など、建物として当初の性能を維持し続けるために、大規模修繕工事が必要です。

たとえば防水工事に問題があった場合、長期間の雨水の流入で室内に湿気がこもったり、鉄筋など建物の内部の傷みが進行したりするでしょう。外壁のタイルやモルタルが剥がれて落下し、近くの人に当たったら大怪我につながる場合もあります。

建物の傷み、大規模修繕の未実施、外観の劣化などは建物の資産価値を下げてしまうため、住み替えなどの売却の際に販売価格が安くなることになります。

また、大規模修繕の際に以下のような時代の変化に則した改修を行っていれば、住環境の改善と資産価値の維持の両方につながります。

・省エネ化
・防犯性能の向上
・バリアフリー化
・宅配ボックス、トランクルーム、駐車スペースの転用 

また、適切な時期に実施して建物の劣化の進行を未然に防ぐことで、トータルの修繕費用を削減できる点も、定期的な大規模修繕が大切な理由です。

もしも何らかの事情で計画的な修繕が行われていないなら、即時手を打つことが最善策です。長期修繕計画が策定済み、あるいはそうでない場合を問わず、以下の最新様式を一度参照することをおすすめします。

上記の通り、分譲マンションに暮らす人に「大規模修繕がいかに重要であるか」という点を理解してもらうことは、管理組合にとって不可欠な任務となります。

大規模修繕を行うメリットを説明することも重要ですが、【しないとどうなる?】のかの説明も必須となり、そのためにも修繕積立金の根拠となる長期修繕計画書は重要な資料となります。

参考:長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン(国土交通省)

耐震改修と大規模修繕

 

昭和56年5月31日までに建築確認を受けて建てられている旧耐震マンションは、震度6~7の大地震で倒壊しない「耐震等級1」を満たしていない可能性があります。

現状では、旧耐震マンションの耐震診断や耐震改修は努力義務にとどまり、一部の例外を除き義務ではありません。したがって、大規模修繕の一環で耐震改修工事を行っているマンションは、2013年時点の東京都の調査で5.9%ほどとなっています。しかし、今後基準が厳しくなることも考えられます。

旧耐震の建物でも診断を受けて問題がなければ、住んでいて安心なだけでなく、資産価値も上がるため、ぜひ検討をしてください。マンションの耐震診断は平米当たり千円から2千円で、補助金や税制上の優遇もあります。

耐震工事は、外壁や外回りに影響が大きいことが多いため、大規模修繕と同時に行うことがほとんどです。耐震工事の実施時期については、大規模修繕の検討を含めて進めてください。

マンションの大規模修繕工事の進め方【期間・流れ】

 

大規模修繕の工事期間はマンションの規模によって異なり、通常規模の建物で3~5か月、10階建て以上の大きな建物の場合は6か月前後です。さらに、検討開始から竣工後のチェックなどまで含めると、全ての工事の流れで3年以上に及ぶこともあります。 

ステップ

内容

1.修繕委員会発足

管理組合が主体。このほか、専門知識を持つサポート先で構成。発注方式(※)の決定。

2.劣化診断・見積もり

建物の劣化状況、各部位の修繕の必要性などを把握する。

3.予算と工事計画の検討

積立金の状況、工事の必要性・緊急度、工事効率などをもとに検討。

4.施工会社選定

受けた見積もりをもとに3種の業者選定方式(※)から決定。

5.総会決議

大規模修繕は特別決議(3分の2の賛成)を要する。(軽微な修繕は普通決議)

6.契約・工事説明会

工事請負契約を締結。

どのような工事を行うか、施工期間中の生活への影響など、業者より説明を受ける。

7.施工・品質チェック

施工期間中には居住者のケア、施工後に品質チェックを行う。

表中の発注方式・業者選定方式には以下の方法に分類されます。

発注方式

・責任施工方式:管理組合が主体で計画策定
・設計監理方式:管理会社やコンサル会社が計画・設計監理

業者選定方式

・特命随意:見積もりから発注まで競合なし。施工業者1社に依頼
・競争入札方式:複数社の競争で落札した企業が受注
・見積もり合わせ方式:複数社に見積もりを依頼

それぞれの発注方式で、管理組合の関与度合いや費用負担が変わりますが、どの方法を選ぶかはとても重要です。後述しますが、管理会社やコンサルタントの提案を鵜呑みにすることは、談合や不正な見積もりを生むトラブルが高まります。

専門知識を持つ人材を内部にもたない管理組合には、何らかの相談が必要です。しかし、新築時からのご縁やコンサルタントのリードが、相場よりも高額な工事費につながっているケースは多数あります。

マンション大規模修繕を適正な工事内容と金額で!大切なポイントとは?

管理組合の方が、適正な工事内容と金額を判断するのは困難です。そこで、何に注意すれば良いかの重要なポイントと注意点は以下の通りです。

適正費用の実施のために大事なこと 

大規模修繕の際、管理組合は工事費用、施工時期、居住者を納得させられる内容かなどをチェックする必要があります。特に、マンションの改修においては、積立金や予算を考慮することが重要です。とくに費用面はデリケートな問題であり、費用負担や適正相場を考慮することが重要です。

マンションの大規模修繕を発注して進めていく上では、責任施工方式と設計監理方式の2つの発注方式があります。それぞれのメリットとデメリットは以下のポイントにまとめられます。

 

責任施工方式

施工業者に工事の設計から施工までを一任する方式

メリット

  • 不具合やトラブルが生じた場合でも責任の所在が明らかになる
  • マンション管理組合と施工現場との意思疎通が深くなる

デメリット

  • しっかりした施工管理体制が必要
  • 専門家のサポートを受けないと管理組合の業務負担が増える

設計監理方式

施工と設計監理を分離して契約し、設計監理は管理会社やコンサルタントに依頼

メリット

  • 管理組合の負担は少ない
  • 事業者選定も一定の条件で行える

デメリット

  • 別途設計監理費用の発生
  • 談合などの不正につながりやすい
  • 管理組合が工事の全体像を把握しにくくなる場合がある
  • 設計監理と施工で責任の所在があいまいになる

 

 

責任施工方式での、管理組合が意見を通しやすく不正の少ない体制づくりをおすすめします。

管理組合の立場に立ったサポートは、劣化診断の時点から必要となります。また、管理会社の関連部門による競争原理の働かない見積もりや、談合の可能性をはらむコンサルティング契約のほか、管理組合内部でも癒着が生じないよう、注意が必要です。

業者選定も管理会社やコンサルタントにまかせるのではなく、優良工事会社を選んだうえで相見積もりを取得して比較しましょう。

 

費用が不足する時の対処方法【払えない・・・】

 

 

大規模修繕の費用が不足することが明らかになった場合、工事内容や進め方の見直しで経費削減を試みたうえで、なお足りない場合は全戸からの一時金徴収、不足額の借り入れ、積立金の値上げ、費用がプールされるまで工事を延期するなどの方法があります。

また、マンションの修繕工事には、エコや住民福祉などの観点から自治体の補助金や助成金が設けられている事例があります。

参考:令和6年度 分譲マンション共用部分の改良工事等に対する支援制度 (全国版)|マンション管理適正化推進センター

追加費用の過大な費用負担は居住者の生活を圧迫し、望ましくありません。特に年金生活者の方が多いマンションでは、居住者の多くから理解が得にくいでしょう。

もっとも基本的で有効な手段は、適正な金額での発注方式です。工事費用の不足を招かないよう、管理組合の視点でサポートが可能な第三者の専門家に相談し、賢く進めましょう。

まとめ

マンション大規模修繕とは何をするか、費用は幾らくらいで約何年ごとに行うか、トラブルなく適正価格で行うにはどうするか、費用が足りない時はどうするかなど、基礎的な知識をご紹介しました。

マンション管理組合の方のお仕事は多岐にわたりますが、大規模修繕はその骨格のようなものといえるでしょう。居住者の理解を得るために説明会を開き、長期的な視点に立った修繕計画は、マンション管理には不可欠です。

また、工事の技術や費用相場なども年々変化するため、協力しながら最善の道を探していきましょう。

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本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

別所 毅謙

別所 毅謙

マンションの修繕/管理コンサルタント歴≒20年、大規模修繕など多くの修繕工事に精通。管理運営方面にも精通しており、アドバイス実績豊富。 過去に関わった管理組合数は2千、世帯数は8万を超える。 メディア掲載「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、「NIKKEI NEWS NEXT」、「首都圏情報ネタドリ!(NHK)」、「めざまし8」、「スーパーJチャンネル」。

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